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人権に関するデータベース

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地方公共団体関係資料

福井県人権施策基本方針
情報の種類 地方公共団体関係資料
タイトル 福井県人権施策基本方針
時期 2006/01/01
主体名 福井県
【 内容 】

福井県人権施策基本方針


第Ⅰ章 基本的な考え方

1 基本方針策定の背景と趣旨

 21世紀は、「人権の世紀」と呼ばれており、人権の尊重が平和の基礎であるというこ
とが世界の共通認識になりつつあります。
 第2次世界大戦後における「人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守の促進」(国際
連合憲章)への国際的取組は、昭和20年に、平和と安全の維持を最大の目的として設立さ
れた国際連合(以下「国連」という。) を中心に進められてきました。昭和23年の第3回
国連総会においては、第1条で「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、
尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞
の精神をもって行動しなければならない。」とうたわれている「世界人権宣言」が採択さ
れました。
 その後、国連では、昭和50年に国際婦人年、昭和56年に国際障害者年等を定めると
ともに、平成元年に「児童の権利に関する条約」を総会で採択するなど人権の各分野にお
いて取組が行われてきました。
 また、平成6年12月、第49回国連総会において、人権教育を通じて個人の尊厳を確
立し、世界人権宣言の理念を実現するため、平成7年から平成16年までの10年間を「人
権教育のための国連10年」と定める決議が採択され、すべての政府に対して、人権教育
の方向付けならびに人権と基本的自由の尊重の強化のための努力を促進するよう求めまし
た。
 さらに、平成16年12月、第59回国連総会において、「人権教育のための世界計画」
を平成17年から開始するとの決議が採択され、その第1段階として平成17年から平成
19年までの3年間において、初等・中等教育に重点をおいた取組が行われることになり
ました。

 我が国では、日本国憲法において、「基本的人権の尊重」を基本原則としていますが、
平成9年に「人権教育のための国連10年」国内行動計画(以下「国内行動計画」という。)
を策定し、人権教育・啓発に関する取組が始められました。
その後、平成12年12月には、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」(以下、
「人権教育・啓発推進法」という。巻末資料参照) が施行され、国、地方公共団体、国民
の責務が明記されました。
 国は、同法に定められた「人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、及び実施する
責務を有する。」として、平成14年3月に「人権教育・啓発に関する基本計画」を策定
し、人権教育・啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図っています。
 地方公共団体の責務としては、「地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との連携を
図りつつ、その地域の実情を踏まえ、人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、及び
実施する責務を有する。」となっており、県および市町は連携を取りながら人権政策の推
進を図っています。
 また、国民の責務としては、「国民は、人権尊重の精神の涵養に努めるとともに、人権
が尊重される社会の実現に寄与するよう努めなければならない。」となっています。

 本県では、平成11年11月に、「人権教育のための国連10年」への取組を総合的に
推進し、人権の尊重・擁護施策を推進するための本県の人権行政の指針として、「人権教
育のための国連10年」福井県行動計画(以下「県行動計画」という。) を策定するととも
に、「人権教育のための国連10年」福井県行動計画推進本部を設置しました。また、同
年12月には「人権尊重の地域社会の構築をめざす福井県宣言」を行いました。
 その後、国が策定した「人権教育・啓発に関する基本計画」等の内容を踏まえ、平成
15年2月に「県行動計画」を改定し、また、人権問題を県民全体の問題として取り組み、
人権尊重の社会づくりを実現するため、平成15年4月には「福井県人権尊重の社会づく
り条例」を施行しました。
 しかし、誤った知識や偏見に基づく差別、子どもへの虐待、セクシュアル・ハラスメン
ト(用語集P42)、配偶者からの暴力等の問題が今なお存在しています。
 このような状況の中で、平成16年末をもって「人権教育のための国連10年」が終了
したことや平成15年の「県行動計画」改定以後の動きを踏まえ、「県行動計画」を「福
井県人権施策基本方針」(以下「基本方針」という。) として名称変更するとともに、その
内容の一部を改正します。

2 基本方針の位置付けと基本理念
 基本方針は、「福井県人権尊重の社会づくり条例」第5条に定められた本県の人権施策
の総合的な推進を図るための基本指針です。
 基本方針は、マニフェスト(用語集P44)「福井元気宣言」に掲げるビジョンと整合性
を持つとともに、県における様々な人権施策に関する基本計画として位置付けています。
 また、基本方針は、これまで取り組んできた「県行動計画」の基本理念の考えを継承し
て、「県民一人ひとりが、あらゆる機会において人権教育に参画し、日常生活における実
践を通じて、福井県において人権という普遍的文化の構築をめざすこと」を基本理念とし
ます。


第Ⅱ章 福井県における人権問題の現状と課題

1 女性

 男女が互いに人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と
能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現は、緊急かつ重要な課題となっていま
す。
 平成11年6月に、男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを目
的に、男女の人権の尊重を基本理念とする「男女共同参画社会基本法」が制定され、こ
の法律に基づき、国の男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的な計画である「男
女共同参画基本計画」が平成12年に策定されました。

 本県では、男女共同参画社会の実現をめざして、平成14年4月に「福井県男女共同
参画計画-ふくい男女共同参画プラン-」(計画期間 平成14年度~平成23年度)を
策定するとともに、同年10月にはこのふくい男女共同参画プランに基づく施策を総合
的かつ計画的に推進するための根拠となる「福井県男女共同参画推進条例」を制定し、
積極的に取り組んでいます。
 また、配偶者からの暴力を根絶するため、平成16年6月に改正された「配偶者から
の暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」に基づき、県は平成17年度内に「配偶
者暴力防止および被害者保護のための福井県基本計画」(計画期間 平成20年度まで
の概ね3年間)を策定し、総合的な対策を講じていきます。

 しかし、平成16年11月に実施した男女共同参画に関する意識調査では、「男は仕事、
女は家庭」という固定的な考えはよくないと答えた人が54.9パーセントで、平成9
年度の調査以来、初めて5割を上回り、男女共同参画意識が高まっていると考えられま
すが、一方で、男性の5割近くがこの考え方を肯定しており、依然として固定的な役割
分担意識が根強く残っています。
 また、地域の活動の中には、未だに男性中心の考え方で運営されるものもあり、農山
漁村においては、性別による固定的な役割分担意識に基づく慣習やしきたりが残ってい
ます。働く場においては、男女に賃金格差があることや育児を終えた女性の再就職が難
しいこと、働く女性が妊娠・出産で不利益な取扱いを受けるというような問題があるこ
となど実質的な男女平等が達成されていない状況にあります。
 このように、性別による固定的な役割分担意識や、それに基づく家庭・地域の慣習や
しきたりは、社会のあらゆる面に影響を与えるものであり、慣習やしきたりの見直しお
よび意識の改革に積極的に取り組み、社会のあらゆる場で男女共同参画の推進を図るこ
とが必要です。
 また、配偶者からの暴力については、犯罪であるという認識が十分でなく、潜在化す
る傾向にあり、社会の理解も不十分で個人的な問題とされることがあります。配偶者か
らの暴力の被害者は、そのほとんどが女性であり、経済的自立が困難である女性に対し
て配偶者が暴力やその他の心身に有害な影響を及ぼす言動を行うことは、個人の尊厳を
害するものであり、男女平等の実現の妨げとなっています。このようなことから、女性
に対する暴力は男女共同参画社会を形成していく上で克服すべき重要な課題であり、言
葉による暴力を含め、女性に対するあらゆる暴力を根絶することが必要です。
 メディアによってもたらされる情報は社会に大きな影響を与えますが、その情報の中
には女性の性的側面のみが強調されるなど性差別的な情報が依然として存在しています。
情報通信技術が進展する中で、メディアの影響はさらに大きくなるものと予想され、メ
ディアにおける女性の人権を尊重することが必要です。
 女性は、妊娠・出産によりライフサイクルを通して男性とは異なる健康上の問題に直
面します。このため、女性が自らの身体について正しく情報を入手し、自分で判断し健
康を享受することが重要であり、このような視点を重視しつつ、生涯を通じた女性の健
康の保持増進を図ることが必要です。

