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栃木県人権施策推進基本計画
情報の種類 地方公共団体関係資料
タイトル 栃木県人権施策推進基本計画
時期 2006/03/01
主体名 栃木県
【 内容 】

栃木県人権施策推進基本計画 


第1章 基本的な考え方

1 基本計画策定の背景
 我が国では、すべての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法のもとで、人権に関する法律の制定や諸制度の整備、人権に関する諸条約の批准など、これまで人権に関する様々な施策を講じてきました。
 平成6(1994)年、国連において、平成7(1995)年から平成16(2004)年までの10年間を「人権教育のための国連10年」とする決議が採択されたのを受けて、我が国においても平成9(1997)年7月に「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画を策定しました。
 この国内行動計画は、憲法の定める基本的人権の尊重の原則及び昭和23(1948)年の国連総会において採択された「*世界人権宣言」などの趣旨に基づき、「*人権という普遍的文化」を構築することを目的に、あらゆる場を通じて訓練・研修、広報、情報提供努力を積極的に行うことを目標としており、人権教育の推進に当たっては、女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、*HIV感染者等、刑を終えて出所した人などに関する人権課題を設定して、様々な施策に取り組むこととされました。
 また、平成12(2000)年には「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(人権教 育・啓発推進法)」が施行され、人権教育及び啓発の理念や国、地方公共団体、国民それぞれの責務を明らかにするとともに、人権が共存する人権社会の早期実現に向けて、人権教育及び啓発を総合的かつ計画的に推進していくこととされました。
 一方、本県では、県民一人ひとりの基本的人権を尊重し、明るく幸せな社会づくりを目指して、「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画の考え方の趣旨を踏まえるとともに、人権教育・啓発推進法の規定に基づく県計画及び「栃木県総合計画(とちぎ21世紀プラン)」の部門計画として、平成13(2001)年3月に「栃木県人権教育・啓発推進行動計画」を策定しました。
 さらに、「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」期限後の同和行政のあり方について、調査審議していた栃木県同和対策審議会から平成13(2001)年10月に出された意見具申において、「人権をめぐる世界的な動き、さらには、人権教育・啓発推進法の成立等を考慮すれば、人権条例制定については是認できる。」との提言がなされたことから、すべての県民の人権が尊重され、人権の共存が図られる人権尊重の社会づくりにたゆまぬ努力を傾けていくこととして、平成15(2003)年に「栃木県人権尊重の社会づくり条例」を制定しました。
 この条例では、人権尊重の社会づくりに関する基本理念や県及び県民の責務を明らかにするとともに、人権施策の推進に当たっては、県としての人権施策の基本方針を定めることとされており、平成17(2005)年3月、「栃木県人権尊重の社会づくりに関する施策の基本方針」を策定しました。

2 基本計画策定の趣旨
 県では、これまで人権という普遍的文化の構築を目指して「栃木県人権教育・啓発推進行動計画」に基づき、様々な人権施策を推進してきました。
 その結果、人権意識の高揚を図ることを目的に実施する各種講演会やイベント、研修会等への参加者数が順調に増加するなど、県民の人権に関する関心が高まりを見せてきています。
 また、「栃木県人権尊重の社会づくり条例」において、「県及び県民の責務」や「市町村との協力・連携」等を規定したことにより、それぞれの主体的な取組が図られ、「人権尊重の社会づくり」のための施策を総合的に推進する姿勢が明確となりました。
 さらに、「栃木県人権尊重の社会づくりに関する施策の基本方針」において、県の取り組む人権施策の基本的方向等を明示したことで、「人権尊重の社会づくり」を推進する環境が整いました。
 しかし、現実には、児童虐待や配偶者からの暴力(*ドメスティック・バイオレンス)など生命や身体の安全にかかわる重大な事件や、偏見からくる不当な差別などの人権侵害が生じています。また、国際化、少子高齢化、情報化などの進展に伴い、新たな人権問題も発生してきています。
 不当な差別や虐待などの人権侵害が行われることなく、一人ひとりの人権が尊重される平和で豊かな社会を実現するため、今後の「人権教育及び人権啓発」並びに「相談・支援」に関する基本的な取組方向を明らかにした基本計画を策定しました。

3 基本計画の目標
・一人ひとりがかけがえのない存在として尊重され、偏見や不当な差別のない社会
・誰もがそれぞれの幸福を最大限に追求し、自己実現を図ることができる社会
・一人ひとりの違いを豊かさとして認め合い、共生できる社会の実現を目指し、各種人権施策を総合的に推進することを目標とします。

4 基本計画の性格
 この基本計画は、「栃木県人権尊重の社会づくり条例」第5条に基づいて策定した「栃木県人権尊重の社会づくりに関する施策の基本方針」に規定されている「人権教育及び人権啓発」並びに「相談・支援」に関する取組方向を示すものです。
 また、「人権教育・啓発推進法」に基づく本県の計画として平成13(2001)年に策定した「栃木県人権教育・啓発推進行動計画」を受け継ぐものです。
 さらに、県政運営の基本方針である「栃木県総合計画“とちぎ元気プラン”」の部門計画としての性格を有します。

5 基本計画の推進機関
 この基本計画の推進期間は、平成18(2006)年度から平成22(2010)年度までの5か年間とします。


第2章 人権施策の推進に関する基本的事項
1 人権教育及び人権啓発
(1)あらゆる場を通じた人権教育及び人権啓発の推進
 県民一人ひとりに、人権の意義や重要性が知識として確実に身に付き、人権問題を直感的にとらえる感性や日常生活において人権への配慮がその態度や行動に現れるような人権感覚・人権意識を十分に身に付けることができるよう、あらゆる場を通じて、人権教育及び人権啓発を推進します。

 1) 学校における人権教育の推進
 (ア) 発達段階に応じた人権教育の推進
 学校においては、幼児児童生徒の発達段階に即し、教育活動全体を通じて、人権の意義や大切さに気付かせ、自尊感情に根ざした豊かな人間性をはぐくむとともに、各教科等において、様々な人権課題についての正しい理解とその解決に向けた学習を推進します。
  特に、知識伝達型の講義だけでなく、ボランティア活動等の社会奉仕体験活動や自然体験活動、高齢者・障害者等との交流活動など豊かな体験の機会を充実します。

 (イ) 学習内容及び指導方法の充実
 参加型の学習や高齢者・障害者等との交流を積極的に推進していくための学習内容及び指導方法の研究・開発に取り組みます。
 また、人権教育に関する学習教材や指導資料等についての調査研究を進め、学習内容や指導方法を充実します。
 さらに、指導資料の計画的な作成や視聴覚教材の整備を行い、これらを効果的に活用した人権教育を推進します。

 (ウ) 指導者の資質の向上
 人権教育の担い手であるすべての教職員が人権尊重の理念についての理解と認識を深め、人権意識を高めるとともに、実践的な指導力をさらに高めることができるよう、指導者の養成と研修の充実を図ります。


 2) 家庭、地域における人権教育及び人権啓発の推進
 (ア) 生涯にわたる学習機会の提供
 公民館等の社会教育施設において、人権に関する学習を取り入れた学級・講座を開設したり、ボランティア活動などの体験活動の機会を充実するなど、生涯にわたって人権に関する多様な学習の機会を提供します。
 また、地域の実情や参加者のニーズを把握しながら、参加者の学習意欲を喚起する学習方法の研究・開発に取り組みます。
 さらに、指導者研修の充実に努め、指導者の養成と資質の向上を図ります。

 (イ) 家庭や地域の教育力の向上
 家庭や地域は、他人を思いやる心や生命を尊重する心、そして人間の尊厳などを体感できる人権学習の場です。特に、子どもにとっては、基本的な生活習慣やルール、マナーを身に付けるなど、人格を形成する上で、極めて大きな役割を果たしています。
 家庭や地域の人々が日常生活を通じて、偏見や差別の不当性を見極め、公平・公正に行動することなどを自らの姿勢や行動をもって、子どもに示していくことが求められることから、家庭や地域の人々が人権尊重の理念について理解を深めるとともに、主体的に学習することができる機会を提供します。
 また、子育てや家庭教育に悩む保護者や、いじめ・不登校等に悩む子どもたちが、いつでも気軽に相談できるよう相談体制を充実します。

