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地方公共団体関係資料

新潟県人権教育・啓発推進基本指針
情報の種類 地方公共団体関係資料
タイトル 新潟県人権教育・啓発推進基本指針
時期 2004/04/01
主体名 新潟県
【 内容 】

新潟県人権教育・啓発推進基本指針


第1章 基本的な考え方
1 基本指針策定の趣旨

 国際連合において、1948(昭和23)年、基本的人権を確保するために、すべての人々や国が達成すべき共通の基準としての「世界人権宣言」を採択した。
 それ以来、多数の人権関連条約の採択や国際年の設定など人権が尊重される国際社会の実現に向けて、様々な取組がなされてきた。
 わが国においても、基本的人権の尊重を基本原理の一つとする日本国憲法を制定し、この憲法のもとで、国政の全般にわたり人権に関する諸施策や諸制度の整備に努めてきており、本県においても、これまで、県民が人権を尊重するという視点に基づき、あらゆる行政分野で諸施策を推進してきた。
 しかし、現状では、これまでの取組が十分とは言えず、依然として解消されていない部落差別をはじめ、児童虐待や女性に対する暴力、障害者・高齢者・外国人に対する偏見、北朝鮮による拉致被害など様々な人権侵害が問題となっており、また、国際化、高齢化、情報化等の社会の変化に伴い、人権に対する新たな課題も発生している。
 こうした中、人権の世紀と言われる21世紀にふさわしい社会の実現を目指していくためには、これまでにも増して、県民の人権意識の高揚に対する取組に一層の努力を行い、「県民一人ひとりがすべての人々に対して開かれた心で互いの人権を認め、尊重しあう」意識を高める必要がある。
 このため、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」(平成12年法律第147号。以下「人権教育・啓発推進法」という。)に明記されている人権教育及び啓発に関する施策の策定とその実施についての地方公共団体の責務に基づき、人権に配慮した行政の推進や人権意識の向上のための教育及び啓発など本県が取り組むべき施策の方向を明らかにし、総合的な取組を推進するため本基本指針を策定する。

2 基本指針の目標と基本理念
 「人権」は人間の尊厳に基づいて各人が持っている固有の権利であり、社会を構成するすべての人々が個人としての生存と自由を確保し、社会において幸福な生活を営むために欠かすことのできない普遍的な権利であることから、日本国憲法においても「基本的人権は侵すことのできない永久の権利」として保障されている。
 この指針では、基本理念としてすべての人の人権が尊重される社会づくりを目指し、「県民一人ひとりがすべての人々に対して開かれた心で互いの人権を認め、尊重しあう」社会の実現を目標とする。
 そして、この実現に向けて、個人の価値観や文化の違いに偏見を持つことなく、一人ひとりの個性や多様性を認め合い、人権が人々の思考や行動の基準として日常生活に根付くよう教育・啓発を進める。

3 基本指針の性格
 この基本指針は、国際連合の決議を受けて国において策定された「『人権教育のための国連10年』に関する国内行動計画」(以下「国連10年国内行動計画」という。)の趣旨を踏まえ、また、人権教育・啓発推進法に則り、本県が取り組むべき人権教育・啓発の基本的な方向を示すものである。同時に、「新潟県長期総合計画 21世紀最初の10年計画 新潟・新しい波」(2001~2010)と整合性を持ち、本県が実施する人権施策に係る基本指針となるものである。
 また、市町村においても人権教育・啓発推進法に則り、人権教育・啓発に積極的に取り組む責務があるとともに、企業、団体等をはじめ県民一人ひとりが人権意識の高揚に寄与するよう努めることが求められている。

4 基本指針策定の背景
(1) 国際的動向
 20世紀において、大きな世界大戦を経験した後、世界の平和と人類の自由・平等を実現するためには、すべての人の人権が何よりも尊重されなければならないという国際的な認識から、1948(昭和23)年、国際連合総会で「世界人権宣言」が採択された。
 その後、国際連合は、この宣言を実効あるものにするため、「国際人権規約」の採択をはじめ、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」、「児童の権利に関する条約」など多くの人権に関する条約を採択するとともに、「国際人権年」、「国際婦人年」、「国際障害者年」等の国際年を定め、「国連婦人の10年」、「国連障害者の10年」等の活動にも取り組んできた。
 しかし、冷戦構造の崩壊後も、世界各地で地域紛争や民族紛争が起こり、これに伴う人権侵害や難民の発生など、深刻な問題が表面化した。このような厳しい国際社会の状況を受けて、1993(平成5)年、世界人権会議で「ウイーン宣言及び行動計画」が採択され、人権教育が重要であることが示された。
 そして、これを受けて1994(平成6)年の国際連合総会では1995(平成7)年からの10年間を「人権教育のための国連10年」とすることが決議され、各国政府に対して国内行動計画を定めることを求めた。

(2) 国の動向
 わが国においては、基本的人権の尊重を基本原理の一つとする日本国憲法を具体化するために、教育基本法や障害者基本法等各種法律の制定に取り組むとともに、国際人権規約をはじめとする多くの人権関係の条約を批准し、国際社会の一員として取組を進めてきた。
 また、1997(平成9)年には国連10年国内行動計画を策定し、人権教育の積極的推進を図り、もって国民一人ひとりの人権が尊重される、真に豊かでゆとりある国家の実現を期することとした。
 かつ、人権教育を進めるに当たっては、あらゆる場を通じて人権教育を推進し、教職員・社会教育関係職員、医療関係者など人権に関わりの深い特定の職業に従事する人々に対する取組を強化するとともに、女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者等、刑を終えて出所した人等の課題に積極的に取り組むこととした。
 また、地方公共団体に対しても「国内行動計画の趣旨に沿った様々な取組を展開することを期待する」としている。
 一方、同和問題については、1965(昭和40) 年、同和対策審議会が同和問題の早急な解決こそ国の責務であり、同時に国民的課題であるとの認識に立ち、同和対策の方向性について答申し、その具体化のため1969(昭和44)年に「同和対策事業特別措置法」が制定され、その後、「地域改善対策特別措置法」等が施行され、各種同和対策事業が実施されてきた。
 1996(平成8)年、地域改善対策特別措置法を受け設置された地域改善対策協議会の意見具申では、依然として残っている差別意識の解消に向けた教育及び啓発の推進やあらゆる人権侵害による被害の救済等の対応の充実を今後の重点施策の方向とし、これを受けて人権擁護施策の推進についての国の責務と必要な体制の整備を定めた「人権擁護施策推進法」が1997(平成9)年に施行され、この法律に基づき設置された人権擁護推進審議会は1999(平成11)年に、今後の人権教育・啓発を総合的に推進するための諸施策について答申した。
 この答申を受け、2000(平成12)年に施行された人権教育・啓発推進法では、国の責務として、「人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する」旨明記され、2002(平成14)年には、同法第7条の規定に基づく「人権教育・啓発に関する基本計画」が策定された。

