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主要な人権関係法律

犯罪捜査規範
情報の種類 主要な人権関係法律
タイトル 犯罪捜査規範
時期 1957/09/01
主体名
【 内容 】
犯罪捜査規範
(昭和三十二年七月十一日国家公安委員会規則第二号)


最終改正:平成二二年四月一五日国家公安委員会規則第三号


 犯罪捜査規範を次のように定める。


 第一章 総則
  第一節 捜査の心構え(第一条―第十四条)
  第二節 捜査の組織(第十五条―第二十六条)
  第三節 手配および共助(第二十七条―第四十四条)
  第四節 検察官との関係(第四十五条―第四十九条)
  第五節 特別司法警察職員等との関係(第五十条―第五十四条)
  第六節 捜査書類(第五十五条―第五十八条)
 第二章 捜査の端緒
  第一節 端緒のは握(第五十九条―第六十二条)
  第二節 告訴、告発および自首(第六十三条―第七十五条)
 第三章 捜査の開始
  第一節 捜査の着手(第七十六条―第七十八条)
  第二節 捜査資料(第七十九条―第八十三条)
  第三節 犯罪現場(第八十四条―第九十二条)
  第四節 緊急配備(第九十三条―第九十五条)
  第五節 捜査方針(第九十六条―第九十八条)
 第四章 任意捜査(第九十九条―第百十七条)
 第五章 逮捕(第百十八条―第百三十六条の二)
 第六章 捜索、差押および検証
  第一節 通則(第百三十七条―第百四十四条)
  第二節 捜索(第百四十五条―第百五十条)
  第三節 差押(第百五十一条―第百五十四条)
  第四節 検証(第百五十五条―第百六十二条)
 第七章 没収保全等の請求(第百六十三条―第百六十五条)
 第八章 取調べ(第百六十六条―第百八十二条の三)
 第九章 鑑識(第百八十三条―第百九十二条)
 第十章 送致及び送付(第百九十三条―第二百一条)
 第十一章 少年事件に関する特則(第二百二条―第二百十七条)
 第十二章 交通法令違反事件に関する特則(第二百十八条―第二百二十二条)
 第十三章 国際犯罪に関する特則(第二百二十三条―第二百三十八条)
 第十四章 群衆犯罪に関する特則(第二百三十九条―第二百四十六条)
 第十五章 暴力団犯罪に関する特則(第二百四十七条―第二百五十二条)
 第十六章 保釈者等の視察(第二百五十三条―第二百五十六条)
 第十七章 令状の執行(第二百五十七条―第二百六十九条)
 第十八章 雑則(第二百七十条―第二百七十五条)
 附則

   第一章 総則

    第一節 捜査の心構え


(この規則の目的)
第一条  この規則は、警察官が犯罪の捜査を行うに当つて守るべき心構え、捜査の方法、手続その他捜査に関し必要な事項を定めることを目的とする。

(捜査の基本)
第二条  捜査は、事案の真相を明らかにして事件を解決するとの強固な信念をもつて迅速適確に行わなければならない。
2  捜査を行うに当つては、個人の基本的人権を尊重し、かつ、公正誠実に捜査の権限を行使しなければならない。

(法令等の厳守)
第三条  捜査を行うに当たつては、警察法 (昭和二十九年法律第百六十二号)、刑事訴訟法 (昭和二十三年法律第百三十一号。以下「刑訴法」という。)その他の法令及び規則を厳守し、個人の自由及び権利を不当に侵害することのないように注意しなければならない。

(合理捜査)
第四条  捜査を行うに当たつては、証拠によつて事案を明らかにしなければならない。
2  捜査を行うに当たつては、先入観にとらわれず、根拠に基づかない推測を排除し、被疑者その他の関係者の供述を過信することなく、基礎的捜査を徹底し、物的証拠を始めとするあらゆる証拠の発見収集に努めるとともに、鑑識施設及び資料を十分に活用して、捜査を合理的に進めるようにしなければならない。

(総合捜査)
第五条  捜査を行うに当つては、すべての情報資料を総合して判断するとともに、広く知識技能を活用し、かつ、常に組織の力により、捜査を総合的に進めるようにしなければならない。

(着実な捜査)
第六条  捜査は、安易に成果を求めることなく、犯罪の規模、方法その他諸般の状況を冷静周密に判断し、着実に行わなければならない。

(公訴、公判への配慮)
第七条  捜査は、それが刑事手続の一環であることにかんがみ、公訴の実行及び公判の審理を念頭に置いて、行わなければならない。特に、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律 (平成十六年法律第六十三号)第二条第一項 に規定する事件に該当する事件の捜査を行う場合は、国民の中から選任された裁判員に分かりやすい立証が可能となるよう、配慮しなければならない。

(規律と協力)
第八条  捜査を行うに当たつては、自己の能力を過信して独断に陥ることなく、上司から命ぜられた事項を忠実に実行し、常に警察規律を正しくし、協力一致して事案に臨まなければならない。

(秘密の保持等)
第九条  捜査を行うに当たつては、秘密を厳守し、捜査の遂行に支障を及ぼさないように注意するとともに、被疑者、被害者(犯罪により害を被つた者をいう。以下同じ。)その他事件の関係者の名誉を害することのないように注意しなければならない。
2  捜査を行うに当たつては、前項の規定により秘密を厳守するほか、告訴、告発、犯罪に関する申告その他犯罪捜査の端緒又は犯罪捜査の資料を提供した者(第十一条(被害者等の保護等)第二項において「資料提供者」という。)の名誉又は信用を害することのないように注意しなければならない。

(関係者に対する配慮)
第十条  捜査を行うに当つては、常に言動を慎み、関係者の利便を考慮し、必要な限度をこえて迷惑を及ぼさないように注意しなければならない。

(被害者等に対する配慮)
第十条の二  捜査を行うに当たつては、被害者又はその親族(以下この節において「被害者等」という。)の心情を理解し、その人格を尊重しなければならない。
2  捜査を行うに当たつては、被害者等の取調べにふさわしい場所の利用その他の被害者等にできる限り不安又は迷惑を覚えさせないようにするための措置を講じなければならない。

(被害者等に対する通知)
第十条の三  捜査を行うに当たつては、被害者等に対し、刑事手続の概要を説明するとともに、当該事件の捜査の経過その他被害者等の救済又は不安の解消に資すると認められる事項を通知しなければならない。ただし、捜査その他の警察の事務若しくは公判に支障を及ぼし、又は関係者の名誉その他の権利を不当に侵害するおそれのある場合は、この限りでない。

(被害者等の保護等)
第十一条  警察官は、犯罪の手口、動機及び組織的背景、被疑者と被害者等との関係、被疑者の言動その他の状況から被害者等に後難が及ぶおそれがあると認められるときは、被疑者その他の関係者に、当該被害者等の氏名又はこれらを推知させるような事項を告げないようにするほか、必要に応じ、当該被害者等の保護のための措置を講じなければならない。
2  前項の規定は、資料提供者に後難が及ぶおそれがあると認められる場合について準用する。

(研究と工夫)
第十二条  警察官は、捜査専従員であると否とを問わず、常に捜査関係法令の研究および捜査に関する知識技能の習得に努め、捜査方法の工夫改善に意を用いなければならない。

(備忘録)
第十三条  警察官は、捜査を行うに当り、当該事件の公判の審理に証人として出頭する場合を考慮し、および将来の捜査に資するため、その経過その他参考となるべき事項を明細に記録しておかなければならない。

(捜査の回避)
第十四条  警察官は、被疑者、被害者その他事件の関係者と親族その他特別の関係にあるため、その捜査について疑念をいだかれるおそれのあるときは、上司の許可を得て、その捜査を回避しなければならない。
    第二節 捜査の組織


(捜査の組織的運営)
第十五条  捜査を行うに当つては、捜査に従事する者の団結と統制を図り、他の警察諸部門および関係警察と緊密に連絡し、警察の組織的機能を最高度に発揮するように努めなければならない。

(警察本部長)
第十六条  警察本部長(警視総監または道府県警察本部長をいう。以下同じ。)は、捜査の合理的な運営と公正な実施を期するため、犯罪の捜査について、全般の指揮監督に当るとともに、職員の合理的配置、その指導教養の徹底、資材施設の整備等捜査態勢の確立を図り、もつてその責に任ずるものとする。

(捜査担当部課長)
第十七条  刑事部長、警備部長その他犯罪の捜査を担当する部課長は、警察本部長を補佐し、その命を受け犯罪の捜査の指揮監督に当るものとする。

(警察署長)
第十八条  警察署長は、その警察署に関し、犯罪の捜査の指揮監督に当るとともに、捜査の合理的な運営と公正な実施について、警察本部長に対しその責に任ずるものとする。

(捜査指揮)
第十九条  前三条に規定する犯罪の捜査の指揮については、常にその責任を明らかにしておかなければならない。
2  警察本部長または警察署長が直接指揮すべき事件および事項ならびに指揮の方法その他事件指揮簿の様式等は、警察本部長の定めるところによる。

(捜査主任官)
第二十条  警察本部長又は警察署長は、当該事件の捜査につき、捜査主任官を指名するものとする。
2  捜査主任官は、第十六条から前条まで(警察本部長、捜査担当部課長、警察署長、捜査指揮)の規定により指揮を受け、当該事件の捜査につき、次に掲げる職務を行うものとする。
一  捜査すべき事項及び捜査員の任務分担を定めること。
二  押収物及びその換価代金の出納を承認し、これらの保管の状況を常に把握すること。
三  第三章第五節(捜査方針)の規定により捜査方針を立てること。
四  捜査員に対し、捜査の状況に関し報告を求めること。
五  留置施設に留置されている被疑者(第百三十六条の二(引き当たり捜査の際の注意)第一項において「留置被疑者」という。)に関し同項の計画を作成する場合において、留置主任官(被留置者の留置に関する規則 (平成十九年国家公安委員会規則第十一号)第四条第一項 に規定する留置主任官をいう。第百三十六条の二第一項において同じ。)と協議すること。
六  被疑者の取調べその他の捜査の適正な遂行並びに被疑者の逃亡及び自殺その他の事故の防止について捜査員に対する指導教養を行うこと。
七  前各号に掲げるもののほか、法令の規定によりその権限に属させられ、又は警察本部長若しくは警察署長から特に命ぜられた事項
3  警察本部長又は警察署長は、第一項の規定により捜査主任官を指名する場合には、当該事件の内容並びに所属の職員の捜査能力、知識経験及び職務遂行の状況を勘案し、前項に規定する職務を的確に行うことができると認められる者を指名しなければならない。
4  捜査主任官が交代する場合には、関係書類、証拠物等の引継ぎを確実に行うとともに、捜査の状況その他必要な事項を明らかにし、事後の捜査に支障を来すことのないようにしなければならない。

(捜査員)
第二十一条  警察官は、上司の命を受け、犯罪の捜査に従事する。
2  警察官以外の捜査関係職員が、警察官を助けて職務を行う場合には、この規則の規定に従わなければならない。

(捜査本部)
第二十二条  重要犯罪その他事件の発生に際し、特に、捜査を統一的かつ強力に推進する必要があると認められるときは、捜査本部を設置するものとする。
2  捜査本部の設置及び解散並びに捜査本部の長及び編成は、警察本部長が命ずる。
3  捜査本部長は、命を受け、捜査本部に所属する職員を指揮監督する。
4  捜査本部を設置した事件の捜査については、すべて捜査本部長の統制に従うものとし、他の警察署において当該事件に関する捜査資料を得たときは、速やかに捜査本部に連絡しなければならない。

(報告)
第二十三条  警察官は、犯罪に関係があると認められる事項その他捜査上参考となるべき事項を知つたときは、速やかに、上司に報告しなければならない。
2  警察署長は、その管轄区域において発生した事件その他捜査上参考となるべき事項のうち重要なものについては、速やかに、警察本部長に報告しなければならない。

(他の機関との連絡等)
第二十四条  警察官は、検察官または他の捜査機関との捜査に関する連絡または協力については、あらかじめ順序を経て警察本部長または警察署長に報告して、その指揮を受けなければならない。

(新聞発表等)
第二十五条  捜査に関し、新聞その他の報道機関等に発表を行うときは、警察本部長若しくは警察署長(捜査本部を設置した場合においては捜査本部長)又はその指定する者がこれに当たらなければならない。

(指導教養)
第二十六条  犯罪の捜査に関する指導教養は、幹部、専従員および一般警察官の別に応じ、実務に即して行い、その実効を期さなければならない。
    第三節 手配および共助


(一般的協力義務)
第二十七条  警察官は、別に定がある場合のほか、この節の規定するところに従い、捜査に関し、相互に協力しなければならない。

(共助の依頼)
第二十八条  捜査のため必要があるときは、他の警察に対し、共助の依頼(被疑者の逮捕、呼出し若しくは取調べ、盗品等(盗品その他財産に対する罪に当たる行為によつて領得された物をいう。以下同じ。)その他の証拠物の手配、押収、捜索若しくは検証、参考人の呼出し若しくは取調べ、職員の派遣その他の措置を依頼することをいう。以下同じ。)をすることができる。
2  他の警察から、共助の依頼を受けたときは、誠実かつ速やかにこれに当たらなければならない。
3  共助の依頼をするに当たつては、依頼の趣旨、内容その他の必要な事項を明確にし、及び依頼を受けた警察の事務の遂行に支障を及ぼさないようにしなければならない。

(緊急事件手配)
第二十九条  犯罪の捜査につき、他の警察に対して緊急の措置を依頼する必要があるときは、直ちに、緊急事件手配書(別記様式第一号)により、緊急配備その他の必要な措置を求めるものとする。

(事件手配)
第三十条  容疑者および捜査資料その他参考事項について通報を求める手配を、事件手配とする。
2  事件手配は、事件の概要および通報を求める事項を明らかにして行わなければならない。

(指名手配)
第三十一条  逮捕状の発せられている被疑者の逮捕を依頼し、逮捕後身柄の引渡しを要求する手配を、指名手配とする。
2  指名手配は、指名手配書(別記様式第二号)により行わなければならない。
3  急速を要し逮捕状の発付を受けるいとまのないときは、指名手配書による手配を行つた後、速やかに逮捕状の発付を得て、その有効期間を通報しなければならない。
4  第二十九条(緊急事件手配)の規定による緊急事件手配により、氏名等の明らかな被疑者の逮捕を依頼した場合には、当該緊急事件手配を指名手配とみなす。この場合においては、逮捕状の発付を得た後、改めて第一項の規定による手続をとるものとする。

(指名手配の種別)
第三十二条  指名手配を行うに当つては、被疑者を逮捕した場合における身柄の処置につき、次のいずれであるかを明らかにしなければならない。
一  第一種手配(身柄の護送を求める場合の手配をいう。)
二  第二種手配(身柄を引取に行く場合の手配をいう。)
2  指名手配は、原則として第一種手配によるものとする。

(指名手配の継続)
第三十三条  指名手配をした場合においては、常に逮捕状の有効期間に注意し、有効期間経過後もなお手配継続の必要があるものについては、逮捕状の再発付を受け、その有効期間を通報しなければならない。