 (ウ) 県民への人権啓発の推進
 県民一人ひとりが、主体的に参加し、人権尊重の理念に対する理解を深めることができるような県民参加型のイベントを実施します。また、身近な話題や人権上大きな社会問題となった事例等を取り上げた研修を開催するなど内容・手法に工夫を凝らし、県民の興味・関心を喚起する啓発活動を実施します。
 このほか、人権啓発資料の作成・配布やマスメディアを活用した広報活動などを推進します。

 3) 企業・団体等における人権教育及び人権啓発の推進

 近年、企業や団体等を取り巻く環境は大きく変化しています。経済活動のグローバル化の進行、地球環境問題に対する関心の広がり、人権意識の高まり等に伴い、企業や団体は社会を構成する一員として社会的に責任を果たしていくことが重要視されてきています。
 このような中で、企業や団体等が職場における*セクシュアル・ハラスメントや嫌がらせ、性別等による不当な差別などのない働きやすい職場環境づくりのほか、就職の機会均等を図る*公正な採用選考システムを確立できるよう、県では、人権啓発研修への講師派遣や研修会を通じて自主的な教育・啓発活動を支援します。

(2)特定職業従事者に対する人権教育及び人権啓発
 行政職員、教職員・社会教育関係者、警察職員、消防職員、医療・福祉関係者、マスメディア関係者などの人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者は、人権尊重の理念を十分に理解した上で、それぞれの業務に当たる必要があります。
 人権教育及び人権啓発の推進に当たっては、これら特定の職業に従事している者に対して、様々な人権課題に関する研修や講演会を実施するほか、それぞれの関係機関が行う研修等の取組に対して支援を行います。

2 相談・支援
 人権相談及び被害者の支援については、女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、外国人、HIV感染者など個別の人権課題ごとに県や国、市町村、各団体等に相談窓口が設けられ、必要により支援策が講じられています。
 しかし、相談内容の多様化、複雑化に伴い、個々の相談窓口だけでは対応が困難な事例も生じています。
 このため、それぞれの相談窓口が機能の充実を図るとともに、関係機関のネットワークの構築を進めるなど、相互の連携強化に努めます。
 また、人権に関する様々な相談に迅速かつ適切に対応できるよう相談員等に対する研修の充実を図り、資質の向上に努めます。
 さらに、県のホームページや各種広報媒体を活用し、各相談窓口に関する情報を広く県民に発信していきます。


第3章 人権に関する課題ごとの施策に関する基本的事項

 人権施策の推進に当たっては、女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、外国人、HIV感染者、ハンセン病患者及び元患者、犯罪被害者とその家族にかかわる人権問題やインターネットによる人権侵害等を重要課題として位置付け、この基本計画や栃木県総合計画“とちぎ元気プラン”、個別計画等を踏まえて、積極的かつ効果的な施策の推進を図ります。

1 女 性
(1)現状と課題
 国連は、昭和54(1979)年の第34回総会において、女性の権利を包括的に保障する「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)」を採択しました。
 我が国は、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律(男女雇用機会均等法)」の制定や、「国籍法」の改正による国籍取得時の父母両系平等主義の採用など国内法の整備を図り、昭和60(1985)年にこの条約を批准しました。その後、平成11(1999)年に施行された「男女共同参画社会基本法」により、男女が互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することのできる*男女共同参画社会の実現は、21世紀の我が国社会を決定する最重要課題であると位置付けられました。
 一方、女性の日常生活の場における人権を守るために、平成12(2000)年に「ストーカー行為等の規制等に関する法律」、平成13(2001)年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)」をそれぞれ施行しました。また、平成11(1999)年には「男女雇用機会均等法」を改正し、雇用主に対して、セクハラ防止に関する配慮義務を課しました。
 本県においては、平成15(2003)年「栃木県男女共同参画推進条例」を施行し、男女共同参画の推進に関し、基本理念を定め、県、県民及び事業者の責務を明らかにし、県の施策の基本となる事項を定めることにより、男女共同参画を総合的かつ計画的に推進することとしました。また、平成17年度をもって計画期間が終了した「とちぎ男女共同参画プラン」の成果と課題を踏まえ、この条例の基本理念にのっとり、「豊かで活力ある男女共同参画社会」の実現に向けて、新たな行動計画である「とちぎ男女共同参画プラン(二期計画)」(計画期間:平成18年度~平成22年度)を策定しました。
 また、配偶者等からの暴力については、平成16(2004)年に改正された「DV防止法」に基づき、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する基本計画」を平成17年に策定しました。
法律や制度上は、女性の人権を守る様々な取組が行われていますが、現実には、雇用にける男女差別や女性の育児・介護負担、ドメスティック・バイオレンス(DV)、職場におけるセクシュアル・ハラスメントなど女性の人権に関する様々な問題が存在しています。
 男女が自らの意思によって社会のあらゆる分野に参画し、共に責任を担い、個性と能力を発揮することのできる社会を実現することが求められています。

(2) 施策の基本方向

 1) 男女共同参画社会の実現に向けた意識の改革
 性別による固定的な役割分担意識の解消や男女共同参画への理解を深めるため、広報誌、新聞、インターネットなど多様な広報媒体を活用したり、研修会・講演会を開催するなど様々な機会を通じて、啓発活動を推進します。
 児童や生徒が、男女の固定的なイメージや役割意識を持つことがないよう男女共同参画の視点に立った学校教育の充実を図ります。また、男女共同参画の重要性について教職員の理解を一層促進するため、研修等を充実するほか、学校運営等にも男女共同参画の視点を導入します。

 2) 男女の人権の尊重
 (ア) 女性に対する暴力の根絶に向けた教育及び啓発
 様々な機会を捉えて、DVやセクハラ、ストーカー、性犯罪など女性に対するあらゆる暴力を根絶するための啓発活動を推進します。また、各種広報媒体を活用し、相談窓口や支援制度についての周知を進めます。
 関係機関の職員に対して専門性を高めるための研修や二次的被害を防止するための研修を実施します。

 (イ) 相談支援体制の充実
 DVに関しては、関係機関と連携を図りながら、*配偶者暴力相談支援センター等、身近な相談支援体制を充実します。また、DV女性の相談・保護に適切に対応し、自立を支援するため「女性自立支援センター(仮称)」を整備します。
また、セクハラや性犯罪、売買春、ストーカー等については、関係機関との連携を図りながら防止対策を推進するとともに、被害者に対する相談体制を充実します。

 (ウ) 性の尊重
 男女が互いを尊重し合うため、それぞれが互いの性に関して正しい知識を持つことができるよう発達段階に応じた教育・啓発を行います。また、女性の生涯を通じた健康保持や*性と生殖に関する健康と権利について、県民意識の醸成に努めます。

主な関係法令・計画等
・雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(S47.7施行)<男女雇用機会均等法>
・育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(H4.4施行)<育児・介護休業法> 
・男女共同参画社会基本法(H11.6施行)
・ストーカー行為等の規制等に関する法律(H12.11施行)
・配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(H13.10施行)
・栃木県男女共同参画推進条例(H15.4施行)
・配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する計画(H17.11策定) 
・とちぎ男女共同参画プラン(二期計画)(H18.3策定)

