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地方公共団体関係資料

北海道人権施策推進基本方針
情報の種類 地方公共団体関係資料
タイトル 北海道人権施策推進基本方針
時期 2003/03/03
主体名 北海道
【 内容 】

北海道人権施策推進基本方針

北  海  道

は じ め に


  21世紀は「人権の世紀」と言われており、人権の尊重が平和の基礎であるという共通認識のもと、人々が世代や性別、民族や文化・習慣の違いを越えて、互いの個性を尊重し、認め合う、思いやりに満ちた「人権が尊重される社会」を実現することが課題となっています。

  基本的人権の尊重は、日本国憲法の最も重要な理念の一つであり、また、いつの時代においても最大限尊重されなければならない人類共通の普遍的理念です。道においても、アイヌの人たちをはじめ女性や子ども、高齢者や障害者など人権上の重要課題について、関係部局が中心になり権利擁護などの施策に取り組んできましたが、ドメスティック・バイオレンスや児童虐待、インターネットを媒体としたプライバシー侵害など新たな人権問題も生じており、人権問題を取り巻く状況は複雑・多様化してきています。

  このような背景を踏まえ、道は学識経験者などで構成する「北海道人権施策推進懇話会」を設置し、懇話会から、道に期待する人権施策や今後取り組むべき課題について、「北海道の人権施策のあり方について」として提言いただきました。

  道はこの提言を受け、ゆとりや安らぎ、うるおいといった心の豊かさを大切にし、道民一人ひとりが互いの個性や人格を尊重しながら、助け合い、支え合って暮らしていくことができる地域社会をつくるため、「北海道人権施策推進基本方針」を策定しました。

 今後は、この基本方針に基づき、国や市町村、関係団体、さらには道民の皆さんと密接な連携を図りな   がら、人権が尊重される地域社会づくりに取り組んで参りたいと考えております。皆さんのご理解とご協力をお願いします。

 本基本方針を策定するに当たり、ご提言をいただいた「北海道人権施策推進懇話会」の委員の皆さんをはじめ、貴重なご意見をお寄せいただいた道民の皆さんに厚くお礼申し上げます。


  平成15年3月

北海道知事 堀   達 也


                      目      次




第1章 基本的な考え方
1 基本方針策定の背景
  (1) 国際的な潮流
  (2) 国内における取組
  (3) 北海道における取組
2 人権施策の基本理念
 3 基本方針の性格

第2章 重要課題への対応
 1 女性
 2 子ども
 3 高齢者
 4 障害者
 5 アイヌの人々
 6 外国人
 7 HIV感染者等
 8 その他の人権をめぐる問題
  (1) 同和問題
  (2) 犯罪被害者の人権
  (3) 刑を終えて出所した人
  (4) 性的マイノリティ
  (5) 知る権利とプライバシーの保護
  (6) 良好で快適な環境の恵みの享受

第3章 人権施策の推進
 1 あらゆる場を通じた人権教育・啓発の推進
  (1) 家庭
  (2) 学校
  (3) 地域社会
  (4) 企業等
  (5) 道機関等
 2 効果的な人権教育・啓発の推進
  (1) 効果的な啓発手法の開発
  (2) 人材の育成と活用
  (3) 情報提供の充実強化
  (4) 相談・支援体制の充実
 3 推進体制の整備
  (1) 道の推進体制
  (2) 国、市町村、民間団体等との連携
  (3) 基本方針・施策の点検と見直し
  北海道人権施策基本方針施策体系
  用語解説


第1章 基本的な考え方

1 基本方針策定の背景
 
(1) 国際的な潮流
    20世紀に人類が体験した二度にわたる悲惨な大戦への反省から、国際平和の実現には人権尊
重社会の実現が不可欠であるとの国際的な認識が高まり、そのための推進機関として、昭和20年
  (1945年)に国際連合(以下「国連」という。)が設立されました。
   昭和23年(1948年)の第3回国連総会では、『すべての人間は、生まれながらにして自由であり
   かつ、尊厳と権利とについて平等である。』とする「世界人権宣言」が採択され、この人権宣言の
  精神を実現するため、「国際人権規約」、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」
  (以下「人種差別撤廃条約」という。)、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」
  (以下「女子差別撤廃条約」という。)など、これまで数多くの人権保障条約が採択されたほか、「国
  際婦人年」、「国際児童年」といったテーマ別の国際年を定めるなど、人権の尊重とあらゆる差別の
  撤廃に向けて、さまざまな取組を行ってきました。
   このような取組にもかかわらず、世界各地において人種や民族、宗教などの違いを理由とした地域
  紛争が発生し、飢餓や難民問題、テロなどの深刻な人権問題が後を絶たなかったことから、「国際連
  合憲章」や「世界人権宣言」に掲げられた人権の尊重と遵守という理念の実現に向けて、各国が行動
  することを目的に、世界人権宣言45周年となる平成5年(1993年)にウイーンで「世界人権会議」が
  開催されました。
    この会議では国連が今後進めるべき課題として、女性や子ども、少数者、先住民など社会的弱者
  に対する人権対策の強化や人権教育の重視と普及、国連の人権への取組を強化するため、人権問
  題を総合的に調整する人権高等弁務官の創設などが合意されました。
    このような経過を経て、国連では平成7年(1995年)から10年間を「人権教育のための国連10         年と定め、人権という普遍的文化の構築を目指し、すべての政府に人権教育に積極的に取り組む
  よう、行動計画を提起しました。

 (2) 国内における取組
    我が国では、昭和22年(1947年)に「国民主権」、「基本的人権の尊重」、「平和主義」を三大原
   理とする「日本国憲法」が施行され、これまで「労働基準法」や「教育基本法」、「雇用の分野におけ
   る男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下「男女雇用機会均等法」という。)など
   人権に係る法律や諸規定の整備とともに、人権擁護のための各種施策が実施されてきました。
     また、「国際人権規約」をはじめとする関連条約を批准するとともに、平成7年(1995年)12月、
   内閣に「人権教育のための国連10年推進本部」を設置し、平成9年(1997年)7月には国内行動
   計画を策定、公表を行いました。
     この行動計画では、人権教育は国際社会が協力して進めるべき基本的課題であるとして、人権
   の重要性が広く理解され、人権という普遍的文化が構築されることを目指し、家庭、学校、地域社
   会、企業などあらゆる場を通じて人権教育を積極的に行うこと、また、女性、子ども、高齢者、障害
   者などの人権に係る重要課題に積極的に取り組むこと、そして、地方公共団体や公的団体、民間
   団体などがそれぞれの分野で、この計画の趣旨を踏まえ、さまざまな取組を展開していくことを呼び
   かけています。
     このような国の動きを受け、地方公共団体としても、地域の実情に応じた行動計画を策定する
   など、人権教育・啓発をはじめ人権施策の総合的な推進に努めてきました。
    平成8年(1996年)12月には「人権擁護施策推進法」が制定され、人権教育・啓発施策の推進
   が国の責務であることが明記され、その推進方策について調査、審議するため、「人権擁護推進審
   議会」が設置されています。
    平成11年(1999年)7月には「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育
   及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項」について、平成13年(2001年)5月
   には「人権救済制度のあり方」について、また、平成13年(2001年)12月には「人権擁護委員制
   度の改革」について審議会から答申が出され、国においては、今後、これらの答申に基づき、人権
   施策の総合的な推進と人権侵害を救済するための組織体制の整備に取り組んでいくこととしてい
   ます。
    また、平成12年(2000年)12月には「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が施行さ
   れ、人権教育と人権啓発の推進に関する国や地方公共団体、国民の責務が明らかにされるととも
   に、平成14年(2002年)3月には「人権教育・啓発に関する基本計画」が策定され、人権施策への
   地方公共団体の積極的な関与が求められています。

 (3) 北海道における取組
    本道においては、明治2年(1898年)に開拓使が設置されてから本格的な開発が始まり、道外各
   地から移住した開拓民のもと、古い因習に縛られない開放的でおおらかな道民気質を育んできま
   した。
    このため、同和問題のような封建的な身分構造に基づく差別問題が表面化することはなかった
   反面、過去の松前藩がとった場所請負制度やその後の同化政策など、和人の側の接触のあり方に
   起因するアイヌの人たちへの差別や偏見の問題、また、最近ではロシア人船員の入浴施設や飲食
   店の利用に対する排他的な扱いなど、多くの移住者を受け入れてきた開放的な道民気質と相反す
   る問題も見受けられます。
    道では、これまでアイヌの人たちをはじめ、女性や子ども、高齢者や障害者など人権上の重要課
   題について、関係部局を中心に国や市町村、関係団体と連携を図り、権利擁護などの施策に取り
   組んできましたが、ドメスティック・バイオレンスや児童虐待などの今日的な課題も生じており、人権
   問題を取り巻く状況は複雑・多様化してきています。
    このようなことから、平成12年(2000年)に知事部局や教育庁、警察本部の企画担当及び人権
   関係課の実務者で構成する「人権施策推進ワーキンググループ」を設置し、効果的な施策の推進
   や組織体制などについて検討を進めるとともに、平成14年(2002年)4月には課長相当職で構成
   する「北海道人権施策推進会議」を設置するなど、庁内推進体制の整備に努めてきました。
    また、道が今後取り組むべき課題や人権施策の基本方向について広く道民の意見を集めるため、
   平成13年(2001年)8月に学識経験者などで構成する「北海道人権施策推進懇話会」を設置し、
   各委員がそれぞれ関わりの深い専門分野の経験や知識のもとで、北海道に期待する人権施策に
   ついて議論を重ね、その結果を提言書に取りまとめ、知事に提出いただきました。
    道では、この提言を受け、道民一人ひとりが互いの個性や人格を尊重し合い、真に人権が尊重さ
   れる北海道づくりに取り組むため「北海道人権施策推進基本方針」を策定しました。