2 子ども

 児童の福祉については、「児童福祉法」の中で「すべての国民に対し児童が心身ともに
健やかに生まれ、かつ、育成されるよう」努力する義務があることを示すとともに、す
べての児童が「ひとしくその生活を保障され、愛護される」権利を有することを宣言し、
「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する
責任を負う」と規定しています。
 また、世界のすべての子どもの尊厳と、生存、保護、発達などの権利を保障するため
の「児童の権利に関する条約」が平成元年11月に国連総会で採択され、我が国は平成
6年4月に批准しました。
 国では、「児童福祉法」を基本法として、個々の事項についての具体的な法令を制定し、
児童福祉の増進のため様々な施策を展開しています。平成9年には「児童福祉法」が大
幅に改正され、子育てのしやすい環境整備の推進や次代を担う児童の健全な育成を図る
ため、保育システムをはじめとする児童福祉制度の再構築が行われました。

 特に、1990年代に入り、全国の児童相談所が扱う児童虐待の件数が年々増加し、
児童虐待の防止が児童福祉分野だけでなく、社会全体として早急に取り組むべき課題と
して認識され、その結果、「児童虐待の防止等に関する法律」が平成12年11月に施行
されました。
 この法律の施行後、広く国民一般の理解の向上や関係者の意識の高まりが見られ、様々
な施策の推進が図られてきましたが、子どもの生命が奪われる等重大な児童虐待事件が
後を絶たず、平成16年4月に同法を一部改正し、児童虐待の定義や関係機関の役割な
どの見直しが行われたほか、児童虐待は著しい人権侵害であることが明記されました。
 さらに、平成16年12月には、児童虐待防止対策等の充実・強化を図るため、児童
相談に関する体制の充実や児童福祉施設の在り方の見直しなどを内容とする「児童福祉
法」の一部が改正されました。
 本県においても深刻化する児童虐待問題等に対応するため、夜間における児童相談へ
の対応といった児童相談所の体制強化、市町による児童相談援助活動の実施や児童虐待
防止地域協力員(用語集P41)による虐待の早期発見、早期対応など地域ぐるみで子
どもを守る体制づくりを進める必要があります。

 また、少子化の進行は、子ども同士のふれあいの機会を少なくし、自主性や社会性が
育ちにくくなるといった、子ども自身への影響をはじめ経済や地域社会の活力の低下な
ど様々な影響が懸念されています。
 このため、本県では、これまで「ふくいっ子エンゼルプラン」(計画期間 平成8年度
~平成12年度)および「第二次ふくいっ子エンゼルプラン」(計画期間 平成13年度
~平成17年度)を策定し、子育て支援のための様々な施策を推進してきました。
 しかしながら、結婚や子どもを持つことに対する意識が変化し、仕事と子育ての両立
や子育てに対する負担感が増大する中で、依然として少子化が進行しています。
 平成15年に「次世代育成支援対策推進法」が制定され、地方公共団体や事業主(企業
等)に対して、次世代育成に係る行動計画の策定を義務付けるとともに、同年に制定され
た「少子化社会対策基本法」に基づき、国が取り組む重点施策の具体的な実施計画が平
成16年に策定されました。
 こうした状況の中で、これまでの少子化の流れを変え、次代の福井を担う元気な子ど
もを育てていくため、新しい福井県の少子化対策に関する計画である「福井県 元気な子
ども・子育て応援計画」(計画期間 平成17年度~平成21年度)を平成17年3月に
策定しました。
 今後も、家庭における男女の役割の見直し、親としての成長、若者の自立など結婚や
子育てに関わる人たちの自覚や努力に加え、地域の支援、教育の充実、職場環境の改善
などに取り組む必要があります。

3 高齢者

 我が国の高齢化は世界的に例を見ない速さで進んでおり、平成27年には国民の4人に
1人(26.0%)が65歳以上という高齢社会が到来するものと予測されており、本県に
おいても高齢化が進み、それに伴い要介護認定者も増加するものと予測されます。

 国は、平成11年に平成12年から5か年間にわたる高齢者保健福祉施策の方向を示し
た「ゴールドプラン21」を策定し、高齢者が尊厳を保ちつつ自立した生活と社会参加が
できるような社会の構築を進めています。
 また、平成12年4月からは、介護を必要とする高齢者やその家族を国民皆で支えてい
く介護保険制度(用語集P40)が導入され、介護サービスの基盤整備が進んでいます。
一方、制度の導入によりサービス利用者と提供者との契約制度が定着する中で、判断能力
が低下している高齢者等の権利を擁護し住み慣れた地域で自立した生活が送れるよう、国
においても、都道府県社会福祉協議会を実施主体に、福祉サービスの利用援助、日常的な
生活支援、金銭管理等を行う地域福祉権利擁護事業(用語集P42)を、平成11年から
実施しています。
 なお、国においては、認知症(用語集P42)により判断能力が十分でない人たちを保
護する制度として、従前の禁治産・準禁治産の制度を改め、各人の状況に応じて、より柔
軟で弾力的な対応を可能とする新しい成年後見制度(用語集P42)を平成12年4月か
ら施行しており、地域福祉権利擁護事業とあいまって、さらに地域で安心して生活できる
仕組みが整備されました。
 このほか、平成17年11月には「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等
に関する法律」が成立し、国や地方公共団体の責務として、高齢者虐待の防止、虐待を受
けた高齢者の迅速かつ適切な保護および養護者に対する適切な支援を行うことになりまし
た。

 本県では、平成15年4月に改定した「福井県老人保健福祉計画・福井県介護保険事業
支援計画」(計画期間 平成15年度~平成19年度)に基づき、「自分らしく、元気で、
安心して暮らせる高齢社会」をめざして「生きがいと活力に満ちた福祉社会の実現」を図
っており、平成17年度中に介護保険制度の改正内容を踏まえ、平成18年度から平成
20年度までの3か年の同計画を改定します。

 地域福祉権利擁護事業については、平成13年度に実施した人権問題に関する県政アン
ケートの結果では、「良く知っている」「だいたいの内容なら知っている」「聞いたこと
がある」の合計が全体の64.0%を占めており、事業や制度の存在を認識している結果
でしたが、引き続き内容の周知も含めた積極的な啓発を図っていく必要があります。
 また、認知症高齢者の数が増加すると予想されることから、地域支援、医療体制の充実、
認知症ケアの質の向上等、認知症対策を総合的に推進していく必要があります。
 このほか、虐待を含む高齢者の権利擁護のための支援を行うため、支援を必要としてい
る高齢者を見出すとともに、継続的な見守りを行う地域におけるネットワークを構築して
いく必要があります。
 また、すべての県民が生きがいを持ち、元気で、安心して暮らせる高齢社会を実現する
ためには、在宅福祉を重視し、必要なサービスの基盤整備を進めるとともに、それらサー
ビスの質の確保にも配慮しながら、高齢者が自らの意思に基づき、尊厳を持った自立生活
を送ることができるよう、支援体制、住環境の整備、老人保健福祉施設の整備、雇用の確
保など高齢者の人権に配慮した社会づくりや環境整備をさらに進めていく必要があります。

4 障害者
 
 国は、平成14年に障害のある人の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野への活
動の参加を促進する施策の基本となる「障害者基本計画」(計画期間 平成15年度~平成
24年度)を策定し、併せて平成15年度から平成19年度までの「重点施策実施5か年計
画」も策定して、障害者施策の重点的な推進を図っています。
 そして、平成16年6月には「障害者基本法」の一部改正が行われ、国民の責務として、
「社会連帯の理念に基づき、障害者の人権が尊重され、差別されることがない社会の実現
に寄与するよう努めなければならない」ことが加えられました。
 さらに、平成17年10月、「障害者自立支援法」が成立し、障害者が地域で暮らせる
社会づくりの実現に向けた大きな施策の転換が図られました。この法律により、障害者福
祉サービスの提供主体は市町村に一元化され、身近な地域において、利用者の立場に立っ
たサービスの提供を行う体制となりました。特に、一般就労へ移行することを目的とした
事業を創設するなど、障害のある人の自立のための就労支援を大きな柱として行うことに
なりました。
 このほか、平成16年12月には「発達障害者支援法」が成立し、国や地方公共団体の
責務として、発達障害者に対し円滑な社会生活の促進と権利擁護のための支援を行うこと
になりました。