2 子 ど も
(1) 現状と課題
 国連は、平成元(1989)年の総会において、子どもの生存、保護、発達、参加という権利の包括的保障を目指した「*児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」を採択しました。我が国は、人権条約としては最大の締約国数を有するこの条約を、平成6(1994)年に一部を留保して批准しました。
 我が国においては、次世代を担う子どもの健全育成や福祉の増進を図るため、昭和22(1947)年に「児童福祉法」、昭和26(1951)年に「*児童憲章」を制定するなど児童福祉制度の整備を行いました。さらに、その後の急速な少子化の進行に対応するため、平成6(1994)年に「子育て支援のための施策の基本的方向(エンゼルプラン)」を策定したほか、平成9(1997)年には児童福祉法の大幅な改正を行い、子育てしやすい環境の整備、保育制度の見直し、*児童自立支援施設の充実を図りました。また、平成11(1999)年に、少子化対策の指針としての「少子化対策推進基本方針」、それに基づく「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画(新エンゼルプラン)」を策定しました。その後、平成15(2003)年には、「次世代育成支援対策推進法」と「少子化社会対策基本法」を施行、平成16(2004)年には、少子化社会対策大綱に基づく「子ども・子育て応援プラン」を制定しました。
 一方、児童虐待の問題に対応するため、子どもに対する虐待の禁止、虐待を受けた子どもの保護のための措置などを定めた「児童虐待の防止等に関する法律」を平成12(2000)年に施行しました。
 本県においては、平成13(2001)年に、21世紀を担う子どもたちを健やかに生み育てる社会とするための基本的指針として「とちぎ子どもプラン」を策定し、平成17(2005)年には、このプランの理念を継承・発展させ、子育て環境づくりを総合的に推進するための基本となる「栃木県次世代育成支援対策行動計画(とちぎ子育て支援プラン)」を策定しました。
 青少年に関しては、平成13(2001)年、青少年の育成の在り方と今後の本県の青少年施策の基本方向を明らかにした「とちぎ青少年プラン」を策定しました。
 子どもを取り巻く環境は、少子化の進行、都市化や核家族化の進展、家庭や地域社会における子育て機能の低下等が進む中で、一層厳しさを増しています。例えば、児童生徒が巻き込まれる事件や児童虐待が発生しているほか、児童買春、児童ポルノ、薬物乱用等の子どもの健康や福祉を害する犯罪も見受けられます。また、学校では、心身の発達及び人格の形成に重大な影響を与えるいじめ、不登校、暴力行為、体罰等、依然として憂慮すべき状況にあります。
 子どもにも大人と同様に基本的人権が保障されています。さらに、大人以上に人権を侵害されやすい子どもは、社会的に保護され、守られなければならない存在です。大人たちが、未来を担う子どもたち一人ひとりの人格を尊重し、健全に育てていくことの大切さを改めて認識し、自らの責任を果たしていくことが求められています。

(2) 施策の基本方向
 1) 子どもの人権の尊重
 (ア) 県民意識の醸成
  「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」の理念が実現されるよう、子どもの権利の擁護や児童虐待の防止に関する啓発資料の作成・配布など、子どもの人権尊重に関する県民意識の醸成のための啓発活動を推進します。

 (イ) 「心の教育」の推進
 勤労体験やボランティア活動などの社会奉仕体験活動、自然体験活動、交流活動などを通じ、他人を思いやる心、自分や他人の生命を重んじる心をはぐくむ「心の教育」を推進します。

 2) いじめや体罰等の問題に関する取組の推進
 いじめや体罰等は、子どもの人権にかかわる重大な問題であるとの認識に立ち、今後ともその防止や解決に向けた取組を一層推進します。
このため、研修等を通じて教職員の資質や能力の向上を図り、児童生徒指導体制を充実するとともに、小学校における「* 子どもと親の相談員」や中学校、高等学校への「* スクールカウンセラー」の配置などにより教育相談体制を強化します。また、各教育事務所に設置した「* いじめ・不登校等対策チーム」が積極的に学校や保護者等を支援します。

 3) 児童虐待防止対策の充実
 (ア) 児童虐待防止のための体制整備
 迅速・的確に児童虐待へ対応するため、児童相談所の体制を強化するとともに、職員の専門性の確保及び資質の向上のための研修を充実します。
 市町村における* 要保護児童対策地域協議会の設置を促進します。また、民生委員・児童委員などとの連携を強化します。
さらに、養育力が不足していると推測される家庭に保健師や保育士等が訪問し、養育力を補い支援していく事業等について、市町村への普及を図ります。

 (イ) 虐待を受けた子どもの自立支援
 虐待等により心身に深刻な影響を受けた子どもに対し、心理療法やカウンセリングによる心のケアを充実します。
 また、虐待をしてしまう保護者へのカウンセリングを行うなどして、家族の再統合を促進します。

 4) 子育て環境づくりの推進
 子育てについての不安や悩みを軽減するため、地域における子育て支援体制を充実するとともに、子育て家庭を社会全体で暖かく見守り支える意識を醸成して、子どもたちが健やかに成長できる環境の整備を図ります。

主な関係法令・計画等
・教育基本法(S22.3施行)
・児童福祉法(S23.1施行)
・児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(H11.11施行)
・児童虐待の防止等に関する法律(H12.11施行)
・次世代育成支援対策推進法(H15.7施行)
・少子化社会対策基本法(H15.9施行)
・栃木県青少年健全育成条例(S52.1施行)
・栃木県次世代育成支援対策行動計画(とちぎ子育て支援プラン)(H17.3策定)
・とちぎ青少年プラン(H18.3策定)

3 高 齢 者
(1)現状と課題
 国連は、昭和57(1982)年に「高齢化に関する世界会議」を開催し、高齢化対策の指針となる「高齢化に関する国際行動計画」を採択しました。また、平成3(1991)年の総会で「高齢者のための国連原則」を採択しました。この原則は、高齢化に関する国際行動計画の推進を目的とし、高齢者の「自立」、「参加」、「ケア」、「自己実現」、「尊厳」の五原則が掲げられました。
 我が国における平均寿命の大幅な伸びや少子化などを背景とした社会の高齢化はきわめて急速に進んでおり、平成27(2015)年には4人に1人が高齢者という「超高齢社会」の到来が予測されています。このような高齢社会に対応するため、平成元(1989)年に「高齢者保健福祉推進10か年戦略(ゴールドプラン)」、平成6(1994)年に「新ゴールドプラン」を策定しました。また、平成7(1995)年に「高齢社会対策基本法」を施行するとともに、平成13(2001)年には高齢者の社会参加や地域社会との共生をめざす「高齢社会対策大綱」を策定しました。さらに、平成17(2005)年には、高齢者虐待の防止等に関する国等の責務や虐待を受けた高齢者に対する保護のための措置、高齢者の養護者の負担軽減を図るための措置等を定めた「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」が成立しました。
 本県においては、平成6(1994)年に「いきいき長寿とちぎ」の実現を目指して「栃木県高齢対策推進計画二期計画」を策定しました。また、平成11(1999)年に施行した「栃木県ひとにやさしいまちづくり条例」に基づき、高齢者を含むすべての県民 が安全快適な日常生活を営み、社会参加が可能となるよう生活環境の整備を推進しています。さらに、平成12(2000)年には、介護保険制度の導入に合わせ、県の高齢対策の指針となる「栃木県高齢対策推進計画三期計画(はつらつプラン21)」を策定しました。また、とちぎで暮らし、長生きしてよかったと思える社会の実現を目指し、今後確実に到来する超高齢社会をめぐる重要課題に対する施策展開の方向を提示する「栃木県高齢者保健福祉計画(はつらつプラン21(二期計画))」を平成15(2003)年に策定し、各種施策を推進しています。また、介護保険制度改正の内容を踏まえ、平成18(2006)年度を初年度とする新たな計画「栃木県高齢者保健福祉計画(はつらつプラン21(三期計画))」を策定しました。
 このように、法律や制度の充実が図られてきましたが、高齢者が豊かな経験や知識があるにもかかわらず、高齢であることのみを理由に就労や社会参加、自己実現の機会が制限されるといった問題が起きています。また、介護を必要とする高齢者に対する身体的・心理的虐待や介護放棄、不動産や預貯金を家族等が無断で名義変更したり、本人の希望する金銭の使用を制限する経済的虐待の問題があります。この他、*認知症高齢者が悪徳商法や財産管理をめぐるトラブルに巻き込まれるという問題も生じています。
 援護を必要とする高齢者を地域全体で支えていく仕組みを確立するとともに、高齢者が健康で生きがいを持ち、安心して自立した生活を送ることができる社会を実現することが求められています。