2 人権施策の基本理念

   国際化、情報化、少子・高齢化の進展や社会の成熟化に伴い、個人と個人の関わりやコミュニティ
  との関わり、子どもたちを取り巻く環境も大きく変化しています。
   「人権の世紀」といわれる21世紀を迎え、人々が世代や性別、民族や文化・習慣といった違いを越
  えて、お互いの個性を尊重し、認め合う、思いやりに満ちた、平和な地域社会を創造していくことが切
  実な願いとなっています。
   基本的人権の尊重は、「日本国憲法」の最も重要な理念の一つであり、いつの時代においても最大
  限尊重されなければならない人類共通の普遍的理念です。日本国憲法が制定されて50余がたち、こ
  の間、国内外においては人権を尊重するためのさまざまな取組が行われてきました。
   しかしながら、日本の社会には集団との和や同一性を重んじる風潮や、違いを理由に排除したり差
  別する傾向が見受けられるとともに、近年においては、価値観の多様化や個人の権利意識の高揚、
  情報化の進展などによる新たな課題も生じています。
   このため、道が重点的に取り組むべき課題や施策の展開方向など、道政における人権関連施策の
  位置づけを明らかにするとともに、人権行政に携わる職員一人ひとりの意識の高揚を図るなど、人権
  を基本に据えた道政を推進していく必要があります。
   そのためには、人権尊重という基本理念を、今後、道が策定又は改訂する計画やプランに反映させ
  るとともに、市町村や民間団体・企業などとの協力・連携を深め、人権が尊重される地域社会の実現
  を図っていくことが大切です。
   また、道民が互いの個性や人格を尊重しながら、共に生きる共生社会の実現に当たっては、道民
  一人ひとりが、人権に関する知識を確実に身に付け、人権問題を自分の身近な問題としてとらえる感
  性や人権への配慮が自らの態度や行動に現れるような人権意識を育むことができるよう、家庭、学校
  地域社会、企業などあらゆる場を通じて、人権教育・啓発を推進していくことが大切です。


3 基本方針の性格
   この基本方針は、道民一人ひとりが互いの個性や人格を尊重しながら、助け合い、支え合って暮ら
  していくことができる地域社会づくりに向けて、今後の道政における人権施策の基本的な考え方を示
  し、人権施策の効果的かつ効果的な実現を図るとともに、道民をはじめ、市町村、企業やNPOなど
  の民間団体に対して、道の施策の展開方向を明らかにし、さまざまな主体の参画と協働の下に、人
  権施策の推進を図るためのものです。
   また、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」の趣旨に積極的に対応するものです。
   今後、道はこの基本方針に沿って、人権教育・啓発を積極的に推進します。

第2章 重要課題への対応

1 女 性
 (1) 経 緯
    国連は、従来から性に基づく差別の禁止を施策の重要な目標の一つに掲げ、男女平等実現のた
  めの努力を続けてきましたが、昭和50年(1975年)を「国際婦人年」、それに続く10年間を「国連・
  婦人の10年」と定め、女性の地位の向上を目指した世界的な行動を行うこととしました。
    特に、昭和54年(1979年)の第34回国連総会において「女子差別撤廃条約」を採択するととも
  に、平成5年(1993年)の「世界人権会議」における「ウイーン宣言」や、平成7年(1995年)の「第4
  回世界女性会議」での「北京宣言及び行動綱領」の採択において、女性の権利が人権であること、あ
  らゆる政策及び計画にジェンダーの視点を反映させるなどの行動方針が明記されました。
    我が国においても、このような国連の動きを踏まえ、昭和50年(1975年)に内閣総理大臣を本部
長とする「婦人問題企画推進本部」を設置し、国内行動計画の策定を行ったほか、昭和60年(198
  5年)には「女子差別撤廃条約」を批准するなど、男女平等の実現に向けて、国内法の整備や組織機
  構の改革などの環境整備が進められました。
   さらに、雇用分野における女性差別の撤廃を図るため、「男女雇用機会均等法」の制定、改正が行
われたほか、「男女共同参画社会基本法」を制定し、国、地方公共団体、国民の責務について規定す
  るなど諸制度の整備が図られてきました。
   道においても、このような国の取組と連動しながら、昭和53年(1978年)に「北海道婦人行動計
  画」(計画期間:昭和53年度から昭和62年度)、昭和62年(1987年)に「北海道女性の自立プラ
  ン」(計画期間:昭和62年度から平成8年度)を策定するとともに、審議会等への女性委員の登用目
  標率の設定をはじめ、方針決定の場への女性の参画を促進するなど諸施策の推進に努めてきまし
  た。
   平成9年(1997年)には「北京宣言及び行動綱領」で示されたエンパワーメントの理念の下、「人権
  の尊重」と「男女平等」を基本理念とする「北海道男女共同参画プラン」(計画期間:平成9年度から平
  成19年度)を策定し、施策の効果的な推進を図るため、公募委員を含む有識者で構成する「北海道
  男女共同参画懇話会」と、知事を本部長に関係部局で構成する「北海道男女共同参画推進本部」を
  設け、実施状況などの点検や問題点の把握に努めています。
   平成13年(2001年)4月には、男女平等参画の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進す
  ることを目的に「北海道男女平等参画推進条例」を施行し、「北海道男女平等参画苦情処理委員」
  や「北海道男女平等参画審議会」の設置、「北海道男女平等参画推進本部」の改組のほか、平成14
  年(2002年)3月には「北海道男女平等参画基本計画」(計画期間:平成14年度から平成19年度)
  の策定など、男女平等参画社会の実現に向けてさまざまな環境整備を進めています。

 (2) 現状と課題
   本道においては、女性が男性とともに開拓や生産の担い手としての役割を担ってきたことから、「男
  女差別意識が弱い」との道民特性が指摘されていますが、公的な附属機関の委員や企業・団体等の
  役職への女性の登用が遅れているといった問題のほか、職場での差別的な処遇などの問題や、家
  事や育児、介護に係る女性の負担が大きいなど、さまざまな面で男女平等参画が進んでいない現状
  にあります。
    また、職場や学校におけるセクシュアル・ハラスメント、夫やパートナーからの暴力いわゆるドメス
ティック・バイオレンスや、ストーカー行為のほか、性犯罪や売買春といった人権侵害も大きな社会問
  題となっています。
   これらの問題の背景として、「男は仕事、女は家庭」というような男女の役割に関する固定的な意
  識や、「男性の方が女性よりも優れている」といった性差別意識が社会にいまだ根強く残っていること
  があげられます。
   男女が、その人権を尊重され、社会の対等な構成員として、社会的文化的に形成された性別の概
  念にとらわれず、自らの意思によって社会のあらゆる分野の活動に参画する機会が確保されること
  により、男女が平等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責
  任を担う「男女平等参画社会」を実現するため、国、市町村、団体等と連携を図りながら、道民への
  意識啓発や教育、相談・支援等の施策を総合的に推進していく必要があります。

 (3) 施策の展開方向
   ア 男女平等参画の実現に向けた意識変革
    少子・高齢化の進行、経済の成熟化、国際化や高度情報化の進展など、経済・社会環境が大きく
   変化する中で、男女がさまざまな分野において平等にその個性や能力を発揮できるよう社会制度・
   慣習を見直すとともに、性による役割意識にとらわれることなく、個性や持てる能力を尊重する意識
   や男女平等意識を育むために、家庭、学校、地域社会、職場などあらゆる場において、人生の早い
   段階から生涯にわたり、男女平等の視点に立った教育や啓発を推進していくなど意識変革に向け
   た取組みを推進します。

   イ 家庭・職場・地域社会における男女平等参画の促進
     生活者としての女性の視点をあらゆる施策に反映させ、より良い北海道づくりに資するために
    は、行政や企業・団体などの方針決定の場に女性が参画できるよう気運の醸成を図るなど、女性
    登用の働きかけに努めます。
      また、農林水産業や商工業など生産、経営の場で女性が果たす役割への正しい認識をはじ
    め、企業における募集、採用、配置、昇進など雇用や就業の場において、女性が意欲を持って仕
    事に取り組めるよう男女平等の確保に努めます。さらに、家事や子育て、介護への支援体制の充
    実に努めます。

   ウ 女性の人権が尊重される社会づくり
     夫やパートナーからの暴力、セクシュアル・ハラスメント、ストーカー行為や性犯罪、売買春など
    人権を侵害する暴力から女性の尊厳を守るために、その暴力の形態に応じた迅速で適切な対応
    がとられるよう、警察や裁判所、女性相談援助センター、市町村、弁護士、民間団体など、幅広い
    関係者間相互の連携を図り、相談や保護、自立支援など、さまざまな取組の充実に努めます。
また、雇用の場はもとより、学校などでセクシュアル・ハラスメントの防止を図るための啓発な
ど、女性への暴力根絶についての意識の浸透に努めます。