 本県では、障害者施策を総合的、計画的に推進するための具体的な指針として、昭和
58年に「福井県障害者福祉長期計画」を、平成6年に「福井県第二次障害者福祉長期計
画」を、平成12年3月に「福井県第三次障害者福祉長期計画」(計画期間 平成12年度
~平成22年度)を策定しました。第三次計画においては、「障害者の自立と社会参加の促
進」を目標とする「生きがいと活力に満ちた福祉社会」の実現をめざして、障害のある人
一人ひとりが、家庭や地域社会の中で自立し、就労、文化活動、スポーツなどの様々な社
会活動に参加するための各種施策を推進しています。
 また、平成8年11月には「福井県福祉のまちづくり条例」を施行し、障害のある人も
ない人も安全で快適な生活と積極的な社会参加ができる生活環境づくりに向けた働きかけ
を行っています。
 しかし、障害のある人の人権擁護については、障害のある人もない人も、共に家庭や地
域社会の中で生活し、活動する社会をめざすノーマライゼーション(用語集P43)の理
念と、障害のある人が人間としての尊厳と生きがいを持って社会参加できることを目的と
するリハビリテーション(用語集P44)の理念のもと、個々の障害の種別や個性に合っ
た自立と社会参加の実現に向けた総合的な取組が必要です。
 また、平成13年度に実施した人権問題に関する県政アンケートの結果では、「障害者
の人権問題について、何が問題だと思うか。」という問いに対して、4割以上の人が「障
害者に対する周囲の人の温かい心が欠けている。」、「地域社会から孤立しがちである。」
と答えています。県民の一人ひとりが障害や障害のある人について充分に理解し、障害の
ある人もない人も共に生きる福祉社会づくりを確立するためには、物理的な障壁(バリア)、
制度的障壁、文化・情報面の障壁および意識上の障壁の4領域のバリアを解消することが
必要です。
 今後、障害のある人の権利擁護体制の整備はもとより、啓発広報をはじめ、教育、雇用・
就業、医療・福祉サービス、福祉のまちづくり等について、障害のある人一人ひとりのニ
ーズに沿った様々な取組を進め、障壁を解消し、バリアフリー(用語集P43)社会実現の
ための総合的な施策を展開することが必要です。

5 同和問題

 同和問題については、昭和40年の国の同和対策審議会答申において次のように述べら
れています。
 「同和問題とは、日本社会の歴史的発展の過程において形成された身分階層構造に基づ
く差別により、日本国民の一部の集団が経済的・社会的・文化的に低位の状態におかれ、
現代社会においても、なお著しく基本的人権を侵害され、特に、近代社会の原理として何
人にも保障されている市民的権利と自由を完全に保障されていないという、最も深刻にし
て重大な社会問題である。」
 さらに、「同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日
本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。」とし、「その早急な解
決こそ国の責務であり、同時に国民的課題である。」と指摘しています。

 本県では、昭和44年に「同和対策事業特別措置法」(用語集P42)が施行されて以来、
県政の重要な施策として同和問題の解決に取り組んできました。その結果、同和地区の生
活環境等の物的な基盤整備は着実に成果を上げ、一般地区との格差は大きく改善されてき
ており、ハード面における事業はほぼ終了しました。
 一方、同和問題に関する偏見や差別意識の解消を図るためのソフト面における事業につ
いては、県・市町での啓発行事の開催、啓発資料の作成・配布など様々な活動を通して、
人権尊重思想の普及高揚を図ることをめざしてきました。
 学校教育においては、同和教育の全体計画・推進計画を作成するとともに、各教科・領
域における実践に当たっては、児童・生徒の発達段階を踏まえて、日常生活や地域社会に
おける不合理な差別の問題に目を向けさせ、人権尊重の実践的態度を育成するように努め
てきました。
 また、同和地区の生徒の進路指導等については、同和教育担当者を中心にして、個人の
適性に応じた指導に努めてきました。
 社会教育においても、指導者研修会など各種研修会の開催、啓発資料の作成・配布、人
権問題社会教育指導員の全市町への配置等を通じて、差別のない明るい社会づくりをめざ
してきました。
 企業等に対しては、同和問題の正しい理解と認識を深めるとともに、公正な採用選考の
促進等により、就職の機会均等に努めてきました。
このような取組により、同和問題は着実に解決に向けて進んできていると考えられます。

 しかし、平成13年度に実施した人権問題に関する県政アンケートでは、「かりに、日
ごろから親しくつきあっている隣近所の人が、なにかのことで、同和地区の人であること
がわかった場合、どうするか」を尋ねたところ、「表面的にはつきあうが、できるだけつ
きあいは避けていく」、「つきあいはやめてしまう」と答えた人が、合わせて18.7%
となっています。
 また、結婚に対する態度について尋ねたところ、親の立場では7.9%の人が「(かりに、
あなたのお子さんの結婚しようとする相手が、同和地区の人であるとわかった場合)家族の
者や親戚の反対があれば結婚を認めない」、6.4%の人が「絶対に結婚を認めない」と
答えており、子の立場では17.9%の人が「(かりに、あなたが同和地区の人と恋愛し、
結婚しようとしたとき、親や親戚から強い反対を受けたら)反対があれば結婚しない」、
3.0%の人が「絶対に結婚しない」と答えています。
 さらに、「今日でも、同和地区出身者に対する差別があると思う」と答えた人が
72.9%を占め、差別の原因については、その55.7%の人が「同和地区に対する偏
見が強く、人々の人権意識が低いから」、36.0%の人が「世間では同和問題に関する
話題をなんとなく避ける傾向にあるから」と答えています。
 そして、「同和問題の解決のためにはどうしたらよいのか」と尋ねたところ、43.5%
の人が「同和地区外の人によく理解してもらい、差別をしない人権尊重の意識を高める」
と答え、最も多くを占めています。
 このように同和問題に関する偏見や差別意識については、依然として根深く存在してい
る状況が見られます。また、全国では、昨今、落書きやハガキ、インターネット上での書
き込みなどによる差別事象が見られます。
 したがって、県民一人ひとりが、同和問題は現在も現実に存在している重大な社会問題
であり、人権問題であることを十分に認識するとともに、自分自身の課題として差別解消
に向けて取り組むことが必要です。
 同和問題に関する偏見や差別のない社会を実現するためには、教育および啓発を効果的
に進めていくことが極めて重要です。このため、その実施に当たっては、実施主体間の連
携と県民に対する多様な機会の提供、発達段階等を踏まえた効果的な方法、県民の自主性
の尊重と教育・啓発における中立性の確保を基本とすることが必要です。
 そして、このような持続的な取組を通じて、同和問題を人権問題という本質から捉え、
解決に向けて努力するという県民の人権尊重意識の高揚を図る必要があります。

6 外国人

 今日、国際的な交流は、海外へ出向くことによって体験することはもとより、地域社会
における生活の中でも日常的なものになっています。就労者や留学生、企業研修生・実習
生など本県に在住する外国人は年々増加してきており、平成16年12月末現在の外国人
登録(用語集P40)者数は約13,000人、その国籍数は、歴史的経緯から在住を余儀
なくされた韓国・朝鮮の人々をはじめ、急増している中国やその他のアジア、中南米の国々
など約70か国となっています。

 本県では、平成5年に「福井県国際交流推進基本構想」を策定し、「外国人にも魅力あ
る、暮らしやすい地域づくり」に取り組んできましたが、これまでの実績や地域社会にお
ける変化に適切に対応した暮らしの中の国際化という新たな課題等を踏まえて見直しを行
い、平成13年に「福井県国際化推進プラン」(計画期間 平成13年度~平成22年度)
を策定しています。

 しかし、在住外国人との交流の機会が増加するに伴い、制度、言語、文化の違いなどに
より、従来からある住居や就労等をめぐる問題のみならず、相互の意思疎通の不足等によ
る地域社会や教育機関での問題等、身近な暮らしの中で様々な問題が生じており、これま
で取り組んできた外国人に対する各種情報の提供、外国人向け相談体制の整備などの事業
をより充実して実施していく必要があります。
 また、平成13年度に実施した人権問題に関する県政アンケートの結果では、「外国人
があなたの隣に引っ越してきた場合、どう思いますか。」という問いに対して、約1割の
人が「あまり関わり合いになりたくない。」、「できれば引っ越してほしい。」と答えて
おり、民族、文化、国籍等の違いを超えて在住外国人と地域住民が相互に人権を尊重し合
うとともに、偏見をなくし、地域で共生する隣人として支えあっていく社会づくりを進め
ることが必要です。