(3) 本県の動向
 本県では、これまで庁内関係課で構成する「新潟県同和対策連絡会議」を設置するとともに、「同和対策総合計画」を策定して同和問題の解決のため各種施策を行ってきた。
 また、個別の人権課題ごとに、「新潟県長期総合計画」と整合した独自の計画や方針を持ち、それぞれ人権に配慮した施策を実施してきた。
 これらの施策の推進に当たっては、国や市町村、関係団体等と連携しながら、課題の解決に取り組んできたところであるが、各分野とも依然として多くの課題が残されている。
 今後は、この基本指針に則し、国際連合や国の動向、人権教育・啓発推進法の趣旨やこれまで実施してきた施策の成果などを踏まえ、県民の人権に対する意識の高揚と心の豊かさの実現に向けて、県として取り組むべき人権行政の全般にわたり諸施策を着実に実施していく必要がある。


第2章 様々な場を通じた人権教育・人権啓発の推進

 すべての人々の人権が尊重され、相互に共存し得る平和で豊かな社会を実現するためには、県民一人ひとりの人権尊重の精神の涵養を図ることが大切であり、教育の果たす役割は重要である。
 このため、幼児期からの発達段階や地域の実情等に応じて、学校教育と社会教育とが相互に連携を図りつつ、個人の人権が尊重され、個性、能力、適性等が十分に発揮できるよう人権教育の推進に努める。
 また、企業・団体等にあっても豊かな社会づくりに貢献する責任を担っており、職場における人権教育・啓発の推進に取り組むよう努めることが求められている。
 さらに、県民一人ひとりが生涯を通じて人権について考えていくことが大切であることから、県民の人権意識の高揚を図るために、マスメディアなどを活用した人権啓発活動を進める必要がある。

1 学校教育における人権教育の推進
【現状と課題】
 学校教育においては、教育活動全体を通じて人権教育を推進するため、同和教育を中心とする全体計画や年間指導計画の作成・実施に努めてきた。
 しかし、学校現場においては、いじめ等の問題が依然として深刻な状況にあるなど、児童生徒に人権尊重の精神が十分育っているとはいえない状況が見られる。これを改善するためには、教職員自身が人権尊重の理念について深く理解し、指導力を高めるよう研修を一層充実させることが必要である。
 また、学校の教育活動を通じて様々な人権課題の解決に向けた取組の充実を図ることが大切である。

【基本方針】
 児童生徒の人権尊重の精神を育むことを目的に、学校の教育活動全体を通じて人権問題に対する正しい理解の促進に努めるとともに、差別や偏見を許さない感性や態度を育む人権教育を推進する。このために全体計画の見直しを進める。
 また、研修会の充実を図り、教職員一人ひとりの指導力の向上を目指す。
○ 様々な人権問題を解決する視点から全体計画の再点検を進め、児童生徒の発達段階に応じ、学校の教育活動全体を通じて人権教育を推進する。
 各教科や道徳、特別活動、総合的な学習の時間では、人権尊重の精神が感性や態度として育まれるよう、児童生徒用副読本の有効活用や、体験的な活動を 取り入れて、授業の工夫を図る。
 また、児童生徒同士だけでなく、児童生徒と教職員が共に学ぶ姿勢をもって活動し、共に育つことを重視する。
○ 各種研修会の充実を図り、学校教育の担い手である教職員一人ひとりの人権意識を高めるとともに指導力の向上を目指す。
○ 様々な人権問題に関する指導教材の充実と整備を進め、その活用を図る。

2 社会教育における人権教育の推進
【現状と課題】
 社会教育においては、女性・高齢者・障害者・同和問題等について公民館を中心に各種の学級・講座を開設してきた。
 しかし、各種学級・講座の開設回数は依然として少ない状況にあり、活動内容の充実が求められている。
 このため、講演会やワークショップ等の学習機会の一層の拡充、学習意欲を喚起する学習プログラムの開発・提供や指導者の育成を図り、家庭や地域においてさらに人権意識を高める取組を推進することが大切である。

【基本方針】
 すべての人々が人権を尊重し、日常生活において態度や行動に現れるような人権感覚を涵養するために、学習機会の提供と学習プログラムの開発・提供の拡充に努める。
 また、様々な人権問題に関して深い見識を持つ人材を活用し、指導者の養成に努める。
○ 子どもたちが豊かな心や人権を守る態度を身に付けるようになるためには保護者や周囲の大人たちが日常生活を通じ、差別をしない姿勢を示していくことが重要である。
 このために保護者や周囲の大人たちが人権感覚を十分身に付けるよう公民館等の社会教育施設を中心として、地域の実情に応じた人権に関する多様な学習機会の充実を図る。
 また、乳幼児や児童生徒の保護者に配付する「家庭教育手帳」を活用し、家庭において人権意識の高まりを促す。
○ 地域社会における指導者の養成と資質の向上を目指すため、参加体験的手法を取り入れるなど実践に結びつく指導者研修会の内容の充実を図る。
○ 様々な人権問題を正しく理解するために、参加者の学習意欲を高めるような参加体験型の学習プログラムの開発・提供を行い、公民館での社会教育活動の講座が充実するよう市町村を指導する。
 また、学習が実践活動に結びつくような手法を用いた学習資料の開発・提供を行うとともに生涯学習情報提供システム(ラ・ラ・ネット)を活用してその周知に努める。

3 企業・団体等及び県民に対する人権啓発の推進
【現状と課題】
 企業・団体等においては、採用選考に係る身元調査の実施、採用試験における不適切な質問や書類提出要請など人権への配慮が不十分な事例が依然として見受けられるほか、男女差別・セクシュアル・ハラスメント、高齢者・障害者・外国人の雇用差別等の人権侵害が問題となっている。
 このため、県民が差別なく働くことのできる場の確保を目指し、企業・団体等における人権尊重の意識の高い職場づくりを促進する必要がある。
 また、依然として日常生活の中で様々な人権侵害があることから、県民一人ひとりの人権意識を高める必要がある。