(指名通報)
第三十四条  被疑者が発見された場合に身柄の引渡を求めず、かつ、その事件の処理を当該警察にゆだねる旨の手配を、指名通報とする。
2  指名通報は、被疑者の氏名等が明らかであり、かつ、犯罪事実が確実なものについて、指名通報書(別記様式第二号)により行わなければならない。
3  指名通報のあつた事件については、あらかじめ、通報を発した警察に、逮捕状の有無、容疑事実の内容、関係書類その他の捜査資料の有無等を照会して処理するものとする。
4  指名通報を行つた被疑者については、事件処理に必要な証拠資料、関係書類等を完全に整備しておき、被疑者を発見した警察から要求があつたときは、すみやかに、第七十八条(事件の移送および引継)第二項の規定による事件引継書とともに証拠資料、関係書類等を、その警察に送付しなければならない。

(盗品等手配)
第三十五条  警察が、その捜査中の事件の盗品等につき、他の警察に対してその発見を求める手配を、盗品等手配とする。
2  盗品等手配を行うに当たつては、発見すべき盗品等の名称、銘柄、品種、特徴等を明らかにすることに努め、必要があるときは、写真を添付する等有効適切な措置を講じなければならない。

(品触れ)
第三十六条  古物営業法 (昭和二十四年法律第百八号)第十九条第一項 若しくは第三項 又は質屋営業法 (昭和二十五年法律第百五十八号)第二十一条第一項 に規定する品触れ(以下「品触れ」という。)は、これを次の三種に区分するものとする。
一  特別重要品触れ(捜査本部に係る事件について発する品触れをいう。)
二  重要品触れ(前号の事件以外の重要な事件について発する品触れをいう。)
三  普通品触れ(その他の事件について発する品触れをいう。)
2  品触れは、前項の区分を明らかにして発しなければならない。
3  前条第二項の規定は、品触れについて準用する。
4  品触れを発したときは、品触原簿(別記様式第三号)及び品触取扱簿(別記様式第四号)により、それぞれ、その状況を明確にしておかなければならない。

(手配等の適正)
第三十七条  第二十九条(緊急事件手配)、第三十条(事件手配)、第三十一条(指名手配)、第三十四条(指名通報)及び第三十五条(盗品等手配)に規定する手配又は通報については、その実効を期するため、犯罪の種別、軽重、緊急の度合い等に応じ、手配の範囲、種別及び方法を合理的に定め、いやしくも、濫用にわたることのないように注意しなければならない。

(手配等の解除)
第三十八条  第二十九条(緊急事件手配)、第三十条(事件手配)、第三十一条(指名手配)、第三十四条(指名通報)及び第三十五条(盗品等手配)に規定する手配又は通報に係る事件について、被疑者を逮捕し、又は事件を解決したときは、速やかに、かつ、確実に、その手配又は通報の解除を行わなければならない。
2  逮捕状の有効期間が経過し、逮捕状の再交付を受けない場合も、また、前項と同様とする。
3  前二項のほか、共助の依頼をし、又は品触を発した場合において、その必要がなくなつたときは、第一項の規定に準じ、必要な手続をとらなければならない。

(参考通報)
第三十九条  警察署長は、他の警察に関連する犯罪事件について、その被疑者、証拠物その他捜査上参考となるべき事項を発見したときは、直ちに、適当な措置をとるとともに、その旨を当該警察に通報しなければならない。
2  警察署長は、前項の通報のほか、重要事件、他に波及するおそれのある事件その他犯罪の捜査または予防上参考となるべき事件について、関係警察に通報するものとする。

(本部長への報告)
第四十条  警察署長は、第二十九条(緊急事件手配)、第三十条(事件手配)、第三十一条(指名手配)、第三十四条(指名通報)及び第三十五条(盗品等手配)の規定による手配又は通報をする場合においては、原則として、あらかじめ警察本部長に報告した後、直接に、又は警察本部長を通じて行わなければならない。

(身柄引渡しの原則)
第四十一条  指名手配のあつた被疑者を逮捕した警察(以下「逮捕警察」という。)は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、被疑者の身柄をその指名手配をした警察(以下「手配警察」という。)に引渡さなければならない。
一  逮捕警察が、手配を受けた犯罪より法定刑が重い別の犯罪をその管轄区域において犯した被疑者を逮捕したとき。
二  逮捕警察が、手配を受けた犯罪と法定刑が同等以上の別の犯罪で手配をしていた被疑者を逮捕したとき。
三  逮捕警察が、手配被疑者に関連する犯罪で、既にその正犯又は共同正犯である被疑者の一部を逮捕しているとき。
2  同一被疑者について、二以上の手配警察がある場合には、次の各号に定める手配警察にその身柄を引き渡さなければならない。
一  手配を受けた犯罪について、その法定刑に軽重があるとき(次号に規定する場合に該当する場合を除く。)は、重い犯罪を手配した警察
二  手配を受けた犯罪で、既にその正犯又は共同正犯である被疑者の一部を逮捕している警察があるときはその警察
三  前二号に規定する場合のほかは、先に手配をした警察
3  前二項に規定する身柄引渡しの原則により難い事情があるときは、警察本部長の決するところによる。

(被疑者引渡書)
第四十二条  指名手配により逮捕した被疑者の身柄を引き渡すに当たつては、被疑者引渡書(別記様式第五号)を作成しなければならない。

(留置の依頼)
第四十三条  被疑者の護送その他犯罪の捜査のため必要があるときは、他の警察に対し、被疑者の留置の依頼をすることができる。

(他の警察の管轄区域における捜査に係る連絡)
第四十四条  警察官は、他の警察の管轄区域において犯罪の捜査を行うに当たつては、所轄警察に連絡するようにしなければならない。
    第四節 検察官との関係


(捜査に関する協力)
第四十五条  警察官は、捜査に関し、検察官と互に協力しなければならない。
2  警察本部長または警察署長は、その捜査する事件について、公訴を実行するため、あらかじめ連絡しておく必要があると認めるときは、すみやかに、犯罪事実の概要その他の参考となるべき事項を検察官に連絡しなければならない。

(一般的指示)
第四十六条  警察官は、司法警察職員捜査書類基本書式例その他の刑訴法第百九十三条第一項 の規定に基づき検察官から示された一般的指示があるときは、これに従つて捜査を行わなければならない。

(捜査調整の申出)
第四十七条  警察官は、他の司法警察職員との間において捜査の調整につき、刑訴法第百九十三条第二項 の規定による検察官の一般的指揮を必要とする特別の事情があるときは、すみやかに順を経て警察本部長に報告しなければならない。
2  警察本部長は、前項に規定する報告を受けた場合において、必要があると認められるときは、すみやかに、その旨を検察官に申し出なければならない。

(一般的指揮)
第四十八条  刑訴法第百九十三条第二項 の規定に基き、検察官から一般的指揮が与えられたときは、警察官はこれに従つて捜査を行わなければならない。

(補助のための指揮)
第四十九条  刑訴法第百九十三条第三項 の規定により検察官が自ら捜査する犯罪について、その補助を求められたときは、警察官はすみやかに、これに従つて必要な捜査を行い、かつ、その結果を報告しなければならない。
    第五節 特別司法警察職員等との関係


(共助の原則)
第五十条  刑訴法第百九十条 の規定により別に法律で定められた司法警察職員またはこれに準ずる者(以下「特別司法警察職員等」という。)との共助に関しては、共助協定その他の特別の定があるときはその規定するところによるほか、この節の規定によるものとする。

(自ら捜査する場合)
第五十一条  警察官は、特別司法警察職員等の職務の範囲に属する犯罪を特別司法警察職員等に先んじて知つた場合において、その捜査を特別司法警察職員等にゆだねることなく、自ら捜査することを適当と認めるときは、警察本部長または警察署長に報告して、その指揮を受け、捜査するものとする。この場合においては、当該特別司法警察職員等と連絡を密にし、その専門的知識による助言等を受けたときは、充分これを尊重して捜査を行うようにしなければならない。

(捜査をゆだねる場合)
第五十二条  警察官は、特別司法警察職員等の職務の範囲に属する犯罪を特別司法警察職員等に先んじて知つた場合において、その捜査を特別司法警察職員等にゆだねることを適当と認めるときは、自ら急速を要する処置を行つた後、警察本部長または警察署長に報告して、その指揮を受け、すみやかに必要な捜査資料を添えて、これを特別司法警察職員等に移すものとする。
2  前項の規定により、捜査をゆだねた後においても、当該特別司法警察職員等から捜査のために協力を求められた場合においては、できる限り、これに応じて協力するものとする。

(引継を受けた場合)
第五十三条  警察官は、特別司法警察職員等が、その職務の範囲に属する犯罪を捜査する場合において、その事件が職務の範囲に属しない犯罪事件と関連するため、またはその他の理由により、警察官にその捜査を引き継ぐべき旨の申出を受けたときは、警察本部長または警察署長に報告して、その指揮を受け、自らもその捜査を行うものとする。この場合において、必要があるときは、当該特別司法警察職員等に対し、証拠物の引渡その他捜査のための協力を求めるとともに、事後の捜査の経過および結果を連絡するものとする。

(捜査が競合する場合)
第五十四条  警察官は、特別司法警察職員等の職務の範囲に属する犯罪を捜査する場合において、その捜査が当該特別司法警察職員等の行う捜査と競合するときは、警察本部長または警察署長に報告して、その指揮を受け、当該特別司法警察職員等とその捜査に関し、必要な事項を協議するものとする。
    第六節 捜査書類


(捜査書類の作成)
第五十五条  捜査を行うに当つては、司法警察職員捜査書類基本書式例による調書その他必要な書類を明確に作成しなければならない。
2  書類の作成に当つては、事実をありのままに、かつ、簡潔明瞭に表現することを旨とし、推測、誇張等にわたつてはならない。

(署名・押印等)
第五十六条  書類には、特別の定がある場合を除いては、年月日を記載して署名押印し、所属官公署を表示しなければならない。
2  押印は、原則として認印をもつてするものとする。
3  書類(裁判所又は裁判官に対する申立て、意見の陳述、通知その他これらに類する訴訟行為に関する書類を除く。)には、毎葉に契印するものとする。ただし、その謄本又は抄本を作成する場合には、契印に代えて、これに準ずる措置をとることができる。
4  書類の余白または空白には、斜線を引き押印するものとする。

(文字の加除)
第五十七条  書類を作成するに当たつては、文字を改変してはならない。文字を加え、又は削るときは、その範囲を明らかにして、訂正した部分に押印しなければならない。ただし、削つた部分は、これを読むことができるように字体を残さなければならない。

(書類の代書)
第五十八条  本人が文盲である等やむを得ない理由で書類を代書した場合には、代書事項が本人の意思と相違がないことを確かめた上、代書の理由を記載して署名押印しなければならない。
   第二章 捜査の端緒

    第一節 端緒のは握


(端緒の把握の努力)
第五十九条  警察官は、新聞紙その他の出版物の記事、インターネットを利用して提供される情報、匿名の申告、風説その他広く社会の事象に注意するとともに、警ら、職務質問等の励行により、進んで捜査の端緒を得ることに努めなければならない。

(手配の有無等の照会)
第六十条  職務質問に当り、必要があると認められるときは、直ちに、指名手配その他の手配または通報の有無、被害届の有無、鑑識資料の有無等を、電話その他適当な方法により、警視庁もしくは道府県警察本部または警察署に照会しなければならない。

(被害届の受理)
第六十一条  警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。
2  前項の届出が口頭によるものであるときは、被害届(別記様式第六号)に記入を求め又は警察官が代書するものとする。この場合において、参考人供述調書を作成したときは、被害届の作成を省略することができる。

(犯罪事件受理簿)
第六十二条  犯罪事件を受理したときは、警察庁長官(以下「長官」という。)が定める様式の犯罪事件受理簿に登載しなければならない。
    第二節 告訴、告発および自首


(告訴、告発および自首の受理)
第六十三条  司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない。
2  司法巡査たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、直ちに、これを司法警察員たる警察官に移さなければならない。

(自首調書、告訴調書および告発調書等)
第六十四条  自首を受けたときまたは口頭による告訴もしくは告発を受けたときは、自首調書または告訴調書もしくは告発調書を作成しなければならない。
2  告訴または告発の口頭による取消しを受けたときは、告訴取消調書または告発取消調書を作成しなければならない。

(書面による告訴および告発)
第六十五条  書面による告訴または告発を受けた場合においても、その趣旨が不明であるときまたは本人の意思に適合しないと認められるときは、本人から補充の書面を差し出させ、またはその供述を求めて参考人供述調書(補充調書)を作成しなければならない。

(被害者以外の者の告訴)
第六十六条  被害者の委任による代理人から告訴を受ける場合には、委任状を差し出させなければならない。
2  被害者以外の告訴権者から告訴を受ける場合には、その資格を証する書面を差し出させなければならない。
3  被害者以外の告訴権者の委任による代理人から告訴を受ける場合には、前二項の書面をあわせ差し出させなければならない。
4  前三項の規定は、告訴の取消を受ける場合について準用する。

(告訴事件および告発事件の捜査)
第六十七条  告訴または告発があつた事件については、特にすみやかに捜査を行うように努めるとともに、次に掲げる事項に注意しなければならない。
一  ぶ告、中傷を目的とする虚偽または著しい誇張によるものでないかどうか。
二  当該事件の犯罪事実以外の犯罪がないかどうか。

(自首事件の捜査)
第六十八条  自首のあつた事件について捜査を行うに当つては、次に掲げる事項に注意しなければならない。
一  当該犯罪または犯人が既に発覚していたものでないかどうか。
二  自首が当該事件について他に存する真犯人を隠すためのものでないかどうか。
三  自首者が、自己が犯した他の犯罪を隠すために、ことさらに当該事件につき自首したものでないかどうか。

(事件の移送)
第六十九条  警察本部長または警察署長は、告訴または告発のあつた事件が、管轄区域外の犯罪であるため当該警察においてこれを処理することができないとき、またはこれを処理することが適当でないと認められるときは、関係警察に対してすみやかに移送の手続をとらなければならない。
2  前項の規定による移送をしたときは、すみやかに、告訴人または告発人にその移送先を通知しなければならない。

(親告罪の要急捜査)
第七十条  警察官は、親告罪に係る犯罪があることを知つた場合において、直ちにその捜査を行わなければ証拠の収集その他事後における捜査が著しく困難となるおそれがあると認めるときは、未だ告訴がない場合においても、捜査しなければならない。この場合においては、被害者またはその家族の名誉、信用等を傷つけることのないよう、特に注意しなければならない。

(親告罪の告訴取消の場合の処置)
第七十一条  親告罪に係る犯罪につき捜査を行い、事件を検察官に送付した後、告訴人から告訴の取消を受けたときは、直ちに、その旨を検察官に通知し、必要な書類を追送しなければならない。

(請求事件の捜査)
第七十二条  請求をまつて論ずる犯罪については、直ちにその捜査を行わなければ証拠の収集その他事後における捜査が著しく困難となると認められる場合を除いては、請求があつてから、捜査するものとする。

(犯則事件の通知等)
第七十三条  国税犯則取締法 (明治三十三年法律第六十七号)、関税法 (昭和二十九年法律第六十一号)、地方税法 (昭和二十五年法律第二百二十六号)その他の法律により通告処分の認められている犯則事件のあることを知つたときは、警察本部長又は警察署長に報告してその指揮を受け、速やかに、その旨を当該事件につき調査の権限を有する官吏又は吏員(以下「収税官吏等」という。)に通知するものとする。
2  収税官吏等から、調査のため臨検、捜索又は差押えを行うに当たり、援助の要求を受けたときは、必要な援助をしなければならない。