7 患者

 病気について人々に正しい知識と理解が不足しているために、様々な差別や偏見が生ま
れる場合があります。
 最も典型的な例は、ハンセン病(用語集P43)(以前の病名は「らい病」)やエイズ(用
語集P39)に見られます。
 ハンセン病元患者の隔離政策が長く維持された結果、高度な医療の発達した現在の日本
社会においても、この病気に対する誤解とそれに基づく偏見が根強く残っており、ハンセ
ン病療養所入所者の社会復帰の道はなお困難なものがあります。
 平成8年に「らい予防法」(用語集P44)は89年ぶりに廃止され、平成13年にはハ
ンセン病国家賠償訴訟の判決が確定し、国は永年にわたる隔離政策により人権を著しく侵
害し、差別・偏見を助長したことなどを謝罪しています。
 エイズについては、日常生活では感染することがないにもかかわらず、社会のいろいろ
な場面で患者やHIV感染者(用語集P39)に対する差別や偏見が行われた事実を重く
受け止める必要があります。
 また、「伝染病予防法」は制定以来100年を経過し、過去における社会防衛中心の政
策から感染症予防と人権尊重との両立を基盤とする新しい感染症政策へ転換するため、
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」が平成11年4月から施行
されました。

 本県では、国の「感染症の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針について」に
即した「福井県感染症対策指針」を策定し、感染症患者等への差別偏見を排除するための
諸施策を推進しています。
 また、経過が慢性で長期に療養を必要とすることの多い難病患者等については、社会の
無理解によって患者の精神的負担がさらに重くなり、社会生活の基盤さえおびやかされか
ねません。難病対策の推進に当たっては、国の「難病対策要綱」(用語集P42)の柱の1
つである「地域における保健医療福祉の充実・連携」と「QOL(クオリティー・オブ・
ライフ)(用語集P40)の向上をめざした福祉施策の推進」に関して、今まで以上に患者の
プライバシー等に配慮した事業の推進を図ることとしています。

 しかし、平成13年度に実施した人権問題に関する県政アンケートの結果では、「ハン
セン病を知っていますか。」という問いに対して、3割以上の人が「言葉は知っているが、
どんな病気か知らない。」、「まったく知らない。」と答えており、本県でもハンセン病
について正しい知識の普及啓発が必要です。
 また、患者の人権を尊重し差別や偏見がなく、一人ひとりが安心して医療を受けること
により、早期の社会復帰等健康な生活を営むことができる権利、個人の意思の尊重、自ら
の個人情報を知る権利と守る権利等に配慮した施策を展開することが必要です。
 さらに、難病患者だけではなく、患者一人ひとりのQOL(クオリティー・オブ・ラ
イフ)の確保・向上をめざして療養環境の整備を図るとともに、医療関係者には、深い
人間理解と患者の人権を尊重した対応が求められており、患者の自己決定を尊重するた
め、インフォームド・コンセント(用語集P39)の理念に基づいた医療の一層の徹底
が必要です。

8 犯罪被害者

 多くの犯罪被害者(家族または遺族を含む。) は、犯罪による直接的な被害に加え、精神
的ショックや経済的・時間的負担、さらに、うわさ話や一部のマスコミの過度な取材・報
道によるストレス等様々な二次的被害を被っています。
 特に、殺人事件や死亡ひき逃げ事件における被害者の遺族や性犯罪の被害者については、
深刻な被害が生じています。こうした犯罪被害者は、従来、社会から無関心の状態におか
れ、過度の好奇の眼で見られることが多く、犯罪被害者に対し支援を行う社会的システム
の整備が立ち遅れてきました。
 地下鉄サリン事件や和歌山カレー毒物混入事件などを契機に、犯罪被害者が抱える治療
費等の経済的な問題をはじめ、精神的被害の実態などについて一般に認識されるようにな
り、様々な社会的支援を必要としている犯罪被害者の存在自体も、社会的に大きくクロー
ズアップされるようになってきました。犯罪被害者の人権を擁護し、支援すべきであると
いう社会認識が形成される中で、民間ボランティアによる被害者相談室が組織され、平成
10年6月にはその全国ネットワーク組織として、被害者支援ネットワーク(用語集P
43)が設立されました。
 そして、平成12年5月に、いわゆる犯罪被害者保護2法(「刑事訴訟法及び検察審査会
法の一部を改正する法律」、「犯罪被害者の保護を図るための刑事手続に付随する措置に
関する法律」)が成立し、刑事訴訟の段階における被害者の保護および被害者の被害回復の
ために必要な規定が整備され、平成13年には「犯罪被害者等給付金支給法」が改正され、
平成16年12月には、犯罪被害者への支援体制を整える「犯罪被害者等基本法」が成立
しました。
 また、国際的要請としても、昭和60年に第7回国連犯罪防止会議で採択された宣言や
平成7年に第4回国連世界女性会議で採択された行動綱領において、犯罪被害者の人権上
の配慮がより一層求められています。

 本県では、平成13年に特定非営利活動法人福井被害者支援センターが設立され、電話
や面接相談を通じて、犯罪や災害による被害者やその家族が抱えている悩みの解決、心の
ケア等の支援を行っています。

 しかし、犯罪被害者に生ずる問題は多岐にわたっているため、犯罪被害者に対する理解
と支援が一層求められており、関係機関の相互連携やボランティア等をはじめとする地域
社会の協力により、犯罪被害者の人権に関する教育・啓発を一層推進することが必要です。

9 その他の様々な人権

 このほか人権に関する問題としては、刑を終えて出所した人、性同一性障害(用語集P
41)等による差別などの問題があります。
 また、インターネットの急速な普及により、その匿名性を悪用してホームページの掲示
板に基本的人権を侵害する書き込みが増加している状況にあります。
 プライバシーをめぐる問題としては、高度情報化社会の実現に伴い、個人情報の流出・
漏えいといった事例が発生しています。
 災害が発生すると被災した人々の人権は著しく制限されます。災害の応急対策や復旧の
進捗に合わせて基本的な人権の復旧にも配慮が求められています。
 障害のある人と高齢者など複数の分野にまたがる人権問題が増えています。


第Ⅲ章 重要課題への対応

1 女性
【施策の基本方向】
 男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その
個性と能力を十分に発揮することができるよう、「男女の人権の尊重」と「社会のあらゆ
る分野での男女の共同参画」を基本的な視点として、男女共同参画社会の実現のための
施策に取り組みます。
 すべての施策に男女共同参画の視点を反映させていくとともに、男女の固定的な役割
分担意識に基づく家庭、地域での慣習等の見直しや意識の改革、政策・方針決定の場な
どあらゆる分野への女性の参画の拡大、家庭生活における活動と他の活動の両立を進め
ます。
 男女が性別にとらわれず、それぞれの個性と能力を発揮できる環境づくりを進めると
ともに、女性に対するあらゆる暴力の根絶と被害者の支援等を推進するなど、男女が互
いの人権を尊重する社会づくりを進めます。

2 子ども
【施策の基本方向】
 家庭・地域における子育て力の向上のため、親の子育て力の向上、児童虐待防止対策
の推進、子育ての経済的負担軽減や子育て支援体制の充実などを図ります。
 子どもの健全育成のための教育環境の整備として、子どもの個性や能力を伸ばす学校
教育や地域での教育支援体制を充実し、子どもを取り巻く有害環境対策を進めます。
企業の子育て応援の促進として、子育て支援の一般事業主行動計画策定など子育てし
やすい労働環境づくりに取り組む企業を支援し、労働環境改善に必要な情報を提供しま
す。
 子と親の健康づくりのため、妊娠・出産・周産期医療や小児保健・医療、また不妊医
療対策を充実するとともに、バランスのとれた食事の大切さを身に付ける食育(用語集P
41)を進めます。
 子育てのための安全・安心な環境づくりのため、犯罪や交通事故から守るまちづくり
や親子が安心して外出できる環境を整備します。
 新しい家庭を築く若者への支援として、結婚を望む男女が出会い交流するための機会
を提供するなど結婚対策の充実や、若者が社会的に自立できるよう、就業教育や就業体
験、就業支援に取り組みます。

3 高齢者
【施策の基本方向】
 高齢者が自分らしく、元気で、安心して暮らせるよう、生きがい・健康づくり、在宅サ
ービスの充実や快適に暮らせる環境づくりなど、自立生活を支える各種施策の実施を通し
て、人権に配慮した「生きがいと活力に満ちた福祉社会の実現」をめざします。
 また、高齢者が住み慣れた地域で、できる限り自立した生活を送ることができるよう、
利用者本位の質の高い介護サービスの提供体制の充実を図るとともに、高齢者を地域が一
体となって支えていく体制づくりを積極的に進めます。
 さらに、企業等における雇用機会の確保を図るとともに、その希望に応じた多様な形態
により働くことができる社会の実現に努めます。