【基本方針】
 企業・団体等に対しては、その社会的責任を自覚し、男女共同参画社会の実現をはじめ、統一応募用紙の使用等公正な採用選考や配置・昇進などについて、人権に配慮した適切な対応が図られるよう企業等の経営者や管理者を中心に普及・啓発に努める。
 また、広く県民に対しては、人権についての正しい理解と認識が深まり、日常生活における人権感覚が身に付くよう、様々な手法を活用して広報・啓発を推進する。
○ 企業・団体等の人権教育・啓発の取組を促進するため、資料・情報の提供、企業等の管理者を対象とした講演会の開催等啓発を行う。
○ マスメディア等多様な広報媒体を活用した広報・啓発活動や県民を対象とした人権講演会等の各種イベントの実施、啓発用パンフレットの配布、啓発ビデオの貸出等の取組により啓発を行う。
○ 県民一人ひとりの人権問題への関心と理解が深まるよう、広報・啓発の活動内容の一層の充実を図るとともに、法務局、市町村等で構成する「人権啓発活動ネットワーク協議会」などを活用し、国・市町村・民間団体と連携を図りながら啓発活動を進める。


第3章 分野別人権施策の推進

1 女性
【現状と課題】
 人はすべて性別を理由とする差別的取扱いを受けることなく、平等な存在としてその人権を保障されなければならない。
 今日、男女共同参画社会形成に向けた基本的枠組みである法律・制度等は整備されつつあり、本県では、2001(平成13)年3月に、男女共同参画社会基本法で定める都道府県計画として「新潟・新しい波 男女平等推進プラン」を策定して、男女平等を目指し、共に参画できる社会の形成に向け、意識啓発活動の充実をはじめとした様々な施策を推進してきた。
 さらに、2002(平成14)年4月には、男女平等社会の形成に向けて県の姿勢を示し、その実現に向けた取組を一層推進するため、「新潟県男女平等社会の形成の推進に関する条例」を施行した。
 このような状況の中、女性の社会参画も着実に進んでいるが、現実の生活の場においては、性別による固定的な役割分担意識やこれに由来する社会制度や慣行が根強く残っており、そのことが女性の社会参画の広がりを阻んでいる。また、いわゆるドメスティック・バイオレンス等の女性への暴力が深刻な人権侵害となっているなど、男女平等の達成に向けてまだ解決しなければならない課題が多く存在している。
 少子高齢化の進展や、経済の成熟化と国際化、情報通信技術の発展、人々のライフスタイルの変化など、社会経済情勢が急速に変化しており、男女平等意識の浸透を図りつつ、男女の人権尊重の理念を基盤とする男女平等社会を形成することが緊要な課題である。

【基本方針】
 将来にわたって豊かで活力に満ちた社会を築くため、女性も男性も社会の対等な構成員として、あらゆる分野における活動に参画でき、互いの人権を尊重し、性別にかかわりなく、その個性と能力を最大限に発揮できる男女平等社会の形成を進める。
○ 男女平等の意識づくり
 性別による固定的な役割分担意識を解消するため、女性団体、経済団体、教育関係団体、企業等と連携し、広く県民に広報・普及活動やマスメディア等を活用した県民意識の啓発を行う。
 また、男女平等の視点に立って社会制度・慣行等を見直し、男女平等意識の浸透を図る。
○ 男女平等意識を育む教育環境づくり
 固定的な性別役割分担意識が形成されることのないように、学校教育全体を通して男女平等教育を推進するとともに、教職員等の研修の充実を図る。
 また、男女平等意識を高めるための生涯にわたる学習機会の充実に努める。
○ 男女共同参画による活力ある社会づくり
・ 政策・方針決定の場への女性の参画を促進するため、県における審議会等への女性登用並びに女性県職員・教員の育成・登用を推進する。
 また、市町村や事業者、各種団体等の方針決定の場への女性の参画促進を支援するため必要な情報の提供などを行う。
・ あらゆる分野に参画できる女性人材の育成や女性団体における活動の支援の充実など女性のエンパワーメントへの支援を行う。
・ 国際社会の男女共同参画に向けた取組の理解促進及び身近な国際交流や、国際協力活動への女性の参画の促進を図るなど、国際理解と国際協力を推進する。
○ 男女平等が確保される労働環境づくり
・ 雇用の分野における男女均等な機会と待遇が確保される雇用環境の整備とライフスタイルにあった多様な働き方を可能とする就業環境の整備を図る。
・ 職業生活と家庭生活の両立を可能とする就業環境を整備するため、仕事と育児・介護の両立が図られるよう事業主や労働者に対し、仕事と育児・介護の両立を支援するための各種制度を周知し、一層の定着を図る。
・ 農林水産業における男女共同参画を図るため、女性が経営及びこれに関連する活動に参画するための条件を整備するとともに、女性の経済的地位の向上と労働・生活環境などの整備を図る。
 また、商工業等自営業のパートナーシップの確立のため、商工業の家族経営に関わる女性が、その持てる能力を十分発揮できるよう情報提供や啓発に努める。
○ 家庭・地域で男女が共に参画するくらしづくり
・ 子育てと介護支援システムを充実させるため、保育サービスや地域における子育て支援を充実し、介護保険制度の理解と利用促進を図る。
・ 家庭生活・地域活動への男女の共同参画を促進するため、男性の家事・育児・介護などへの参画を促すとともに、ボランティア活動、NPO活動や地域活動への男女の共同参画の促進を図る。
○ 女性の人権が擁護される社会づくり
・ 女性への暴力は人権への侵害であり犯罪であるとの認識を徹底し、いわゆるドメスティック・バイオレンスなどの女性への暴力の根絶に向けての意識啓発を図るとともに、暴力の実態を調査・把握し、福祉、保健、教育、医療、警察、司法、民間団体等の関係機関と連携し、被害にあった女性の相談や保護・自立支援に努める。
 また、セクシュアル・ハラスメントの防止に向けた取組を推進する。
・ メディアにおける女性の人権の尊重を図るため、メディアに対し、女性の人権への理解を得るよう努めるとともに、県民のメディア・リテラシー(メディアを主体的に読み解き発信する能力)の育成を図る。
 また、県の広報・刊行物等において、性別による固定観念にとらわれない表現の推進を図る。
・ 生涯を通じた女性の健康づくりへの支援を行うため、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の観点を踏まえた健康教育・啓発を充実するとともに、生涯を通じた女性の健康の維持・増進対策の充実を図る。
○ 施策の総合的・計画的推進
・ 男女平等推進プランで定めた目標の達成を図るため、庁内の推進体制の整備や職員研修の充実に努めるとともに、計画の推進状況を評価し公表する。
 また、男女共同参画推進のための活動拠点として、情報の収集・提供、調査研究、相談など、県女性センター機能の充実を図る。
・ 「男女平等推進相談室」において県民及び事業者からの性別による差別的な取扱い、その他の男女平等社会の形成を阻害する行為についての相談に応じる。
・ 市町村における男女平等社会の形成に向けての施策推進体制の整備を促進するとともに、男女共同参画社会基本法に基づく市町村の計画策定などを支援する。
・ NGO等の自主性を重んじつつ、パートナーシップの確立を図りながら情報の共有の一層の推進に努める。