(犯則事件の告発)
第七十四条  犯則事件について収税官吏等から告発を受けたときは、その捜査を行わなければならない。この場合においても、常に収税官吏等と緊密に連絡をとるものとする。

(犯則事件の要急捜査)
第七十五条  犯則事件について、直ちにその捜査を行わなければ証拠の収集その他事後における捜査が著しく困難となるおそれがあると認められるときは、未だ収税官吏等の告発がない場合においても、捜査し、その結果を収税官吏等に通知しなければならない。
   第三章 捜査の開始

    第一節 捜査の着手


(着手報告)
第七十六条  警察官は、犯罪があると思料するときは、捜査の着手に先だち、順を経て、警察本部長または警察署長に報告し、その指揮を受けなければならない。ただし、急速を要する場合においては、必要な処置を行つた後、すみやかに報告するものとする。

(着手に関する判断)
第七十七条  捜査の着手については、犯罪の軽量および情状、犯人の性格、事件の波及性および模倣性、捜査の緩急等諸般の事情を判断し、捜査の時期または方法を誤らないように注意しなければならない。

(事件の移送及び引継ぎ)
第七十八条  警察本部長又は警察署長は、管轄権のない事件又は当該警察において捜査することが適当でないと認められる事件については、速やかにこれを犯罪地又は被疑者の住居地を管轄する警察その他の適当な警察に移送又は引継ぎしなければならない。
2  前項の規定による移送又は引継ぎは、事件引継書(別記様式第五号)により行わなければならない。
    第二節 捜査資料


(資料の組織的収集等)
第七十九条  捜査資料の収集は、捜査専従員のみによつて行われるのでなく、全警察職員の組織的な活動によつて行われるよう努めなければならない。
2  前項の規定により収集した捜査資料及びその写しは、適切に管理しなければならない。
3  第一項の規定により収集された捜査資料及びその写しを保管する必要がなくなつたときは、還付すべきものを除き、これらを確実に破棄しなければならない。
4  前二項の規定により、保管し、又は破棄される捜査資料が電磁的記録をもつて作成されたものである場合は、電磁的記録の特性を踏まえ、当該電磁的記録に記録された情報が漏えいしないための的確な措置を講じなければならない。

(基礎資料の整備)
第八十条  捜査に資するため、広く犯罪に関係ある社会的諸事情、犯罪を犯すおそれのある者その他捜査上注意を要すると認められる者の動向等捜査に必要な基礎資料は、常に収集整備しておかなければならない。

(資料に基く捜査)
第八十一条  捜査を行うに当つては、犯罪に関する有形または無形の資料、内偵による資料その他諸般の情報等確実な資料を収集し、これに基いて捜査を進めなければならない。特に被疑者の逮捕その他の強制処分を行うに当つては、事前にできる限り多くの確実な資料を収集しておかなければならない。

(鑑識資料の収集整備及び利用)
第八十二条  指掌紋、手口、写真その他の鑑識資料は、常に収集整備することに努め、捜査を行うに当たつては、それらの多角的利用を図らなければならない。

(参考資料の収集活用)
第八十三条  捜査を行つたときは、そのつど捜査の過程に反省検討を加え、これによつて得たあらゆる参考資料を収集して、事後の捜査に活用するように努めなければならない。
    第三節 犯罪現場


(現場臨検)
第八十四条  警察官は、現場臨検を必要とする犯罪の発生を知つたときは、捜査専従員たると否とを問わず、すみやかにその現場に臨み、必要な捜査を行わなければならない。
2  前項の場合において他に捜査主任官その他の者による現場臨検が行われるときは、確実に現場を保存するよう努めなければならない。

(現場における負傷者の救護等)
第八十五条  警察官は、現場を臨検した場合において負傷者があるときは、救護の処置をとらなければならない。
2  前項の場合において、ひん死の重傷者があるときは、応急救護の処置をとるとともに、その者から犯人の氏名、犯行の原因、被害者の氏名、目撃者等を聴取しておかなければならない。
3  前項の重傷者が死亡したときは、その時刻を記録しておかなければならない。

(原状のままの保存)
第八十六条  現場の保存に当つては、できる限り現場を犯罪の行われた際の状況のまま保存するように努め、現場における捜査が適確に行われるようにしなければならない。
2  負傷者の救護、証拠物件の変質および散逸の予防等特にやむを得ない事情のある場合を除いては、警察官であつても、みだりに現場に入つてはならない。

(現場保存の範囲)
第八十七条  警察官は、犯罪の行われた地点だけでなく広く現場保存の範囲を定め、捜査資料の発見に資するようにしなければならない。

(現場保存のための処置)
第八十八条  警察官は、保存すべき現場の範囲を定めたときは、直ちに、これを表示する等適切な処置をとり、みだりに出入する者のないようにしなければならない。この場合において、現場またはその附近に居合わせた者があるときは、その者の氏名、住居等を明確にしておくようにしなければならない。
2  現場において発見された捜査資料で、光線、雨水等により変質、変形または消失するおそれのあるものについてはおおいをする等適当な方法により、その原状を保存するように努めなければならない。

(現場保存ができないときの処置)
第八十九条  負傷者の救護その他やむを得ない理由のため現場を変更する必要があるときまたは捜査資料を原状のまま保存することができないときは、写真、見取図、記録その他の方法により原状を明らかにする処置をとらなければならない。

(現場における捜査の要点)
第九十条  現場において捜査を行うに当たつては、現場鑑識その他の科学的合理的な方法により、次に掲げる事項を明らかにするよう努め、犯行の過程を全般的に把握するようにしなければならない。
一  時の関係
イ 犯行の日時及びこれを推定し得る状況
ロ 発覚の日時及び状況
ハ 犯行当時における気象の状況
ニ その他時に関し参考となる事項
二  場所の関係
イ 現場に通ずる道路及びその状況
ロ 家屋その他現場附近にある物件及びその状況
ハ 現場の間取等の状況
ニ 現場における器具その他物品の状況
ホ 指掌紋、足跡その他のこん跡並びに遺留物件の位置及び状況
ヘ その他場所に関し参考となる事項
三  被害者の関係
イ 犯人に対する応接その他被害前の状況
ロ 被害時における抵抗、姿勢等の状況
ハ 傷害の部位及び程度、被害金品の種別及び数量等被害の程度
ニ 死体の位置及び創傷、流血その他の状況
ホ その他被害者に関し参考となる事項
四  被疑者の関係
イ 現場についての侵入及び逃走の経路
ロ 被疑者の数及び性別
ハ 犯罪の手段、方法その他犯罪実行の状況
ニ 被疑者の犯行の動機並びに被害者との面識及び現場についての知識の有無を推定し得る状況
ホ 被疑者の人相、風体、特徴、習癖その他特異な言動等
ヘ 凶器の種類、形状及び加害の方法その他加害の状況
ト その他被疑者に関し参考となる事項

(現場における任務分担)
第九十一条  現場において捜査を行うに当たつては、捜査主任官が、これに従事する捜査員の任務分担を定め、組織的に行うようにしなければならない。

(資料を発見した時の措置)
第九十二条  遺留品、現場指掌紋等の資料を発見したときは、年月日時及び場所を記載した紙片に被害者又は第三者の署名を求め、これを添付して撮影する等証拠力の保全に努めなければならない。
    第四節 緊急配備


(緊急配備)
第九十三条  警察本部長または警察署長は、管轄区域内に発生した犯罪について、犯人捕そくのため緊急の必要がある場合においては、この節に定めるところに従つて、緊急配備をしなければならない。管轄区域外に発生した犯罪について必要がある場合も、また同様とする。

(緊急配備計画)
第九十四条  警察本部長または警察署長は、緊急配備の目的を達成するため、あらかじめ綿密適正な緊急配備計画を立て、所属警察官に周知させておかなければならない。
2  前項の計画を立てる場合において必要があるときは、隣接警察その他関係機関と密接な連絡をとらなければならない。

(緊急配備の方法)
第九十五条  緊急配備は、前条の規定による計画に基き、犯人の数、車両利用の状況、凶器の有無その他犯罪の規模および態様を考慮し、配備につくべき区域、警察官数、特に警戒すべき地域または地点等を定めて行うものとする。
2  緊急配備を行うに当つては、まず、交通の要所その他の重要地点に警察官を配置し、事後、逐次配備網を伸縮する等事態に即応して行わなければならない。
    第五節 捜査方針


(捜査方針の樹立)
第九十六条  捜査を行うに当つては捜査方針を立て、その方針に基いて捜査を行わなければならない。
2  捜査方針は、現場における捜査等により収集した有形無形の捜査資料、平素収集しておいた基礎資料等すべての資料を総合的に検討し、合理的に判断して、立てなければならない。

(捜査方針の実施)
第九十七条  捜査方針の実施に当つては、捜査に従事する者の数、技能等を考慮して、その合理的編成を行い、具体的にその任務を授けなければならない。

(捜査会議)
第九十八条  捜査方針を立て、またはこれに検討を加えるため必要があると認められるときは、随時捜査会議を開き、なるべく多くの者の意見を聞くように努めなければならない。
   第四章 任意捜査


(任意捜査の原則)
第九十九条  捜査は、なるべく任意捜査の方法によつて行わなければならない。

(承諾を求める際の注意)
第百条  任意捜査を行うに当り相手方の承諾を求めるについては、次に掲げる事項に注意しなければならない。
一  承諾を強制し、またはその疑を受けるおそれのある態度もしくは方法をとらないこと。
二  任意性を疑われることのないように、必要な配意をすること。

(聞込その他の内偵)
第百一条  捜査を行うに当つては、聞込、尾行、密行、張込等により、できる限り多くの捜査資料を入手するように努めなければならない。

(任意出頭)
第百二条  捜査のため、被疑者その他の関係者に対して任意出頭を求めるには、電話、呼出状(別記様式第七号)の送付その他適当な方法により、出頭すべき日時、場所、用件その他必要な事項を呼出人に確実に伝達しなければならない。この場合において、被疑者又は重要な参考人の任意出頭については、警察本部長又は警察署長に報告して、その指揮を受けなければならない。
2  被疑者その他の関係者に対して任意出頭を求める場合には、呼出簿(別記様式第八号)に所要事項を記載して、その処理の経過を明らかにしておかなければならない。

(逮捕状発付後の事情変更)
第百三条  逮捕状の発付されている場合であつても、その後の事情により逮捕状による逮捕の必要がないと認められるに至つたときは、任意捜査の方法によらなければならない。この場合においては、逮捕状は、その有効期間内であつても、直ちに裁判官に返還しなければならない。

(実況見分)
第百四条  犯罪の現場その他の場所、身体又は物について事実発見のため必要があるときは、実況見分を行わなければならない。
2  実況見分は、居住者、管理者その他関係者の立会を得て行い、その結果を実況見分調書に正確に記載しておかなければならない。
3  実況見分調書には、できる限り、図面及び写真を添付しなければならない。
4  前三項の規定により、実況見分調書を作成するに当たつては、写真をはり付けた部分にその説明を付記するなど、分かりやすい実況見分調書となるよう工夫しなければならない。

(実況見分調書記載上の注意)
第百五条  実況見分調書は、客観的に記載するように努め、被疑者、被害者その他の関係者に対し説明を求めた場合においても、その指示説明の範囲をこえて記載することのないように注意しなければならない。
2  被疑者、被害者その他の関係者の指示説明の範囲をこえて、特にその供述を実況見分調書に記載する必要がある場合には、刑訴法第百九十八条第三項 から第五項 までおよび同法第二百二十三条第二項 の規定によらなければならない。この場合において、被疑者の供述に関しては、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げ、かつ、その点を調書に明らかにしておかなければならない。

(被疑者の供述に基づく実況見分)
第百六条  被疑者の供述により凶器、盗品等その他の証拠資料を発見した場合において、証明力確保のため必要があるときは実況見分を行い、その発見の状況を実況見分調書に明確にしておかなければならない。

(女子の任意の身体検査の禁止)
第百七条  女子の任意の身体検査は、行つてはならない。ただし、裸にしないときはこの限りでない。

(人の住居等の任意の捜索の禁止)
第百八条  人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶につき捜索をする必要があるときは、住居主又は看守者の任意の承諾が得られると認められる場合においても、捜索許可状の発付を受けて捜索をしなければならない。

(任意提出物の領置)
第百九条  所有者、所持者または保管者の任意の提出に係る物を領置するに当つては、なるべく提出者から任意提出書を提出せしめた上、領置調書を作成しなければならない。この場合においては、刑訴法第百二十条 の規定による押収品目録交付書を交付するものとする。
2  任意の提出に係る物を領置した場合において、その所有者がその物の所有権を放棄する旨の意思を表示したときは、任意提出書にその旨を記載させ、または所有権放棄書の提出を求めなければならない。

(遺留物の領置)
第百十条  被疑者その他の者の遺留物を領置するに当つては、居住者、管理者その他関係者の立会を得て行うようにしなければならない。
2  前項の領置については、実況見分調書その他によりその物の発見された状況等を明確にした上、領置調書を作成しておかなければならない。

(原状のままの領置)
第百十一条  領置をするに当たつては、指掌紋その他の附着物を破壊しないように注意するとともに、その物をできる限り原状のまま保存するため適当な方法を講じ、滅失、毀損、変質、変形、混合又は散逸することのないように注意しなければならない。

(廃棄等の処分)
第百十二条  領置物について廃棄、換価、還付又は仮還付の処分をするときは、警察本部長又は警察署長の指揮を受けて行わなければならない。ただし、急速に廃棄処分をする必要がある場合においては、処分後速やかに警察本部長又は警察署長にその旨を報告するものとする。
2  還付又は仮還付の処分をするに当たつては、相手方から(仮)還付請書を徴しておくとともに、先に仮還付した物について更に還付の処分をする必要があるときは、還付通知書(別記様式第九号)を交付して行うものとする。
3  運搬又は保管に不便な領置物について、看守者を置き、又は所有者その他の者に、その者の承諾を得て保管させる場合も第一項の場合と同様とする。この場合は、なるべくその者から保管請書を徴しておかなくてはならない。
4  換価、還付及び仮還付の処分は、司法警察員たる警察官が行わなければならない。

(廃棄処分等と証拠との関係)
第百十三条  領置物について廃棄又は換価の処分を行うに当たつては、次に掲げる事項に注意しなければならない。
一  処分に先立ち、その物の状況を写真、見取図、模写図又は記録等の方法により明らかにすること。
二  特に必要があると認められるときは、当該領置物の性状、価格等を鑑定に付しておくこと。この場合においては、再鑑定のためその物の一部保存について配意すること。
三  危険を生じ、滅失又は破損するおそれがあり、保管に不便なものである等廃棄又は換価の処分を行うべき相当な理由があることを明確にしておくこと。
2  廃棄又は換価の処分をしたときは、それぞれ廃棄処分書(別記様式第十号)又は換価処分書(別記様式第十一号)を作成しておかなければならない。

(収税官吏等への連絡)
第百十四条  通告処分の認められている犯則事件に関する領置物について廃棄または換価の処分をするに当つては、あらかじめ、収税官吏等に連絡しなければならない。