4 障害者
【施策の基本方向】
 ノーマライゼーション(用語集P43)の理念の実現に向けて、障害のある人もない人
も地域で安心して生活できる社会づくりを進めることが重要であり、障害の種別や程度、
ライフステージ(用語集P44)の各段階に合致したサービス利用が可能となるよう諸施
策の推進を図ります。
 障害のある人もない人も「ともに生きる福祉社会」を実現するため、県民一人ひとりが
ノーマライゼーションの理念を正しく理解し、認識を深め、積極的な行動を起こせるよう、
幼少時から障害のある人の人権に関する教育・啓発に努めるとともに、ボランティア活動
の進展につながるような施策を推進します。
 障害のある子どもたちに対しては、ノーマライゼーションの基盤となる社会参加・社会
自立をするために必要な力を養うため、一人ひとりの障害に配慮した教育の充実を図りま
す。
 多様な障害に対応するため、小・中学校における特別支援教育を充実するとともに、盲
学校、ろう学校、養護学校の高等部教育を拡充して後期中等教育の機会を保障します。
 さらに、障害のある人の就業に対する関心と理解を深めるため、積極的な啓発活動を推
進するとともに、関係機関との緊密な連携等により、障害のある人の雇用および就業機会
の確保のための支援を行います。 

5 同和問題
【施策の基本方向】
 同和問題に関する偏見や差別意識の解消を図るため、同和問題を人権問題の重要な柱と
して位置付け、県民が自らの問題として取り組んでいくよう、多様な方法による教育・
啓発活動を積極的に推進します。
 また、教育・啓発の推進体制の整備・充実を行い、県民がいつでも学習情報を得られ
る環境を整備するとともに、同和問題を身近な問題として捉えられるよう、教育・啓発
活動への県民の積極的な参加を呼びかけるとともに、できるだけ多くの人が参加しやす
い工夫に努めます。
 企業等に対しては、同和問題についての正しい理解と認識を深め、公正な採用選考の
促進等により、就職の機会均等に努めます。

6 外国人
【施策の基本方向】
 県内に在住する外国人の人権を尊重する観点から、県民が国際社会における慣習や常識
を理解し、異文化を知り、学ぶことを通して異文化に対する柔軟な姿勢や国際社会で通用
する知識と資質を兼ね備えることができるよう、国際理解のための学習機会や在住外国人
との交流機会の充実などにより、県民の国際意識の高揚を図ります。
 また、県内に在住する外国人にとって魅力ある暮らしやすい地域となるよう、外国人等
への各種情報提供、相談体制等を充実するなどの諸施策を推進します。
 外国人子女教育については、学校生活適応指導を充実するとともに、日本語指導教材の
作成をはじめとする教育環境の整備に努めます。
 さらに、外国人労働者の適正就労のための啓発を推進します。

7 患者
【施策の基本方向】
 ハンセン病(用語集P43)元患者やエイズ(用語集P39)患者、HIV感染者(用語
集P39)をはじめとする感染症患者等に対する差別や偏見が行われた事実を重く受け止
め、今後同じ過ちを繰り返すことのないように、県民一人ひとりがそれぞれの病気につい
ての正しい知識を習得できるよう普及啓発を図るとともに、患者・感染者に対する理解と
共存について強く訴えることを重点として施策を進めます。
 その際、患者・感染者のプライバシーと人権の保護について十分配慮します。

8 犯罪被害者
【施策の基本方向】
 犯罪被害者やその家族は、直接的な被害のみならず、これに付随して生じる精神的、経
済的被害等様々な被害を受けている場合が多くあり、問題を抱えている被害者にとって、
その人権を独力で回復することは難しく、被害者は多くの社会的支援を必要としています。
 「犯罪被害者等基本法」の基本理念(用語集P43)にのっとり、このような犯罪被害
者の人権に対する社会の理解を深め、被害者支援の必要性を啓発するとともに、被害者支
援のための体制を整備し、被害者を救済する活動の促進に努めます。

9 その他の様々な人権
【施策の基本方向】
 刑を終えて出所した人などの人権に関する問題やインターネットによる人権侵害など人
権全般に関する個々の問題について、それぞれ教育・啓発に取り組むとともに、福井県人
権センターをはじめ各相談機関では、様々な人権問題について、今後も関係する他の相談
機関と連携して啓発活動や相談体制を充実するなど適切な対応を図ります。


第Ⅳ章 あらゆる場を通じた人権教育の推進

1 就学前教育における人権教育の推進
 幼児期は、生涯にわたる大切な時期です。この時期に一人ひとりの子どもの人格や個性
を尊重し、健康な心身、社会生活における望ましい習慣や態度、自発性、豊かな心情、表
現力を育てることは、生きる力(用語集P39)や子どもの人権意識を育む小学校以降の
教育に大いに資するものです。
 一方、この時期の教育において家庭が果たす役割は極めて重要であり、保育所や幼稚園
では、積極的に家庭との連携を図り、幼児の生活環境を把握しつつ適切な指導を行うこと
が必要です。
 このため、保育所や幼稚園において、家庭での生活を基盤としながら幼児に豊かな活動
と人間的な触れ合いを経験させることにより、人を信頼し尊重する心情や態度を育成し、
人権尊重の精神の芽生えを培うように努めます。
 また、各研修会を通して保育士・幼稚園教諭の人権意識の高揚を図るとともに、幼児の
生活経験に即した指導ができるよう教材や遊びの内容等の選定に努めます。

2 学校教育における人権教育の推進
 今日の我が国の社会は、価値観や生活意識の多様化等が急激に進む中で、人と人との直
接的なつながりが少なくなってきています。このような社会の変化が子どもたちに与える
影響は大きく、特に心のひずみの問題は深刻になり、思いやりの心の欠如や規範意識の低
さ、社会性の不足などが指摘されるとともに、いじめや暴力行為等の問題行動も増加して
います。
 これからの社会においては、多様性を容認し自分も他人も尊重するという共生の心の醸
成が強く求められています。
 このため、「福井県教育振興ビジョン」において、「心豊かな人間教育の推進として、
差別や偏見を否定し、個人の尊厳を尊重する人権教育を充実していく。」ことを掲げ、人
権教育をすべての学校の全教育活動に位置付け、児童・生徒の発達段階を踏まえて、同和
問題をはじめとする様々な人権問題に対する正しい認識を深めるとともに、人権意識を高
め、偏見や不合理な差別に気づき日常生活において自他を尊重する態度の育成に努めます。
 今後も、人権教育の一層の充実を図り、同和問題をはじめとする様々な人権問題の解決
をめざすとともに、人権尊重の精神の涵養を図るために、学校における人権教育の内容や
指導方法の体系的な整備等に努め、特に以下の観点から施策に取り組みます。

(1)学校における人権教育の推進

ア 人権尊重のために必要な資質や態度の育成
(ア)新しい学習指導要領に基づき、自ら学び、自ら考える力や豊かな人間性等の生きる
力を身に付けていく中で、児童・生徒の発達段階に応じて、日常生活や地域社会にお
ける不合理な問題にも目を向けながら、人権問題を正しく理解させるとともに、人権
尊重の精神を育むように努めます。
(イ)あらゆる教育活動を通して、自他の人権を尊重する心情や態度を育成するように努
めます。
(ウ)多様な体験活動や交流学習等の機会を充実させ、言葉で表現し議論する力、他者と
望ましい関係を築くためのコミュニケーション能力、仲間と協力して行動できる態度
など、社会性や豊かな人間性の育成に努めます。
(エ)ボランティア活動や社会体験活動等を通して、社会の一員としての責任感や規範意
識を培うとともに、自立と思いやりの心の育成に努めます。
(オ)情報機器を使った学習を通して、情報化の進展が社会にもたらす影響、情報の収集・
発信におけるモラルや個人の責任についての理解を深めます。
(カ)国際化の進展に対応した教育を推進し、様々な価値観や異なる文化を持った人々と
偏見を持たずに交流できる資質や能力の育成に努めます。