2 子ども
 (1) 経 緯
    国連は、昭和34年(1959年)の国連総会で子どもが必要な権利や自由を享有することができる
  よう「児童の権利に関する宣言」を採択しました。
    この宣言の20周年に当たる昭和54年(1979年)を「国際児童年」とし、宣言の履行を要請した
  ほか、平成元年(1989年)の国連総会で「児童の権利に関する条約」を採択し、子どもを権利の主体
  と位置づけ、子どもの尊厳や生存、保護、発達や自由を保障するため、親をはじめ社会全体で取り
  組むよう呼びかけています。
   我が国においては、昭和22年(1947年)に児童の健全育成や保護を目的とした「児童福祉法」が
  制定され、すべての児童の幸福を図ることを目的に、昭和26年(1951年)に「児童憲章」が制定され
  ました。また、平成6年(1994年)には「児童の権利に関する条約」を批准するとともに、平成9年(19
  97年)には子どもや家庭を取り巻く環境の変化等を踏まえ、保育施策の見直しや児童の自立支援な
  どを内容とした「児童福祉法」の改正が行われました。さらに、平成12年(2000年)には子どもに対
  する虐待の禁止や虐待を受けた子どもの保護を内容とする「児童虐待の防止等に関する法律」の制
  定などの法整備と諸施策の推進が図られています。
   道においても、このような国の取組みを踏まえ、子どもの人権を擁護し、健全な発達を図るための
  各種施策や啓発活動などの取組みを推進してきました。
    平成9年(1997年)に、本道の次代を担う子どもたちを安心して産み育てる環境づくりを進めるた
  めの「北海道エンゼルプラン」(計画期間:平成9年度から平成16年度)を策定し、平成14年(200
  2年)3月にはその後の少子化の一層の進展や子育て支援の充実、児童虐待防止対策の強化といっ
  た時代の要請を踏まえ見直しを行うとともに、庁内外の推進体制を強化しながら関連施策の実施状
  況や課題に対する対応策を検討するなど、プランの着実な推進に努めています。
    一方、心ゆたかな青少年を育む環境づくりを図るため、平成10年(1998年)には、「北海道青少
  年健全育成推進方策」(計画期間:平成10年度から平成19年度)を策定し、関係部局と連携を図り
  ながら施策の推進に努めています。

 (2) 現状と課題
    「子ども」は未来を象徴する存在であり、21世紀を担う子どもたちが健やかに育つことは道民すべ
   ての願いです。
     しかし、近年、少子化や核家族化による家庭の養育能力や教育力の低下、地域社会とのつなが
りが希薄になっているといった問題や、大量の物や情報が氾濫する一方で子ども同士がふれあう機
会が減少するなど、子どもたちを取り巻く環境は厳しさを増しています。
    このような状況において、少年非行などの問題行動や学校における不登校、いじめ、暴力行為や
体罰のほか、薬物乱用の低年齢化や性の商品化といった子どもの権利を侵害する深刻な問題が発
   生しています。
    こういった問題の背景には、家庭や社会環境の変化とともに、子どもの権利への理解不足があ
げられ、大人が子どもを未熟な存在として支配的な意識を持ったり、保護や教育の対象としてのみ
   見ることが、子どもの主体性や社会性の欠如を招いているとも考えられます。そのため、家庭や学
   校、地域社会が緊密に連携しながら養育能力や教育力を高め、子どもを権利の主体と認め、その人
   権尊重や擁護に向けて取り組んでいくことが求められます。
    また、近年、児童虐待が急増し、大きな社会問題となっています。児童虐待は、複雑な家庭環境
を背景に家庭という密室で起こるため、顕在化しづらい特徴がありますが、子どもが最も信頼する保
   護者からの虐待は、子どもの人格を侵害するものであり心身の健全な発達に大きな影響を与える
だけでなく、生命にも関わる重大な犯罪です。
また、非行などの問題行動をとった子どもの多くが、被虐待経験があるという指摘や、子ども時代
に虐待を受けた親がその子どもにも虐待を加えるという世代間の連鎖が見られることから、子ども
   に対するケアだけでなく、虐待する親に対するケアも重要です。

 (3) 施策の展開方向
  ア 子育てしやすい環境づくりの推進
     子どもの健全な成長は社会の維持・発展の基礎であることから、少子化・核家族化といった背景
    を踏まえ、社会全体が協力して子育てを支援していく体制を整備していく必要があります。このた
    め、家庭での子育ての悩みや不安の軽減など子育てを支援する「子育てサポーター」や、子どもの
   遊び場の確保とともに、子育てサークルや母親クラブ、地域子育て支援センターの設置など地域組
   織活動の促進に努めます。
    また、子育てと仕事を両立しやすい雇用環境の整備や保育サービスの充実、子育てを男女が共
   に担う環境づくりなど、子育ての負担の軽減に向けた取組を推進します。
     さらに、子どもの健全育成に有害な社会環境の浄化を図るための啓発活動を行うとともに、「北
海道青少年保護育成条例」の適切な運用に努めます。

  イ 子どもの権利を尊重する教育や啓発の推進
     学校教育において、子どもや教職員に「児童の権利に関する条約」の趣旨の理解を図るととも
    に、人権教育を推進するための研修の実施など、人権に配慮し、一人ひとりの個性を尊重する教
    育の充実に向けた取組を推進します。
     いじめや不登校の防止や早期発見、問題解決を図るため、学校における相談体制の充実や電
    話など相談窓口の設置、子どもの居場所づくりの支援など家庭、学校、地域社会が連携を深め一体
    となって問題に対応できる体制の強化に努めます。
     また、いじめを受けた時にとるべき対応について、ワークショップにより子どもが自ら体験し、修
    得する機会の充実に努めます。

  ウ 虐待防止対策の充実
     急増する児童虐待を未然防止するとともに、早期発見とそれを相談・通告に結びつけるため、児
    童に対し相談窓口などの周知を図るとともに、一般道民や関係機関の理解を深めるための啓発活
    動や市町村ネットワ-クの構築に取り組みます。
     また、迅速・的確な対応を行うため、児童相談所を中心とした関係機関や民間団体との連携な
    ど、支援体制の強化を図るとともに、保護・治療の観点から、児童相談所の相談体制の充実に努
めます。

  エ 非行防止と立ち直りへの支援
     子どもの非行防止と立ち直りを支援するため、社会環境の浄化とともに、家庭、学校、地域社会
が一体となって支援できるよう、取組体制の整備に努めます。

3 高齢者
 (1) 経 緯
    国連は、各国における高齢社会への取組を踏まえ、昭和57年(1982年)に「高齢化に関する世
  界会議」を開催し、「高齢化に関する国際行動計画」を採択するとともに、平成14年(2002年)4月
  にはその後の高齢化の進行や社会経済の変化に対応させるため、行動計画のフォローアップと見直
  しを目的に「第2回高齢化に関する世界会議」を開催しました。
    また、平成3年(1991年)の国連総会では高齢者の「自立」、「参加」、「ケア」、「自己実現」、「尊
  厳」の5原則を、各国政府が実施する高齢社会対策に組み入れることを要請するとともに、平成4年
  (1992年)には「高齢化に関する宣言」が採択され、平成11年(1999年)を「国際高齢者年」とする
  など、人口の高齢化が世界規模で進展していくことを踏まえ、すべての国に対し高齢者問題に対する
  戦略的な取組の必要性を呼びかけてきました。
    我が国においては、出生率の低下や平均寿命の伸びに伴い、世界に類を見ない速さで高齢化が
  進んでおり、平成27年(2015年)には4人に1人が65歳以上の高齢者という本格的な高齢社会を
  迎えると予想されています。このような高齢社会に対応するため、平成元年(1989年)に「高齢者保
  健福祉推進10か年戦略」(ゴールドプラン)が、平成6年(1994年)には「新ゴールドプラン」が策定さ
  れました。
    また、平成7年(1995年)には「高齢社会対策基本法」が制定され、就業など分野別に国が講じる
  べき施策が規定されたほか、寝たきりや痴呆の高齢者の増加に伴い、高齢者の介護を社会全体で
  支える仕組みとして介護保険制度が平成12年(2000年)4月から施行されました。これと併せて平
  成11年(1999年)12月には、高齢者保健福祉施策の一層の推進を図る「ゴールドプラン21」が策
  定されました。
   本道での高齢化率は、平成12年度に18.2パーセントと全国平均を上回り、今後もさらに全国平
  均以上の速さで高齢化が進行するものと見込まれています。
   道ではこれまで、国の取組方針に基づき、「北海道高齢者保健福祉計画」(計画期間:平成5年度
  から平成11年度)を策定し、高齢者のための総合的な施策の推進に努めてきました。
    平成12年(2000年)には、介護保険制度の導入に伴い、「北海道高齢者保健福祉計画・介護保
険事業支援計画」(計画期間:平成12年度から平成16年度)を一体的に作成し、両計画の整合性を
図り、連携して事業を推進するとともに、道内21の高齢者保健福祉圏域毎に連絡協議会等を設置
し、保健・医療・福祉の連携の強化に努めています。

 (2) 現状と課題
    急速な高齢化が進む中で、寝たきりや痴呆の高齢者の介護の問題や、就労や社会参加などの場
   面で高齢者をとかく敬遠しがちな風潮が見受けられます。
    雇用面においては、働きたいという意欲や能力があるにもかかわらず、高齢であることを理由に
   就労の機会が奪われるといった問題があり、雇用機会の確保が課題となっています。
    また、高齢者の介護は家族に依存していることから、介護の長期化により家族の心身の負担が重
   くなり、その結果、家族の良好な人間関係が損なわれ、介護を要する高齢者に対する虐待や介護
   放棄の恐れがあるほか、老人福祉施設や病院などでは、入所者のプライバシーの侵害や身体拘束
   などの問題が生じています。
    さらには、悪質商法などにより一人暮らしの高齢者や痴呆性高齢者が財産権を侵害されるなど、
   高齢者の尊厳を踏みにじる事例も見受けられます。
    介護保険制度に見られるように、これからの介護サービスは利用者と提供者が対等の立場に立
   った契約が基本になりますが、判断能力が十分でない高齢者も少なくないことから、これらの人たち
   が適切なサービスを利用できるよう支援する必要があります。
     また、長い人生において社会に貢献してきた高齢者が、心身ともに健康で尊厳と生きがいを持
ち、住み慣れた地域で自立して生活を送ることができる社会を確立していくことが重要な課題となっ
   ています。