(領置物の還付等の相手方の調査)
第百十五条  領置物の還付または仮還付の処分をするに当つては、還付または仮還付を受ける者が正当の権限を有する者であるかどうかについて調査を行い、事後に紛議の生ずることがないようにしなければならない。

(領置調書への記載)
第百十六条  領置物の廃棄、換価、還付または仮還付の処分をするに当つては、その物に係る領置調書中にその旨を記載しておかなければならない。

(証拠物件保存簿)
第百十七条  事件の捜査が長期にわたる場合においては、領置物は証拠物件保存簿(別記様式第十二号)に記載して、その出納を明確にしておかなければならない。
   第五章 逮捕


(逮捕権運用の慎重適正)
第百十八条  逮捕権は、犯罪構成要件の充足その他の逮捕の理由、逮捕の必要性、これらに関する疎明資料の有無、収集した証拠の証明力等を充分に検討して、慎重適正に運用しなければならない。

(通常逮捕状の請求)
第百十九条  刑訴法第百九十九条 の規定による逮捕状(以下「通常逮捕状」という。)の請求は、同条第二項 の規定に基き、公安委員会が指定する警部以上の階級にある司法警察員(以下「指定司法警察員」という。)が、責任をもつてこれに当らなければならない。
2  指定司法警察員が通常逮捕状を請求するに当つては、順を経て警察本部長または警察署長に報告し、その指揮を受けなければならない。ただし、急速を要し、指揮を受けるいとまのない場合には、請求後、すみやかにその旨を報告するものとする。

(緊急逮捕状の請求)
第百二十条  刑訴法第二百十条 の規定による逮捕状(以下「緊急逮捕状」という。)は、指定司法警察員または当該逮捕に当つた警察官がこれを請求するものとする。ただし、指定司法警察員がいないときは、他の司法警察員たる警察官が請求してもさしつかえない。
2  緊急逮捕した被疑者の身柄の処置については、順を経て警察本部長または警察署長に報告し、その指揮を受けなければならない。
3  被疑者を緊急逮捕した場合は、逮捕の理由となつた犯罪事実がないこともしくはその事実が罪とならないことが明らかになり、または身柄を留置して取り調べる必要がないと認め、被疑者を釈放したときにおいても、緊急逮捕状の請求をしなければならない。

(親告罪事件の逮捕状請求)
第百二十一条  逮捕状を請求するに当つて、当該事件が親告罪に係るものであつて、未だ告訴がないときは、告訴権者に対して告訴するかどうかを確かめなければならない。

(逮捕状請求の疎明資料)
第百二十二条  通常逮捕状を請求するときは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること及び逮捕の必要があることを疎明する被害届、参考人供述調書、捜査報告書等の資料を添えて行わなければならない。ただし、刑訴法第百九十九条第一項 ただし書に規定する罰金、拘留又は科料に当たる罪について通常逮捕状を請求するときは、更に、被疑者が定まつた住居を有しないこと又は正当な理由がなく任意出頭の求めに応じないことを疎明する資料を添えて行わなければならない。
2  緊急逮捕状を請求するときは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由があつたこと、逮捕の必要があつたこと及び急速を要し逮捕状を求めることができない理由があつたことを疎明する逮捕手続書、被害届その他の資料を添えて行わなければならない。

(請求のための出頭)
第百二十三条  逮捕状を請求するに当つては、なるべくその事件の捜査に当つた警察官が裁判官のもとに出頭しなければならない。
2  裁判官から特に当該逮捕状を請求した者の出頭を求められたときは、当該請求者が自ら出頭して、陳述し、または書類その他の物の提示に当らなければならない。

(逮捕状の記載の変更)
第百二十四条  逮捕状の発付を受けた後、逮捕前において、引致場所その他の記載の変更を必要とする理由が生じたときは、当該逮捕状を請求した警察官またはこれに代るべき警察官が、当該逮捕状を発付した裁判官またはその者の所属する裁判所の他の裁判官に対し、書面(引致場所の変更を必要とするときは、引致場所変更請求書)より逮捕状の記載の変更を請求するものとする。ただし、やむをえない事情があるときは、他の裁判所の裁判官に対して請求することができる。

(令状請求簿)
第百二十五条  逮捕状を請求したときは、令状請求簿(別記様式第十三号)により請求の手続、発付後の状況等を明らかにしておかなければならない。

(逮捕の際の注意)
第百二十六条  逮捕を行うに当つては、感情にとらわれることなく、沈着冷静を保持するとともに、必要な限度をこえて実力を行使することがないように注意しなければならない。
2  逮捕を行うに当つては、あらかじめ、その時期、方法等を考慮しなければならない。
3  警察本部長又は警察署長は、逮捕を行うため必要な態勢を確立しなければならない。
4  被疑者を逮捕したときは、直ちにその身体について凶器を所持しているかどうかを調べなければならない。
5  多数の被疑者を同時に逮捕するに当つては、個々の被疑者について、人相、体格その他の特徴、その犯罪事実および逮捕時の状況ならびに当該被疑者と証拠との関連を明確にし、逮捕、押収その他の処分に関する書類の作成、取調および立証に支障を生じないようにしなければならない。

(手錠の使用)
第百二十七条  逮捕した被疑者が逃亡し、自殺し、又は暴行する等のおそれがある場合において必要があるときは、確実に手錠を使用しなければならない。
2  前項の規定により、手錠を使用する場合においても、苛酷にわたらないように注意するとともに、衆目に触れないように努めなければならない。

(連行及び護送)
第百二十八条  逮捕した被疑者を連行し、又は護送するに当たつては、被疑者が逃亡し、罪証を隠滅し、自殺し、又はこれを奪取されることのないように注意しなければならない。
2  前項の場合において、必要があるときは、他の警察に対し、被疑者の仮の留置を依頼することができる。

(現行犯人を受け取つた場合の手続)
第百二十九条  警察官は、刑訴法第二百十四条 の規定により現行犯人を引き渡す者があるときは、直ちにこれを受け取り、逮捕者の氏名、住所および逮捕の事由を聞き取らなければならない。
2  前項の犯人を受け取つた警察官が司法巡査であるときは、すみやかにこれを司法警察員に引致しなければならない。

(司法警察員の処置)
第百三十条  司法警察員は、被疑者を逮捕し、又は逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちにその者について次に掲げる処置をとつた後、被疑者の留置の要否又は釈放について、警察本部長又は警察署長の指揮を受けなければならない。
一  犯罪事実の要旨を告げること。
二  弁護人を選任できる旨を告げること。
三  弁解の機会を与え、その結果を弁解録取書に記載すること。
2  司法警察員は、刑訴法第三十七条の二第一項 に規定する事件について前項第二号に掲げる処置をとるに当たつては、被疑者に対し、次に掲げる事項を教示しなければならない。
一  引き続き勾留を請求された場合において、貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは、裁判官に対して弁護人の選任を請求することができること。
二  裁判官に対して弁護人の選任を請求する場合は、刑訴法第三十六条の二 に規定する資力申告書を提出しなければならないこと。
三  被疑者の資力が五十万円以上であるときは、あらかじめ、第一号の勾留の請求を受けた裁判官の所属する裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に弁護人の選任の申出をしていなければならないこと。
3  司法警察員は、刑訴法第三十七条の二第一項 に規定する事件以外の事件について第一項第二号 に掲げる処置をとるに当たつては、被疑者に対し、刑訴法第二百九条 の規定により準用する刑訴法第七十八条第一項 の申出ができる旨を教示しなければならない。
4  被疑者が留置されている場合において、留置の必要がなくなつたと認められるときは、司法警察員は、警察本部長又は警察署長の指揮を受け、直ちに被疑者の釈放に係る措置をとらなければならない。
5  被疑者の留置の要否を判断するに当たつては、その事案の軽重及び態様並びに逃亡、罪証隠滅、通謀等捜査上の支障の有無並びに被疑者の年齢、境遇、健康その他諸般の状況を考慮しなければならない。

(指掌紋の採取、照会等)
第百三十一条  逮捕した被疑者については、引致後速やかに、指掌紋を採取し、写真その他鑑識資料を確実に作成するとともに、指掌紋照会並びに余罪及び指名手配の有無を照会しなければならない。
2  取調べの過程において、新たな事実を発見した場合においても、余罪及び指名手配の有無を照会しなければならない。

(弁護人選任の申出の通知)
第百三十二条  逮捕された被疑者が弁護人選任の申出をした場合において、当該弁護士、弁護士法人若しくは弁護士会又は父兄その他の者にその旨を通知したときは、弁護人選任通知簿(別記様式第十四号)に記載して、その手続を明らかにしておかなければならない。

(弁護人の選任)
第百三十三条  弁護人の選任については、弁護人と連署した選任届を当該被疑者または刑訴法第三十条第二項 の規定により独立して弁護人を選任することができる者から差し出させるものとする。
2  被疑者の弁護人の選任届は、各被疑者について通じて三人をこえてこれを受理してはならない。ただし、三人をこえて弁護人を選任することについて管轄地方裁判所または簡易裁判所の許可がある場合は、この限りでない。
3  弁護人の選任に当つては、警察官から特定の弁護人を示唆し、または推薦してはならない。

(弁解録取上の注意)
第百三十四条  被疑者の弁解を録取するに当つて、その供述が犯罪事実の核心に触れる等弁解の範囲外にわたると認められるときは、弁解録取書に記載することなく、被疑者供述調書を作成しなければならない。

(遅延事由報告書)
第百三十五条  被疑者の身柄とともに事件を送致する場合において、遠隔の地で被疑者を逮捕したため、または逮捕した被疑者が病気、でい酔等により保護を必要とするためその他やむを得ない事情により、刑訴法第二百三条第一項 に規定する時間の制限に従うことができなかつたときは、遅延事由報告書を作成して、これを送致書に添付しなければならない。

(逮捕手続書)
第百三十六条  被疑者を逮捕したときは、逮捕の年月日時、場所、逮捕時の状況、証拠資料の有無、引致の年月日時等逮捕に関する詳細を記載した逮捕手続書を作成しなければならない。
2  前項の場合において、被疑者が現行犯人であるときは、現に罪を行い、もしくは現に罪を行い終つたと認められた状況、または刑訴法第二百十二条第二項 各号の一に当る者が罪を行い終つてから間がないと明らかに認められた状況を逮捕手続書に具体的に記載しなければならない。

(引き当たり捜査の際の注意)
第百三十六条の二  留置被疑者を同行させて警察施設の外において行われる実況見分その他の捜査は、あらかじめ捜査主任官が留置主任官と協議して作成し、警察本部長又は警察署長の承認を受けた計画に基づいて行わなければならない。
2  前項の計画は、同行する被疑者、日時、場所及び行程、当該捜査に従事する者及びその任務分担、被疑者の逃亡その他の事故を防止するために留意すべき事項その他捜査を適正に遂行し、及び事故を防止するため必要な事項について定めるものとする。

(捜査と留置の分離)
第百三十六条の三  捜査員は、自らが犯罪の捜査に従事している場合における当該犯罪について留置されている被留置者に係る留置業務に従事してはならない。
   第六章 捜索、差押および検証

    第一節 通則


(令状の請求)
第百三十七条  刑訴法第二百十八条第一項 の規定による捜索、差押、検証または身体検査の令状は、指定司法警察員がこれを請求するものとする。ただし、やむを得ないときは、他の司法警察員が請求してもさしつかえない。
2  前項の令状を請求するに当つては、順を経て警察本部長または警察署長に報告し、その指揮を受けなければならない。ただし、急速を要し、指揮を受けるいとまのない場合には、請求後すみやかに、その旨を報告するものとする。
3  第一項の令状を請求したときは、令状請求簿により、請求の手続、発付後の状況等を明らかにしておかなければならない。

(令状請求の際の注意)
第百三十八条  捜索、差押、検証又は身体検査の令状を請求するに当たつては、捜査に必要かつ十分な範囲を定め、捜索すべき場所、身体若しくは物、差し押さえるべき物、検証すべき場所、身体若しくは物又は検査すべき身体の部位等を明確にして行わなければならない。

(疎明資料)
第百三十九条  捜索、差押、検証又は身体検査の令状を請求するに当たつては、被疑者供述調書、参考人供述調書、捜査報告書その他犯罪の捜査のため当該処分を行う必要があることを疎明する資料を添えて行わなければならない。
2  被疑者以外の者の身体、物又は住居その他の場所について、捜索許可状を裁判官に請求するに当たつては、差し押さえるべき物の存在を認めるに足りる状況があることを疎明する資料を添えて行わなければならない。
3  郵便物、信書便物又は電信に関する書類で法令の規定に基づき通信事務を取り扱う者が保管し、又は所持するもの(被疑者から発し、又は被疑者に対して発したものを除く。)について差押許可状を裁判官に請求するに当たつては、その物が当該事件に関係があると認めるに足りる状況があることを疎明する資料を添えて行わなければならない。

(実施上の一般的注意)
第百四十条  捜索、差押または検証を行うに当つては、必要以上に関係者の迷惑になることのないように特に注意しなければならない。
2  捜索、差押または検証を行うに当つては、やむを得ない理由がある場合を除くほか、建造物、器具等を損壊し、または書類その他のものを乱すことがないように注意するとともに、これを終えたときは、できる限り原状に復しておくようにしなければならない。

(令状の呈示)
第百四十一条  令状により捜索、差押、検証または身体検査を行うに当つては、当該処分を受ける者に対して、令状を示さなければならない。
2  やむを得ない理由によつて、当該処分を受ける者に令状を示すことができないときは、立会人に対してこれを示すようにしなければならない。

(逮捕の際の捜索等)
第百四十二条  被疑者を逮捕する場合において必要があるときは、逮捕の現場において刑訴法第二百二十条 の規定による捜索、差押または検証を行い、捜査資料を発見入手するように努めなければならない。

(立会)
第百四十三条  公務所内で捜索、差押または検証を行うに当つては、その長またはこれに代るべき者に通知してこれに立ち会わせなければならない。
2  前項の規定による場合を除いて、人の住居または人の看守する邸宅、建造物もしくは船舶内で捜索、差押または検証を行うに当つては、住居主もしくは看守者またはこれらの者に代るべき者を立ち会わせなければならない。これらの者を立ち会わせることができないときは、隣人または地方公共団体の職員を立ち会わせなければならない。ただし、刑訴法第二百二十条 の規定により被疑者を捜索する場合において急速を要するときは、この限りでない。
3  女子の身体について捜索を行う場合には、成年の女子を立ち会わせなければならない。ただし、急速を要する場合は、この限りでない。
4  女子の身体を検査する場合には、医師または成年の女子を立ち会わせなければならない。

(被疑者等の立会)
第百四十四条  捜索、差押または検証を行うに当つて捜査上特に必要があるときは、被疑者その他の関係者を立ち会わせるようにしなければならない。
2  前項の場合においては、常にこれらの者の言語および挙動に注意し、新たな捜査資料を入手することに努めなければならない。
    第二節 捜索


(第三者の立会)
第百四十五条  捜索を行うに当つては、公務所内または人の居住し、もしくは人の看守する邸宅、建造物もしくは船舶内以外の場所でこれを行う場合にも、なるべく第三者の立会を得て行うようにしなければならない。
2  前項の場合において、第三者の立会が得られないときは、他の警察官の立会を得て捜索を行うものとする。