(2) 施策の基本方向
 1) 高齢者の人権の尊重
 広く県民に高齢者の福祉についての理解と関心が深まるよう啓発活動を推進します。
 また、高齢者は、長年にわたり社会を支え、文化を築いてきた重要な存在であり、高齢者を「弱者」とみる画一的な見方を払拭し、知識・経験・技能を培い豊かな能力を持つ人材として捉えていくよう、県民意識の醸成に努めます。
 さらに、一部に存在する「老い」に対する暗く、汚いものであるという偏見を払拭するよう啓発活動を推進します。
学校教育においては、ボランティア活動や高齢者との世代間交流などを通じて、高齢者の福祉や人権について理解を深めるとともに、児童生徒に思いやりの心をはぐくみます。

 2) 高齢者の尊厳の確保
 高齢者虐待の早期発見及び早期対応を行う「*高齢者虐待防止ネットワーク」の設置を支援するとともに、認知症高齢者等の権利侵害を防止し、日常生活を支援する「とちぎ権利擁護センター(あすてらす)」が行う「* 地域福祉権利擁護事業」の普及・啓発と事業への支援を行います。また、判断能力の不十分な認知症高齢者等を保護し、支援するための* 成年後見制度について、関係機関と連携しながら的確な対応を図ります。
 介護予防のためのマネジメントや住民からの総合相談・支援事業、権利擁護事業、高齢者一人ひとりに応じた包括的・継続的ケアマネジメントなどを担う地域の中核的機関である「* 地域包括支援センター」の設置を支援し、地域ぐるみで高齢者の生活を支える体制を整備します。

 3) 自立支援と生きがいづくりの推進
 高齢者が長年にわたり培ってきた知識や経験等を活かし、可能な限り長く現役として働くことのできる雇用の場を確保するため、65 歳までの定年引き上げや継続雇用制度導入の推進についての啓発活動を行います。
 また、高齢者が社会を支える重要な担い手として地域社会に貢献するとともに、高齢者自身が生きがいをもって充実した生活を送ることができるよう、社会活動への参加促進に努めます。

 4) 高齢者に配慮した生活環境の確保
 「栃木県ひとにやさしいまちづくり条例」に基づき* バリアフリー化による生活環境等の整備を進めます。
 また、福祉用具や住宅改修の普及、居住環境改善のための相談・助言・情報提供を行い、高齢者にやさしい居住環境の確保を図ります。

主な関係法令・計画等
・老人福祉法(S38.8施行)
・高齢者等の雇用の安定等に関する法律(S46.10施行)
・高齢社会対策基本法(H7.12施行)
・介護保険法(H12.4施行)
・高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(H18.4施行)
・栃木県ひとにやさしいまちづくり条例(H11.10施行)
・栃木県高齢者保健福祉計画<はつらつプラン21(三期計画)>(H18.3策定)

4 障 害 者
(1) 現状と課題
  国連は、障害者の「完全参加と平等」をテーマに、昭和56(1981)年を「国際障害者年」と定めるとともに、翌年の総会では、昭和58(1983)年から平成4(1992)年までの10年間を「障害者のための国連10年」としました。
  我が国においては、これらの国際的な動向を契機に、「障害があっても共に暮らす」という考え方が広まり、平成5(1993)年、「心身障害者対策基本法」を「障害者基本法」に改正しました。この改正の基本には*ノーマライゼーションの考え方を導入し、すべての障害者は「個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する」とともに「社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられる」と規定しました。また、この改正にあわせ、「障害者対策に関する新長期計画」を策定するとともに、平成7(1995)年には、この新長期計画の後期重点施策実施計画である「障害者プラン」を策定しました。平成14(2002)年には、これらの計画の理念を継承するとともに、今後10年 間の障害者施策の基本的方向を定めた「障害者基本計画」と前期5年間に重点的に実施する施策及びその達成目標並びに計画の推進方策を定めた「重点施策実施5か年計画」を策定しました。
 また、平成17(2005)年、障害者の地域生活と就労を進め、自立を支援する観点から、各種の障害者保健福祉施策の抜本的な改革を行う障害者自立支援法が成立しました。
 本県では、「完全参加と平等」の理念のもと、障害のある人もない人も共に生きるこころかよう福祉社会を実現するため、平成5(1993)年に「障害者福祉に関する新長期行動計画(とちぎ障害者福祉プラン)」を策定しました。その後、平成10(1998)年にノーマライゼーションの理念の普及を背景とした障害者施策の新たな展開や障害者ニーズを踏まえた施策を推進するため、この行動計画の改訂を行いました。平成15(2003)年には、「障害者の自立と社会参加」を基本目標に平成19(2007)年までを計画期間とする「栃木県障害者計画(とちぎ障害者プラン21)」を策定しました。
 このほか、平成11(1999)年に「栃木県ひとにやさしいまちづくり条例」を施行し、障害者、高齢者を含むすべての県民が、住み慣れた地域の中で安心して生活でき、積極的に社会参加できるようなまちづくりを推進しています。
 法律や制度の上での障害者雇用や社会生活の利便性を目指した取組は進んでいます。しかし、現実には、障害のある人たちは、様々な物理的、制度的、文化・情報面、意識上などの障壁(バリア)のために不利益を被ることが多く、その自立と社会参加が拒まれている状況があります。また、暴行・虐待、性的いたずらなどの人権侵害や障害者の財産が不当に侵される事件も発生しています。
 ノーマライゼーション理念の一層の定着を図り、障害のある人も地域の中で、自立した生活を送ることができるような条件を整え、障害のある人と障害のない人が共に生きる社会を実現することが求められています。

(2) 施策の基本方向
 1) 障害及び障害者に対する正しい理解の促進
 障害や障害者についての理解を深め、偏見を払拭し、すべての県民が生活の様様なかかわりの中で、障害者の人権を尊重した行動をとることができるよう教育・啓発を推進します。
また、福祉体験活動や障害の擬似体験、障害者との交流活動、各種イベントの開催など障害のある人とない人が触れ合う機会を創出し、相互理解の促進を図ります。

 2) 自己決定・自己選択の支援
 (ア) 相談支援及び情報提供機能の充実
 障害者やその家族からの日常生活等に関する様々な相談に応じることができるよう相談体制の充実に努め、誰もが身近な地域において総合的な支援を受けることができる環境を整備します。
 また、障害者が必要なときに必要な情報を入手することができるよう障害者のニーズに応じた情報提供機能の整備を図ります。

 (イ) 権利擁護の促進
 自己決定や自己選択の判断能力が不十分な障害者を支援するため、「とちぎ権利擁護センター(あすてらす)」が行う「地域福祉権利擁護事業」の普及・啓発と事業への支援を行います。また、成年後見制度について、関係機関と連携しながら的確な対応を図ります。

 (ウ) 障害者虐待の防止
 家族や施設職員などの関係者に対し、障害者の人権の重要性について正しい認識と理解を深めるとともに、障害の有無にかかわらず、虐待や不当な扱いは、人権侵害だという認識を広めるための啓発活動に取り組みます。

 3) 雇用・就業の促進と社会参加の支援
 障害の種別、程度及び一人ひとりのニーズに応じた職業相談・職業訓練の充実に努め、障害者の雇用を促進します。また、事業主等に障害者雇用促進の周知・啓発を行い雇用の促進と就労の安定を図ります。
さらに、文化・芸術活動、スポーツ・レクリエーション活動などへ障害者が積極的に参加できるよう支援します。

 4) 障害者に配慮した生活環境の確保
 (ア) 暮らしやすい住宅環境の整備
 障害者にとって暮らしやすい住宅の整備を進めるための増改築や福祉機器導入等を促進します。また、障害者等に配慮した公営住宅の供給の推進や* グループホーム、*福祉ホーム等の設置を促進し、障害者の暮らしを支援します。

 (イ) 暮らしやすいまちづくりの推進
 日常生活用品をはじめ、交通や住宅など生活にかかわる様々な分野で*ユニバーサルデザインの観点を踏まえた暮らしやすいまちづくりを推進します。また、障害者に配慮した防犯・防災対策を進めるなど障害者が安心して暮らせるまちづくりを推進します。

