平成30年度人権啓発指導者養成研修会 採録コラム

東京会場 講義2 平成30年10月18日(木)

  「人身取引と人権 ~権利アプローチとは?~」

著者 文京学院大学教授・認定NPO法人国際子ども権利センター<シーライツ>代表理事
甲斐田 万智子
寄稿日(掲載日) 2019/07/10


 【権利アプローチ(ライツ・ベース・アプローチ)とは?】

 権利ベースアプローチという言葉について説明したいと思います。日本で子どもの権利条約、権利関係に関わった人たちは、権利に基づいてアプローチすることを、権利ベースアプローチと言います。権利基盤型アプローチ、権利アプローチ、人権アプローチ、ライツベースアプローチと呼ぶ人もいます。当事者の権利が侵害されているかどうかを、権利のレンズを通してみるということです。つまり当事者主体ということです。これは90年代に、ユニセフや国際NGO、セーブ・ザ・チルドレンが主体となって進めてきたアプローチですが、まだまだ日本では浸透していません。国際協力団体もそのアプローチを使わなくてはいけないというのは分かっているのですけど、実際どうやったらいいか分からないところも多いのが現状です。

 皆さん、子どもの権利条約実施状況について国連子どもの権利委員会から出される勧告をご存じですか? 条約を批准すると、政府にいろいろな義務が伴います。政府は、「我が国ではこれだけ子どもの権利の実現のために取り組んでいます」という報告書を出します。一方、政府以外に市民団体からも報告書が出されます。これをオルタナティブ・レポートといいます。子どもが出すときもあります。国連子どもの権利委員会では、子どもの権利条約の日本の実施状況に関する審査を行い、総括所見(コンクルーディング・リマークス)を公表するのですが、「あなたの国ではこういう点が足りないよ」という勧告が出されると、政府がそれに基づいて改善していかなくてはいけないというシステムになっています。 条約というのは、政府が批准することにより、その政府が、ここに書かれている条文の権利を実現するために、努力しますと約束しているのですね。ですから、国民は政府がきちんと実現するための努力をしているのかどうか、プロセスを見なくてはならないのです。その勧告の中で、国連子どもの権利委員会から、日本は子どもの権利基盤型アプローチが弱いと、もう何年も前から何回か勧告されています。そのうちの1つは子どもを権利の主体として見るという姿勢が弱いということです。

 ある状況において権利侵害かどうかを見極めるためには、やはり国際人権基準、特に人権関係の条約を知ることが大事です。今日は特に、女性差別撤廃条約(正式名称:女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約)と子どもの権利条約(正式名称:児童の権利に関する条約)の2つの条約について取り上げたいと思います。

 女性差別撤廃条約の中には、あらゆる形態の女性差別を禁止していくことが書かれています。人身売買もやはり女性に対する差別によって起きるものだということが、条約をよく読んでいくと書かれています。一方、子どもの権利条約も、第34条に子どもが性的搾取から守られる権利、第35条に子どもが人身売買から守られる権利が書かれています。是非、この機会にネットで調べて、今日取り上げるもの以外の条文も1つ1つ見ていただけたらと思います。

 また、権利ベースアプローチで大事なことは、子どもあるいは女性を、権利を持っている人(権利保有者)だと見ることです。さらに、権利保有者に対してエンパワーする、つまりあなたには権利があるのですよ、と知らせ、権利意識を持ってもらうことが大事です。次に、その権利を実現する人たちの能力強化を行っていくことが大事になってきます。

① 人権の原則(説明責任) 政府が条約を批准したということは責任があるので、それを行っていないときは説明責任を求めることができます。

② 普遍性 子どもも女性もみんな同じ平等の権利を持っている、差別されてはならないという普遍性をきっちり守るということです。

③ 不可分性 権利はつながって、関連し合っており、1つの権利を守るだけでは駄目だということをいつも考えておく必要があります。

④ 参加 子どもや女性など権利を持っている人(Rights Holdersライツホルダーズ)に、あなたにもこういう権利があるのだよと伝え、参加の権利を使う場を提供し、どんどん使っていくことです。そして、権利を使った人たちの要請に応えられるように、権利の責務履行者(Duty Bearersデューティー・ベアラーズ)の能力を強化することも同時に考えないといけません。