(捜索の分担)
第百四十六条  捜索を行うに当つては、捜査主任官またはこれに代るべき者は、捜索すべき場所その他について各人の分担を定め、綿密周到に行うようにしなければならない。

(執行中の退去および出入禁止)
第百四十七条  捜索を行うに当つては、立会人または特に許可を受けた者以外の者は、その場所から退去させ、およびその場所に出入させないようにしなければならない。
2  前項の許可を受けないでその場所にある者に対しては、退去を強制しまたは看守者を附して、捜索の実施を妨げさせないようにしなければならない。ただし、必要な限度をこえて実力を行使することのないようにしなければならない。

(捜索中止の場合の処置)
第百四十八条  捜索に着手した後、一時これを中止する場合においては、その場所を閉鎖し、または看守者を附して事後の捜索の続行に支障がないようにしておかなければならない。

(捜索調書)
第百四十九条  捜索を行つた場合は、捜索の状況を明らかにした捜索調書(被疑者捜索調書を含む。)を作成しなければならない。
2  捜索に際し、処分を受ける者に捜索許可状を示すことができなかつたとき、立会人を得ることができなかつたとき、または女子の身体について捜索を行う場合に急速を要し、成年の女子の立会が得られなかつたときは、捜索調書にその旨を記載し、その理由を明らかにしておかなければならない。

(捜索証明書)
第百五十条  捜索をした結果、証拠物または没収すべき物がない場合において、当該処分を受けた者から請求があつたときは、すみやかに捜索証明書を作成して交付しなければならない。
    第三節 差押


(領置に関する規定の準用)
第百五十一条  第百九条(任意提出物の領置)第一項後段および第二項ならびに第百十条第二項から第百十七条まで(遺留物の領置、原状のままの領置、廃棄等の処分、廃棄処分等と証拠との関係、収税官吏等への連絡、領置物の還付等の相手方の調査、領置調書への記載、証拠物件保存簿)の規定は、差押を行う場合について準用する。この場合において、第百十条第二項および第百十六条中「領置調書」とあるのは、「差押調書」と読み替えるものとする。

(捜索に関する規定の準用)
第百五十二条  第百四十五条(第三者の立会)、第百四十七条(執行中の退去および出入禁止)および第百四十八条(捜索中止の場合の処置)の規定は、差押を行う場合について準用する。

(捜索調書に関する規定の準用)
第百五十三条  第百四十九条(捜索調書)第二項の規定は、差押調書の作成について準用する。

(差押に緊急を要する場合)
第百五十四条  犯罪に関係があると認められる物を発見した場合において、その物の所有者または保管者から任意の提出を受ける見込がないと認めたときは、直ちにその物に対する差押許可状の発付を請求するとともに、その隠匿、散逸等を防止するため適切な処置をとらなければならない。
    第四節 検証


(検証)
第百五十五条  犯罪の現場その他の場所、身体または物の検証については、事実発見のため身体の検査、死体の解剖、墳墓の発掘、物の破壊その他必要な処分をすることができる。

(死体の検証等の注意)
第百五十六条  死体の検証、墳墓の発掘等を行うに当つては、礼を失わないように注意し、配偶者、直系の親族または兄弟姉妹があるときは、これらの者に、その旨を通知し、なるべくその立会を得るようにしなければならない。
2  前項の場合において、死体の被服、附着物、墳墓内の埋葬物等で捜査上必要があると認められるものについては、遺族から任意提出を受け、または差押許可状により差押を行わなければならない。

(実況見分に関する規定の準用)
第百五十七条  第百四条第三項から第百六条まで(実況見分、実況見分調書記載上の注意、被疑者の供述に基づく実況見分)の規定は、検証を行う場合について準用する。この場合において、これらの規定中「実況見分調書」とあるのは「検証調書又は身体検査調書」と読み替えるものとする。
2  検証を行う場合において他の処分と同時に身体の検査をするときは、別に身体検査調書を作成することなく、検証調書に身体の検査に関する事項をもあわせて記載することができる。

(捜索に関する規定の準用等)
第百五十八条  第百四十五条(第三者の立会)、第百四十七条(執行中の退去および出入禁止)、第百四十八条(捜索中止の場合の処置)および第百四十九条(捜索調書)第一項の規定は検証を行う場合について、第百四十九条(捜索調書)第二項の規定は検証調書の作成について、それぞれ準用する。この場合において、第百四十九条第一項の規定中「捜索調書」とあるのは、「検証調書または身体検査調書」と読み替えるものとする。
2  身体検査に際し、やむを得ない理由により立会人を得ることができなかつたときは、その事情を身体検査調書に明らかにしておかなければならない。

(身体検査についての注意)
第百五十九条  身体検査を行うに当つては、刑訴法第二百十八条第五項 の規定により裁判官の附した条件を厳格に遵守するほか、性別、年齢、健康状態、場所的関係その他諸般の状況を考慮してこれを受ける者の名誉を害しないように注意し、かつ、穏当な方法で行わなければならない。

(医師等の助力)
第百六十条  身体検査を行うに当つては、必要があると認められるときは、医師その他専門的知識を有する者の助力を得て行わなければならない。

(負傷者の身体検査)
第百六十一条  負傷者の負傷部位について身体検査を行うときは、その状況を撮影等により明確に記録する等の方法をとり、できる限り短時間のうちに終了するように努めなければならない。

(身体検査拒否の場合の処置)
第百六十二条  刑訴法第二百二十二条第七項 の規定により、正当の理由がなく身体検査を拒んだ者に対する過料処分またはその者にその拒絶により生じた費用の賠償を命ずべき処分を裁判所に請求するには、過料処分等請求書を作成して行わなければならない。
   第七章 没収保全等の請求


(没収保全等の請求)
第百六十三条  第百十九条(通常逮捕状の請求)の規定は、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律 (平成三年法律第九十四号。以下この条において「麻薬特例法」という。)第十九条第三項 及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律 (平成十一年法律第百三十六号。以下この条において「組織的犯罪処罰法」という。)第二十三条第一項 の没収保全(麻薬特例法第十九条第一項 及び組織的犯罪処罰法第二十二条第一項 の没収保全命令による処分の禁止をいう。次条第一項及び第百六十五条において同じ。)及び附帯保全(麻薬特例法第十九条第二項 及び組織的犯罪処罰法第二十二条第二項 の附帯保全命令による処分の禁止をいう。次条第二項及び第百六十五条において同じ。)の請求について準用する。

(没収保全等の請求の疎明資料)
第百六十四条  没収保全の請求をするに当たつては、処分を禁止すべき財産が法令の規定により没収することができる財産に当たると思料するに足りる相当な理由があること及び当該財産を没収するため没収保全をする必要があることを疎明する被疑者調書、参考人調書、捜査報告書等の資料を添えて行わなければならない。
2  附帯保全の請求をするに当たつては、処分を禁止すべき権利がその上に存在する財産の没収により当該権利が消滅すると思料するに足りる相当な理由があり当該財産を没収するため附帯保全をする必要があること又は当該権利が仮装のものであると思料するに足りる相当な理由があることを疎明する被疑者調書、参考人調書、捜査報告書等の資料を添えて行わなければならない。

(没収保全等請求簿)
第百六十五条  没収保全又は附帯保全の請求をしたときは、没収保全等請求簿(別記様式第十五号)により請求の手続、関係書類の送付月日等を明らかにしておかなければならない。
   第八章 取調べ


(取調べの心構え)
第百六十六条  取調べに当たつては、予断を排し、被疑者その他関係者の供述、弁解等の内容のみにとらわれることなく、あくまで真実の発見を目標として行わなければならない。

(取調べにおける留意事項)
第百六十七条  取調べを行うに当たつては、被疑者の動静に注意を払い、被疑者の逃亡及び自殺その他の事故を防止するように注意しなければならない。
2  取調べを行うに当たつては、事前に相手方の年令、性別、境遇、性格等を把握するように努めなければならない。
3  取調べに当たつては、冷静を保ち、感情にはしることなく、被疑者の利益となるべき事情をも明らかにするように努めなければならない。
4  取調べに当たつては、言動に注意し、相手方の年令、性別、境遇、性格等に応じ、その者にふさわしい取扱いをする等その心情を理解して行わなければならない。
5  警察官は、常に相手方の特性に応じた取調べ方法の習得に努め、取調べに当たつては、その者の特性に応じた方法を用いるようにしなければならない。

(任意性の確保)
第百六十八条  取調べを行うに当たつては、強制、拷問、脅迫その他供述の任意性について疑念をいだかれるような方法を用いてはならない。
2  取調べを行うに当たつては、自己が期待し、又は希望する供述を相手方に示唆する等の方法により、みだりに供述を誘導し、供述の代償として利益を供与すべきことを約束し、その他供述の真実性を失わせるおそれのある方法を用いてはならない。
3  取調べは、やむを得ない理由がある場合のほか、深夜に又は長時間にわたり行うことを避けなければならない。

(精神又は身体に障害のある者の取調べにおける留意事項)
第百六十八条の二  精神又は身体に障害のある者の取調べを行うに当たつては、その者の特性を十分に理解し、取調べを行う時間や場所等について配慮するとともに、供述の任意性に疑念が生じることのないように、その障害の程度等を踏まえ、適切な方法を用いなければならない。

(自己の意思に反して供述をする必要がない旨の告知)
第百六十九条  被疑者の取調べを行うに当たつては、あらかじめ、自己の意思に反して供述する必要がない旨を告げなければならない。
2  前項の告知は、取調べが相当期間中断した後再びこれを開始する場合又は取調べ警察官が交代した場合には、改めて行わなければならない。

(共犯者の取調べ)
第百七十条  共犯者の取調べは、なるべく各別に行つて、通謀を防ぎ、かつ、みだりに供述の符合を図ることのないように注意しなければならない。
2  取調べを行うに当たり、対質尋問を行う場合には、特に慎重を期し、一方が他方の威圧を受ける等のことがないようその時期及び方法を誤らないように注意しなければならない。

(証拠物の呈示)
第百七十一条  捜査上特に必要がある場合において、証拠物を被疑者に示すときは、その時期及び方法に適切を期するとともに、その際における被疑者の供述を調書に記載しておかなければならない。

(臨床の取調べ)
第百七十二条  相手方の現在する場所で臨床の取調べを行うに当たつては、相手方の健康状態に十分の考慮を払うことはもちろん、捜査に重大な支障のない限り、家族、医師その他適当な者を立ち会わせるようにしなければならない。

(裏付け捜査及び供述の吟味の必要)
第百七十三条  取調べにより被疑者の供述があつたときは、その供述が被疑者に不利な供述であると有利な供述であるとを問わず、直ちにその供述の真実性を明らかにするための捜査を行い、物的証拠、情況証拠その他必要な証拠資料を収集するようにしなければならない。
2  被疑者の供述については、事前に収集した証拠及び前項の規定により収集した証拠を踏まえ、客観的事実と符合するかどうか、合理的であるかどうか等について十分に検討し、その真実性について判断しなければならない。

(伝聞供述の排除)
第百七十四条  事実を明らかにするため被疑者以外の関係者を取り調べる必要があるときは、なるべく、その事実を直接に経験した者から供述を求めるようにしなければならない。
2  重要な事項に係るもので伝聞にわたる供述があつたときは、その事実を直接に経験した者について、更に取調べを行うように努めなければならない。

(供述者の死亡等に備える処置)
第百七十五条  被疑者以外の者を取り調べる場合においては、その者が死亡、精神又は身体の故障その他の理由により公判準備又は公判期日において供述することができないおそれがあり、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるときは、捜査に支障のない限り被疑者、弁護人その他適当な者を取調べに立ち会わせ、又は検察官による取調べが行われるように連絡する等の配意をしなければならない。

(証人尋問請求についての連絡)
第百七十六条  刑訴法第二百二十六条 又は同法第二百二十七条 の規定による証人尋問の必要があると認められるときは、証人尋問請求方連絡書に、同法第二百二十六条 又は同法第二百二十七条 に規定する理由があることを疎明すべき資料を添えて、検察官に連絡しなければならない。この場合において、証明すべき事実及び尋問すべき事項は、特に具体的かつ明瞭に記載するものとする。

(供述調書)
第百七十七条  取調べを行つたときは、特に必要がないと認められる場合を除き、被疑者供述調書又は参考人供述調書を作成しなければならない。
2  被疑者その他の関係者が、手記、上申書、始末書等の書面を提出した場合においても、必要があると認めるときは、被疑者供述調書又は参考人供述調書を作成しなければならない。

(供述調書の記載事項)
第百七十八条  被疑者供述調書には、おおむね次の事項を明らかにしておかなければならない。
一  本籍、住居、職業、氏名、生年月日、年齢及び出生地(被疑者が法人であるときは名称又は商号、主たる事務所又は本店の所在地並びに代表者の氏名及び住居、被疑者が法人でない団体であるときは名称、主たる事務所の所在地並びに代表者、管理人又は主幹者の氏名及び住居)
二  旧氏名、変名、偽名、通称及びあだ名
三  位記、勲章、褒賞、記章、恩給又は年金の有無(もしあるときは、その種類及び等級)
四  前科の有無(もしあるときは、その罪名、刑名、刑期、罰金又は科料の金額、刑の執行猶予の言渡し及び保護観察に付されたことの有無、犯罪事実の概要並びに裁判をした裁判所の名称及びその年月日)
五  刑の執行停止、仮釈放、仮出所、恩赦による刑の減免又は刑の消滅の有無
六  起訴猶予又は微罪処分の有無(もしあるときは、犯罪事実の概要、処分をした庁名及び処分年月日)
七  保護処分を受けたことの有無(もしあるときは、その処分の内容、処分をした庁名及び処分年月日)
八  現に他の警察署その他の捜査機関において捜査中の事件の有無(もしあるときは、その罪名、犯罪事実の概要及び当該捜査機関の名称)
九  現に裁判所に係属中の事件の有無(もしあるときは、その罪名、犯罪事実の概要、起訴の年月日及び当該裁判所の名称)
十  学歴、経歴、資産、家族、生活状態及び交友関係
十一  被疑者との親族又は同居関係の有無(もし親族関係のあるときは、その続柄)
十二  犯罪の年月日時、場所、方法、動機又は原因並びに犯行の状況、被害の状況及び犯罪後の行動
十三  盗品等に関する罪の被疑者については、本犯と親族又は同居の関係の有無(もし親族関係があるときは、その続柄)
十四  犯行後、国外にいた場合には、その始期及び終期
十五  未成年者、成年被後見人又は被保佐人であるときは、その法定代理人又は保佐人の有無(もしあるときは、その氏名及び住居)
2  参考人供述調書については、捜査上必要な事項を明らかにするとともに、被疑者との関係をも記載しておかなければならない。
3  刑訴法第六十条 の勾留の原因たるべき事項又は同法第八十九条 に規定する保釈に関し除外理由たるべき事項があるときは、被疑者供述調書又は参考人供述調書に、その状況を明らかにしておかなければならない。