イ 児童・生徒の人権に配慮した教育活動や学校運営
(ア)幼児・児童・生徒の人権に十分に配慮し、一人ひとりを大切にした教育活動や学校
運営が行われるように努めます。
(イ)スクールカウンセラー(用語集P41)の配置など児童・生徒への教育相談体制の
充実を図ります。
(ウ)各学校が児童・生徒や地域の実態等を十分踏まえ、創意工夫を存分に生かした特色
ある教育活動を展開することにより、児童・生徒の興味・関心等を生かした主体的な
学習の充実を図るとともに、一人ひとりに応じた指導の一層の工夫改善に努めます。
(エ)児童の権利条約の趣旨に基づき、学校生活において自由に意見を表明できる環境づ
くりに努めます。
(オ)自他の権利を大切にするとともに、社会の中で果たすべき義務や自己責任について
の指導に努めます。
(カ)学校生活において、守るべきことは守るという規範意識を培うとともに、他の児童・
生徒の学習活動を妨げるような問題行動に対しては、各関係機関と連携しながら毅然
とした指導を行います。

ウ 人権教育の研究成果と学習資料の提供
(ア)人権教育を推進するために、様々な視点からの実践的な研究を行う学校を指定し、
その研究成果を県内の各校に広めます。
(イ)教職員対象の研修会等において人権についての啓発用ビデオを紹介したり、指導資
料や指導事例を紹介したりするなど、学習資料の提供に努めます。

(2)教職員研修の充実
(ア)人権教育担当者の研究協議会の開催や手引の作成により、様々な人権課題について
の教職員の正しい認識や共通理解を図るとともに、学校における人権教育の在り方に
ついての研修を深めます。
(イ)初任者研修や教職経験者研修等を通して、人権尊重の意識を高めるなど資質の向上
を図ります。
(ウ)児童・生徒の心の悩みに適切に対応するため、カウンセリング演習や事例研究等を
実施するなど、生徒指導・教育相談に関する研修の一層の充実を図ります。
(エ)本県の差別の実態や様々な教育課題に応じた計画的な研修を実施します。
(オ)市町や学校の研修会への支援を積極的に行います。
(カ)教職員による幼児・児童・生徒の人権侵害が行われることのないように指導を徹底
します。

(3)家庭や地域社会との連携
開かれた学校という観点から、人権教育に対する家庭・地域社会の関心や要望を的確
にとらえ、学校の教育活動に反映するよう努めます。
また、一人ひとりの児童・生徒の実態に応じた適切な指導ができるよう、学校と家庭
が相互に信頼関係を深めるとともに、情報の共有化に努めます。
さらに、指導が必要な場合は、保護者の理解を求め、関係機関との連携を図ります。

3 社会教育における人権教育の推進
 今日、社会の急激な変化に伴い、人々の価値観や日常生活の様子が大きく変わってきて
います。人々の学習ニーズも多様化・高度化し、さらに充実した人生を送るためにも、生
涯のいつでも、どこでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に
評価されるような生涯学習社会の実現が求められています。
 また、平成4年の生涯学習審議会の答申では、人々がより豊かに暮らしていくために学
習する必要がある現代的課題として、人権、男女共同参画社会、国際理解等を示し、その
学習機会の充実を求めています。
 さらに、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」に基づく国の「人権教育・啓発
に関する基本計画」では、社会教育において、生涯学習の視点に立った人権教育を行って
いくことが求められています。
 このことから、社会教育に人権に関する学習を適切に位置付け積極的に推進していくこ
とは、生涯学習社会を実現していく上で大変重要であると言えます。
また、人権に関する学習を実施する際に大切なことは、日常生活の中で個々の人権を侵
害する課題に直面したとき、主体的な判断によって解決を図る実践力を培うことです。そ
して、他人の心の痛みを理解し助け合って生きていくという共生の心を養うことです。
 これまで女性、高齢者、障害者、同和問題等に関する差別意識の解消を図るため、様々
な教育・啓発に取り組んできました。特に、同和教育の拡充・深化を図り、地域や団体そ
して職場で自主的・効果的な啓発の推進がなされるよう、指導者の資質の向上を図るため
の研修会を実施するなどし、差別のない明るい社会づくりをめざしてきました。
 今後も、これまでの取組成果をもとに、以下の観点から積極的に教育・啓発を推進しま
す。

(1)指導者の養成と確保
 人権に関する学習活動を推進するために必要な指導者の資質の向上と指導力の強化を
図るため、各方面の指導的な立場の人を対象とした研修会を開催します。研修会では、
様々な差別問題を通して人権問題への理解と認識を深めることや、人権感覚を養うため、
人権を日常生活の課題と結び付けたり体験的参加型の学習を取り入れたりするなど、プ
ログラムを充実します。
 市町と連携して、社会教育主事、人権問題社会教育指導員等を対象に体系的な研修を
行い、専門的な指導者の養成と確保に努めます。

(2)教育・啓発活動の推進
 県民の同和問題をはじめとする様々な人権問題に対する正しい理解と認識を深め、人
権意識の高揚を図り、すべての人の人権を尊重する心を育てることが重要です。このた
め、各種研修会等多くの機会を捉えて教育・啓発活動の推進に努めます。
 公民館等の社会教育施設において開催される人権に関する学習を充実するため、研修
会等への講師の紹介や啓発用映画フィルム・ビデオ・資料等の提供を行います。

(3)家庭や地域における人権教育の支援
 青少年の心の荒廃と人権にかかわる諸問題に対し、学校、家庭、地域社会が連携を図
りながら、それぞれの役割を果たし、命や人権を尊重する豊かな心を育む必要がありま
す。

 子どもの豊かな情操や他人に対する思いやり、生命を大切にする心、善悪の判断など
の倫理感、このような人間形成の基礎は家庭において培われるものです。特に、親自身
が偏見を持たず差別をしないことなどを日常生活の中で自らの姿をもって子どもに示し
ていくことが重要です。そのため、家庭教育に関する各種の講座やテレビ放送等による
学習機会、相談活動等の充実を通して、家庭の教育力の向上を支援します。
 いじめ問題をはじめ青少年の人権問題の解決と、子どもたちの生きる力の育成に、地
域社会も積極的な役割を果たすことが重要です。そのため、地域の人々に対する活動の
場や機会の提供等、地域ぐるみで子どもたちを育む環境を醸成します。

4 地域社会や企業における人権教育の推進
 県民一人ひとりが人権問題に対する理解と認識を深め、人権尊重意識を高めるために、
地域社会や企業における啓発活動を推進する必要があります。
 このため、教育・啓発手法に画一化、マンネリ化が生じないよう、知識の伝達にとどま
らず、受け手の感性、実践性に訴えかける効果的な内容、手法について工夫し、多くの県
民が気軽に参加できるよう、地域社会での研修会、講演会等を充実していきます。
 さらに、すべての人の人権尊重意識を高めていくためには、企業の果たす役割が大きい
ため、事業主等に対する計画的かつ継続的な研修会等を実施するほか、労働局や経済団体
等と連携し、企業内啓発・研修の充実、就職の機会均等の確保に係る取組を促すよう努め
ます。

5 特定職業従事者に対する人権教育の推進

(県職員等)
 すでに同和問題の啓発については、職場ごとに同和問題啓発推進員を設置し、その推進
員を対象とした研修の実施を通じて、職員全体の同和問題に対する正しい理解と認識を深
め、人権意識の高揚に努めています。
 これからも、県職員一人ひとりが、福祉、教育、土木などのそれぞれの分野において人
権尊重の視点に立って日常業務を遂行するとともに、地域社会における人権尊重意識の高
揚に向け、地域における人権リーダーとしての役割を担うなど、積極的に関わっていくこ
とが必要です。
 このため、すべての職員が、あらゆる人権問題の正しい知識と理解を深めるとともに、
積極的に人権問題に取り組む判断力と実践力を養うための効果的な研修を実施します。
 自治研修所での研修に当たっては、時代の変化を考慮し、研修内容の見直しを図るとと
もに、体系的な職員研修を実施します。
併せて、職員一人ひとりが、職務内容に応じたきめ細やかな人権感覚を身に付けるよう、
職場研修を充実するとともに、各地域で開催される人権に関する研修会等への積極的な参
加を促進します。
 また、県内に事務所を有する国の出先機関や市町、外郭団体等の職員についても、県職
員と同様の対応が求められることから、積極的な人権教育の取組を福井地方法務局と連携
して働きかけます。

(教職員)
 教職員は、学校の教育活動を通じて、子どもたちの人格形成に大きな影響を与える立場
にあり、人権教育の推進についても大きな役割を果たすことが期待されています。そのた
めには、まず何よりも教職員が人権問題についての研修に努め、確かな人権感覚を身に付
けることが求められています。
 このため、教職員の研修においては、様々な人権問題についての正しい知識を深めると
ともに、態度や技能の育成をめざす体験的参加型学習を取り入れるなど研修内容を充実し、
教職員の資質の向上に努めます。