 少し、詳しく見ていきましょう。人権の原則の一つに、子どもの権利条約の原則があります。その一つは、「子どもの最善の利益」というもので、何か決定をするときに、親や行政ではなく、子どもにとって何が一番いいことかを判断するということです。例えば、親が離婚したときに両親のどちらについていくかを、大人が決めるのではなくて、子どもの意見を聞きます。もしかしたら、両親が離婚する前から子どもに虐待をしていたため、子どもは「両親のどちらとも一緒に暮らしたくない。安全な施設に行きたい」と言うかもしれないからです。それから、(スライドの)権利侵害に遭っている人々をエンパワーするのは、「私にはこういう権利があるのだから、これを守ってほしい」と権利実現の責務を負っている人に、主張できるようにするということです。例えば児童虐待を受けていた子どもが、自分から「今、虐待を受けているから助けてほしい」と電話をかけたという例がありました。子どもが自分の権利やその権利の使い方を知っていたら、そういうことができるようになります。

 アドボカシーという言葉を聞いたことはありますか?子どもが自分の権利を主張する以外に、子どもが参加してできる活動の一つで、子どものための政策や法律を提言する活動です。現在、NGOやNPOの役割として、アドボカシー(政策提言活動)が注目されています。子ども自身が、私たちがこのように権利を侵害されるのは政策や法律がないからだ、と自治体あるいは国全体のシステムを変えるような運動をするということです。日本では子どもの参加の権利があまり重視されていないので、アドボカシーにおいても、子ども自身が実施することは少ないのですが、他の国ではこれは結構進んでいます。実は、私どもシーライツも、国内に住むマイノリティーの子どものアドボカシー活動を進めたいと考えています。子どもの権利条約が国連で採択されたのは、1989(平成元)年です。日本が批准したのは、その5年後の1994(平成6)年です。「子どもが、『参加の権利』などを知ったら、わがままになるのでは」という「わがまま論」が日本では非常に根強く、そのような誤解があるために批准するのが遅かったのです(世界で158番目)。

 責務履行者(政府、自治体、親、地域住民など)は、子ども自身に、自分の権利を守る力をつけることが大事です。そのためには、責務履行者が子ども観を変える必要があるのです。日本では、子どもはまだ何も知らないから導かなくてはいけないという考え方がとても強く、福祉の現場でも援助の対象者としか見ていないのではないでしょうか。しかし、子どもの権利条約で、子どもも大人と同じような権利の主体だと定められました。つまり、子どもは援助の対象者だけではなく、社会を担っていく担い手だということを私たちは認識していくことが必要となります。 子どもの権利条約が採択された30年前に子ども観が変わったのです。実際に、他の国では子どもに参加 の機会を提供することで、子ども自身が活躍、活動する動きがあります。責務に関して、政府が約束を実行 しているかどうかを見るためにも、当事者の子ども自身と政府の対話が大事になってくるわけです。 これまでに説明したライツベース・アプローチ導入の前、つまり子どもの権利条約採択前には、ニーズベース・アプローチというアプローチがとられていました。子どもが大変な目にあっているから、子どもが必要としていることをやってあげようというものでした。

 しかし、子どもの権利ベースアプローチは、子どもの周りにいる人たちにも働きかけて、その人たちが力をつけて子どもの権利を守っていくという考えです。これにより、子どもだけではなくて、すべての人が対象となったのです。 例えば、児童虐待がある時に、子どもを保護しようと子どもだけに注目するのではなく、その親に対してどうしたら叩かない子育てができるようになるか(ペアレンティング)を伝え、親の能力強化をしていくのです。親に限らず自治体や地方公共団体の能力強化も必要とされます。 また、ライツベース・アプローチの非常に大事な考え方に、意識や社会規範(ソーシャル・ノーム)を変えるというものもあります。