(供述調書作成についての注意)
第百七十九条  供述調書を作成するに当たつては、次に掲げる事項に注意しなければならない。
一  形式に流れることなく、推測又は誇張を排除し、不必要な重複又は冗長な記載は避け、分かりやすい表現を用いること。
二  犯意、着手の方法、実行行為の態様、未遂既遂の別、共謀の事実等犯罪構成に関する事項については、特に明確に記載するとともに、事件の性質に応じて必要と認められる場合には、主題ごと又は場面ごとの供述調書を作成するなどの工夫を行うこと。
三  必要があるときは、問答の形式をとり、又は供述者の供述する際の態度を記入し、供述の内容のみならず供述したときの状況をも明らかにすること。
四  供述者が略語、方言、隠語等を用いた場合において、供述の真実性を確保するために必要があるときは、これをそのまま記載し、適当な注を付しておく等の方法を講ずること。
2  供述を録取したときは、これを供述者に閲覧させ、又は供述者が明らかにこれを聞き取り得るように読み聞かせるとともに、供述者に対して増減変更を申し立てる機会を十分に与えなければならない。
3  被疑者の供述について前項の規定による措置を講ずる場合において、被疑者が調書(司法警察職員捜査書類基本書式例による調書に限る。以下この項において同じ。)の毎葉の記載内容を確認したときは、それを証するため調書毎葉の欄外に署名又は押印を求めるものとする。

(補助者及び立会人の署名押印)
第百八十条  供述調書の作成に当たつては、警察官その他適当な者に記録その他の補助をさせることができる。この場合においては、その供述調書に補助をした者の署名押印を求めなければならない。
2  取調べを行うに当たつて弁護人その他適当と認められる者を立ち会わせたときは、その供述調書に立会人の署名押印を求めなければならない。

(署名押印不能の場合の処置)
第百八十一条  供述者が、供述調書に署名することができないときは警察官が代筆し、押印することができないときは指印させなければならない。
2  前項の規定により、警察官が代筆したときは、その警察官が代筆した理由を記載して署名押印しなければならない。
3  供述者が供述調書に署名又は押印を拒否したときは、警察官がその旨を記載して署名押印しておかなければならない。

(通訳及び翻訳の場合の処置)
第百八十二条  捜査上の必要により、学識経験者その他の通訳人を介して取調べを行つたときは、供述調書に、その旨及び通訳人を介して当該供述調書を読み聞かせた旨を記載するとともに、通訳人の署名押印を求めなければならない。
2  捜査上の必要により、学識経験者その他の翻訳人に被疑者その他の関係者が提出した書面その他の捜査資料たる書面を翻訳させたときは、その翻訳文を記載した書面に翻訳人の署名押印を求めなければならない。

(取調べ状況報告書等)
第百八十二条の二  被疑者又は被告人を取調べ室又はこれに準ずる場所において取り調べたとき(当該取調べに係る事件が、第百九十八条の規定により送致しない事件と認められる場合を除く。)は、当該取調べを行つた日(当該日の翌日の午前零時以降まで継続して取調べを行つたときは、当該翌日の午前零時から当該取調べが終了するまでの時間を含む。次項において同じ。)ごとに、速やかに取調べ状況報告書(別記様式第十六号)を作成しなければならない。
2  前項の場合において、逮捕又は勾留(少年法 (昭和二十三年法律第百六十八号)第四十三条第一項 の規定による請求に基づく同法第十七条第一項 の措置を含む。)により身柄を拘束されている被疑者又は被告人について、当該逮捕又は勾留の理由となつている犯罪事実以外の犯罪に係る被疑者供述調書を作成したときは、取調べ状況報告書に加え、当該取調べを行つた日ごとに、速やかに余罪関係報告書(別記様式第十七号)を作成しなければならない。
3  取調べ状況報告書及び余罪関係報告書を作成した場合において、被疑者又は被告人がその記載内容を確認したときは、それを証するため当該取調べ状況報告書及び余罪関係報告書の確認欄に署名押印を求めるものとする。
4  第百八十一条の規定は、前項の署名押印について準用する。この場合において、同条第三項中「その旨」とあるのは、「その旨及びその理由」と読み替えるものとする。

(取調べ室の構造及び設備の基準)
第百八十二条の三  取調べ室は、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。
一  扉を片側内開きとするなど被疑者の逃走及び自殺その他の事故の防止に適当な構造及び設備を有すること。
二  外部から取調べ室内が容易に望見されないような構造及び設備を有すること。
三  透視鏡を備え付けるなど取調べ状況の把握のための構造及び設備を有すること。
四  適当な換気、照明及び防音のための設備を設けるなど適切な環境で被疑者が取調べを受けることができる構造及び設備を有すること。
五  取調べ警察官、被疑者その他関係者の数及び必要な設備に応じた適当な広さであること。
   第九章 鑑識


(鑑識の心構え)
第百八十三条  鑑識は、予断を排除し、先入観に影響されることなく、あくまでも客観的に事実を明確にすることを目的としなければならない。
2  鑑識を行うに当たつては、前項の目的を達するため、周密を旨とし、微細な点に至るまで看過することのないように努めるとともに、鑑識の対象となつた捜査資料が、公判審理において証明力を保持し得るように処置しておかなければならない。

(鑑識基礎資料の収集)
第百八十四条  捜査資料について迅速正確な鑑識を行うことができるようにするため、あらかじめ、自動車塗膜、農薬、医薬品その他品質、形状、商標等によつて分類することのできる物件で必要なものを収集し、鑑識基礎資料として分類保存しておくように努めなければならない。

(鑑識資料送付上の注意)
第百八十五条  鑑識のため捜査資料を送付するに当たつては、変形、変質、滅失、散逸、混合等のことがないように注意するとともに、郵送の場合には、その外装、容器等につき細心の注意を払わなければならない。特に必要があるときは、直接持参する等の方法をとらなければならない。
2  重要な鑑識資料の受渡しに当たつては、相互に、資料の名称、個数、受渡年月日及び受渡人氏名を明確にしておかなければならない。

(再鑑識のための考慮)
第百八十六条  血液、精液、だ液、臓器、毛髪、薬品、爆発物等の鑑識に当たつては、なるべくその全部を用いることなく一部をもつて行い、残部は保存しておく等再鑑識のための考慮を払わなければならない。

(鑑定の嘱託)
第百八十七条  捜査のため、死体の解剖、指掌紋又は筆跡の鑑別、電子情報処理組織及び電磁的記録の解析等専門的知識を要する鑑定を科学警察研究所その他の犯罪鑑識機関又は適当な学識経験者に嘱託するに当たつては、警察本部長又は警察署長の指揮を受けなければならない。

(鑑定嘱託書)
第百八十八条  鑑定を嘱託するに当たつては、鑑定嘱託書により、次に掲げる事項を具して、行わなければならない。
一  事件名
二  鑑定資料の名称及び個数
三  鑑定事項
四  当該鑑定に参考となるべき次に掲げる事項
イ 犯罪の年月日時
ロ 犯罪の場所
ハ 被害者の住居、氏名、年齢及び性別
ニ 被疑者の住居、氏名、年齢及び性別
ホ 鑑定資料の採取年月日及び採取時の状態
ヘ 事件内容の概要その他参考事項
2  鑑定嘱託書に前項第四号に掲げる事項を記載するに当たつては、鑑定人に予断又は偏見を生ぜしめないため当該鑑定に必要な範囲にとどめることに注意するとともに、その他鑑定嘱託書中に鑑定人に予断又は偏見を生ぜしめるような事項を記載してはならない。当該事件について口頭で必要な説明を加える場合もまた同様とする。

(鑑定処分許可状及び鑑定留置)
第百八十九条  鑑定のため、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り、身体を検査し、死体を解剖し、墳墓を発掘し、又は物を破壊する必要があるときは、鑑定処分許可状の発付を受け、これを鑑定人に交付して鑑定を行わせるものとする。
2  被疑者の心神又は身体に関する鑑定を嘱託する場合において、鑑定留置の処分を必要とするときは、裁判官にその処分を請求して鑑定留置状の発付を受け、これに基づいて病院その他鑑定留置状所定の場所に被疑者を留置して鑑定を行わせるものとする。
3  鑑定留置状に記載された定められた期間を延長し、又は短縮して鑑定留置の処分を行うことを必要とするときは、裁判官に期間の延長又は短縮を請求しなければならない。
4  第百三十七条(令状の請求)の規定は、鑑定処分許可状、鑑定留置及び鑑定留置期間の延長又は短縮の請求について準用する。

(鑑定留置の際の注意)
第百九十条  鑑定留置状により被疑者を病院その他の場所に留置した場合には、当該病院その他の場所の管理者と緊密な連絡を取り、必要があるときは、看守者を付するための措置を講ずる等被疑者の自殺、逃亡その他の事故を防止するように努めなければならない。

(鑑定人に対する便宜供与)
第百九十一条  鑑定のため必要があるときは、鑑定人に書類及び証拠物を閲覧若しくは謄写させ、被疑者その他関係者の取調べに立ち会わせ、又はこれらの者に対し質問をさせることができる。

(鑑定書)
第百九十二条  鑑定を嘱託する場合には、鑑定人から、鑑定の日時、場所、経過及び結果を関係者に容易に理解できるよう簡潔平明に記載した鑑定書の提出を求めるようにしなければならない。ただし、鑑定の経過及び結果が簡単であるときは、鑑定人から口頭の報告を求めることができるものとし、この場合には、その供述調書を作成しておかなければならない。
2  鑑定人が数人あるときは、共同の鑑定書の提出を求めることができる。
3  鑑定書の記載に不明又は不備の点があるときは、これを補充する書面の提出を求めて鑑定書に添付しなければならない。
   第十章 送致及び送付


(送致及び送付の指揮)
第百九十三条  捜査を行つた事件について送致又は送付の手続をとるに当たつては、警察本部長又は警察署長の指揮を受けて行わなければならない。

(関連事件の送致及び送付)
第百九十四条  第十一章(少年事件に関する特則)に規定する場合を除き、関連する事件は、原則として、一括して送致又は送付するものとする。

(送致書及び送付書)
第百九十五条  事件を送致又は送付するに当たつては、犯罪の事実及び情状等に関する意見を付した送致書又は送付書を作成し、関係書類及び証拠物を添付するものとする。

(送致又は送付後の捜査と追送)
第百九十六条  警察官は、事件の送致又は送付後においても、常にその事件に注意し、新たな証拠の収集及び参考となるべき事項の発見に努めなければならない。
2  事件の送致又は送付後において、新たな証拠物その他の資料を入手したときは、速やかにこれを追送しなければならない。

(余罪の追送致(付))
第百九十七条  事件の送致又は送付後において、当該事件に係る被疑者につき、余罪のあることを発見したときは、検察官に連絡するとともに、速やかにその捜査を行い、これを追送致(付)しなければならない。

(微罪処分ができる場合)
第百九十八条  捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。

(微罪処分の報告)
第百九十九条  前条の規定により送致しない事件については、その処理年月日、被疑者の氏名、年齢、職業及び住居、罪名並びに犯罪事実の要旨を一月ごとに一括して、微罪処分事件報告書(別記様式第十九号)により検察官に報告しなければならない。

(微罪処分の際の処置)
第二百条  第百九十八条(微罪処分ができる場合)の規定により事件を送致しない場合には、次の各号に掲げる処置をとるものとする。
一  被疑者に対し、厳重に訓戒を加えて、将来を戒めること。
二  親権者、雇主その他被疑者を監督する地位にある者又はこれらの者に代わるべき者を呼び出し、将来の監督につき必要な注意を与えて、その請書を徴すること。
三  被疑者に対し、被害者に対する被害の回復、謝罪その他適当な方法を講ずるよう諭すこと。

(犯罪事件処理簿)
第二百一条  事件を送致し、又は送付したときは、長官が定める様式の犯罪事件処理簿により、その経過を明らかにしておかなければならない。
   第十一章 少年事件に関する特則


(準拠規定)
第二百二条  少年事件の捜査については、この章に規定するもののほか、一般の例によるものとする。

(少年事件捜査の基本)
第二百三条  少年事件の捜査については、家庭裁判所における審判その他の処理に資することを念頭に置き、少年の健全な育成を期する精神をもつて、これに当たらなければならない。

(少年の特性の考慮)
第二百四条  少年事件の捜査を行うに当たつては、少年の特性にかんがみ、特に他人の耳目に触れないようにし、取調べの言動に注意する等温情と理解をもつて当たり、その心情を傷つけないように努めなければならない。

(犯罪原因等の調査)
第二百五条  少年事件の捜査を行うに当たつては、犯罪の原因及び動機並びに当該少年の性格、行状、経歴、教育程度、環境、家庭の状況、交友関係等を詳細に調査しておかなければならない。

(関係機関との連絡)
第二百六条  少年事件の捜査を行うに当たつて必要があるときは、家庭裁判所、児童相談所、学校その他の関係機関との連絡を密にしなければならない。

(保護者等との連絡)
第二百七条  少年の被疑者の呼出し又は取調べを行うに当たつては、当該少年の保護者又はこれに代わるべき者に連絡するものとする。ただし、連絡することが当該少年の福祉上不適当であると認められるときは、この限りでない。

(身柄拘束に関する注意)
第二百八条  少年の被疑者については、なるべく身柄の拘束を避け、やむを得ず、逮捕、連行又は護送する場合には、その時期及び方法について特に慎重な注意をしなければならない。

(報道上の注意)
第二百九条  少年事件について、新聞その他の報道機関に発表する場合においても、当該少年の氏名又は住居を告げ、その他その者を推知することができるようなことはしてはならない。

(少年事件の送致及び送付先)
第二百十条  少年事件について捜査した結果、その犯罪が罰金以下の刑に当たるものであるときは、これを家庭裁判所に送致し、禁錮以上の刑に当たるものであるときは、これを検察官に送致又は送付しなければならない。
2  送致又は送付に当たり、その少年の被疑者について、罰金以下の刑に当たる犯罪と禁錮以上の刑に当たる犯罪とがあるときは、これらをともに一括して、検察官に送致又は送付するものとする。

(関連事件の送致及び送付)
第二百十一条  他の被疑者に係る事件と関連する少年事件の送致又は送付については、次の各号の規定によるものとする。
一  少年事件が成人事件と関連する場合において、これらをともに検察官に送致又は送付するときは、各別の記録として送致又は送付すること。ただし、少年事件に関する書類が成人事件についても必要であるときは、この謄本又は抄本を添付すること。
二  数個の少年事件が関連する場合において、これらをともに検察官に送致又は送付するときは、各別の記録とすることを要しないこと。
三  少年事件が成人事件と関連し、又は数個の少年事件が関連し、その一方を検察官に送致又は送付し、他方を家庭裁判所に送致する場合において、一方の事件に関する書類が他方の事件についても必要であるときは、検察官に送致又は送付する事件の記録に、他の事件に関する書類の謄本又は抄本を添付すること。

(共通証拠物の取扱い)
第二百十二条  少年事件が成人事件と関連し、又は数個の少年事件が関連し、これらを各別に送致若しくは送付する場合において、共通の証拠物があるときは、次の各号の規定によるものとする。
一  少年事件と成人事件とが関連する場合には、成人事件に証拠物を添付すること。この場合においては、少年事件の記録にこの旨を記載すること。ただし、少年事件のみが重要と認められるときは、少年事件に証拠物を添付すること。
二  数個の少年事件のみが関連する場合には、検察官へ送致又は送付する事件に証拠物を添付すること。この場合においては、家庭裁判所に送致する事件の記録にこの旨を記載すること。