(社会教育関係職員)
 社会教育主事、社会教育指導員および社会教育施設職員は、社会教育を行う者に専門的・
技術的な指導と助言を行う立場にあり、人権教育についても、計画の企画立案や学級・講
座・集会などの学習内容を編成し、実施しています。
 このため、人権学習を推進するための資質の向上を図る必要があり、研修や講座を開催
して、専門的な能力を培います。

(福祉関係職員)
 福祉事務所職員や民生委員、社会福祉施設職員、社会福祉協議会職員、ホームヘルパー
その他社会福祉関係事業に従事する者は、様々な人々の生活相談や身体介護などに直接携
わっています。そのため、職務の遂行に当たっては、人間の尊厳と個人の身上に関する秘
密を守るなど、人権意識に立脚した判断と行動力が求められています。
 このため、県が実施する各種研修等のカリキュラムに人権問題研修を組み入れるなど、
社会福祉関係事業従事者に対する人権教育を充実するとともに、社会福祉協議会等が実施
する各種研修事業等においても、人権に関するカリキュラムを組み入れるよう指導します。

(医療関係者)
 医療関係者は、患者に対し相談や適切なカウンセリングを行い、不安の解消に努める
ことが求められているため、研修等により資質の向上を図ります。
 また、医療関係者を養成する機関および医療関係団体等に対して、患者の人権や意思
を尊重したインフォームド・コンセントの理念に基づいた医療、患者のQOL(クオリ
ティー・オブ・ライフ)を尊重した医療等を実現するための教育や研修を充実するよう
働きかけます。

(消防職員)
 消防職員は、火災、風水害、地震等のあらゆる災害から住民の生命、身体および財産を
守ることを責務としています。そのため、人権や倫理、個人情報保護に関する研修を授業
に取り入れているとともに、外国人を想定した語学研修も実施しています。
 今後も、教育課程において、人権に関する教育についての学習機会の拡充を図るととも
に、外国語研修の充実・強化を図ります。

(警察職員)
 警察職員は、個人の生命、身体、財産の保護および公共の安全と秩序の維持を責務とし
ています。そのため、法律の具体的根拠に基づいた被疑者の逮捕を含む各種の強制権限を
行使することになりますが、この権限の濫用による人権の不当な侵害があってはなりませ
ん。
 このため、「職務倫理の基本」に基づく職業倫理教育を徹底し、被疑者の人権に関する
意識を涵養するとともに、被害者の人権についても、「被害者等の心情を理解し、その人
格を尊重しなければならない。」という基本原則を徹底し、犯罪被害者の人権に関する意
識の高揚を図るための研修を実施しています。
 今後も、職業倫理教育や人権に関する研修等の充実・強化を図ります。

(マスメディア)
 高度情報化の進展等に伴い、マスメディアの社会的影響力は非常に大きいものがありま
す。そのため、マスメディア関係者における人権教育のための自主的な取組が行われるよ
う働きかけます。


第Ⅴ章 基本方針の推進に当たって

1 人権意識の高揚
 本県の人権施策への取組姿勢と理念を明確に示し、併せて人権意識の重要性と必要性を
明らかにするため、県および県民等の責務を明確にする「福井県人権尊重の社会づくり条
例」を制定し、この条例に基づき基本方針を定め、県民の人権意識の高揚を図り、県内各
界各層の積極的かつ自主的な取組を促します。
 基本方針は、県が主体となって推進していくものですが、人権に係る問題の解決のため
には、県民一人ひとりが人権の意識を高め、お互いの人権を認め合い、尊重し合える地域
社会を築いていくことが必要です。

2 基本方針の推進体制
(1)県庁全体の推進体制
 基本方針の実施について、関係部局相互の緊密な連携・協力を確保し、総合的かつ効果
的な推進を図るため、福井県人権施策推進本部を設置して県庁全体で教育・啓発を推進し
ています。
 また、学識経験者等で構成する福井県人権施策推進審議会に対し毎年度人権施策の実施
状況を報告し、人権施策の推進に関する重要事項を調査審議していただくとともに、県民
の意見を伺い必要に応じて基本方針の見直しを行います。

(2) 福井県人権センターの充実
 本県では、「人権教育のための国連10年」福井県行動計画に基づき、人権教育・啓発
のための拠点施設として、平成13年3月に福井県人権センターを開所し、人権啓発フェ
スティバルや人権標語等の募集・作品集の作成などの人権意識啓発、センター情報誌やホ
ームページの作成などによる情報提供を行うとともに、他の人権相談機関と連携した総合
的な人権相談や人権関係職員に対する研修、一般県民を対象としたセミナーや出張研修を
実施しています。
 今後も、他の県関係人権相談機関、国、市町およびNPO法人(用語集P39)等の民
間の人権擁護関係機関と連携を深めて情報提供機能や相談機能の充実を図り、県民が気軽
に利用できる施設をめざす必要があります。

3 国、市町および関係団体等と県との連携
 県民一人ひとりが人権尊重の意識を高めていくためには、地域社会全体での取組が不可
欠であります。
 国、市町、関係団体、人権問題の解決をめざす民間団体が、それぞれの役割や独自性を
踏まえた自主的な取組を展開していく必要があり、県は、これらの機関・団体との相互理
解を深め、緊密な連携・協力を取りながら、実効のある施策の推進を図ります。
 また、国、県、県内市町および福井県人権擁護委員連合会で構成する福井県人権啓発活
動ネットワーク協議会(用語集P44)については、構成機関相互の連携・協力関係を一
層強化します。


用語集
あ行

い 生きる力 29,33頁に記載
 変化の激しいこれからの社会を生きる子どもたちに身に付けさ
せたい「確かな学力」、「豊かな人間性」、「健康・体力」の3
つの要素からなる力をいう。
 「確かな学力」とは、知識・技能はもちろんのこと、これに加
えて、自分で課題を見つけ、自ら学び、主体的に判断し、行動し、
よりよく問題を解決する資質や能力等まで含めたもの。「豊かな
人間性」とは、自らを律しつつ、他人と共に協調し、他人を思い
やる心や感動する心などをいい、「健康・体力」とは、たくまし
く生きるための健康や体力のことをいう。

い インフォームド・コンセント 13,26,35頁に記載
 Informed consent
 医療従事者側の十分な説明および患者側の理解、納得、同意、
選択をいう。

え エイズ 12,17,26頁に記載
 後天性免疫不全症候群。わたしたちの体に備わっている病気に
対する抵抗力、つまり免疫機能が働かなくなる病気で、この病気
はHIVにより引き起こされる。

え HIV 17,26頁に記載
 ヒト免疫不全ウィルス。エイズの原因となるウィルス。
 このウィルスに感染すると、約10年の潜伏期間を経た後、重
症の免疫機能の低下によりカリニ肺炎、カポジ肉腫など種々の病
気を発生する。

え HIV感染者 12,26頁に記載
 エイズ(後天性免疫不全症候群)の原因でHIV(ヒト免疫不全
ウィルス)に感染したが、エイズを発症するに至っていない人。

え えせ同和行為 24頁に記載
 「同和問題はこわい問題であり、できれば避けたい」との誤っ
た意識を悪用して、何らかの利権を得るため、同和問題を口実に
して企業・行政機関等に「ゆすり」「たかり」等をする行為であ
り、県民に誤った意識を植えつける大きな原因となっている。

え NPO法人 27,37頁に記載
 NPO(民間の非営利団体)が「特定非営利活動促進法」に基
づいて設立認証された法人。

か行

か 外国人児童・生徒等教育連絡協議会 25頁に記載
 外国人児童・生徒を担当する教員の資質の向上を図り、外国人
児童・生徒教育の円滑かつ効果的な実施に資することを目的に、
毎年開催される連絡協議会(会議)である。
 参加対象者は、外国人児童・生徒在籍校の担当教員を中心に、
その他参加を希望する教諭または指導主事となっている。

か 外国人登録 11頁に記載
 日本に90日以上在留する外国人は原則として外国人登録の申
請が外国人登録法で義務付けられている。申請は居住する市町村
長に行い、登録されれば、登録証明書が交付される。

か 介護保険制度 7,17頁に記載
 急速な人口の高齢化の中で、たとえ介護が必要な状態になっても、可
能な限り自立した日常生活を営めるよう、利用者の選択により保健・医
療・福祉サービスを総合的に提供するとともに、介護者等の負担軽減も
図るなど、老後の不安要因である「介護」を社会全体で支えていくこと
を目的に創設された制度で、平成12年4月から施行されている。