 カンボジアでは、親から「ベトナムに物乞いに行きなさい」と命令されて行く子がすごく多かったのです。この国には、子どもは親に尽くすべきだという強い社会規範があります。貧しい家庭の場合、子どもが家庭を助けなくてはいけないという根強い考え方があるのです。私たちは、子どもたちに「貧しい家庭に生まれたとしても、『自分にも教育を受ける権利がある』ということを親に言っていいんだよ」とって伝えています。子どもが親に、「ベトナムで物乞いをしている間に性的虐待を受ける危険や人身売買される危険があるから、私はそんな危ないことはしたくない。私にも学校で勉強を続ける権利がある」と言えるようにしています。「私はもっと勉強したい」と言うのと、「私には勉強する権利があるんだ、その権利を大人、政府、自治体は保障しなくていけない義務があるんだ」と言えるのとでは全然違うのですね。「勉強したい」だけでは、「なぜ、貧しい家庭を助けてないんだ。お前は、わがままだ」と言われてしまいますが、当然の権利として「勉強したい」と言っていいのだということを子どもに教えると、それを拠り所にして親に訴えることができるようになります。そこが大きな違いです。

 本来子どもを守るのはその国の仕事ですが、社会全体に子どもを守る責任があるというふうに考え方を変えるのがこのアプローチです。一人一人の個人が変わることも大事ですが、キャンペーンなどをして社会全体の意識を変えていくということが大切なのです。法律を作ることも重要です。途上国は、貧富の差、社会的地位による力の差が大きいので、貧しい家庭の子どもが有力者の息子からレイプされたりしたときなどは、警察が加害者を全然捕まえようとしないことがあります。それを社会全体で変えていくことが大事です。

 子どもの権利は、大きく分けると4つのグループに分かれます。1つ目は生きる権利、2つ目発達する権 利です。発達する権利には、教育を受ける権利、遊ぶ権利、休息をする権利等があります。3つ目は保護さ れる権利で、性的搾取や人身売買、児童労働、あるいは暴力から守られる権利等があります。子どもの権 利条約では、これらにもう一つ、参加の権利が加わりました。自分の生活に影響のある決定がなされるときには、子どもも意見を言ってもいいのだという権利です。

  1~3の権利を実現するためにも、4の参加の権利が大切です。具体的には、たとえば、教育を受ける権利を子どもが主張できるようにするために、意見を表す場を提供するといったようなことです。子どもに優しい行政というものを何年も前から進めている国もあります。

 子どもの権利条約第13条は、表現する権利です。子ども自身が、壁新聞やニュースレター、SNS等の方法で、表現することができます。第15条には、子どもが集会を開いたり、グループを作ったりする権利があることを定めています。これは実は日本でおとなに一番嫌われている権利です。なぜかというと、子どもが数人集まると、何をしでかすか分からないと思うおとなが多いからです。つまり、大人が子どもを信頼してないのです。私は、開発途上国で、子どもが集会を開いたりする場面に何回も遭遇していますが、その度にものすごく勇気をもらっています。「もっとこうしたら、問題が解決できるね、もっといい社会を作れるね」と意見を言い合って、すごくいいアイディアが生まれています。そのような経験を通し、子どもにエンパワーされて、これが権利を使うということなのだと、私たちが学ぶこともあるのです。

 しかし、意見表明権や集会を開く権利があっても、子どもが情報にアクセスできない限りは、子どもが意見を述べることはできません。子どもの権利条約第17条は、子どもが情報にアクセスできる権利を定めています。子どもに適切な情報を十分提供することが非常に大切で、これは大人の責任でもあります。

 次に、法律の話に移ります。性的搾取や体罰に関して、子どもの権利に基づいた法律が作られているかと 言うとそうとは限りません。例え法律ができても犯罪者がきちんと処罰されるためには、人々の意識を変える必要があります。

2017(平成29)年、東京都の「特定異性接客営業等の規制に関する条例」が出来ました。JKビジネスが取 り締まられるようになったのです。その直後に、コラボという女子高校生の性的搾取の問題に取り組んでい るNPOの視察ツアーに参加しました。秋葉原と歌舞伎町を視察して、JKビジネス関係の子どもが被害に 遭っているビデオを公然と売っている店に行きました。店の階段に、その都条例のポスターがあったのです が、そのポスターには、女の子に向けて、「あなたが気をつけないと駄目」というメッセージが書かれていたのです。つまり、被害者が気をつけなかったから被害に遭ったのだというメッセージを伝えるポスターでした。被害者を責める意識があるからこのようなポスターが作られるのだと思います。人々の意識が変わらない限り、結局悪いのは被害者だということになってしまいます。