2 子ども
【現状と課題】
 価値観の多様化、核家族化・少子化の進行並びに情報化の進展等、子どもを取り巻く社会環境が大きく変化している。一方、児童虐待、いじめ・体罰、有害情報の氾濫や性の商品化など、子どもの人権侵害が深刻な問題となっている。
 2002(平成14)年に実施した第35回新潟県政世論調査においても、「子どもの人権が尊重されていないと感じること」の内容として、「子ども同士がいじめをしたり、させたりする」「いじめをしている人やいじめられている人を見て見ぬふりをする」「親が身体的、心理的に虐待する」などが多く挙げられている。
 子どもの人権が尊重されるため、「児童の権利に関する条約」の理念を基本とした人権教育・啓発を推進するとともに、人権を侵害された子どもへの援助体制の整備・強化が求められている。

【基本方針】
 県民一人ひとりが「子どもは基本的人権が保障された存在であり、権利を行使する主体である」との認識を持ち、子どもの人権を尊重する社会づくりを推進する。
 特に、児童虐待、いじめ、児童買春等の深刻な人権侵害に対しては、福祉、保健、教育、医療、警察、民間団体等の関係機関が連携し、子どもの人権擁護に努める。
 また、有害広告物などの既存の媒体やインターネット上の有害情報から子どもを守るための取組を進める。
○ いじめ防止の推進
 いじめを生まない学校づくりのため、「いじめゼロスクール運動」等の子ども自身の手によるいじめ撲滅運動を推進する。
 また、児童生徒が悩みや不安を相談する相手として専門的な知識と経験を有するカウンセラー等を学校へ配置する。
○ 児童虐待防止への取組
 児童虐待の未然防止と早期対応と適切なケアのため、県民に対する意識啓発や相談窓口の紹介等の広報普及活動を行う。
 また、福祉、保健、教育、医療、警察等の関係機関の機動的連携をさらに強化するとともに、関係機関職員に対する研修を充実し、子どもにかかわる職員の資質の一層の向上を図る。
○ 要保護児童の権利擁護対策
 児童養護施設、児童自立支援施設の入所児童や里親委託児童について、「子どもの権利ノート」の活用等により、外部に訴える力の弱い児童の立場を守るとともに、児童の権利擁護に対する職員の意識の向上を図る。
○ 児童買春・児童ポルノ等の防止に向けた取組の推進
 児童買春・児童ポルノ等、様々な媒体を通じた児童の性的搾取の防止に向けた取組の充実を図る。
 特に、この問題の解決に向けて買い手側への意識啓発を図るとともに各種法令を活用した取締りに努める。
○ 有害情報からの遮断に向けた啓発
 有害広告物などの既存の媒体やインターネット上の有害情報から子どもを守るため、これらの有害情報を各家庭において選別するフィルタリングシステムを導入するなどの対策を講じるよう広報啓発に努める。


3 高齢者
【現状と課題】
 本県の高齢化率は、2002(平成14)年には22.5%(全国18.5%)となり、全国に比べて、約8年早いスピードで進行している。
 また、今後、さらなる高齢化の進行に伴い、寝たきりや痴呆症などの介護を必要とする者の発生率の割合が高くなる後期高齢者が増加すると見込まれる。
 2002(平成14)年に実施した第35回新潟県政世論調査において、「高齢者の人権が尊重されていないと感じること」の内容として、「働ける能力を発揮する機会がない」「悪徳商法による高齢者の被害が多い」「高齢者をじゃまもの扱いし、高齢者の意見や行動を尊重しない」などが多く挙げられている。
 高齢者が疾病や加齢によって心身の機能が低下しても、尊厳を持って生活を続けていくことができるよう、地域社会全体で支えるしくみを構築することが重要な課題となっている。

【基本方針】
 心身の状態や価値観が違う多様な高齢者が、住み慣れた地域でいきいきと生活できるよう「みんなで支え合う福祉社会づくり」の構築を目指す。
 また、「長寿社会を支える一員としての高齢者」として、長年培ってきた経験と知識を生かし、社会活動に積極的に参加するなど、高齢者が尊重される社会の実現を目指す。
○ 啓発活動の推進
  「敬老の日」や「老人週間」等の行事を通じ、高齢者を敬愛し、長寿を祝うとともに、高齢者自らの生活向上に努める意欲を増進し、県民の長寿社会に対する理解と関心を高める。
○ 社会参加活動の促進と自立支援
・ 高齢者が元気で活躍できるシステムづくり
 高齢者が地域社会の中で明るくいきいきとした生活をおくるためには、高齢者自身が自らの経験と知識を生かして重要な役割を果たしていく社会にすることが必要である。高齢者が積極的に社会活動に参加し、生きがいづくりに取り組めるようなシステムづくりを進める。
 また、高齢者の社会参加を促進するとともに、他の世代と相互に理解を深め尊重し合う社会とするため、高齢者が文化伝承活動や青少年活動における地域指導者として活躍できるよう、地域における活動の場の拡大に努める。
 さらに、地域の人々が主体となって行う「地域の茶の間」など、地域の交流の場の普及・拡大に対して支援するとともに、高齢者の生きがいにつながる生涯学習の場の提供に努める。
・ 働く場の確保
 本格的な高齢社会を迎え、これまでの社会活力を維持するためには、高齢者が経済社会の担い手の一人として活躍することが必要となっている。
 また、いつまでも健康で働き続けたいという意欲を持つ元気な高齢者が増えており、その意欲と能力に応じて、年齢にかかわりなく働ける場の確保と、高年齢者の雇用を促進する。
・ 地域での支えあいのしくみづくり
 高齢者の多くが、長年生活してきた地域で暮らし続けることを望んでいる。 高齢者が介護や支援が必要な状態になっても、安心して生活を送ることができるよう、介護にとどまらず、生活全般にわたって地域全体が支える体制を構築する。
○ 権利擁護の推進
・ 総合相談体制の整備
 高齢者や高齢者を介護している家族は様々な問題を抱えていることから、身近な地域で、保健・医療・福祉の各分野にわたる専門性を踏まえた総合相談窓口による相談・情報提供機能等を充実・強化する。
・ 苦情処理体制の充実
 国民健康保険団体連合会、県社会福祉協議会等の行う苦情処理や苦情処理に関する情報提供を支援するほか、苦情相談窓口や苦情処理制度についてサービス利用者への周知に努める。
・ 情報の提供体制の整備
 介護保険制度は、利用者がサービスを選択し事業者と契約する制度であることから、利用者がサービス事業者に関する最新の情報を得られるよう、市町村や居宅介護支援事業所を通じて、また、県のホームページなどにより情報提供を行っていくとともに、高齢者が介護サービスを適切に選択し、利用できるような情報提供や指導に努める。
・ 権利擁護制度の活用支援
 痴呆性高齢者の権利が守られるように成年後見制度の普及啓発や地域権利擁護事業を支援する。
・ 身体拘束の廃止
 高齢者が利用する特別養護老人ホーム、介護老人保健施設等においての身体拘束廃止の啓発や施設指導を行うことにより身体拘束の廃止を推進する。