 (3) 施策の展開方向
  
  ア 高齢者の社会参加など生きがい・健康づくり
    道では、これまで北海道長寿社会振興財団や老人クラブ連合会などを通じて、スポーツ、社会
   活動、地域活動、仲間づくりなどさまざまな分野で高齢者の生きがい・健康づくり対策を実施してい
   ますが、高齢者が元気で暮らしていくための総合的な取組の推進に努めます。
  イ 高齢者の就労対策の推進
     社会経済の活力を維持していくためには、高齢者が長年にわたり培ってきた知識や経験、技能
    等を生かし、その能力や意欲に応じた雇用の場を確保することが重要であり、継続雇用の推進な
    ど雇用主等への啓発に努めます。
  ウ 介護サービスの充実
    介護サービスの利用者がサービスを適切に選択し利用できるよう環境整備を進めるとともに、介
   護支援専門員(ケアマネジャー)に対する支援や事業者に対する運営指導、家族介護の支援など介
   護サービスの充実に努めます。
     また、身体拘束ゼロ作戦の推進など、高齢者の尊厳を守り、適切な処遇が確保されるような環境
   の整備に努めます。
   エ 痴呆性高齢者施策の推進
     痴呆性高齢者とその家族が、住み慣れた地域で安心して暮らしていけるよう、地域における支
    援体制の確立など、在宅介護を行う家族の負担軽減を図るための施策の充実に努めます。
     また、判断能力が不十分な痴呆性高齢者を保護するため、成年後見制度や介護サービスの利
    用促進など高齢者の権利擁護のための施策の充実を図ります。

  オ 啓発・相談体制の充実
     道民が高齢者の福祉・人権等について理解を深め、思いやりの心や敬愛の念を育むよう教育・
   啓発を行うとともに、世代間の交流機会の創出などに努めます。
     また、介護サービスに関する苦情や、高齢者や介護者が抱えるさまざまな相談に対応できるよ
   う、身近な地域において相談できる体制の充実・強化に努めます。

4 障害者
 (1) 経 緯
    国連は、障害者の完全参加と平等をテーマに昭和56年(1981年)を「国際障害者年」と定めま
   した。また、翌年の国連総会では昭和58年(1983年)から平成4年(1992年)までの10年間を
   「国連・障害者の10年」と定め、障害者の人権確立に向けて世界的な行動を行ってきました。
    我が国においては、平成5年(1993年)に障害者の自立と社会参加の促進を図ることを目的に
   「心身障害者基本法」を「障害者基本法」に改正し、併せて平成5年(1993年)から10年間を期間
   とする「障害者対策に関する新長期計画」を策定するとともに、平成7年(1995年)には、新長期計
   画の重点施策実施計画である「障害者プラン~ノーマライゼーション7か年戦略~」を策定し、関係
   省庁が横断的、総合的に施策を実施してきました。さらに、障害者の社会への参加、参画に向けた
   施策の一層の推進を図るため、平成14年(2002年)12月に「障害者基本計画」(計画期間:平成
   15年度から平成24年度)及び「重点施策実施5か年計画」(計画期間:平成15年度から平成19
   年度)を策定しました。
    道においては、「国際障害者年」を契機に、昭和57年(1982年)に障害者施策に関する初めて
   の長期計画である「障害者に関する北海道行動計画」(計画期間:昭和57年度から平成4年度)
   を、また、平成5年(1993年)には「障害者に関する新北海道行動計画」(計画期間:平成5年度
   から平成14年度)を策定するとともに、平成10年(1998年)には、この計画の後期5か年の重点
   施策実施計画である「北海道障害者プラン」(計画期間:平成10年度から平成14年度)を策定し、
   障害者施策の総合的な推進に取り組んでいますが、これらの計画が平成14年度で終了すること
   から、21世紀初頭の北海道における障害者施策の一層の推進を図るため、新たな障害者基本計
   画(計画期間:平成15年度から24年度)を策定することとしています。
    また、平成9年(1997年)には、障害者をはじめ、すべての人々が自由に行動し、さまざまな分野
   における社会参加の機会を等しく有することができるよう、公共的な施設や交通機関を円滑に利用
   できる福祉のまちづくりを進めるため「北海道福祉のまちづくり条例」を制定しました。

 (2) 現状と課題
    ノーマライゼーションの理念の浸透に伴い、障害者に対する理解と認識は深まってきていますが、
   い まだに障害者に対する「偏見」や「差別」、「権利侵害」などの事例が見受けられるとともに、自立
   や社会参加を阻む障壁が依然として存在しています。      
    具体的には、建築物や歩道の段差など、障害者の利用への配慮不足、一人暮らしを始める際の
   アパートへの入居拒否や盲導犬などを同行した場合の入店拒否といった不利益な取扱い、障害の
   ない人に比べて低い就業率や資格・免許取得の制限などがあげられます。
    また、障害者施設での処遇に関わる不祥事、さらには障害者の財産権の侵害など判断能力が不
   十分であることにつけ込むといった経済トラブルも発生しています。
    これらの課題の解決に当たっては、障害者の自己決定を尊重するとともに、道民一人ひとりが障
   害者問題について正しい理解を深め、障害者との交流やふれあいを通じて、互いの違いや個性を
   認め合い、共に生きる社会づくりを進めていく必要があります。
    そのためには、障害及び障害者についての理解を深めるための啓発活動とともに、学校、地域社
   会などさまざまな場で交流教育を進めていくことが重要となっています。

 (3) 施策の展開方向
  ア ノーマライゼーション理念の普及と教育・交流機会の拡大
    障害者の完全参加と平等を実現するため、障害及び障害者の人権について理解を深め、差別や
   偏見が解消されるよう啓発活動の充実に努めます。
    スポーツ、文化活動、地域活動、社会活動などあらゆる場面で障害者の参加機会を確保するな
   ど、社会参加への支援を行うとともに、障害者が自ら企画・運営する活動への支援に努めます。
    児童や生徒が障害者への正しい認識を身に付け、お互いの立場を思いやり、相互に協力し合う
   心や態度を養うため、障害のある子どもとない子どもが共に育つ環境の整備と、ボランティア活動
   の実践など福祉に関する学習機会の充実に努めます。

  イ 雇用・就業対策の推進
     働くことを希望する障害者の就業が促進されるよう、必要な技能習得や職場適応訓練の実施な
   ど雇用の促進を図るとともに、事業主に対する啓発など、働く場の確保に努めます。

  ウ 権利擁護等の推進
     サービス利用者が適切なサービスを受けられるよう、サービスの質の向上・確保に努めるとと
   もに、利用サービスについての苦情や障害者のさまざまな相談に対応できるよう、相談体制の充
   実・強化を図ります。
    また、障害者の地域での生活を支援するとともに、判断能力が十分でない障害者の財産権を守る
   ため、福祉サービスの利用援助や成年後見制度等の周知や活用促進などに努めます。
     障害者の意見を政策に反映させるため、審議会委員などへの登用や意思決定機会への参画を
   推進します。

  エ 福祉のまちづくりの推進
     「北海道福祉のまちづくり条例」に基づき、公共的な建物や道路、公園、住宅などの整備を促進
    し、誰もが利用しやすい福祉のまちづくりを総合的に推進します。

5 アイヌの人々
 (1) 経 緯
    国連は、昭和40年(1965年)の総会で人種差別の問題を包括的に規定した「あらゆる形態の人
  種差別の撤廃に関する国際条約」を採択するとともに、昭和57年(1982年)には国連人権委員会
  の差別防止・少数者保護小委員会に先住民作業部会を設け、平成5年(1993年)には「先住民族の
  権利に関する国連宣言案」を合意、平成16年(2004年)の総会における採択を目指し、現在、国連
  人権委員会の作業部会において同案の検討が進められています。
   我が国においては、明治2年(1869年)に政府が開拓使を設置し、蝦夷地を北海道と改め、道外
  からの移民を奨励したため、北海道の人口は飛躍的に増加しましたが、急激な開拓や加工品生産を
  目的とした資源確保のため鮭や鹿の捕獲が禁止されるなどアイヌの人々の生活基盤に大きな打撃を
  与えたほか、伝統的生活習慣の面でも、女性の入れ墨や男性の耳環の禁止、日本語使用の強制と
  いった同化政策が進められました。
   徳川幕府の時代に松前藩がとった場所請負制度の下での搾取などに続くこうした厳しい政策によ
  り、アイヌの人々は社会的にも経済的にも恵まれない状況が続きました。このため、アイヌ民族への
  農業の奨励、教育などの保護対策の実施を目的に、明治32年(1899年)に「北海道旧土人保護
  法」が制定されましたが、アイヌの人々の窮状を改善するには十分ではなく、弱者保護や福祉対策
  といった性格が強く、人権尊重の観点に立ったものではありませんでした。
   戦後、我が国の民主化が進むのに呼応するように、北海道ウタリ協会を中心に、アイヌ民族の自立
  と社会的地位の向上を目指す運動が展開されるようになり、こうした動きの中で、アイヌの人々と国民
  一般との格差を是正するためのさまざまな支援策が講じられるようになりました。平成9年(1997年)
  7月にはアイヌの人々の永年の願いであり、我が国の法体系の上で初めてアイヌの人々を民族として
  認めた「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統に関する知識の普及及び啓発に関する法律」(以下「
  アイヌ文化振興法」という。)が施行されました。
    また、平成9年(1997年)3月、札幌地方裁判所の二風谷ダム訴訟判決において、『アイヌの人々
  は我が国の統治が及ぶ前から、主として北海道において居住し、独自の文化を形成し、アイデンティ
  ティを有し、我が国の統治下においてもなお、独自の文化とアイデンティティを喪失していない社会的
  集団である』として、アイヌ民族を先住民族と認めています。
   さらに、アイヌ文化振興法成立時の国会の附帯決議でも、歴史的事実としてアイヌ民族の「先住性」
  について認めており、今後は国際的動向を注視しながら、先住民族であることや先住権に関しても検
  討していくことが望まれます。
   道においては、昭和47年(1972年)に「北海道ウタリ生活実態調査」を実施した結果、アイヌの人
  々と道民一般との格差が認められたことから、生活、教育、雇用、産業などアイヌの人々に対する総
  合的対策として「北海道ウタリ福祉対策」を昭和49年(1974年)から4次にわたり進めてきました。
   平成14年(2002年)4月からは、「アイヌの人たちの生活向上に関する推進方策」(計画期間:平
  成14年度から平成20年度)と名称を変え、引き続き対策を進めています。
    また、昭和63年(1988年)には北海道ウタリ協会とともに、新法制定を国に要請し、制定後の平成
11年(1999年)3月には、同法に基づき、「アイヌ文化の振興等を図るための施策に関する基本計
画」を策定し、アイヌの人たちの生活の安定向上に関する施策とともにアイヌ文化の振興等に関する
  諸施策を並行して実施しています。