  次に、AV(アダルトビデオ)の強要の犯罪について話します。これもかなり取り締まられるようになってきましたが、まだまだです。これは被害に遭った女の子の証言です。「ネットで知り合った、ネットでもちょっと有名な人に会ってみた。アイドルになる機会を提供するというようなことを言われて、少し不安だったけれどもついて行った。すると、いきなりアダルトビデオに出演させられた」。女の子が油断していると考えるのではなく、加害者が巧みに女の子たちを搾取しようとして権利を侵害していることに対して、NOと言うことがライツベース・アプローチです。

 女性に対する暴力にも同じことが言えます。かつては、ドメスティックバイオレンス(DV)は夫婦喧嘩なので、被害者の女性が警察に行っても警察は関わろうとしませんでした。法律ができたことによって、DVが犯罪だと認識されるようになり、市民の意識として妻が夫に殴られるのは犯罪だとなっていきました。法律と意識の両方を変えていくことが大切なことです。

 権利保障の責務履行者の能力強化には、その人の能力を5つの点から分析することが大事です。1つは、その人が責任意識(自分が子どもの権利を守るという意識)を持っているかどうかです。2つ目は、意識だけではなくて、実行する権限を持っているか、ないとすればどういう権限を与えたらできるようになるかです。3つ目は、人材や資金があるか、そして4つ目は、どのようにしたら解決できるかをみんなで決める能力があるかです。5つ目は、コミュニケーション能力があるかです。児童相談所に相談に来た子どもに、どんなコミュニケーションをとったら、その状態から抜け出せるようになれるのかも、子どもの権利を守る大人たちに問われているわけです。

【人身取引とは?】

 ここから、人身取引について話をしたいと思います。人身取引の国際的な定義ができたのは、2000(平成12)年です。国際組織犯罪防止条約(正式名称:国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約)の中の、人身取引議定書(正式名称:国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書)の第3条に、人身取引の定義が書かれています。

  イタリアのパレルモでこの条約が採択されたので、パレルモ議定書と呼ばれることもあります。定義には、目的と手段が書かれています。目的は搾取ですね。搾取には主に2つあり、性的搾取と労働搾取(経済的搾取)です。その2つの目的であらゆる手段を使って、人の獲得、輸送、引き渡し、かくまい、監禁、受け取りをすることを、人身取引といいます。

 1つ注意してもらいたいのは、搾取が目的で子どもが対象になる場合には、上記のいずれの手段も用いられない場合でも人身取引だということです。搾取、具体的には他者を買収させる強制労働、奴隷的な扱い、臓器の摘出という目的で、手段は暴力、脅迫、誘拐、騙し、弱い立場につけ込む、相手の同意を得たり支配をしたりするために、お金や物を渡す等があります。 それが必ずしもお金や物ではない場合もあります。例えば、宿泊場所を提供するという、家出少女に対するものもよくあります。そして、その手段によって人を獲得したり輸送したりすることが人身取引です。性的搾取の例を挙げます。 カンボジアの人身売買は、1990年代から深刻になり、特に農村から観光地に売られていきました。なぜ子どもが売られるかというと、その当時エイズが蔓延していたため、子どもであれば、処女であればHIVに感染していないだろう、安全だろうと考えられたことが一つの大きな理由です。 カンボジア国内のみならず、国境を越えてベトナムやタイ、マレーシア、台湾、韓国にも売られています。そして、そのベトナムからもカンボジアを経由し、タイに売られるということで、カンボジアは受け入れ国送り出し国でもあり、経由国、トランジットの場所にもなっています。