4 障害者
【現状と課題】
 障害のある人もない人も社会の構成員として地域の中で共にいきいきと生活することを目指すノーマライゼーション理念が社会に浸透しつつある。
 しかし、現在、障害者を取り巻く社会環境には、建物内や歩道の段差といった物理的な障壁、障害を理由に資格や免許を与えない制度的な障壁、音声案内・手話通訳などがないことなどによる文化・情報面の障壁、障害者に対する偏見や差別意識等のこころの障壁など、障害のある人が地域社会で暮らし、社会生活のすべてに平等に参加するために取り除かなければならない多くの障壁がある。
 これらの障壁を取り除くとともに、障害のある人が、必要とするサービスを選択し、利用しながら地域で自立して生活できるようにするための施策の充実が求められている。

【基本方針】
 障害のある人が他の人々と同様に一人の人間として尊重され、社会の一員として地域で暮らし、自分らしい自立した生活と社会参加ができるよう、県民一人ひとりが障害者に対する理解を進め、障害者に対する偏見や差別意識をなくし人権意識の高揚を図るとともに、福祉サービスの充実、就労の促進、教育環境の改善、社会活動への参加機会の充実、人にやさしいまちづくりの推進など障害者を取り巻く生活環境全般にわたる取組を進める。
○ 啓発活動の推進
 県民の障害者に関する理解を深め、偏見や差別をなくしていくため、県民に対する広報・啓発活動を行う。
○ 社会参加の促進
・ 障害者の積極的な社会参加を進めるため、移動手段やコミュニケーション手段の確保、個々の障害に対応した情報提供体制の充実、スポーツ、文化・芸術活動の振興を行う。
・ 精神障害者の自立と社会参加を促進するため、地域住民や家族を対象とした精神障害に関する正しい知識の啓発・普及を進めるとともに、ボランティア団体の育成、精神障害者保健福祉手帳制度の拡充などを図る。
○ 雇用・就労の促進
・ 障害者一人ひとりの適性と能力に応じた就労により職業的自立を図ることが重要であり、障害者雇用の促進を図るため、事業主や県民への広報・啓発に努める。
・ 精神障害者の雇用を促進するため、職親制度を拡充し、その活用を推進する。
○ 教育環境の整備
 現在行われている交流教育では、障害のあるなしにかかわらず児童生徒が共に学び、お互いを尊重する心を学んでいるが、日常的なふれ合いという面からは十分といえない。今後は、ノーマライゼーション実現のための取組をより一層進展させるため、学校や地域での社会生活全般にわたり子どもたちが共に学び共に活動する場や機会の拡充に努める。
○ 地域生活の支援
 障害者が地域で自立して生活することができるよう、ホームヘルプ等の在宅サービスの充実、通所授産施設やディサービス等の日中活動の場の確保、グループホーム等の拡充を行うとともに、相談支援体制の整備を図る。
○ 施設入所者の人権擁護
 利用者の人権に配慮したサービスを確保するため、福祉従事者に対する研修や関係機関及び施設に対する啓発・指導を充実するとともに、利用者のプライバシーの確保や生活の質を高める観点からの整備を進める。
 また、利用者が安心してサービスを利用できるよう、事業者自身がサービス内容を評価する仕組みづくりや、第三者機関による評価制度の周知を図るとともに、事業者の苦情解決体制づくりを促進する。
○ 福祉サービスの利用援助
 障害者へのサービス提供におけるケアマネジメント体制の整備を促進する。
 また、知的障害者、精神障害者などで判断能力が十分でない人の福祉サービスの利用を援助するとともに、重度の知的障害者、精神障害者などに代わって契約等を行う成年後見制度の啓発・普及活動を行う。
○ 福祉のまちづくりの推進
 障害者や高齢者をはじめとして、すべての人々が自由に活動でき、主体的に社会参加できるように、建築物や道路等の歩行空間、公共交通機関等のバリアフリー化を進めるなど、快適で暮らしやすい社会を実現するため、行政や民間事業者及び県民による協働のまちづくりを進める。


5 同和問題
【現状と課題】
 同和問題は、わが国固有の重大な人権問題である。
 1960 (昭和35) 年、総理府に同和問題解決に資するための同和対策審議会が設置され、1965(昭和40) 年に 同審議会は「同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である」とし、「その早急な解決こそ国の責務であり、同時に国民的課題である」との認識に立って、環境改善、社会福祉等の広い分野における総合的な施策の方向を示した。
 この答申を具体化するため1969(昭和44)年に「同和対策事業特別措置法」が制定され、その後、「地域改善対策特別措置法」、「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」が施行され、各種同和対策事業が実施されてきたが、2002(平成14)年3月末「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」が失効したことに伴い、特別対策事業は終了し、今後は一般対策で対応することとなった。
 しかし、全国的にみれば、結婚問題をはじめとして、企業における就職差別、同和地区出身者に対する差別的な発言や差別的な落書き、インターネットなどに差別的な文章を載せるなどの行為も跡を絶たない。
 本県においては、これまでも同和問題の解決に取り組んできたが、生活環境、産業、就労、教育面での残された課題や教育現場における差別事象の発生など、未だ同和問題が解消したとは言えない現状にあり、引き続き問題解決に向けた積極的な取組が必要である。
 なお、2002(平成14)年に実施した第35回新潟県政世論調査では、同和地区、同和問題の認知度を調査した結果「知っている」との回答が50%、「知らない」との回答が46%であり、県民の同和地区、同和問題の認知度が低い結果となっていることから今後とも、 同和問題への理解と共感を進めるべく、また同和地区関係者に対する偏見や差別をなくすために、 人権教育・啓発を更に推進しなければならない。