 (2) 現状と課題
    アイヌの人々は、狩猟や漁労を中心とする暮らしを営む中で、独自の言語であるアイヌ語や、自然
  との共生を基本とした信仰や風俗習慣、ユウカラなどの口承文芸や古式舞踊など、固有の豊かな文
  化を育んできました。
    現在では、アイヌの人々の社会的、経済的地位の向上を図るとともに、アイヌ文化を振興し、アイ
  ヌの伝統等に対する国民の理解を促進するため、さまざまな施策が推進されていますが、過去、長い
  間にわたりアイヌの人々が社会的にも経済的にも恵まれない状況に置かれてきたことは歴史的事実
  であり、このため、アイヌ民族としてのアイデンティティは脈々と受け継がれているものの、長い苦難の
  歴史の中で、アイヌの人々の言語や文化、伝統的生活習慣など失われていったものも少なくありま
  せん。
    また、アイヌの人々と道民一般との格差は一定程度解消されてきているものの、生活保護率や大
学進学率などにおいてはまだ大きな格差が認められるほか、いまだに結婚や学校などにおける差
  別や偏見の存在も報告されています。
    自然を敬い、自然との関わりの中で伝統文化を培ってきた「アイヌの人々との共生」を実現していく
  ことは、北海道にとって21世紀を人権の世紀とするための、重要な試金石であると考えます。

 (3) 施策の展開方向
  ア アイヌ文化の振興とアイヌの人たちに対する理解の促進
    アイヌの伝統や文化はアイヌの人々の民族としての誇りの源泉であり、これらの伝統や文化が次
   代に継承されることが、アイヌの人々の人権を尊重するという観点からも重要なことと考えます。
     このため、アイヌ語やアイヌの伝統文化の保存、振興に向けた施策の推進に努めます。
     また、道が基本構想を策定したアイヌの伝統的生活空間(イオル)の再生の実現に向けた国に
    おける取組を推進するよう、積極的に働きかけます。
     さらに、アイヌ民族に関する正しい理解や認識の不足により、いわれのない差別や偏見が生じる
    ことのないよう、学校において子どもたちがアイヌ民族の歴史や伝統文化について学習する機会
    が得られるよう、学校教育で活用できる教材の作成や教職員の研修機会の確保など、教育や啓
    発の推進に努めます。

  イ アイヌの人たちの生活の安定と産業の振興
    道民一般と比べてなお生活水準に格差が認められる状況に鑑み、生活や教育、雇用、産業など、
   アイヌの人々のニーズを踏まえ、さまざまな角度から必要な支援を行うとともに、アイヌの人々の自
   主的な活動の促進と、社会的、経済的な地位の向上を図ります。

6 外国人
 (1) 経 緯
    我が国における外国人問題は、「サンフランシスコ平和条約」の発効により、日本国籍を喪失した
旧植民地出身者、中でも在日韓国・朝鮮人(オールドカマー)に対する社会保障や参政権の付与な
   どの処遇問題がその中心となっていました。
    外国人の人権について、昭和53年(1978年)最高裁判所は、『基本的人権の保障は、権利の性
質上日本国民のみをその対象にしていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対して
  も等しく及ぶ』との認識を示し、昭和54年(1979年)の「国際人権規約」の批准と昭和56年(1981 年) の「難民の地位に関する条約・議定書」加入を契機に、我が国において、外国人法制について
見直しが進められ、外国人への社会保障サービスの提供や、在日韓国人など特別永住資格者への
  指紋押捺義務の免除などを内容とした「外国人登録法」の改正が行われました。
    しかし、特別永住資格者に対して、いまだに刑事罰を伴う外国人登録証明書の常時携帯が義務
  付けられており、制度目的の是非を含め、外国人登録制度のあり方について見直しが求められてい
  ます。
    一方、1980年代以降は、労働力不足を背景に、多くの外国人労働者が日本の労働市場に流入
  しましたが、「出入国管理及び難民認定法」(以下「入管法」という。)では労働者の滞在を正規化でき
  る在留資格が設けられていなかったため、多くの外国人が不法就労者となり、労働条件あるいは生
  活面でさまざまな不利益を受けるいわゆるニューカマーの問題が発生しました。
    こうした事態を受けて政府は平成元年(1989年)に「入管法」を改正し、就労・活動制限の有無な
  どを基準に、日系2世、3世などの優先的入国・在留を認めることにしましたが、一方で生活保護の対
  象者や国民健康保険の加入条件など、在留資格の有無で権利の享受に明確な差異が設けられるよ
  うになりました。その結果、不法就労者などその狭間に居る外国人労働者が生命や健康に深刻な影
  響を受ける事態が生じています。
    国連は、平成2年(1990年)の総会で「すべての移住労働者及びその家族の権利保護に関する
  国際条約」を採択し、すべての移住労働者とその家族に認められる権利内容を明らかにしましたが、
  この条約では不法就労者も含めた移住労働者の報酬や労働条件について内国民待遇とするととも
  に、子どもの教育を受ける権利なども在留資格の有無に関わらず認めることとしています。
    1990年代に入り、外国人登録者の過半数を在日韓国人など特別永住資格者以外の外国人が占
  めるなど、日本社会においても多民族化が顕著となっています。
    我が国においても、こうした国際的な枠組みの中で、外国人労働者の問題に対応していくことが求
  められています。
    道では、本道の国際化の推進を図るため、平成10年(1998年)4月に「国際化の推進方策」を
  策定し、市町村や民間団体などと連携を図りながら、国際交流や国際協力、さらには外国人が住み
  やすいまちづくりなどの施策を進めています。

 (2) 現状と課題
    経済はもとより社会・文化などさまざまな分野でグローバル化、ボーダレス化が進み、我が国で暮
   らす外国人は年々増加しています。
    本道における外国人登録者数は、平成13年(2001年)末で16,100人と、10年前と比べて約
   1.3倍に増加するなど、学校、地域社会、職場など日常生活のさまざまな場面で外国人と接する機
   会が増えてきています。
    こうした外国人の増加に伴い、言葉や文化、生活習慣や価値観の違いなど、外国人と地域住民と
   の相互理解の不足による誤解やトラブルも見受けられます。
    近年では、参政権や地方公務員への採用に当たっての制約のほか、入浴施設での外国人の利
   用拒否や飲食店等への利用制限などの問題も発生しています。
    このような状況の中、これまで日本人だけを対象としてきた制度を見直し、本道に暮らす外国人も
   同じ地域の一員として迎え入れる開かれた地域社会づくりを進め、すべての人が同じ人間として人
   権や人格を尊重し合い、異なる文化や考え方を認め合う共生意識の醸成が極めて重要になってい
   ます。

 (3) 施策の展開方向
  ア 国際理解の促進と共生意識の醸成
     道民一人ひとりが国際社会に対する認識を深め、異なる価値観を理解し、人権を守り尊重する
    意識や行動力を養うため、講演会をはじめ外国人が参加しやすい交流イベントの開催など、さま
    ざまな啓発を実施します。
     また、本道を訪れる外国人の生活習慣の違いによるトラブルを防ぐため、滞在に当たって守る
    べきマナーやルールの啓発に努めます。

  イ 学校における国際理解教育や多文化教育の推進
     諸外国の人々の生活や文化について理解できるような学習の充実を図るとともに、教職員の海
    外派遣や外国語指導助手の活用など、学校教育における外国語教育の振興や国際理解教育、
    多文化教育の推進に努めます。

  ウ 外国人が住みやすい地域づくり
     外国人が地域社会で安心して暮らすことができるよう、日常生活に必要な知識や情報の提供、
    関係機関との連携による相談体制の強化、日本語学習機会の拡充など、生活環境の充実に努
    めます。
     また、外国人が地域社会にとけ込むことができるよう、住民との交流機会の拡大や、各種行政
    施策への外国人の意見・ニーズの反映に努めます。
     地域に暮らす外国人が、外国人であることを理由に不合理な差別や不便を被ることのないよう、
    外国人の人権に配慮した施策の推進に取り組むとともに、参政権の行使や地方公務員への採用
    などの地方自治への参画については、国の動向などを踏まえ適切に対応します。