 もう一つ、労働搾取の人身売買についてもお話します。ベトナムに物乞いに出されたり、煉瓦工場で働かされたり、タイやベトナム、マレーシアに連れて行かれて、漁船、建設現場、エビなどの加工工場で働かされたり、家事労働をさせられたりしています。中国での偽装結婚もあります。結婚という名のもと親の介護をさせられたり、その後に性産業に売られることも問題になっています。 カンボジアでは、孤児院のビジネスのために売られるということがあります。ボランティア・ツーリズムといって「私はこんなに充実した生活、夏休みを送ったのだ」とSNSで発信できるために最近すごく盛んになっています。それを知ったカンボジアやネパールの人たちは、孤児院を作って子どもたちを集めます。貧しい親には、「学校に行かせる、いい食事を与える」と言って、孤児院に連れてくるのです。一方、海外からのボランティアにはこの子たちにお金を寄付してくださいと言って集めたその寄付金を全部自分の懐に入れるというやり方です。性的搾取、労働搾取の問題だけではなく、儲けのために子どもたちが搾取されていることも、最近の傾向としてあるのです。

 人身取引の実態は、必ずしも暴力的な脅迫、無理矢理拉致というわけではありません。マインドコントロ ールによって、自分の意志ではもう逃れることができないと思ってしまうケースや、被害者が自ら被害者であると気づかないケースもあります。そして、海外に売られた場合には、身分証をブローカーや勤め先の人に取り上げられます。「身分証を紛失しないように保管しておいてあげるね」などの甘い言葉に騙されて、搾取されていると思わないのです。あるいは、「君は不法に国境を越えたから、今はもう不法労働者なんだ」「警察に見つかったらやばいから逮捕されないようにしてあげるからね」と、いつのまにか隷属状態に置かれてしまいます。

 次は、日本の人身取引の話に移ります。アメリカの国務省から毎年発表される人身取引報告書があります。世界中の人身取引の現状と政府の取り組み状況を調査して、ランクをつけているものです。4段階のランクがあります。

 第1階層(ティア1)は人身売買撲滅に対して、政府が十分な取り組みをしている国ですね。第2階層は、人身売買撲滅の最低基準を十分には満たしていないけれども改善に努めている国です。その次に第2階層監視国があります。第3階層は、撲滅に向けた最低限の取り組みを実施していない国です。日本は2017(平成29)年までの17年間、第2階層でした。G8の中では、ロシアと日本だけが第2階層で、他の先進国はみんな第1階層でした。しかも、一時は監視国にもなったことさえあります。人身売買を取り締まる法律がないため、第2階層よりも下に落ちたのです。その後、あわてて政府が刑法の改正をし、JKビジネスを取り締まる東京都条例がつくられ、ようやく2018(平成30)年は第1階層に上がることができました。実は、日本は「人身取引受け入れ大国」と呼ばれているほど、被害者がたくさん連れてこられる国です。タイ、フィリピン、コロンビアから多くの人が、性的目的で売られてきていたわけです。さらに、日本国内でのJKビジネスも人身取引であるにもかかわらず、実はここ数年間ずっと十分な対策がとられていないということで、第2階層になっていたのです。

  もう一つのランクが低かった理由は、技能実習制度です。技能実習生ということで、工場などで単純労働に 従事する外国人が、時給300円くらいで強制労働させられています。劣悪な状況に大勢の人数で住まわされ ていることもあります。実際、自殺する人や原因不明の病気で亡くなってしまう人も非常に多いです。 熊本では、弁護士の支援により裁判を起こした中国人のケースが勝訴し、ようやく技能実習生は奴隷でないことが認められました。 在日外国人の犯罪や、密入国、オーバーステイの問題との関係もあり、技能実習生のことを、なかなか人身取引の被害者とみなしにくい状況が背景にありました。 皆さまには、被害者中心のまなざしで状況を見て欲しいと考えています。今日の話では、子どもや女性、外国人実習生の人権の視点で考えるということです。支援する側の思い込みで、「こうすべきだ」と考えるのではなく、その支援を当事者が選択できるようになっているか、「私はもっとこういう支援がほしい」と当事者が言えるようになっているかが重要です。これがライツベース・アプローチです。被害者をサバイバーとみなして、当事者主体の支援をしてほしい。これが、私からの最後のメッセージになります。

 もし、シーライツを応援したいな、あるいは古本なら寄付できるという方がいらっしゃいましたら、古本を売った金額を寄付していただけると、日本でも多くの子どもをこのような被害から守ることができます。どうぞよろしくお願いいたします。