 5) *特別支援教育の充実
 障害のある児童生徒の自立や社会参加を促進するために、児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに対応した教育の充実を図ります。
*発達障害児に対しては、校内支援体制の整備や地域における巡回相談員の育成「* 栃木県発達障害者支援センター(ふぉーゆう)」など関係機関との連携を進めるなど総合的な支援を図ります。

主な関係法令・計画等
・身体障害者福祉法(S25.4施行)
・精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(S25.5施行)
・知的障害者福祉法(S35.4施行)
・障害者の雇用の促進等に関する法律(S35.7施行)
・障害者基本法(S45.5施行)
・障害者自立支援法(H18.4施行(一部H18.10施行))
・高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(H6.9施行) <ハートビル法>
・高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(H12.11施行) <交通バリアフリー法>
・身体障害者補助犬法(H14.10施行)
・栃木県ひとにやさしいまちづくり条例(H11.10施行)
・栃木県障害者計画<とちぎ障害者プラン21>(H15.3策定)

5 同和問題
(1) 現状と課題
 日本社会の歴史的発展の過程において形づくられた身分的差別により、国民の一部の人々は長年にわたり、経済的、社会的、文化的に低位の状態に置かれてきました。これらの人々は、明治4(1871)年の太政官布告第61号(解放令・賤民廃止令)により法制度上は平等になりましたが、その後も、同和地区と呼ばれる地域の出身であることや、そこに住んでいることを理由に、結婚や就職その他の生活の上で、心理的・実態的差別を受けることがあります。これが我が国固有の「同和問題」といわれるものです。
 昭和35(1960)年に設置された同和対策審議会は、内閣総理大臣から「同和問題の解決のための基本方策」について諮問を受け、昭和40(1965)年に「同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。その早急な解決こそ国の責務であり国民的課題である。」と、その後の対策の基本的方向を示す答申を提出しました。国においては、この答申を受けて、昭和44(1969)年の「同和対策事業特別措置法」制定以降、「地域改善対策特別措置法」、「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」の制定や改正を行い、生活環境の改善、社会福祉の増進、産業の振興、職業の安定、教育の充実等の事業を総合的に行ってきました。その結果、劣悪な生活環境が差別を再生産するような状況は大きく改善されたため、平成14(2002)年3月31日、同和地区及び同和地区の関係者のみを対象とする事業を終了し、以後は一般対策で対応することとしました。
 本県においては、昭和48(1973)年から、国の制度を活用しつつ、県単独事業を創設しながら、同和地区住民の経済的、社会的、文化的地位の向上を図るため各種の施策を実施してきました。その結果、最後の特別措置法の期限切れを控えた平成13(2001)年、栃木県同和対策審議会から、「同和地区住民の生活実態の改善、当該事業に対する需要の著しい減少等、特別対策としての当初の目的はおおむね達成されたものと考えられ、地域改善対策(同和対策)事業については、平成14(2002)年3月末をもって終了することとし、速やかなる一般対策への移行及び廃止を提言する。」との意見具申がなされました。県はこの意見の趣旨を踏まえ、国同様、平成14(2002)年3月31日をもって特別対策事業を終了しました。
 特別対策事業を実施した結果、同和地区と他の地域との生活実態面での格差は相当程度解消されました。また、教育・啓発の実施により、同和問題に対する理解が深まってきています。しかし、結婚問題を中心とした心理的差別は依然として存在してい ます。さらに、同和問題の解決を遅らせている大きな要因に「*えせ同和行為」の横行があります。
 今後は、これまでの同和教育や啓発活動の成果を活用し、すべての人の基本的人権の尊重という視点に立って、同和問題に関する正しい理解を深めるための教育及び啓発に取り組み、差別のない社会を実現することが求められています。

(2) 施策の基本方向
 1) すべての人の基本的人権を尊重していくための人権教育・人権啓発の推進
 (ア) 人権啓発の推進
 同和問題は、日本国憲法によって保障されている基本的人権にかかわる問題です。
 県民一人ひとりが、同和問題を正しく理解し、偏見や差別をなくしていくとともに、同和問題を自らの問題として取り組んでいくことができるよう人権啓発を推進します。
 各種広報媒体の活用や講演会・研修会を開催するほか、企業・団体等が実施する研修に対しては、資料・情報の提供、講師派遣などの支援を行います。

 (イ) 人権教育の推進
 学校教育においては、同和問題を人権教育における重要な人権問題の一つとして位置付け、これまでの取組の成果を踏まえながら、教材の開発や学習内容 ・指導方法の改善・充実を図ります。
 また、社会教育においては、県民の同和問題をはじめとする様々な人権問題に関する学習意欲を喚起するとともに、学習内容・方法の改善・充実及び公民館や集会所等の社会教育施設における事業の充実を図ります。

 2) えせ同和行為の排除
 えせ同和行為は、同和問題の解決を口実に不法・不当な行為や要求を行うもので、「同和は怖い」という誤った意識を植え付けるものです。
 えせ同和行為排除のため、広報や情報提供などの啓発に取り組むとともに、法務局や警察等の関係機関との連携を通じて、被害の予防に努めます。

主な関係法令・計画等
・地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律期限後の栃木県同和行政の在り方について(意見具申)(H13.10)

6 外 国 人
(1) 現状と課題
 国連は、あらゆる形態の人種差別の撤廃や人種間の理解を促進することを目的とした「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)」を昭和40(1965)年に採択しました。この条約に我が国は、平成7(1995)年に加入し、146番目の締約国となりました。
 我が国においては、国際化の進展に伴い増加した外国人の就労をめぐるトラブルを未然に防止し、雇用管理の改善、労働条件の確保などを図るため、事業主が考慮すべき指針として「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」を平成5(1993)年に定めました。
 本県では、「とちぎ21世紀国際化推進プラン(第3次計画:平成13年度から平成17年度)」に基づき、国際化の推進に取り組んできましたが、新たな潮流や課題に対応して、県が取り組むべき国際化施策の方向を明らかにするため、新たな国際化推進プラン(推進期間:平成18年度から平成22年度)を策定しました。
 栃木県の外国人登録者数は、年々増加しており、平成16(2004)年12月末現在、93か国、32,023人となり、県人口に占める割合は1.59%に達しています。こうした在県外国人の滞在の長期化、定住化に伴い、日常生活の中で、外国人と地域社会とのかかわりが深くなり、外国人との交流や協力活動が活発化しています。しかし、一方で は、言語や生活習慣等の違いから、就労に際しての差別やアパート・マンション等への入居拒否等の様々な人権問題が生じています。
 このため、外国人と日本人が、相互に理解を深め、お互いの多様な文化や習慣、価値観等の違いを認め合い、国籍や人種、民族を問わず、すべての人の人権を尊重し合う共生社会を実現することが求められています。

(2) 施策の基本方向
 1) 外国人の人権の尊重
 (ア) 共生意識の醸成
 広報媒体等を活用した啓発活動を推進し、異なる文化や価値観の違いを認め、お互いの人権を尊重し合う県民意識の醸成に努めるとともに、共生社会への理解を深めるための機会の拡充を図ります。

 (イ) 国際感覚豊かな人材の育成
 すべての県民が国際理解を深め、国際感覚を養えるよう、各種講座等の開催や国際理解に役立つ情報の提供等を進めます。
また、異文化理解や外国語教育等、国際理解のための学校教育の充実を図ります。

 2) 在県外国人支援の充実
 (ア) 外国人にもわかりやすい情報提供の促進 
 各種行政サービスをはじめ、生活に必要な情報について、多言語による提供を行うなど、外国人にも理解しやすい情報提供の促進を図るとともに、公共施設や案内板等の外国語表記を促進します。

 (イ) 相談体制の充実
 関係機関との連携を図りながら、多言語による相談や専門的な分野の相談等、複雑多様化する相談内容に対応できるよう相談体制の充実を図ります。

 (ウ) 日本語学習の促進
 日本語ボランティア養成講座を開催するなど、外国人が、コミュニケーションの手段である日本語を学習する機会の拡充を図ります。

 (エ) 外国人の適正就労の推進
 不法な就労が行われることのないよう、また、外国人労働者に対する不当な取り扱いがなされることのないよう、事業主に対する啓発を推進します。