【基本方針】
 同和問題の解決を図るために、地域改善対策協議会の意見具申の趣旨に則し、また、これまでの同和問題に関する教育・啓発活動の中で積み上げられてきた成果や問題点を踏まえ、引き続き人権意識の高揚を図り、偏見や差別の解消に向け、同和問題に取り組む民間団体とも連携して積極的な教育・啓発活動を行うとともに、生活環境の改善等、残された課題については一般対策により対応する。
○ 啓発活動の推進
・ 啓発活動の充実
 県民一人ひとりが、同和問題を正しく理解し、その解決に取り組むよう、県民を対象とした講演会の開催やマスメディア、啓発ポスター・パンフレット等の活用により広報・啓発活動を行う。
・ 企業、団体等に対する啓発
 企業、団体等に対して、公正な採用選考が実施されるよう、身元調査、本籍や家族の職業照会のための不適切な質問及び書類要請など就職差別につながる行為をしないよう啓発に努める。
 また、企業、団体等が実施する研修活動に対して、資料・情報の提供、講演会の開催等の支援を行う。
・ 隣保館活動等の推進
 隣保館においては、地域社会全体の中で福祉の向上や住民交流の拠点となる開かれたコミュニティーセンターとしての取組が行われており、引き続き人権課題の解決のための各種事業を総合的に行う。
 また、隣保館が設置されていない地域においては、公民館等の各種公的施設を利用した広域隣保事業の推進を図る。
・ えせ同和行為の排除
 同和問題を口実として不当な要求等を行うえせ同和行為は、問題解決の大きな阻害要因となっていることから、研修会の開催や啓発用パンフレット等を活用して企業、市町村、県機関等に対し、「同和問題はこわい問題である」という誤った意識を払拭するために同和問題を正しく理解するよう啓発を行うとともに、えせ同和行為への対応方法について周知する。
 また、関係機関や「新潟県えせ同和行為対策関係機関連絡会」等との連携を密にし、えせ同和行為に関する情報を交換し、対応を協議するなど、その排除に努める。
○ 学校教育における推進
・ 人権尊重の精神を育む教育の推進 
 人権尊重の精神を育むため、人権に関する観点を明確にした全体計画や年間指導計画に基づき、学校の教育活動全体を通じて同和教育を推進する。
 なお、各教科等の授業では、児童生徒用副読本等を活用するなど、内容の充実を図る。
・ 教職員研修の充実
 教職員一人ひとりの人権意識を高めるとともに指導力の向上を目指し、各種研修会の充実を図る。
○ 社会教育における推進
・ 社会同和教育市町村巡回研修会の実施
 県民の同和問題及び社会同和教育の正しい理解を深め、実践を促すため、広く県内市町村を巡回して研修を行う。
・ 社会同和教育学習資料の作成
 社会教育施設等で行われる学習・講座等で活用するための社会同和教育学習資料を作成し、社会教育現場において同和教育の推進を図る。
○ 一般対策の推進
・ 生活環境の改善、産業の振興、就労の安定、教育の充実等残された課題については一般対策により適切に対応する。


6 外国人
【現状と課題】
 交通手段や情報通信技術の進歩などにより、人・もの・情報の国境を越えた大規模な移動が可能となり、世界各国、地域の相互依存関係が深まっている。
 本県においては、2002(平成14)年末現在の外国人登録者数は13,583人、人口に占める割合は約0.55%で、全国(1.45%)に比較して低い水準であるが、この10年間で2.04倍と全国(1.44倍)を上回る急激な増加を見せている。
 こうした中、言語や生活習慣の違いなどから生ずる様々な問題に適切に対応することが必要となっており、2002(平成14)年に策定した「新潟県国際化推進大綱」に基づき、県民の国際理解の推進や意識啓発、外国人が安心して暮らせる環境の整備などにおいても、民間団体、教育機関、行政がパートナーシップにより取り組んでいく必要がある。

【基本方針】
 国際化の進展が地域レベルで広がる中、同じ地域住民として外国籍住民と共生していくためには、互いの人権を尊重することと併せ、異なる考え方や習慣を持つ人々を特別視せず、その違いを理解することが重要である。
 このため、民間団体、財団法人新潟県国際交流協会、教育機関、市町村等と連携し、異文化理解及び人権意識の高揚のための普及啓発活動や交流活動による相互理解の促進、国際理解教育の推進を図る。
 さらに、外国人が快適に安心して暮らせるよう、支援活動を行う民間団体等の活動を支援し、連携を進め、外国人への情報提供や相談・支援体制の充実を図る。
○ 国際理解教育の推進及び啓発活動の充実
 留学生の在学する大学、民間の活動団体等と連携し、国際理解教育の推進を図るとともに、外国人と親しみ、ふれあう機会を充実させることなどにより、諸外国の文化や言語に対する県民の理解と関心を高め、偏見や差別の解消に努める。
○ 外国人への情報提供や相談・支援体制の充実
 外国人が快適に安心して生活を送れるよう財団法人新潟県国際交流協会、民間の支援団体、市町村等と連携し、外国語による生活相談体制や日本語教育支援体制の充実を図り、インターネット等を活用した情報提供の推進に努める。 
○ 民間団体等の活動支援・連携促進
 在住外国人への支援活動を行っている民間団体・ボランティアに対して、活動しやすい環境の整備や活動支援、連携の促進を図る。


7 感染症患者等
【現状と課題】
 医学医療の進歩や衛生水準の向上により、多くの感染症が克服されてきた一方、今もハンセン病、後天性免疫不全症候群(エイズ)などの感染症の患者等に対するいわれない差別や偏見が存在している。
 とりわけ、エイズ患者・HIV感染者等に対しては、病気に対する正しい知識が不十分なことによる誤解や、それに基づく差別や偏見が依然として残っている。
 また、ハンセン病については、2001(平成13)年にハンセン病に対するこれまでの国の方針について、熊本地裁において違憲性を認める判決が出され、同年にハンセン病の患者・元患者の名誉回復及び福祉の向上を図ることを目的とした「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律」が施行されるなどの対応が図られているが、未だに患者やその家族等への差別や偏見が根強く残っている。
 これらの感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれている状況を踏まえ、今後とも、エイズ、ハンセン病などの感染症の患者・元患者等に対する差別や偏見を解消し、人権に配慮した感染症対策の推進、社会復帰及び福祉対策の充実等が求められている。