(送致書類及び送付書類)
第二百十三条  少年事件を送致又は送付するに当たつては、少年事件送致書(家庭裁判所へ送致するものについては、別記様式第二十号。ただし、当該都道府県警察の管轄区域を管轄する地方検察庁(以下「管轄地方検察庁」という。)の検事正が少年の交通法令違反事件の捜査書類の様式について特例を定めた場合において、当該都道府県警察の警察本部長がその管轄区域を管轄する家庭裁判所(以下「管轄家庭裁判所」という。)と協議してその特例に準じて別段の様式を定めたときは、その様式)又は少年事件送付書を作成し、これに身上調査表(別記様式第二十一号)その他の関係書類及び証拠物を添付するものとする。

(軽微な事件の処理)
第二百十四条  捜査した少年事件について、その事実が極めて軽微であり、犯罪の原因及び動機、当該少年の性格、行状、家庭の状況及び環境等から見て再犯のおそれがなく、刑事処分又は保護処分を必要としないと明らかに認められ、かつ、検察官又は家庭裁判所からあらかじめ指定されたものについては、被疑少年ごとに少年事件簡易送致書及び捜査報告書(家庭裁判所へ送致するものについては、別記様式第二十二号。ただし、管轄地方検察庁の検事正が少年の交通法令違反事件の捜査書類の様式について特例を定めた場合において、当該都道府県警察の警察本部長が管轄家庭裁判所と協議しその特例に準じて別段の様式を定めたときは、その様式)を作成し、これに身上調査表その他の関係書類を添付し、一月ごとに一括して検察官又は家庭裁判所に送致することができる。
2  前項の規定による処理をするに当たつては、第二百条(微罪処分の際の処置)に規定するところに準じて行うものとする。

(触法少年及びぐ犯少年)
第二百十五条  捜査の結果、次の各号のいずれかに該当する場合においては、少年警察活動規則 (平成十四年国家公安委員会規則第二十号)第三章 の定めるところによる。
一  被疑者が少年法第三条第一項第二号 に規定する少年であることが明らかとなつた場合
二  被疑者が罪を犯した事実がないことが明らかとなつたときであつて、この者が少年法第三条第一項第三号 に規定する少年である場合

第二百十六条  削除

第二百十七条  削除
   第十二章 交通法令違反事件に関する特則


(準拠規定)
第二百十八条  道路交通法 (昭和三十五年法律第百五号)又はこれに基づく命令(以下「交通法令」という。)の違反事件の捜査については、この章に規定するもののほか、一般の例によるものとする。

(身柄拘束に関する注意)
第二百十九条  交通法令違反事件の捜査を行うに当たつては、事案の特性にかんがみ、犯罪事実を現認した場合であつても、逃亡その他の特別の事情がある場合のほか、被疑者の逮捕を行わないようにしなければならない。

(供述調書の記載事項)
第二百二十条  交通法令違反事件の被疑者の供述調書には、おおむね、次の事項を明らかにしておかなければならない。ただし、被疑者が犯罪事実現認報告書記載の犯罪について自白し、かつ、犯罪事実が証拠により明白で争いのないものについては、第一号に掲げる事項及びその自白を明らかにしておけば足りるものとする。
一  本籍、住居、職業、氏名、生年月日、年齢及び出生地(被疑者が法人であるときは名称又は商号、主たる事務所又は本店の所在地並びに代表者の氏名及び住居、被疑者が法人でない団体であるときは名称、主たる事務所の所在地並びに代表者、管理人又は主幹者の氏名及び住居)
二  交通事犯の前歴
三  学歴、経歴、資産、家族及び生活状態
四  犯罪の年月日時、場所、方法及び動機並びに犯行の状況

(少年の交通法令違反事件の送致)
第二百二十一条  少年の交通法令違反事件の送致は、交通法令違反少年事件送致書(家庭裁判所へ送致するものについては、別記様式第二十三号。ただし、管轄地方検察庁の検事正が少年の交通法令違反事件の捜査書類の様式について特例を定めた場合において、当該都道府県警察の警察本部長が管轄家庭裁判所と協議してその特例に準じて別段の様式を定めたときは、その様式)によることができる。この場合においては、身上調査表を添付することを要しない。ただし、犯罪事実、犯罪の原因及び動機、当該少年の性格、行状及び環境、家庭の状況等から、特に刑罰又は保護処分を必要とすると認められるときは、この限りでない。

(交通法令違反事件簿)
第二百二十二条  交通法令違反事件については、犯罪事件受理簿及び犯罪事件処理簿に代えて、長官が定める様式の交通法令違反事件簿を作成し、これにより第十九条(捜査指揮)第一項及び第百九十三条(送致及び送付の指揮)に規定する指揮の責任及び事件の送致又は送付その他の経過を明らかにしておかなければならない。
   第十三章 国際犯罪に関する特則


(準拠規定)
第二百二十三条  国際犯罪(外国人に係る犯罪又は国民の国外犯、大公使館に係る犯罪その他の外国に係る犯罪をいう。以下同じ。)の捜査については、条約、協定その他の特別の定めがあるときはこれによるものとし、これらの特別の定めがないときは、この章の規定によるほか、一般の例によるものとする。

(国際法の遵守)
第二百二十四条  国際犯罪の捜査を行うに当たつては、国際法規及び国際上の慣例を遵守しなければならない。

(国際犯罪の捜査の着手等)
第二百二十五条  国際犯罪のうち重要なものについては、あらかじめ、警察本部長に報告し、この指揮を受けて捜査に着手しなければならない。ただし、急速を要する場合には、必要な処分を行つた後、速やかに警察本部長の指揮を受けなければならない。
2  警察本部長は、国際犯罪の捜査に関し、外国の捜査機関又は国際刑事警察機構に対する協力要請を行う必要があると認めるときは、警察庁を通じてこれを行うものとする。

(大公使等に関する特則)
第二百二十六条  国際犯罪の捜査を行うに当たつては、次に掲げる者の身体、名誉、文書その他の不可侵等の特権を害することのないように注意しなければならない。
一  大公使若しくは大公使館員又はこれらの者の家族
二  その他外交特権を有する者
2  前項に掲げる者の使用人を逮捕し、又は取調べを行う必要があると認められるときは、館外における現行犯人逮捕その他緊急やむを得ない場合を除き、あらかじめ警察本部長の指揮を受けなければならない。
3  被疑者が外交特権を有する者であるかどうかが疑わしい場合には、速やかに、警察本部長の指揮を受けなければならない。

(大公使館等への立入り)
第二百二十七条  大公使館及び大公使又は大公使館員の居宅、別荘若しくはこの宿泊する場所については、当該大公使又は大公使館員の請求がある場合のほか、これに立ち入つてはならない。ただし、重大な犯罪を犯した者を追跡中、その者がこれらの場所に入つた場合で猶予することができないときは、大公使、大公使館員又はこれらに代わるべき権限を有する者の同意を得て捜索を行うことができる。

(外国軍艦への立入り)
第二百二十八条  外国軍艦については、当該軍艦の艦長の請求がある場合のほか、これに立ち入つてはならない。
2  重大な犯罪を犯した者が逃走して、我が国の領海にある外国軍艦内に入つた場合には、速やかに警察本部長の指揮を受けなければならない。ただし、急速を要するときは、当該軍艦の艦長に対し、その者の任意の引渡しを求めることができる。

(外国軍艦の乗組員に対する特則)
第二百二十九条  外国軍艦に属する軍人又は軍属がその軍艦を離れ、我が国の領域内において犯罪を犯した場合には、速やかに警察本部長の指揮を受けなければならない。ただし、現行犯その他急速を要するときは、逮捕その他捜査上必要な処置をとつた後、速やかに警察本部長の指揮を受けるものとする。

(領事上の特権等に係る特則)
第二百三十条  次に掲げる者に係る事件の捜査を行うに当たつては、その者の身体の不可侵の特権を害することのないように注意しなければならない。
一  本務領事官(重大な犯罪の被疑者であり、かつ、その者について裁判官があらかじめ令状を発している場合における本務領事官及び第三項に規定する領事官を除く。)
二  領事伝書使(当該任務を遂行している場合における領事伝書使に限る。)
2  次に掲げる者に係る事件でその者が領事任務の遂行に当たつて行つた行為に係るものの捜査を行うに当たつては、その者が我が国の刑事裁判権からの免除を享受することを妨げないように注意しなければならない。
一  領事官(次項に規定する領事官を除く。)
二  領事機関(総領事館、領事館、副領事館又は代理領事事務所をいう。以下同じ。)の事務技術職員(我が国の国民である者又は我が国に通常居住している者を除く。)
3  前二項の規定は、領事官であつて我が国の国民であるもの又は我が国に通常居住しているものに係る事件でその者が任務の遂行に当たつて行つた公の行為に係るものの捜査について準用する。
4  第二百二十六条(大公使等に関する特則)第三項の規定は、前三項の場合について準用する。この場合において、同項中「外交特権」とあるのは、「領事上の特権又は免除」と読み替えるものとする。
5  領事機関の構成員又は領事伝書使を逮捕し、又は取り調べる必要があると認められるときは、あらかじめ、警察本部長の指揮を受けなければならない。ただし、現行犯人逮捕その他緊急やむを得ない場合において、第一項及び第二項(第三項において準用する場合を含む。)に規定する特権及び免除を害しないと認められるときは、この限りでない。
6  本務領事官を長とする領事機関の公館については、当該領事機関の長又はこれに代わるべき権限を有する者の請求又は同意がある場合を除き、これに立ち入らないものとする。
7  領事機関の公館又は領事官の居宅において捜査を行う必要があると認められるときは、急速を要する場合を除き、あらかじめ、警察本部長の指揮を受けなければならない。
8  領事機関の公文書(名誉領事官を長とする領事機関の公文書で他の文書と区別して保管されているもの以外のものを除く。)に係る捜査については、文書の不可侵の特権を害することのないように注意しなければならない。

(外国船舶内の犯罪)
第二百三十一条  我が国の領海にある外国船舶内における犯罪であつて、次の各号のいずれかに該当する場合には、捜査を行うものとする。
一  我が国の陸上又は港内の安全を害するとき。
二  乗組員以外の者又は我が国の国民に関係があるとき。
三  重大な犯罪が行われたとき。

(外国人の取調べ及び身柄の拘束についての注意)
第二百三十二条  外国人の取調べを行い、又は外国人の身柄を拘束するに当たつては、言語、風俗、習慣等の相違を考慮し、当該外国人に係る刑事手続に関し我が国の刑事手続に関する基本的事項についての当該外国人の理解に資するよう適切を期すること等により無用の誤解を生じないように注意しなければならない。
2  外国人の身柄を拘束したときは、遅滞なく、その者に対し、次の事項を告知するものとする。
一  当該領事機関に対しその者の身柄が拘束されている旨を通報することを要請することができること。
二  当該領事機関に対し我が国の法令に反しない限度において信書を発することができること。
3  前項第一号の規定による要請があつたとき又は条約その他の国際約束により要請の有無にかかわらず通報を行うこととされているときは、遅滞なく、当該領事機関に対し同項に規定する者の身柄が拘束されている旨を通報するものとする。
4  前項の通報を行つたときは、その日時及び当該通報の相手方を書面に記録しておかなければならない。

(通訳の嘱託)
第二百三十三条  外国人であつて日本語に通じないものに対し、当該外国人の理解する言語に通じた警察官以外の警察官が取調べその他捜査のため必要な措置を行う場合においては、通訳人を介してこれを行うものとする。ただし、現行犯逮捕、緊急逮捕その他の直ちに通訳人を付することが困難であるときは、この限りでない。
2  前項本文の規定により通訳人を介して取調べを行おうとする場合においては、次に掲げる事項に注意しなければならない。
一  通訳人が被疑者、被害者その他事件の関係者と親族その他特別の関係にないかどうかを申し立てさせることにより取調べの適正を期すること。
二  取調べの際の発問の方法及び内容の工夫等により通訳の円滑及び適正を図ること。
三  通訳人に秘密を厳守させ、及び捜査の遂行に支障を及ぼし又は被疑者、被害者その他事件の関係者の名誉を害することのないように配意させること。

(供述調書の記載事項)
第二百三十四条  国際犯罪の被疑者供述調書には、第百七十八条(供述調書の記載事項)に掲げる事項のほか、おおむね次に掲げる事項を明らかにしておかなければならない。
一  国籍及び本国における住居
二  旅券又は外国人登録証明書その他身分の証明に関する書類の有無(外国人登録証明書を有するときは、登録年月日、登録市町村、登録番号等)
三  外国における前科の有無
四  我が国に入国した時期、在留期間、在留資格及び目的
五  本国を去つた時期
六  家族の有無及びその住居

(調書等の作成)
第二百三十五条  外国人であつて日本語に通じないものに対し取調べを行い、又は第百三十条(司法警察員の処置)第一項に掲げる処置をとつたときは、日本語の供述調書又は弁解録取書を作成するものとし、特に必要がある場合には、外国語の供述書を提出させるものとする。
2  外国人が口頭をもつて告訴、告発又は自首をしようとする場合において、日本語に通じないときは、告訴、告発又は自首の調書は、前項の規定に準じて作成するものとする。

(翻訳文の添付)
第二百三十六条  外国人に対し逮捕状その他の令状により処分を行い、又は外国人から差し押さえた物件若しくはその承諾を得て領置した物件に関して押収品目録交付書を交付するときは、なるべく翻訳文を添付しなければならない。ただし、当該外国人の理解する言語に通じた警察官がこれを行い、又は第二百三十三条(通訳の嘱託)第一項の規定により通訳人を介して行うときは、この限りでない。

(逃亡犯罪人引渡法 に基づく処分)
第二百三十七条  拘禁許可状その他逃亡犯罪人引渡法 (昭和二十八年法律第六十八号)に基づく令状により逃亡犯罪人を拘束した場合には、東京高等検察庁の検察官に引致しなければならない。

(通訳人の把握等)
第二百三十八条  警察本部長は、平素から、捜査上の必要に応じて通訳人を迅速かつ確実に付することができるよう、通訳人としての必要な知識及び技能を有する者の把握に努めるとともに、これらの者に対し刑事手続について理解させるための機会を設けるよう努めなければならない。
   第十四章 群衆犯罪に関する特則


(準拠規定)
第二百三十九条  群衆犯罪の捜査については、この章に規定するもののほか、一般の例によるものとする。

(心構え)
第二百四十条  群衆犯罪の捜査については、常に一般社会の情勢及び群衆犯罪の主体となるおそれのある団体、集団等の実態とその動向を正しく把握し、群衆犯罪の捜査が適確に行われるように心掛けなければならない。

(群衆犯罪捜査の重点)
第二百四十一条  群衆犯罪の捜査を行うに当たつては、実行行為者のみにとどまることなく、首謀者、謀議参与者その他事件の背後にある共犯関係者を的確に把握するように努めなければならない。

(現場における逮捕)
第二百四十二条  群衆犯罪の現場においてその被疑者を逮捕するに当たつては、相手方の勢力、情勢の推移等を慎重に考慮し、逮捕の時期、方法及び範囲を誤ることのないよう、現場指揮官の統制の下に行わなければならない。