7 HIV感染者等
 (1) 経 緯
      エイズとは、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)によって起こる疾患で、正確には 「後天性免疫不全症
   候群」といいます。
     また、HIV感染者とは、エイズウィルスへの感染が確認されているが、エイズを発症していないキ
    ャリアの状態の人を指します。
     HIV感染者やエイズ患者が初めて確認された際には、特殊な病気として見られたことやエイズに
   関する正しい知識が普及していなかったこともあり、患者や感染者への誤解や偏見が広がるなど
   大きな社会問題になりました。
    「世界保健機関」(WHO)は、昭和63年(1988年)にエイズのまん延防止と患者や感染者に対す
   る差別や偏見の解消を図るため、12月1日を「世界エイズデー」と定め、エイズに関する啓発活動
   の実施を呼びかけました。
     また、平成8年(1996年)には、国連人権高等弁務官事務所と国連エイズ合同計画により、「HI
    V及びAIDSと人権に関するガイドライン」が採択され、HIV感染者の人権保障について、各国が取
    り組むべき措置が示されました。
     我が国においては、平成元年(1989年)に「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律」(以
   下「エイズ予防法」という。)が制定され、平成11年(1999年)には、感染症患者等の人権に配慮し
   た施策を推進することを基本理念とした「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する
   法律」が施行され、これに伴い「エイズ予防法」は廃止されました。
     この前文では、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者に対するいわれ
   のない差別や偏見があった事実を重く受け止め、今後の教訓としています。  
     本道においては、「北海道感染症予防計画」を策定し、感染症に対する知識の普及啓発や感染
   症患者等に対する人権に配慮した各種施策が実施されています。
     エイズについては、一般道民を対象としたパンフレットの作成配布やテレビ等の広報媒体の活用
   により、正しい知識の普及啓発を進め、HIV感染者等に対する差別や偏見の解消に努めています。
    ハンセン病患者については、平成8年(1996年)の「らい予防法」廃止まで続いた国の隔離政策
   が患者の人権を制限し、差別や偏見を生む原因となり、多くの患者やその家族に大きな苦しみを与
   えてきました。
     平成13年(2001年)5月の「ハンセン病国家賠償請求訴訟に係る熊本地方裁判所判決」に対
   し、国はハンセン病問題の早期解決のため控訴を断念し、「ハンセン病療養所入所者等に対する
   補償金の支給等に関する法律」を制定したほか、名誉回復等の施策に取り組むこととしました。

 (2) 現状と課題
    エイズへの知識がある程度普及した現在においても、感染者に対する理解はいまだ十分とはいえ
   ない状況にあります。エイズウィルスへの感染は性生活を行うすべての人に関係する問題ですが、
   依然として自分には無関係な一部の人の病気という意識が根強く残っており、予防行動がきちんと
   なされず感染者の増加を招いたり、感染者への差別や偏見を助長する一因ともなっています。
    我が国において、平成14年末までに報告されたHIV感染者及びエイズ患者の数は約9千人にも
   のぼりますが、中でも、20代を中心とした若年層で増加していることから、特に21世紀を担う青少
   年に対して、エイズ問題だけでなく性一般に関する正しい知識や理解を深め、適切に行動できるよう
   啓発などの予防対策を推進していく必要があります。
    ハンセン病患者は、「らい予防法」の廃止により、自らの意志で療養所を退所することができるよう
   になりましたが、いまだに多くの方が生活への不安や偏見、差別への恐れから療養所で生活を続け
   ており、社会復帰を促進するためには、正しい知識の不足からくる差別や偏見の解消に向けて、普
   及啓発や広報活動に一層取り組むなど、安心して生活できるよう環境を整備していくことが重要です。

 (3) 施策の展開方向
  ア 教育・啓発活動の推進
     HIV感染者、ハンセン病患者などへの差別や偏見を解消するため、平成12年(2000年)策定
   の「北海道感染症予防計画」などに基づき、道民への正しい知識の普及啓発に努めます。
     特に、HIV感染症については、若年層での増加が見られることから、関係機関の連携のもと、健
   康教育の一環として、他の性感染症予防も含め、具体的な知識や情報提供とともに、互いの健康
   や権利の尊重など総合的な視点から啓発に努めます。

  イ 患者等の人権に配慮した相談体制等の整備
     患者等のプライバシーの保護を図るため、関係職員に対する研修を通じその徹底を図るととも
   に、医療機関に対する適切な指導に努めます。
     また、身近な保健所等においてHIV感染の匿名検査や相談対応を行うとともに、利用しやすい
検査・相談体制の整備に努めます。

  ウ 自立・社会参加への支援
     HIV感染者については、安心して医療を受けられる体制の整備やカウンセラー等による相談対
   応などにより、心理的支援に努めます。
     また、ハンセン病療養所の入所者の社会復帰に際し、必要に応じ関係機関と連携した支援に努
   めます。

8 その他の人権をめぐる問題
   人権に係る重要課題のほか、さまざまな新しい課題が発生しており、これらへの積極的な対応が必
  要です。

 (1) 同和問題
   同和問題は日本社会の歴史的発展の過程において形成された身分階層構造による問題であり、
  日本国憲法の基本的人権に関わる問題です。
   同和問題の解決は国の責務であり、国民的課題とされ、生活環境の格差は大きく改善されました
  が、依然として教育、就業、結婚問題などで根深く差別が存在しています。
   また、高額図書の購入強要をはじめとするえせ同和行為やインターネット上の差別書き込みなど、
  同和問題の解決を妨げる悪質な事例も発生しています。
   本道においては、同和問題に対する認識は浅い現状にありますが、我が国固有の人権問題とし
  て、正しい理解の普及啓発に努めます。

 (2) 犯罪被害者の人権
    犯罪被害者やその家族は、生命・身体・財産上の被害だけでなく、捜査や裁判の過程で被る精神
  的ショックや、周囲のうわさ話、マスコミの取材による二次的被害や「お礼参り」による再被害の懸念
  など、さまざまなストレスに苦しんでいます。
    このような中、「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続きに付随する措置に関する法律」や
「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」といった犯罪被害者の人権に配慮し、保護や救済を
  図るための法整備が進められ、本道においても、道警を中心に被害者の心情に配慮した相談対応な
  ど支援対策が行われています。
   被害の回復を助けることは社会の責務であり、今後とも、行政、司法、民間などより多くの機関・団
  体の協力・連携を図り、被害者の立場やニーズを踏まえた支援対策をさらに推進していくとともに、道
  民に対しても、犯罪被害者の心情に配慮した行動がとられるよう、啓発に努めます。

 (3) 刑を終えて出所した人の人権
    刑を終えて出所した人やその家族に対する根強い差別や偏見により、犯罪前歴者の社会復帰が
   困難な状況に置かれています。再犯の防止と円滑な社会復帰を図るためには、犯罪前歴者も地域
社会を構成する一員として理解と協力が不可欠であり、地域の受入体制を整備していく必要があり
  ます。
    道ではこれまで、更生保護施設整備への助成や保護司の人たちが行う活動への支援を行ってきて
  いますが、差別や偏見を解消するための啓発活動や、刑を終えて出所した人たちの立ち直りの支援
  に努めます。

 (4) 性的マイノリティ
    性的マイノリティについては、自らの性的指向や性自認などを明らかにすることにより、受けること
  が予想される嘲笑や侮蔑といった周囲の無理解による悩み、不安など、さまざまな苦痛を抱えてい
  ます。
   また、同性愛者同士の結婚については、現状では法律上の保護が与えられておらず、相続や所得
  上の不利益など異性愛者であれば遭遇しない、さまざまな困難や問題に直面しています。
   思春期においては性的マイノリティに関する正しい知識を得られる機会が少ないため、自己の性的
  指向に悩んだり、家族や友人、教師などの何気ない言葉や態度で精神的に傷つくことがあります。
   学校教育で男女に関する社会的な性役割や人権も含めた広い視野から多様な性の問題について
  学習する機会を設けるなど、性的マイノリティに対する理解を深め、差別や偏見をなくすよう教育・啓
  発に努めます。

 (5) 知る権利とプライバシーの保護
   国や地方公共団体の活動について、正確な情報を得たいという「知る権利」が主張されている一方
 情報産業の発達により個人情報が自分の知らない間に集められ、利用されるといった問題や、インタ
 ーネットのホームページの掲示板への悪質な書き込みなど「プライバシーの保護」に関わる問題があり
 ます。
   道では「北海道情報公開条例」とともに「北海道個人情報保護条例」により、個人情報の管理などプ
  ライバシー保護のため適切な管理に努めるほか、道民一人ひとりがモラルを守るよう、意識啓発に努
  めます。

 (6) 良好で快適な環境の恵みの享受
   人類の存続基盤として欠くことのできない環境は、自然の生態系の微妙な均衡の下に成り立つもの
  であり、これまでのような大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会経済活動を続けていくことは、私た
  ちを取り巻く地域の環境のみならず地球全体の環境をも脅かすものであることが広く理解されてきま
  した。
   このような理解の下に定められた「北海道環境基本条例」では、「私たちは、健康で文化的な生活を
  営むため、良好で快適な環境の恵を享受する権利を有する」としており、条例の理念を実現するため
  の基本認識として位置づけています。
   道としては、この基本認識を踏まえ、環境重視型社会の構築に向けて、環境施策の総合的な推進
  に努めます。

第3章 人権施策の推進

1 あらゆる場を通じた人権教育・啓発の推進
   人権意識を高めるためには、道民一人ひとりが人権について正しい理解と認識を深めるよう啓発を
  行うとともに、それが単なる知識にとどまることなく、人権への配慮が態度や日常生活での行動に現れ
  るように、家庭や学校、地域社会、企業などあらゆる場を通じて、子どもから大人まで各段階に応じ、
  体系的・長期的な視点に立った、より実践的な人権教育・啓発を推進します。