【基本方針】
 感染症に対する差別や偏見の解消のため、あらゆる機会を通じて正しい知識の啓発・普及活動を行うとともに、患者・感染者等の意向を十分に尊重しながら支援の充実を図る。
○ エイズなどの感染症の患者・感染者等への支援等の充実
・ 世界エイズデー関連行事や、講演会等を活用し、正しい知識の啓発・普及活動を行う。
・ 健康福祉(環境)事務所等においてエイズ相談を行い、必要に応じ無料匿名検査を実施する。
・ 市町村など関係機関や学校、企業、団体等と連携を図りながら、感染症に関する正しい知識の普及啓発や偏見・差別の解消に向けた人権教育・啓発活動を推進する。
・ 健康福祉(環境)事務所や医療機関における患者・感染者やその家族等に対するカウンセリングの実施体制の充実とカウンセリング担当者の資質向上を図る。
○ ハンセン病患者・元患者等への支援等の充実
・ 熊本地裁の判決の趣旨も踏まえ、差別や偏見の解消のため、ハンセン病に関する講演会の開催やパンフレットの配布など、あらゆる機会を通じて正しい知識の普及啓発を図る。
・ ハンセン病の患者・元患者等の相談窓口を設置するとともに、ハンセン病療養所入所者の里帰り事業、療養所への訪問事業、社会復帰支援等の福祉対策について、関連団体と連携を図り、入所者の意向を尊重しながら充実を図る。


8 新潟水俣病被害者
【現状と課題】
 新潟水俣病は、旧昭和電工鹿瀬工場からメチル水銀を含む工場排水が阿賀野川に排出されたことにより発生した(1965(昭和40)年6月公式発表)。
 新潟水俣病は、地域住民に健康被害をもたらしただけでなく、被害者やその家族に対する病気を理由とした差別や偏見を生み、地域社会にも深刻な被害をもたらした。そして、差別や偏見を恐れ病気を隠し続けたまま亡くなった人もいると言われており、被害の実態は正確には分かっていない。
 被害者が差別や偏見にさらされたのは、水俣病理解のための啓発への県等行政を中心とした取組が不十分であったからだとの指摘がある。
 1995(平成7)年、水俣病問題の政治解決が図られ、新潟県では被害の発生から40年近くを経たが、今なお、被害者の健康被害は続き、水俣病問題への理解も十分には進んでいない。
 新潟水俣病問題は、公害の発生に伴った差別や偏見がいかにして人々の絆を奪っていくかという不幸な経験となった。この教訓を生かし、「水俣病はどのような病気なのか」「被害者はどのような気持ちで裁判に訴えざるを得なかったのか」などについて、多くの人たちに正しい知識を広め、理解を深めていくことが必要である。

【基本方針】
 新潟水俣病の政治解決を契機に、県は、2001(平成13)年8月、悲惨な公害を二度と繰り返すことのないように新潟水俣病の経験と教訓を伝える資料館「環境と人間のふれあい館」を建設したところである。この施設を十分に活用し、関係市町村、関係団体と連携しながら新潟水俣病問題の歴史と被害の経験を正しく伝えることにより、被害者や家族の人権に対する理解を深め、偏見や差別を生まない取組を進める。
 また、被害者の今も続いている健康不安に対し、相談等に応じる。
○ 「環境と人間のふれあい館(新潟水俣病資料館)」を通じた啓発
・ 事業活動の推進
 被害者が自らの言葉で経験を語る「語り部」をはじめ、講演会や講座の開催、出版物や資料の提供など各種事業活動を通じて、新潟水俣病問題を広く県民に対し啓発する。
・ 被害者及び関係団体等との連携
 管理運営協議会、業務検討会等への被害者や関係団体等の参加を通じて、その声を事業活動へ反映させるとともに、ふれあい館における関係団体等の新潟水俣病や人権問題に関する取組を促進する。
・ 学校との連携による啓発活動
 新潟水俣病問題について、学校における総合的な学習の時間等を利用した学習活動の実施や啓発副読本の活用により、次世代を担う子どもたちの関心と理解を深める。
○ 被害者の健康不安への対応
 水俣病患者に対して、医師、保健師等による家庭訪問を実施し健康相談に応じるとともに、健康上の不安を持つ人に健康診査を実施する。


9 北朝鮮による拉致被害者
【現状と課題】
 2002(平成14)年9月17日に行われた日朝首脳会談において北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が公式に拉致を認め、交渉の結果、5人の拉致被害者の帰国が24年ぶりに実現した。
 国は拉致問題を日朝間の最優先課題と位置づけたが、拉致被害者のうち帰国が実現したのは本県出身の3人を含むごく一部であり、それ以外の人は正確な情報がないまま安否確認すらなされていない状況である。
 また、帰国した被害者の家族は依然として北朝鮮に残されたままであり、離ればなれの生活を余儀なくされている。
 拉致問題は重大な人権の侵害であり、解決に向けて国の毅然とした対応が求められるとともに、帰国した拉致被害者に対しては、生活基盤の確立のため適切な支援を進める必要がある。

【基本方針】
 拉致問題は日朝間の最重要課題であるとともに、本県にとっても県民の人権を侵害された重大な問題であることから、国に対して早期解決に向けて引き続き強く働きかけを行う必要がある。
 また、拉致問題についての県民の意識啓発を図るとともに、帰国した拉致被害者に対しては、地域において安定した生活を営み、安心して暮らすことができるよう国・市町と連携し、きめ細やかな支援策を講じていく。


10 犯罪被害者やその家族
【現状と課題】
 犯罪被害者やその家族は、直接的な被害のみならず、これに附随して生じる精神的・経済的被害等様々な被害を受けている場合があり、またマスメディアによるプライバシーの侵害や名誉毀損、過剰な取材による私生活の平穏の侵害を受けるなどのケースがあるとの指摘もある。
 最近では、犯罪被害者やその家族に対する配慮と保護を図るため、刑事手続き等関連する法改正が行われているが、制度面だけでなく、被害者の人権に対する理解が犯罪被害者やその家族に接する職員をはじめとして、広く県民にも求められている。

【基本方針】
 犯罪被害者やその家族に接する職員をはじめとして、広く県民に対し、犯罪被害者やその家族の人権に対する理解を深めるための啓発を行うとともに、マスメディアによる人権侵害に対してのマスメディア側の自主的な取組が図られるよう理解を求める。


11 刑を終えて出所した人等
【現状と課題】
 刑を終えて出所した人、執行猶予の判決を受けた人、非行や犯罪を犯した少年などが社会の一員として立ち直ろうとしても、地域社会における誤った認識や偏見によっては、更生への妨げや人権が侵害される恐れがある。
 また、刑を終えて出所した人等の家族についても、その家族であるという理由により、差別的な扱いを受けるなど人権が侵害されることがある。
 このため、地域社会の理解と協力が必要であり、刑を終えて出所した人等に対する差別や偏見を解消するための啓発が必要である。