(鑑識活動の注意)
第二百四十三条  群衆犯罪が発生した場合は、随時、その実行状況その他現場の状況を明らかにし、被疑者の犯行を確認する等証拠の収集保全に努めなければならない。

(逮捕時の注意)
第二百四十四条  群衆犯罪の被疑者を逮捕した場合においては、逮捕に当たつた警察官は、それぞれ自己の逮捕した被疑者につき、その人相、体格その他の特徴、犯罪事実の概要、逮捕の時、場所及び状況等を明確に記憶しておいて、事後の取調べに支障を生じないようにしておかなければならない。
2  前項に規定する目的を達するため、必要があるときは、被疑者を逮捕した直後において、被疑者を逮捕した警察官とともに撮影しておく等適当な方法をとらなければならない。
3  被疑者を逮捕する場合において、当該被疑者と関係のある物件を差し押さえたときは、その間の関係を明らかにするため、これらをともに撮影する等適当な方法をとらなければならない。

(通謀等の防止)
第二百四十五条  群衆犯罪の被疑者を多数同時に逮捕した場合において、通謀、奪還等を防止するため必要があるときは、被疑者の分散留置その他の適切な措置が講ぜられるようにしなければならない。

(被疑者の取調べ)
第二百四十六条  群衆犯罪の被疑者の取調べを行うに当たつては、特に取調べに当たる警察官相互の連絡を密接にし、事件の全ぼうを明らかにするように努めなければならない。
   第十五章 暴力団犯罪に関する特則


(準拠規定)
第二百四十七条  暴力団犯罪の捜査については、この章に規定するもののほか、一般の例によるものとする。

(心構え)
第二百四十八条  暴力団については、平素からその組織の実態と動向及びその活動の状況を正確に把握し、暴力団犯罪の捜査が適確に行われるように心掛けなければならない。
2  暴力団犯罪の捜査については、暴力団対策に係るものであることを念頭に置いて、これに効果的かつ計画的に当たらなければならない。

(暴力団犯罪捜査の重点)
第二百四十九条  暴力団犯罪の捜査を行うに当たつては、実行行為者のみにとどまることなく、暴力団の首領その他の幹部等の当該事件への関与の有無についても確実に捜査を行い、事件の全ぼうを明らかにするように努めなければならない。

(資料の収集管理)
第二百五十条  暴力団の視察内偵その他暴力団犯罪の捜査による有形又は無形の資料等の収集及び管理に当たつては、これを組織的に行うようにしなければならない。

(供述調書の記載事項)
第二百五十一条  暴力団犯罪の被疑者供述調書には、第百七十八条(供述調書の記載事項)第一項に掲げる事項のほか、おおむね次に掲げる事項を明らかにしておかなければならない。
一  被疑者に係る暴力団の名称、組織及び活動の実態
二  被疑者が当該暴力団の構成員であるときは当該暴力団における地位その他被疑者と当該暴力団との関係及び当該暴力団に係る被疑者の活動の実態
三  当該犯罪の当該暴力団に係る組織的背景
2  暴力団犯罪の参考人供述調書には、第百七十八条第二項に定める事項のほか、当該暴力団の活動の実態、当該犯罪の当該暴力団に係る組織的背景等をできる限り明らかにするように努めなければならない。

(不当な行為の報告)
第二百五十二条  暴力団の視察内偵その他暴力団犯罪の捜査を行つた結果、被疑者その他の関係者が暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律 (平成三年法律第七十七号)の規定に違反する行為その他の不当な行為を行つたことが明らかとなつた場合においては、同法 の規定による命令その他必要な措置が講ぜられるように、その旨を警察本部長又は警察署長に報告するものとする。
   第十六章 保釈者等の視察


(保釈者等の視察)
第二百五十三条  警察署長は、検察官から、その管轄区域内に居住する者について、保釈し、又は勾留の執行を停止した者の通知を受けたときは、その者に係る事件の捜査に従事した警察官その他適当な警察官を指定して、その行動を視察させなければならない。
2  前項に規定する視察は、一月につき、少なくとも一回行うものとする。

(事故通知)
第二百五十四条  前条に規定する視察に当たり、その者について次の各号の一に該当する理由があるときは、これを前条に規定する通知をした検察官に速やかに通知しなければならない。
一  逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
二  罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三  被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。
四  住居、旅行、治療等に関する制限その他保釈又は勾留の執行停止について裁判所又は裁判官の定めた条件に違反したとき。
五  その他特に検察官に通知する必要があると認められる理由があるとき。

(視察上の注意)
第二百五十五条  第二百五十三条(保釈者等の視察)に規定する視察は、穏当適切な方法により行うものとし、視察中の者又はその家族の名誉及び信用を不当に害することのないように注意しなければならない。

(視察簿)
第二百五十六条  第二百五十三条(保釈者等の視察)に規定する視察を行つたときは、視察簿(別記様式第二十四号)により、これを明らかにしておかなければならない。
   第十七章 令状の執行


(検察官の指揮による執行)
第二百五十七条  検察官から、勾引状、勾留状、観護状、差押状、捜索状、鑑定留置状、収容状又は再収容状その他の令状の執行の指揮を受けたときは、速やかに執行しなければならない。
2  やむを得ない理由によつて、前項に規定する執行が遅延するときは、速やかにその旨を指揮をした検察官に報告しなければならない。

(証人に対する勾引状の執行)
第二百五十八条  証人に対する勾引状の執行は、当該令状に指定された日時に引致するようにしなければならない。
2  勾引状の執行を受けた証人を護送する途中において必要があるときは、一時最寄りの警察署の保護室等に留置することができる。
3  前項の護送又は留置中においては、証人が逃亡を図り、若しくは暴行をし、又は自殺のおそれが極めて強い等真にやむを得ない場合を除き、手錠等は、使用しないものとする。

(有効期間内に執行不能の場合)
第二百五十九条  検察官から、勾引状、勾留状、差押状、捜索状又は鑑定留置状の執行の指揮を受けた場合において、その有効期間内に執行することができなかつたときは、令状にその理由を記載し、これを指揮をした検察官に返還しなければならない。

(勾引状執行不適の場合)
第二百六十条  検察官から、勾引状、勾留状又は鑑定留置状の執行の指揮を受けた場合において、執行を受けるべき者が、心神喪失の状態にあるとき、又はその執行により著しく健康を害するおそれがあるときその他特に執行を不適当と認める理由があるときは、速やかに、指揮をした検察官にその旨を報告して、指揮を受けなければならない。

(収容状の発付と執行)
第二百六十一条  検察官の指揮により警察官が収容状(刑訴法 の規定による場合に限る。以下同じ。)を発した場合において、これを執行したときは、その原本を指揮をした検察官に送付しなければならない。

(収容状執行不能の場合)
第二百六十二条  検察官から収容状の執行の指揮を受けた場合において、これを執行することができずに三月を経過し、かつ、当分の間、なお執行する見込みのないときは、速やかに、指揮をした検察官に、その理由及び参考となるべき事項を報告し、収容状を返還しなければならない。検察官の指揮により警察官が発した収容状を執行することができずに三月を経過し、かつ、当分の間、なお執行する見込みのないときも、また、同様とする。

(収容状執行不適の場合)
第二百六十三条  収容状に指定されている者について、心神喪失の状態にあり、又は刑訴法第四百八十二条 各号のいずれかに該当する事由があり、かつ、逃亡のおそれがないと認められるときは、速やかに、その旨を指揮をした検察官に報告して指揮を受けなければならない。

(保釈の取消し等の場合の準用)
第二百六十四条  第二百五十七条(検察官の指揮による執行)、第二百五十九条(有効期間内に執行不能の場合)及び第二百六十条(勾引状等執行不適の場合)の規定は、検察官から刑訴法第九十八条 (同法第百六十七条の二 及び同法第三百四十三条 において準用する場合を含む。)の規定による保釈若しくは勾留執行停止の取消しの決定、勾留執行停止の期間満了又は鑑定留置の処分の取消し若しくは期間満了の場合において収容の指揮を受けた場合について準用する。

(裁判官から執行の指揮を受けた場合)
第二百六十五条  第二百五十七条(検察官の指揮による執行)、第二百五十九条(有効期間内に執行不能の場合)及び第二百六十条(勾引状等執行不適の場合)の規定は、刑訴法第七十条第一項 ただし書又は同法第百八条第一項 ただし書の規定により、裁判長又は裁判官から、勾引状、勾留状、差押状、捜索状又は鑑定留置状の執行の指揮を受けた場合について準用する。

(差押状等執行の場合の立会い)
第二百六十六条  警察官は、検察官又は裁判長若しくは裁判官の指揮を受けて、差押状又は捜索状を執行する場合は、他の警察官を立ち会わせなければならない。

(少年に対する同行状の執行)
第二百六十七条  第二百五十七条(検察官の指揮による執行)、第二百五十九条(有効期間内に執行不能の場合)及び第二百六十条(勾引状等執行不適の場合)の規定は、少年法第十三条 又は同法第二十六条 の規定により、家庭裁判所から、同行状の執行の指揮を受けた場合について準用する。この場合において、これらの規定中「検察官」とあるのは、「家庭裁判所」と読み替えるものとする。

(引致状の執行)
第二百六十八条  第二百五十七条(検察官の指揮による執行)、第二百五十九条(有効期間内に執行不能の場合)及び第二百六十条(勾引状等執行不適の場合)の規定は、更生保護法 (平成十九年法律第八十八号)第六十三条 (売春防止法 (昭和三十一年法律第百十八号)第二十六条第二項 において準用する場合を含む。)の規定により保護観察に付されている者に対する引致状の執行に当たる場合について準用する。この場合において、第二百五十七条及び第二百五十九条中「検察官」とあるのは「地方更生保護委員会又は保護観察所の長」と、「指揮」とあるのは「嘱託」と、第二百六十条中「検察官」とあるのは「地方更生保護委員会又は保護観察所の長」と、「の指揮」とあるのは「の嘱託」と、「指揮をした」とあるのは「嘱託をした」と、「報告して、指揮を受けなければ」とあるのは「通知しなければ」と読み替えるものとする。

(令状執行に際しての注意)
第二百六十九条  勾引状その他の令状を執行するに当たつては、必要な限度を超えて実力を行使し、又は相手方の名誉を不当に傷つけることのないように注意しなければならない。
   第十八章 雑則


(他の都道府県警察の管轄区域における現行犯人逮捕)
第二百七十条  警察官は、他の都道府県警察の管轄区域において現行犯人を逮捕したときは、原則として、逮捕地を管轄する都道府県警察に引き渡さなければならない。

(未検挙事件の継続捜査)
第二百七十一条  未検挙事件については、継続して捜査を行うとともに、その捜査記録を取りまとめて保存しておかなければならない。

(書類の受理)
第二百七十二条  書類を受理したときは、直ちに欄外その他適当な箇所に受理の年月日を記入し、必要があるものについては、その時刻を記入しておくものとする。

(捜査書類の写し)
第二百七十三条  重要又は特異な事件等必要があると認められるときは、捜査書類の写しを作成して保存しておかなければならない。

(捜査事故簿)
第二百七十四条  逮捕状その他法令による強制処分に関する事故その他捜査に関する紛議等があつたときは、捜査事故簿(別記様式第二十五号)によりその経緯及び措置等を明らかにしておかなければならない。

(道警察の特例)
第二百七十五条  道警察本部長は、長官が定めるところにより、この規則の規定によるその職務を方面本部長に行わせることができる。

   附 則 抄


1  この規則は、昭和三十二年九月一日から施行する。

   附 則 (平成一二年一〇月六日国家公安委員会規則第一六号)

 この規則は、平成十三年一月一日から施行する。


   附 則 (平成一五年三月五日国家公安委員会規則第一号)

 この規則は、平成十五年四月一日から施行する。


   附 則 (平成一五年一〇月一〇日国家公安委員会規則第一六号)

 この規則は、平成十六年四月一日から施行する。ただし、別記様式第十八号の改正規定(同様式を別記様式第二十一号とする部分を除く。)は、同年一月一日から施行する。


   附 則 (平成一七年七月一二日国家公安委員会規則第一三号)

 この規則は、平成十七年九月一日から施行する。


   附 則 (平成一八年五月二三日国家公安委員会規則第一八号)

 この規則は、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の施行の日(平成十八年五月二十四日)から施行する。


   附 則 (平成一九年五月二五日国家公安委員会規則第一二号) 抄


(施行期日)
1  この規則は、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律の施行の日(平成十九年六月一日)から施行する。

   附 則 (平成一九年八月一日国家公安委員会規則第一五号)

 この規則は、平成十九年八月一日から施行する。


   附 則 (平成一九年一〇月三〇日国家公安委員会規則第二四号) 抄


(施行期日)
1  この規則は、少年法等の一部を改正する法律(平成十九年法律第六十八号)の施行の日(平成十九年十一月一日)から施行する。

   附 則 (平成二〇年四月一〇日国家公安委員会規則第五号)


(施行期日)
1  この規則は、公布の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一  第百三十条の改正規定、第百八十二条の二の改正規定及び別記様式第十六号から別記様式第十八号までの改正規定 平成二十年九月一日
二  目次の改正規定及び第八章中第百八十二条の二の次に一条を加える改正規定 平成二十一年四月一日
(経過措置)
2  この規則の施行の際現に存する取調べ室(この規則の施行後に改築を行ったものを除く。)については、当分の間、この規則による改正後の犯罪捜査規範第百八十二条の三の規定は適用しない。

   附 則 (平成二〇年一一月一〇日国家公安委員会規則第二四号)

 この規則は、公布の日から施行する。ただし、第二百十一条の改正規定は、少年法の一部を改正する法律(平成二十年法律第七十一号)の施行の日(平成二十年十二月十五日)から施行する。


   附 則 (平成二二年四月一五日国家公安委員会規則第三号)

 この規則は、公布の日から施行する。



別記様式第1号(犯罪捜査規範第29条) (略)
別記様式第2号(犯罪捜査規範第31条、第34条) (略)
別記様式第3号(犯罪捜査規範第36条) (略)
別記様式第4号(犯罪捜査規範第36条) (略)
別記様式第5号(犯罪捜査規範第42条、第78条) (略)
別記様式第6号(犯罪捜査規範第61条) (略)
別記様式第7号(犯罪捜査規範第102条) (略)
別記様式第8号(犯罪捜査規範第102条) (略)
別記様式第9号(犯罪捜査規範第112条) (略)
別記様式第10号(犯罪捜査規範第113条) (略)
別記様式第11号(犯罪捜査規範第113条) (略)
別記様式第12号(犯罪捜査規範第117条) (略)
別記様式第13号(犯罪捜査規範第125条) (略)
別記様式第14号(犯罪捜査規範第132条) (略)
別記様式第15号(犯罪捜査規範第165条) (略)
別記様式第16号(犯罪捜査規範第182条の2) (略)
別記様式第17号(犯罪捜査規範第182条の2) (略)
別記様式第18号 削除
別記様式第19号(犯罪捜査規範第199条) (略)
別記様式第20号(犯罪捜査規範第213条) (略)
別記様式第21号(犯罪捜査規範第213条) (略)
別記様式第22号(犯罪捜査規範第214条) (略)
別記様式第23号(犯罪捜査規範第221条) (略)
別記様式第24号(犯罪捜査規範第256条) (略)
別記様式第25号(犯罪捜査規範第274条) (略)