 (オ) 外国人の意見を行政に反映させる機会の拡充
 外国人の視点を施策に反映させるため、外国人から意見を聞く機会を拡充します。

主な関係法令・計画等
・外国人登録法(S27.4施行)
・とちぎ国際化推進プラン(H18.3策定)

7 HIV感染者・ハンセン病患者及び元患者
(1) 現状と課題
 HIV感染症は、進行性の免疫機能障害を特徴とする疾患であり、HIVによって引き起こされる免疫不全症候群をエイズ(AIDS)といいます。
 エイズは、昭和56(1981)年にアメリカ合衆国で最初の症例が報告されて以来、その広がりは世界的に深刻な状況にあます。
 世界保健機関(WHO)は、昭和63(1988)年にエイズの蔓延と患者・感染者に対する差別や偏見の解消を図るため、12月1日を「世界エイズデー」と定め、エイズに関する啓発活動の実施を提唱してきました。
 我が国においては、平成11(1999)年、感染症患者等の人権に配慮した施策の推進を基本理念の一つとした「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」を施行し、現在、同法の規定により作成された「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」に基づき、総合的な対策が進められています。
 しかし、これらの対策にもかかわらず、エイズ患者やHIV感染者に対する正しい知識や理解の不足から、多くの偏見や差別意識を生み、医療現場における診療拒否や無断検査のほか、就職拒否や職場解雇、アパートへの入居拒否・立ち退き要求、公衆浴場への入場拒否など社会生活の様々な場面で人権問題が生じています。
 *ハンセン病は、らい菌による感染症ですが、らい菌に感染しただけでは発病する可能性は極めて低く、発病した場合でも、特効薬により完治が可能になりました。また、遺伝病でないことも判明しています。したがって、ハンセン病患者を隔離する必 要はありません。しかし、平成8(1996)年に「らい予防法」が廃止されるまで、患者を療養所に一律に収容する隔離政策がとられてきたことにより、患者や家族の人権が著しく侵害されてきました。
 このような中、国を相手にハンセン病患者らが提訴したハンセン病訴訟において、平成13(2001)年、熊本地方裁判所は、「ハンセン病による隔離規定は違憲である。」との判決を下しました。国は、ハンセン病問題の早期解決のため控訴を断念し、ハンセン病患者・元患者の名誉回復及び福祉の増進などを図ることを目的とした「ハンセ ン病療養所入所者等に対する補償金の支給に関する法律」を制定しました。また、毎年6月25日を含む日曜日から土曜日までの1週間を「ハンセン病を正しく理解する週間」と定め、啓発活動に取り組んでいます。
 平成17(2005)年5月末現在、ハンセン病療養所と関係施設への入所者数は、全国で3,307人、栃木県出身の療養者は、全国5つの療養所に37名(平均年齢77歳)となっています。
 療養所で生活している方々の多くは、既に治癒しているにもかかわらず、現在でも残る社会の偏見や差別、自身の高齢化、長期にわたる隔離による家族との関係断絶などの理由から、社会復帰が困難な状況にあります。
 エイズやハンセン病に対する理解不足に基づく偏見や差別を解消し、感染症患者等が安心して医療を受けることができ、自立した生活を送ることができる社会を実現していくことが求められています。

(2)施策の基本方向
 1) 偏見や差別意識解消のための教育・啓発の推進
 (ア) エイズに関する正しい知識と理解の普及
 エイズ患者・HIV感染者に対する誤解・偏見・差別の解消を図るため「世界エイズデー」を中心に広報活動に取り組むほか、学校教育においては、児童生徒の発達段階に応じたエイズ教育(性教育)を推進し、正しい知識の普及を図ります。

 (イ) ハンセン病に関する正しい知識と理解の普及
 栃木県藤楓協会とともに、「ハンセン病を正しく理解する週間」を中心にハンセン病の正しい知識の普及を図るための啓発活動や里帰り事業、交流事業に取り組みます。

 2) 相談・支援体制の整備
 人権に配慮した治療体制の整備や適切な相談体制の充実を図ります。

主な関係法令・計画等
・らい予防法の廃止に関する法律(H8.4施行)
・感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(H11.4施行)
・ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律(H13.6施行)

8 犯罪被害者とその家族
 犯罪被害者とその家族には、事件の直接的な被害だけではなく、風評による人権侵害やマスメディアの行き過ぎた報道によるプライバシー侵害・名誉毀損、過剰な取材による平穏な生活の侵害等の二次的被害の問題があります。また、捜査活動や裁判に伴い精神的・経済的負担にも苦しんでいます。
  これまでも、犯罪被害者等への支援として、犯罪被害者等に対する給付金の支給や情報の提供のほか、捜査時の「被害者支援担当官」の付き添いやプライバシーに配慮した相談室の整備など捜査過程における被害者の精神的負担の軽減などに取り組んできました。
 さらに、平成17(2005)年、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進し、犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的に、「犯罪被害者等基本法」を施行するとともに、この基本法の理念を具体化した「犯罪被害者等基本計画」を策定しました。
 今後は、犯罪被害者等の人権が尊重される社会実現のため、「犯罪被害者等基本計画」に基づく施策に取り組むとともに、犯罪被害者や家族をサポートする民間支援団 体(*社団法人「被害者支援センターとちぎ」)との連携・協力を通じ、きめ細かな支援活動を推進していきます。

主な法令・計画等
・犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律(S56.1施行)
・犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(H12.11施行)
・犯罪被害者等基本法(H17.4施行)

9 インターネットによる人権侵害
 高度情報化社会が急速に進展し、インターネットや電子メールは、だれでも情報が発信できる手軽で便利なメディアとして急速に普及しています。
 その反面、誰でも匿名で、どのような情報でも簡単に発信できる面があることから、他人を誹謗中傷する表現や差別を助長する表現、個人や集団にとって有害な情報が電子メールで流されたり、インターネットに掲載されるなど、人権にかかわる問題が発生しています。
  県民一人ひとりが、個人のプライバシーや名誉に関する正しい理解のもとに、モラルをもってインターネットを利用するよう啓発活動に取り組みます。
  また、児童生徒に対しては、情報の収集・発信に関するルールやマナーを理解させ、情報モラルを醸成するための学校教育の充実を図ります。
 インターネットにおける差別的表現の流布については、法務局との連携により、適切に対応していきます。

主な関係法令・計画等
・特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(H14.5施行)

10 その他の人権問題
 1) アイヌの人々
 アイヌの人々は、独自の言語であるアイヌ語や伝統的儀式、特有のアイヌ文様など豊かな文化を発展させてきました。しかし、明治維新以降は政府の同化政策の影響もあり、独自の文化や伝統などが失われつつあります。
 アイヌの人々に対する理解と認識を深めるとともに、アイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌ文化を維持し、アイヌの人々の尊厳を尊重することが必要です。

 2) 刑を終えて出所した人
 刑を終えて出所した人に対しては根強い偏見があり、就職に際しての差別や住居等の確保が困難などの問題が起きています。
 刑を終えて出所した人が、社会の一員として円滑な生活を営むためには、本人の強い更生意欲とともに、周囲の人々の理解と協力が必要です。

 3) *性的指向にかかわる人権問題
 同性愛者や両性愛者に対する偏見は、社会生活の様々な場面で人権侵害等の問題を生じています。
 性的指向を理由とする偏見や差別をなくすことが必要です。

 4) *ホームレス
 ホームレスと地域社会との間にあつれきが生じたり、ホームレスに対する嫌がらせや暴行事件などが発生しています。
 ホームレス及び近隣住民の人権に配慮しつつ、ホームレスに対する偏見や差別をなくすことが必要です。

 5) *性同一性障害
 性同一性障害に関する正しい理解を深め、偏見や差別をなくすことが必要です。

 これらの人権問題や今後、社会環境の変化等に伴い、新たに生じる人権問題については、あらゆる機会を通じて、人権教育及び人権啓発の推進を図り、問題の解決に努めます。


第4章 推進体制
1 県の推進組織
 人権が尊重される平和で豊かな社会の実現を目指して設置された県の全庁的組織である「*栃木県人権施策推進本部」のもと、緊密な連絡調整を図り、総合的かつ効果的な関係施策の推進に努めます。
 また、各部局においては、この基本計画の趣旨を十分に踏まえ、施策を推進します。