 (1) 家 庭
   家庭はあらゆる教育の出発点であり、大人も子どもも家族とのふれあいを通じて他者への思いやり
  や善悪の判断、生活習慣やマナーを身に付けるなど、人格形成の基盤として、また、さまざまな人権
  問題を学ぶ場として、重要な役割を担っています。
   しかし、近年、核家族化や少子化を背景として、家族の結びつきなど「家」が持っていた包容力や教
  育力といった、家庭の養育機能の低下が指摘されています。顕著な事例として、保護者等による過保
  護や過干渉、養育怠慢・養育放棄や虐待、また、配偶者等によるドメスティック・バイオレンス、さらに
は、要介護者を抱える家族の介護における心身の負担が増大していることによる高齢者への虐待や
 介護放棄など、個別では対応が困難な問題をはじめとしたさまざまな問題があり、家庭としての機能を
十分に果たせない要因となっています。
   道ではこれまで、子育てや家庭教育に悩む親への相談・情報提供等の支援や、在宅介護を行う家族
への支援やドメスティック・バイオレンスに悩む女性への支援などを行ってきましたが、家庭は私的な
場でもあり、問題も潜在化しやすい傾向にあることから、学校、地域社会、民間団体など関連機関相
  互の連携を深め、家庭の教育力や養育機能の向上を図るためのサポート体制を確立していく必要が
  あります。
   このため、人権教育について、親子が共に学習できる機会の確保や、子どもや要介護者を安心し
  て託せる体制づくりなど、家庭の構成員が人権教育を容易に受けることができるような環境づくりに努
  めます。
    また、人権教育において、子育てや家事、介護などについて、固定的な役割分担にとらわれること
なく、男女が共に協力して当たるような意識づくりに努めます。

 (2) 学 校
   学校教育においては、教育活動全体を通じて、人権尊重の精神を育むとともに意識を高めるため
  の教育が行われています。しかし、知的理解にとどまり、人権感覚が十分身に付いていない、教職員
  に人権尊重の理念について十分な認識が必ずしもいきわたっていない、また、いじめや体罰、セクシュ
アル・ハラスメントや障害のある児童生徒への差別や偏見に対する教育、指導などの取組が十分な効
  果をあげるまでには至っていないなどの意見があります。
   人権教育を単なる知識の伝達にとどめずに、命の大切さや他人の痛みが理解できる心、違いを認
め合いお互いの人格を尊重する心、正義や公正さを重んじる心など、豊かな人間性を培うことを目的と
して推進することが重要であり、このような人権意識の精神は自他との交流で育まれることから、家庭
や地域、民間団体などとの協力・連携を深め、広く人材を求めると同時に、ボランティア活動や自然体
験活動、高齢者や障害者、外国人との交流など、幼少期の段階からのさまざまな体験学習の機会の
充実に努めます。
   また、いじめや差別などは誰にでも起こり得る問題ですから、いじめや差別を実際に受けた時にと
るべき対応などについて指導の充実に努めます。
   人権教育の推進に当たっては、人権教育の担い手となる教職員の役割と自覚が重要となることか
ら、教職員に対し、人権に関する正しい理解と認識を深め、資質や指導力の向上を図る研修の推進
や自己研鑽への支援などに努めます。

 (3) 地域社会
   他者への思いやりや豊かな情操、善悪の判断など、倫理観や人格の多くは身近な存在である保護
  者とともに、地域で日常出会う人々とのふれあいなどを通じて年少時に形成されることから、家庭、地
域社会のあり方は人権意識を育む上で重要な意味を持っています。
   人権教育の原点が家庭、学校とともに地域社会にあることを改めて認識し、家庭と学校、地域社会
  が連携して、権学習の場を提供し、子どもたちをはじめ地域で暮らす人たちへの学習機会の充実を図
っていく必要があります。
   道ではこれまで、人権に関する講演会やパネルディスカッションの開催のほか新聞紙面を活用した
  啓発、啓発資料の配布などの取組を行ってきました。「道政に関する世論調査」(北海道:平成13年
  度)では、「人権や差別問題に関心がある」と答えた人は43.8パーセントで、「少し関心がある」と答
  えた人を含めると81パーセントになりますが、関心を持たない層への働きかけや、道民が人権に対
  する正しい理解を深め、自らの課題として日常生活で生かしていけるよう、効果的な学習機会の開発
  と提供に努めます。
   そのためには、庁内関係部局や人権と関連の深い活動を行うNPOなど民間団体との協力・連携を
  図りながら、老人大学や女性学級などの地域活動のあらゆる場を活用し、生涯学習の観点から各世
  代に応じた人権教育・啓発の取組を促進します。

(4) 企業等
   不公正な採用やセクシュアル・ハラスメント、職場におけるいじめ、高齢者や障害者の雇用など、企
  業等においても人権問題は重要な課題となっています。
   企業等も社会を構成する一員であり、その社会的責任に照らし、人権尊重の確保のための努力が
  望まれますし、そこで働く人自身も社会の一員として差別や偏見のない職場環境づくりに努めていくこ
  とが望まれます。
    道では、企業等の採用時における就職の機会均等が図られるよう、女性や障害者などに対する道
  民の理解や認識を深めるための啓発や、就業を促進するため職業能力開発などの取組を行ってい
  ます。
    一方、企業等においても取組に違いはあるものの、実情や方針に沿って、人権教育・啓発が進め
  られていますが、障害者の法定雇用率の達成や高齢者の継続雇用の問題、男女の採用や業務内
  容、賃金や昇進等の格差是正など多くの課題が存在しています。   
   企業等は人権教育・啓発の実施主体として、重要な一翼を担うと期待されることから、道としても、
  人権に関連する講習会等への参加呼びかけや、各種啓発資料等の配布など、自主的、計画的な人
  権教育・啓発が行われるよう支援に努めます。
   また、企業等が新規採用職員研修、管理職研修などすべての階層の研修で人権啓発を取り入れて
  いくためには、対象に応じた人権啓発プログラムの存在と講師の依頼が容易に行えることが必要で
  す。このため、道機関等で開発された人権啓発プログラムが企業等にも公開され自由に利用できる
  制度や、NPΟなど民間団体も含めた人材交流のネットワークの構築に努めます。

 (5) 道機関等
    公務員は全体の奉仕者としての自覚を持ち、憲法の基本理念である基本的人権を尊重し、擁護
   する責務を有しています。
    道の行政に携わる職員はこの責務を自覚し、一人ひとりが人権について正しい理解と認識を深
   め、それぞれの職務において人権の視点に立ち、誠実かつ公平に職務を遂行することが求められ
   ます。
    特に、人権に関わりの深い業務に携わる部署では、人権に配慮した適正な業務執行がなされるよ
   う職場研修や専門研修などが実施されていますが、人権の重要性とその理念の普遍性に鑑み、新
   規採用職員研修をはじめ管理職研修など、すべての階層の研修や、あらゆる場を活用した人権
   教育・啓発に努めます。
    また、その内容を公開し、企業等が自社の人権教育・研修プログラムの参考にできるようなシステ
   ムの構築に努めます。
    職員一人ひとりが人権教育・啓発を通じて、セクシュアル・ハラスメントの防止や従来の固定的な
   性別の役割意識の解消なども含め、人権が尊重される明るい職場づくりを進めるとともに、各職場
   における自主的な研修の促進など、職員の資質の向上に努めます。
    また、外部講師の参加や、実施結果の第三者による定期的な評価など、研修の効果を高めるた
   めの工夫をします。

2 効果的な人権教育・啓発の推進
   人権学習の主体は道民であるとの認識のもと、道民一人ひとりが人権の重要性と必要な知識を身
  に付け、人権への配慮が日常の態度や行動に表れるよう、創意工夫を凝らした啓発活動の実施に
  努めます。

 (1) 効果的な啓発手法の開発
   道民一人ひとりが、人権問題と自らの関わりについて学び、その重要性や解決策などに気づき、す
  べての人の人権を尊重した行動へとつながるような人権啓発は、受け手の感性に働きかけることが
  重要です。
   また、今日においては、自らの人権が侵害される事態は誰にでも起こり得るとの認識に立ち、自ら
  の人権を守るための対応を身に付けていく必要があります。
   そのための人権教育・啓発の推進に当たっては、対象となる年齢層に沿った、誰もが興味を覚える
  ようなテーマや教材を活用するとともに、グループ学習やワークショップなど参加・体験型の学習手法
  により、知識にとどまらない実践的なものとなるよう、その研究・開発に努めます。

 (2) 人材の育成と活用
   道民が日常生活の中で人権に配慮した行動をとるためには、身近なところで人権問題に関わる知
  識や経験を持つ人材とのふれあいや交流を通じて人権意識を育んでいく必要があり、人権教育・啓
  発に携わる指導者の養成が重要となります。
   このため、人権擁護委員や、人権関連の講演会や研修会を開催する市町村などと連携して、人権
  関連の人材バンクを構築するとともに、その活用と資質の向上を図ります。

 (3) 情報提供の充実強化
    「道政に関する世論調査」(北海道:平成13年)では、人権意識を高めるための効果的な啓発方法
   として、「テレビ・ラジオ」(75.4%)や「新聞」(57.1%)、「講演会・シンポジウム」(29.4%)など
   があげられています。
    高年代については「新聞」、「広報誌やパンフレット」、「研修会」が、若い年代においては「インター
   ネット」や「啓発用ビデオ・映画」が効果的としています。情報提供に当たっては、啓発対象となる年
   齢層などを踏まえ、啓発媒体の特性を生かし、受け手の意識や感性に訴える啓発に努めます。
    また、人権尊重社会の実現にマスメディアの果たす役割や影響力は非常に大きくなっていること
   から、人権教育・啓発に当たってはこれらマスメディアの有効活用を図ります。