【基本方針】
 刑を終えて出所した人等の人権が侵害されることのないよう、差別や偏見の解消に向け、関係機関、関係団体と連携・協力して啓発活動に努める。


12 インターネットによる人権侵害
【現状と課題】
 匿名性を悪用して、他人を誹謗中傷する表現や差別を助長する表現、また様々な有害情報等をインターネット上の電子掲示板やホームページに掲示するなどの行為が増加しており、これらの人権侵害を防止する必要がある。

【基本方針】
 インターネットによる人権侵害に対しては、個人のプライバシーや名誉に関する正しい理解を深めるよう普及・啓発に努めるとともに、インターネットによる人権侵害となる行為を防止するための啓発を行う。


13 様々な人権問題
 前述のほか、アイヌの人、在日韓国・朝鮮の人、ホームレスの人、中国残留邦人、性同一性障害の人、重症急性呼吸器症候群(SARS)等の感染者やその発症地域の人などに対する偏見や差別その他の様々な人権問題についても、それぞれの問題の状況に応じて適切な取組を行うことが必要であり、あらゆる機会を通じて、偏見、差別を解消し、人権意識の高揚を図るための施策を推進する。


第4章 人権にかかわりの深い特定の職業に従事する人に対する人権教育の推進

 公務員や教職員等特定の職業に従事する人は、その職務の性質上、人権に深く関わる立場にあり、これらの職業に従事する人に対しては、特に人権教育・啓発を推進する必要がある。
1 公務員
 行政に携わる職員一人ひとりが、人権に配慮した行政を推進するため、人権問題に対する正しい理解と認識を深めることが必要である。
 このため、職員に対する各種講演や研修会を実施するなど、人権意識の高揚に努める。
 また、市町村が職員を対象に実施する人権研修に必要な啓発資料や情報の提供等の支援を行う。

2 教職員・社会教育関係職員
 子どもたちの人権意識を高めるうえで、教職員が重要な役割を果たしている。 このため、教職員一人ひとりの人権意識の高揚と児童生徒に対する指導力の向上が必要である。
 教職員が人権尊重の理念について十分に認識し、実践することができるよう研修等の一層の充実を図るとともに、人権問題の解決を自らの課題として取り組むよう資質と指導力の向上に努める。
 社会教育主事、公民館職員等の社会教育関係職員については、人権に関し幅広い識見のある指導者の確保に努めるとともに、各種研修会や資料による自己啓発を通じて、人権意識の高揚を図り、資質と指導力の向上に努める。

3 警察職員
 警察職員は公共の安全と秩序を維持するという職務に従事しており、その職責上、人々の権利・自由を制限する活動を伴うことから、人権に対する正しい理解と配慮が必要である。
 このため、警察職員一人ひとりが、被疑者、被害者、被留置者等の人権に配慮した警察活動を行うよう、警察学校での研修や職場における各種教養等の機会を通じて職務倫理教養を確実に身につけるよう努めるとともに、人権意識の高揚を図る。

4 医療・保健・福祉関係者
 医師、歯科医師、薬剤師、看護師等の医療従事者については、インフォームドコンセントの徹底や患者の人権・プライバシーに配慮した医療の確保が必要であることから、関係団体に対し人権教育・啓発に取り組むよう要請する。
 また、社会福祉士、民生委員、ホームヘルパー等の福祉関係職員については、生活相談や介護等の業務を担っており、個人のプライバシーや個人の尊厳に対する十分な認識と配慮が必要であることから、各種研修を通じて人権意識の高揚を図る。

5 消防職員
 消防職員については、住民の生命・財産を守るという視点に立って業務を遂行することが必要であり、消防学校や各種研修において、人権意識の高揚を図る。

6 地方議会議員
 地方議会議員については、住民の代表者として、条例の制定・改廃や予算の議決等地方公共団体の施策方針等に深く関わる立場にあることから、人権教育・啓発に取り組むよう要請する。

7 マスメディア関係者
 情報社会の現代において、新聞、テレビ、ラジオ等のマスメディアは人権意識の高揚に大きな役割を果たしている。半面、プライバシーの侵害や名誉毀損など、人権侵害につながる場合もあり、報道に当たっては常に人権に配慮する必要がある。
 このためマスメディアの企業管理者や関係者団体に対し、マスメディア従事者や関係者を対象とした教育・啓発に取り組むよう要請する。

8 公共交通機関関係者
 安全・快適な移動手段としての役割を担う鉄道、バス、客船等の公共交通機関の従事者は、旅客の輸送に当たって、人権への配慮が求められることから、従事者に対する人権教育・啓発に取り組むよう要請する。


第5章 人権施策推進に向けて

1 県の基本姿勢
 県は、この基本指針に基づき、人権に配慮した行政の推進や人権意識向上のための教育・啓発などに総合的に取り組む。
(1) 庁内推進体制の整備
 この基本指針に基づく施策の推進に当たっては、庁内体制として「新潟県人権施策推進会議(仮称)」を設置し、庁内の密接な連携のもとに諸施策を推進する。
(2) 人権尊重の視点に立った職務遂行
 県職員一人ひとりが人権尊重の視点に立って職務を行うよう取り組む。
(3) 人権課題への適切な対応
 人権課題について、国、市町村、民間団体等と連携を図り、その状況を的確に把握し、適切な対応を図る。
(4) 職員に対する研修等の実施
 県職員一人ひとりの人権意識の高揚を図るため、職員に対する各種講演会や研修会を実施する。

2 関係機関等との連携
 人権教育・啓発を効果的に推進していくためには、社会全体の取組が必要であり、国、市町村、民間団体等がそれぞれの役割に応じて協力し、連携し、全県的に取り組むことが重要である。
(1) 国との連携
 国が実施する「人権啓発フェスティバル」などの人権関係施策に参加するとともに、法務局、人権擁護委員連合会、人権啓発活動ネットワーク協議会等と連携しながら人権教育・啓発活動に取り組む。
(2) 市町村との連携
 第1章で述べたとおり、市町村は、人権教育・啓発に努める責務がある。
 このため、市町村に対し、人権教育・啓発への積極的な取組を促すとともに、情報提供や助言等の支援を行うなど、市町村と連携を図りながら人権教育・啓発を推進する。
(3) 民間団体等との連携
 人権問題の解決を目指す多くの企業やNPOなどの民間団体に対しての情報の提供、助言を行うなど、その活動を支援し連携を図りながら、人権啓発の効果的な推進に努める。

3 基本指針の見直し
 この基本指針は、国際連合や国の動向、社会情勢の変化を踏まえ、必要に応じて、各人権分野の有識者等で構成する懇談会に提言を求め、見直しを行い、内容の充実を図る。