2 国及び市町村との連携
 人権施策の推進に当たっては、国・県・市町村がそれぞれの立場から様々な取組を行っており、人権尊重の社会づくりを進めていくためには、相互の緊密な連携のもと協力体制を強化した幅広い取組が必要です。
 このため、法務省(宇都宮地方法務局)や栃木県人権擁護委員連合会とともに設立した「*栃木県人権啓発活動ネットワ-ク協議会」のもと、人権啓発活動にかかわる機関と連携・協力し、人権啓発活動を推進します。
 また、市町村は県民にとって、最も身近な地方公共団体であり、地域の実情に即したきめ細かい人権啓発活動を行うことが期待されています。
 したがって、市町村と連携を図りながら人権教育及び人権啓発に関する情報提供や助言等を行うとともに、市町村が実施する取組を積極的に支援します。

3 企業・団体等との連携
 人権施策の推進に当たっては、行政だけではなく、県民や企業、団体、マスメディア、*NPO、ボランティア等における自主的、主体的な活動が不可欠であり、これらの活動との連携を図り、協働して人権が尊重される社会の実現に努めます。
 特に、*人権教育・啓発推進県民運動の推進母体として、各種民間団体や行政機関等で構成される「栃木県人権教育・啓発推進県民会議」などを通じて、企業・団体等との連携を図るとともに、その主体的な取組を支援します。


用語解説

〔あ行〕

○ いじめ・不登校等対策チーム
 全8教育事務所に設置しています。管内の全ての小・中学校等を訪問しながら、いじめ・不登校の現状を詳細に分析し、適切な学校支援を行うとともに、市町村教育委員会と連携を図りながら、各学校における児童・生徒指導体制の整備や児童生徒の「自己指導能力(日常生活のあらゆる場面において、どのように行動することが適切かを自分で判断し実行する力)」を育成するための児童・生徒指導の一層の充実に向けた指導・助言を行います。

○ HIV感染者/エイズ
 HIV(ヒト免疫不全ウイルス Human Immunodeficiency Virus)感染者は、HIVの感染が抗体検査等により確認されているが、エイズ(後天性免疫不全症候群AIDS:Acquired Immunodeficiency Syndrome)の特徴的な肺炎や腫瘍などの感染症を発症していない状態の人のことです。
 エイズは、HIVに感染し、生体の免疫機能が破壊され、さまざまな感染症を起こしやすくなる病気です。HIV感染による免疫力の低下は、ゆっくりと進行し、エイズの発症までには10年以上かかるといわれています。近年、医学の進歩によりエイズの発症を遅らせたりする治療法が確立されています。

○ えせ同和行為
 「同和問題は怖い問題であり、避けた方がよい」という誤った意識に乗じ、同和問題の解決を口実に企業や団体、行政機関等に不当な利益や義務のないことを要求する行為のことです。
 えせ同和行為の横行は、企業や団体、行政機関等における被害のみならず、同和問題の解決をめざして真摯に取り組んできた人々などに対するイメージを著しく損ね、これまで積み重ねてきた教育と啓発の効果を一挙に覆し、心理的な差別解消を阻害する大きな原因となっています。

○ NPO(Non-Profit Organization)
 特定非営利活動促進法に基づき、法人格を取得している団体です。一般的には、社会的使命を持って自発的・継続的に社会的な責任を持って活動を行う組織のことです。


〔か行〕

○ グループホーム
 障害者や高齢者等が、地域社会において、少人数の家庭的な雰囲気の中で、相談その他の日常生活上の援助を受けながら共同生活を送る住宅のことです。

○ 公正な採用選考システム
 同和問題など人権問題についての正しい理解と認識のもとに、職業選択の自由及び就職の機会均等を確保するため、栃木労働局が、常時使用する従業員数100人以上の事業所に対して「公正採用選考人権啓発推進員」の設置を勧奨するなど公正な採用の実現を目指すものです。

○ 高齢者虐待防止ネットワーク
 虐待の早期発見やケースマネジメント等を円滑に実施するため、地域包括支援センター等が中心となり、ケアマネジャーやホームヘルパー等の介護サービス事業者、社会福祉施設、医療機関、警察、地域の民生委員などが連携・協力を図ることです。
 高齢者虐待に関する相談・通報に対し、ネットワーク機能を活かし、実態把握や支援の検討、サービス介入、さらなる虐待の防止策の検討などを行います。

○ 子どもと親の相談員
 教職経験者、青少年団体指導者、カウンセラーなどを小学校に配置し、児童が悩みや不安を気軽に相談できる話し相手として、また学校と保護者・地域のパイプ役として、不登校や問題行動等の未然防止や早期発見・早期対応に当たっています。


〔さ行〕

○ 児童憲章
 国民全体の責任で、すべての子どもたちが健やかに育ち、幸せに生きていくことができるようにという趣旨から生まれた憲章です。子どもの持つ権利を宣言し、それに対する社会の責任と義務をうたっています。子どもの福祉を願う国民の道徳的規範を示すものとして、児童憲章制定会議で制定しました。

○ 児童自立支援施設
 児童福祉法第44条に基づいて設置される児童福祉施設の一つです。不良行為をなし、又はなすおそれのある児童及び環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ又は保護者の下から通わせて、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、自立を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的としています。

○ 児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)
 平成元(1989)年11月の第44回国連総会で採択され、平成2(1990)年9月2日、発効しました。18歳未満のすべての者を対象とし、生きる権利(第6条)、名前と国 籍を持つ権利(第7条)、親と同居しその保護を受ける権利(第9条)、自己の見解をまとめうる子どもの意見表明の権利(第12条)などで構成されています。平成17(2005)年7月20日現在の締約国数は192で、日本は平成6(1994)年4月22日に批准し、同年5月22日に発効しました。

○ 人権という普遍的文化
 「人権教育のための国連10年」の活動は、冷戦構造崩壊後、世界秩序の一つとなった人権を特別なものではなく、地球上のどこにおいても尊重される社会規範にしようと実施されており、人権教育の目的として「人権という普遍的文化」の構築を掲げている ところに大きな特徴があります。
 人権という普遍的文化の構築とは、人権についてお互いに理解し、尊重し合うことを、暮らしの中の一つの文化(人権文化)として創造していくことです。

○ スクールカウンセラー
 臨床心理士、精神科医など、児童生徒の臨床心理に関して高度に専門的な知識・経験を有する者を中学校等に配置し、児童生徒へのカウンセリングや教職員及び保護者に対する助言・援助を行います。

○ 性的指向
 人の性愛がどういう対象に向かうのかを示す概念のことです。具体的には、性愛の対象が異性に向かう異性愛(ヘテロセクシュアル)、性愛の対象が同性に向かう同性愛(ホモセクシュアル)、性愛の対象が男女両方に向かう両性愛(バイセクシュアル)を指します。

○ 性同一性障害
 生物的な性別(からだの性)と、心理的性別(心の性)との間に食い違いが生じ、それによって社会生活に支障を来す場合をいいます。
 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律が、平成16(2004)年7月に施行され、性同一性障害の人は、「年齢が20歳以上であること」、「結婚していないこと」、「子どもがいないこと」、「生殖腺がないか、生殖機能が不能な状態であること」、「外性器が、移行する性別に近似した外観を持つこと」というすべての要件を満たし、家庭裁判所の審判が通れば、戸籍の性を変えられるようになりました。

○ 性と生殖に関する健康と権利(リプロダクティブ・ヘルツ/ライツ)
 1994年にカイロで開催された国際人口・開発会議において提唱された概念で、今日、女性の人権の重要な一つとして認識されるに至っています。
 リプロダクティブ・ヘルツ/ライツの中心課題には、いつ何人子どもを産むか産まないかを選ぶ自由、安全で満足のいく性生活、安全な妊娠・出産、子どもが健康に生まれ育つことなどが含まれており、また、思春期や更年期における健康上の問題等生涯を通じての性と生殖に関する課題が幅広く議論されています。