 (4) 相談・支援体制の充実
    人権問題に係る相談・支援は、現在、法務局と人権擁護委員が実施しています。
    道では、女性や子どもなどさまざまなニーズに対応した相談窓口を設置しており、市町村や団体に
   おいてもそれぞれ相談窓口を設けて対応していますが、さまざまな人権問題の発生や、道民の人権
   意識の高まりから、今後、これらの相談窓口の役割はますます重要になってくるものと予想されます。
    しかし、これらの相談窓口は専門毎の対応となっており、人権全般に対応できるものとはいえない
   ことから、「利用しづらい」、「どこに相談したら良いかわからない」といった事例もありますし、公的な
   相談機関について、「敷居が高い」、「相談窓口の存在自体を知らない」といった声も聞かれます。
    このため、相談窓口の情報提供など活動内容の周知に努めるほか、相談機関相互のネットワー
   クの構築など連携の強化により、相談窓口の活用と関係職員及び相談員の資質の向上に努めま
   す。
    また、道民の人権問題に関する意識の普及高揚を図るため、このような相談機能に加えて、さま
   ざまな人権問題に関する効果的な情報収集・提供、啓発のあり方について検討を進めます。

3 推進体制の整備
   人権教育・啓発の効果的な推進や、人権に係るさまざまな重要課題に的確に対応するため、今後
  はこの基本方針に沿って、道政のあらゆる分野で組織横断的な連携を図り、人権施策を積極的に推
  進します。

 (1) 道の推進体制
   道政のあらゆる分野で、人権尊重の視点に立った施策の推進と道民の人権意識の醸成・高揚を図
  ることを目的とし、知事を本部長とする「北海道人権施策推進本部」を設置して、庁内の関係機関が
  密接な連携を図り、総合的かつ効果的な人権施策の推進に努めます。
   人権を基本に据えた道政を積極的に推進していくためには、人権を専掌する組織の設置が必要と
  の意見があり、今後、組織や活動の充実強化について、他府県の状況などを調査しながら、北海道
  人権施策推進本部などで検討を進めます。

 (2) 国、市町村、民間団体等との連携
   人権教育・啓発を効果的に推進するためには、社会全体の取組が必要であることから、国、市町
  村、民間団体等とそれぞれの役割に応じて協力し合い、連携しながら、道民が参加しやすい環境づ
  くりなど人権に配慮した取組みを積極的に展開します。
   特に人権問題の解決を目指す多くの企業やNPOなど民間団体との情報交換などを通じて、人権啓
  発活動の効果的な推進を図ります。

 (3) 基本方針・施策の点検と見直し
   この基本方針及び人権施策の推進状況については、道民の意見を聞きながら、人権を取り巻く社
  会環境の変化や、国連や国の動向等を踏まえ、定期的、継続的に点検や見直しを行います。
   なお、人権侵害による被害者の救済について、国は平成14年(2002年)3月の通常国会に人権
  擁護法案を提出し、国会での審議が始まりました。人権行政において、人権教育・啓発と人権侵害の
  救済は車の両輪といわれており、今後の国の動向を踏まえ、検討を進めます。


              北海道人権施策推進基本方針施策体系


◎人権施策の推進
  ●あらゆる場を通じた人権教育・啓発の推進
    ・家庭 ・学校 ・地域社会 ・企業等 ・道機関等
  ●効果的な人権教育・啓発の推進
    ・効果的な啓発手法の開発
    ・人材の育成と活用
    ・情報提供の充実強化
    ・相談・支援体制の充実
  ●推進体制の整備
    ・道の推進体制
    ・国、市町村、民間団体等との連携
    ・基本方針・施策の見直し

◎重要課題への対応
  ●女性
    ・男女平等参画の実現に向けた意識変革
    ・家庭・職場・地域社会における男女平等参画の促進
    ・女性の人権が尊重される社会づくり
  ●子ども
    ・子育てしやすい環境づくりの促進
    ・子どもの権利を尊重する教育や啓発の推進
    ・虐待防止対策の充実
    ・非行防止と立ち直りへの支援
  ●高齢者
    ・高齢者の社会参加など生きがい・健康づくり
    ・高齢者の就労対策の推進
    ・介護サービスの充実
    ・痴呆性高齢者施策の推進
    ・啓発・相談体制の充実
  ●障害者
    ・ノーマライゼーション理念の普及と教育・交流機会の拡大
    ・雇用・就業対策の推進
    ・権利擁護等の推進
    ・福祉のまちづくりの推進
  ●アイヌの人々
    ・アイヌ文化の振興とアイヌの人たちに対する理解の促進
    ・アイヌの人たちの生活の安定と産業の振興
  ●外国人
    ・国際理解の促進と共生意識の醸成
    ・学校における国際理解教育や多文化教育の推進
    ・外国人が住みやすい地域づくり
  ●HIV感染者等
    ・教育・啓発活動の促進
    ・患者等の人権に配慮した相談体制等の整備
    ・自立・社会参加への支援
  ●その他の人権
    ・同和問題
    ・犯罪被害者の人権
    ・刑を終えて出所した人の人権
    ・性的マイノリティ
    ・知る権利とプライバシーの保護
    ・良好で快適な環境の恵みの享受


                  用  語  解  説


●アイデンティティ
  自己同一性、自我同一性と訳され、自分が自分であるという自己存在のこと。自分は独自な存在で
 あり、過去から現在、将来も連続しているという感覚。

●HIV感染症
  ヒト免疫不全ウイルスによる感染症で、感染してから10年前後でエイズを発症する人が多いといわれ
 ている。万一感染しても、医学の進歩によりエイズの発症を遅らせることが可能となってきている。

●えせ同和行為
  同和問題はこわい問題であるという人々の誤った意識に乗じ、同和問題を口実にして企業などに不
 当な利益や義務のないことを求める行為。

●NPO
  「Non Profit Organization」の略で、民間非営利団体と訳される。さまざまな営利を目的としない活動を
 行う、行政から独立した民間の組織のこと。ボランティア活動が個人の活動を基本とするのに対し、NP
 Oは組織的な活動が基本となる。

●エンパワーメント
  「力をつける」こと。女性が政治的、経済的、社会的に自己決定力を身につけて力を持った存在となる
 こと。

●ジェンダー
  男女の生物学的な性別(セックス)ではなく、「男らしさ、女らしさ」や「男は仕事、女は家庭」といった、
社会的、文化的につくられた性、性別、性差をいう。したがって、ジェンダーの内容は、時代や社会、文
化により左右される。

●人権
  人権擁護施策推進審議会答申では、「人々が生存と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権
利」 また、「人間の尊厳に基づく人間固有の権利」と定義されている。

●人権教育
  人権擁護施策推進審議会答申では、「基本的人権の尊重の精神が正しく身に付くよう、学校教育及
び社会教育において行われる教育活動」と定義されている。

●ストーカー行為
  相手の意思を無視し、特定の人物にしつこくつきまとう行為。

●性的マイノイリティ
  性的少数者と訳され、同性愛者だけではなく、両性愛者、性同一性障害者(心の性と身体の性が一致
しないことから生じる障害を持つ人)、インターセックス(外性器の形が男女両方の特徴を持っていて性
別の判断が困難な人)の人々の総称。

●セクシュアル・ハラスメント
  相手の意に反した、性的な性質の言動で、身体への不必要な接触、性的関係の強要、性的なうわさ
の流布、衆目に触れる場所へのわいせつな写真の掲示など、様々なものが含まれる。特に雇用の場に
おいては、「相手の意に反した、性的な性質の言動を行い、それに対する対応によって、仕事を行う上
で一定の不利益を与えたり、またはそれを繰り返すことによって就業環境を著しく悪化させること」と考
えられている。

●伝統的生活空間(イオル)の再生
  アイヌ民族の生活を支えてきた自然環境を基盤として、これに伝統的な儀礼、口承文芸などの精神
 文化が一体となった、伝統的な暮らしの場を「イオル」と呼ぶ。
  伝統的生活空間(イオル)の再生とは、戦闘的アイヌ文化の総合的な保存・振興を図るため、こうした
 かつてのアイヌの人たちの暮らしがイメージできる場を再現するとともに関連施設を整備しようとする
 構想。

●ドメスティック・バイオレンス
  夫や恋人など、親しい関係のパートナーから、妻や恋人に対して行われる身体的、性的及び精神的
 な家庭内暴力のこと。

●ニューカマー
  1980年代以降、アジア各地や中南米からたくさんの新渡来者を迎えた。これらの人々を、それまで
 の定住外国人と区別して呼ぶ表現。

●場所請負制度
  和人の特権商人たちが運上金(一種の営業税)を藩主や商場(アイヌの人たちと和人が交易を行う
 場所)の知行主(領主)に納めてアイヌの人たちとの交易や漁業経営を請負う制度。

●ハンセン病
  らい菌によって引き起こされる感染症で、感染しても今日では治療法が確立しており、早期発見、早
 期治療により比較的容易に完治することができる。

●ボーダレス化
  情報交換や経済活動などが、国境に関係なく展開されるようになること。

●ライフステージ
  幼児期、児童期、青年期、老年期等、人生の様々な課程における生活史上の各段階のこと。

●ワークショップ
  参加者自身の知識や体験を持って、意見交換や共同作業に積極的・主体的に関わっていくスタイル
 の学習方法。