○ 成年後見制度
 自分の財産の管理や病院、福祉施設等への入退所についての契約を行うことが困難であるなど、判断能力が不十分な方(認知症高齢者、知的障害者、精神障害者など)を保護し支援する制度です。
 この制度には、本人や本人の家族等の申し立てによって、成年後見人、保佐人、補助人を家庭裁判所が選ぶ「法定後見制度」と、判断能力が不十分な状況になったときに備えて、あらかじめ本人が任意後見人を選んでおく「任意後見制度」があります。

○ 世界人権宣言(Universal Declaration of Human Rights)
 昭和23年(1948年)12月の第3回国連総会において採択された人権宣言です。基本的人権を確保するために「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」を定めています。
 法的な拘束力を持つものではありませんが、この宣言により人権を守る動きは大きく前進し、その後の各国の憲法や人権条約に強い影響力を与えています。
 なお、採択された12月10日は、「世界人権デー」とされ、我が国では、「世界人権デー」を最終日とする1週間(12月4日から12月10日まで)を「人権週間」と定め、人権思想の普及高揚のための啓発活動を全国的に展開しています。

○ セクシャル・ハラスメント(セク・ハラ)
 性的いやがらせのことをいいます。雇用の場においては、「相手の意に反した性的な言動を行い、それに対する対応によって、仕事をする上で一定の不利益を与えたり、またはそれを繰り返すことによって就業環境を著しく悪化させること」と考えられています。


〔た行〕

○ 男女共同参画社会
 男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会のことです。

○ 地域福祉権利擁護事業(愛称:あすてらす)
 認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等で判断能力が十分でない方が、地域において自立した生活を送れるよう、契約に基づき、福祉サービスの利用援助、日常的な金銭 管理、書類の預かり等のサービスを提供する事業です。
 本県では、社会福祉協議会が運営する「とちぎ権利擁護センター(愛称:あすてらす)」が実施しています。

○ 地域包括支援センター
 地域住民の心身の健康の保持、生活の安定、保健・福祉・医療の向上と増進のための援助や支援を包括的に担う地域の中核機関です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門スタッフを配置し、相談や支援に応じます。運営は、市町村または市町村から委託された法人(老人介護支援センターの設置者の他、社会福祉法人や医療法人等の厚生労働省令で定められた法人)が行います。

○ 栃木県人権教育・啓発推進県民運動
 同和問題をはじめとする各種人権問題が、県民的な問題として認識されるよう全県民の意識の高揚を図る運動をいいます。特に8月を強調月間、12月4日から10日の人権週間の期間を強調週間と定め、集中的に啓発活動を実施しています。
 この運動の推進母体として各種民間団体、行政機関等で構成する「栃木県人権教育・啓発推進県民会議」を設置しています。

○ 栃木県人権啓発活動ネットワーク協議会
 栃木県内に所在する人権啓発活動にかかわる機関等が連携・協力関係を確立し、人権啓発活動を総合的かつ効果的に推進することを目的に平成12年7月に設立され、事務局は、宇都宮地方法務局人権擁護課内に置いています。

○ 栃木県人権施策推進本部
 栃木県人権尊重の社会づくり条例の施行に伴い、人権施策を総合的かつ効果的に推進するため知事を本部長とし、知事部局、教育委員会、警察本部からなる全庁的組織として平成15年7月に設置しました。

○ 栃木県発達障害者支援センター(愛称:ふぉーゆう)
 発達に関する不安を持つ方やご家族が安心して充実した生活を送れるように支援するため「とちぎリハビリテーションセンター」内に設置されています。発達障害者及び家族等に対する相談・支援や療育・就労支援、普及啓発及び研修を業務としています。

○ 特別支援教育
 障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものです。

○ ドメスティック・バイオレンス(DV:Domestic Violence)
 配偶者やパートナーなど、親しい間柄にある者又はあった者からの暴力を指し、被害者の人権を著しく侵害する行為のことです。
 身体的暴力のほか精神的暴力、性的暴力(セックスの強要など)等、心身に有害な影響を及ぼす言動も含んだ意味で使われており、被害者の多くは女性です。


〔な行〕

○ 認知症
 大人になる過程で身に付けてきた記憶、判断、言語などの精神機能が、脳血管障害やアルツハイマー病などにより次第に低下し、自分らしい暮らしを自立して行うことが困難になっていくものです。
 従来長く用いられてきた「痴呆」という用語は、侮蔑的な表現である上に、「痴呆」 の病態を正確に表しておらず、早期発見・早期診断等の取り組みの障害となっているなどの理由から、厚生労働省の検討会が平成16年12月に出した報告書を受けて、「認知症」に替えられました。

○ ノーマライゼーション
 障害者の生活をできるだけ一般の市民と同様な生活に近づけること、さらに障害のある人もない人も共に生きる社会が本来の社会であり、そのような社会づくりを目指していこう、という考え方のことです。


〔は行〕
○ 配偶者暴力相談支援センター
 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のため、被害者等との相談、被害者の医学的又は心理学的な指導、被害者及びその同伴する家族の一時保護、被害者の自立促進のための情報の提供などを行う施設のことです。
 現在、県内では、「婦人相談所」と「とちぎ男女共同参画センター」が同センターの機能を担っています。DV法改正により、市町村でも設置することが可能となりました。

○ 発達障害
 幼児期、児童期及び青年期から精神的あるいは身体的機能に障害が見られ、学習や運動機能、対人関係機能、自立した生活能力の発達に制限がみられる障害の総称です。
 主なものに、学習障害や注意欠陥性多動性障害、高機能自閉症があります。
・学習障害(LD)
 基本的には、知的発達の遅れはなく、聞く、読む、話す、書く、計算する、推論する能力のうち、特定のものの習得に著しい困難を示す状態をいいます。
・注意欠陥性多動性障害(ADHD)
 年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障を来すものをいいます。
・高機能自閉症
 他人との社会的関係の形成の困難さ、言葉の発達の遅れ、興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないものをいいます。

○ バリアフリー
 障害のある人にとって社会生活をしていく上での障壁(バリア)となるものを除去するという意味です。段差等の物理的障壁の除去をいうことが多いが、障害をもつ人の社会参加を困難にしている社会的、制度的、心理的なすべての障壁の除去という意味でも用いられます。

○ 被害者支援センターとちぎ(社団法人)
 犯罪等の被害者及びその家族・遺族に対して、精神的ケアを行うとともに、社会全体の被害者支援意識の高揚を図ることにより、被害の回復や軽減に資することを目的に設立された団体です。平成17年7月1日から業務を開始しました。電話・面接相談や法廷・病院等への付き添い、広報・啓発活動を主な活動としています。

○ ハンセン病
 明治6(1873)年、ノルウェーの医師ハンセンが発見した「らい菌」によって起こる感染症で、遺伝病ではありません。感染力が極めて弱い病気で、菌に対する抵抗力が弱いときや、たくさんの菌に繰り返し接触しなければ、うつることはありません。患者の末梢神経や皮膚をおかす病気ですが、発病しても自然に治ることもあり、昭和18年(1943)年に「プロミン」という治療薬がこの病気によく効くことが報告されて以来、完全に治る病気となりました。現在は、いくつか薬を組み合わせる多剤併用療法(MDT)が行われています。

○ 福祉ホーム
 障害者が、家庭環境や住宅事情などにより、住宅を求めている場合に、低額な料金で居室や設備を利用するとともに、日常生活に必要な便宜を受けることのできる施設です。

○ ホームレス
 都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者のことです。


〔や行〕

○ ユニバーサルデザイン
 全ての人にとって使いやすいように意図して作られた製品や空間、サービスをデザインすることです。

○ 要保護児童対策地域協議会
 児童福祉法第25条の2に基づき設置された協議会です。市町村の児童福祉主管課や児童相談所等の関係機関、関係団体及び児童福祉に関する職務に従事する者等により構成され、要保護児童及びその保護者に関する情報、その他要保護児童の適切な保護を図るために必要な情報交換を行うとともに、要保護児童等に対する支援の内容に関する協議を行います。