か 介護予防サービス 21頁に記載
 高齢者の健康の維持と向上を図るため、「転倒・骨折」、「閉じこも
り」、「気道感染(肺炎等)」など、介護が必要な状態になる可能性が高
いきっかけや原因の予防のほか、介護が必要な状態になっても、それ以
上悪化させないための予防のことを「介護予防」といい、高齢者の生活
支援も含めて提供される各種のサービス(事業)のことをいう。

か 家族経営協定 16頁に記載
 家族経営を行う農家等において、経営主とその配偶者、後継者、
その他の家族員が自由な意志に基づいて経営方針、所得の配分、
経営委譲計画、生活上の諸事項等について取り決めを行うこと。

く QOL(クオリティー・オブ・ライフ) 12,26,36頁に記載
 Quality of life
 「生活の質」「人生の質」などと訳される。一般的には、生活
者の満足感・安定感・幸福感を規定している諸要因の質をいう。

こ 子育てマイスター 18頁に記載 
 子育てについて様々な不安や悩みを抱える保護者が地域におい
て気軽に相談できるよう、保育士や保健師などの資格を持つ方を
「子育てマイスター」として登録し、身近に相談できる環境の整
備を図っている。

さ行

し 児童虐待防止地域協力員 6,18頁に記載
 地域で児童虐待の早期発見、早期対応等に協力する者。主に民
生委員、児童委員、主任児童委員など。

し 周産期医療体制 19頁に記載
 母体が危険な状況にある妊婦や低出生体重児などに適切な医療
を提供するために、高度で専門的な医療を提供する医療機関(総合
周産期母子医療センター等)と一般の産科医療機関が情報提供や
搬送などで連携する体制。

し 食育 18,20頁に記載
 食に関する知識と食を選択する力を習得し、健全な食生活を実
践することができる人間を育てることをいう。

し 人権教育・啓発中央省庁連絡協議会 24頁に記載
 人権擁護推進審議会答申に基づき、平成12年9月25日、人
権にかかわる啓発活動を行っている府省庁等が、その役割を相互
に認識し、人権教育・啓発を総合的かつ効果的に推進するとの観
点から、それぞれの教育・啓発活動に関する情報を交換し、その
密接な連携・協力を図る場として設置された。
 構成員は法務省、文部省(現文部科学省)および総務庁(現総務
省)をはじめとする16の府省庁等の局長クラスとした。

し 心身障害児童クラブ 19頁に記載
 昼間保護者のいない養護学校等に在籍する障害児を対象として
いる児童クラブ。

す スクールカウンセラー 30頁に記載
 いじめや不登校等児童生徒の問題行動等の対応のため、児童生
徒の臨床心理に関して高度な専門的知識および経験を有するスク
ールカウンセラーを公立小中学校に配置している。

す すみずみ子育てサポート事業 18頁に記載
 保護者が通院、冠婚葬祭、学校行事などに参加する際に、NP
O(民間の非営利団体)等の団体が一時的な預かり保育や保育所
への迎え等を行う事業。

せ 性同一性障害 14頁に記載
 Gender identity disorder
 “disorder”に「障害」の訳語を当てることには異論もある。
性自認と身体の性とは逆の性別である人。古くは「性転換症」と
表現されてきた。
 平成8年の埼玉医大倫理委員会の答申では、「生物学的には完
全に正常であり、しかも自分の肉体がどちらの性に所属している
のかをはっきりと認知していながら、その反面で、人格的には、
自分が別の性に所属していると確信し、日常生活においても、別
の性の役割を果たそうとし、さらには変性願望や性転換願望を持
ち、実際に実行しようとする人々である。」と定義されている。

せ 成年後見制度 7,23頁に記載
 財産管理・遺産相続をめぐるトラブルや介護に携わる職員や家
族による虐待等によって、判断能力が十分でない成年者(認知症高
齢者、知的障害者、精神障害者等)の人権侵害が多発しているが、
従来の民法の禁治産者、準禁治産者制度は権利保護の面で十分で
はなかったため、新たに軽度の精神上の障害者を対象とする制度
が創設(成年後見人制度等)され、所要の法改正がなされた。(民法
の改正、任意後見契約に関する法律等の整備)
 これらは平成12年4月1日から施行されている。

せ セクシュアル・ハラスメント 16,17頁に記載
 Sexual harassment
 性的ないやがらせ。相手の意に反した性的な性質の言動で、身
体への接触、性的な関係の強要、衆目に触れる場所でのわいせつ
な写真の掲示など、様々な態様のものが含まれる。特に雇用の場
においては、それに対する対応によって、仕事をする上で一定の
不利益を与えたり(対価型セクシャル・ハラスメント)、またはそ
れを繰り返すことによって就業環境を著しく悪化させる(環境型
セクシュアル・ハラスメント)こと。

た行

ち 地域子育て支援センター 18頁に記載
 子育て家庭に対する育児相談指導や子育てサークル等への支援
を行い、地域の子育て支援をする施設。

ち 地域福祉権利擁護事業 7,23頁に記載
 判断能力が不十分なものに対して、福祉サービスの利用援助や
日常的な生活支援等を行う「高齢者・障害者権利擁護センター」
の運営を支援する事業。

つ つどいの広場 18頁に記載
 子育て中の親子が、相談、交流、情報交換ができるよう開設さ
れた集いの場。

と 同和対策事業特別措置法 9頁に記載
 同和対策審議会答申の理念に基づき、昭和44年に10年間の
限時法として制定された法律。後に期限が3年間延長された。
 同和地区における生活環境の改善、経済力の培養、住民生活の
安定および福祉の向上等を図るため、国および地方公共団体が協
力して行う同和対策事業の目標を明らかにするとともに、この目
標達成のために必要な特別措置を定めたもの。

な行

な 難病対策要綱 12頁に記載
 国が難病対策を推進するために、昭和47年10月に難病対策
の考え方や対策項目等によってとりまとめたもの。

に 認知症 7,21頁に記載
 成人に起こる認知(知能)障害。記憶、判断、言語、感情などの
精神機能が減退し、その減退が一過性でなく慢性に持続すること
によって日常生活に支障をきたした状態をいう。

の ノーマライゼーション 9,22,23頁に記載
 障害者を特別視するのではなく、一般社会の中で普通の生活が
送れるような条件を整えるべきであり、共に生きる社会こそノ-
マルな社会であるとの考え方。

は行

は 配偶者暴力被害者支援センター 17頁に記載
 「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」第
3条第1項の規定により、各都道府県に設置することが義務付け
られた施設。配偶者暴力被害者支援センターは、被害者からの相
談に対応するほか、被害者の自立や保護に関する情報提供等を行
っている。

は バリアフリー 9,21頁に記載
 障害のある人が社会生活をしていく上で障壁(バリア)となる
ものを除去するという意味で、もともと住宅建築用語で登場し、
段差等の物理的障壁の除去をいうことが多いが、より広く障害者
の社会参加を困難にしている社会的、制度的、心理的なすべての
障壁の除去という意味でも用いられる。

は 犯罪被害給付制度 27頁に記載
 通り魔殺人等の故意の犯罪行為により、不慮の死を遂げた被害
者の遺族または重傷病を負いもしくは身体に障害を負わされた被
害者に対して、社会連帯共助の精神に基づき、国が被害者等給付
金を支給するもの。

は 犯罪被害者等基本法の基本理念 27頁に記載
 ア すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳
にふさわしい処遇を保障される権利を有する。
 イ 犯罪被害者等のための施策は、被害の状況および原因、犯罪被
害者等が置かれている状況その他の事情に応じて適切に講ぜら
れるものとする。
 ウ 犯罪被害者等のための施策は、犯罪被害者等が、被害を受けた
ときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの
間、必要な支援等を途切れることなく受けることができるよう、
講ぜられるものとする。

は ハンセン病 12,26頁に記載
 抗酸性菌の一種で、らい菌(1873年ノルウェーのA・ハンセンに
よって発見)によって起こる慢性の感染症であるが、感染力は非常
に弱く、免疫異常疾患とも解されている。ましてや、遺伝病でも
ない。新薬プロミンの出現により不治の病ではなくなった。

ひ 被害者支援ネットワーク 13頁に記載
 犯罪被害者を対象とし、無料で被害者の精神的被害の回復のた
めのカウンセリング等を行っている民間の被害者援助団体が、全
国的に相互連携の強化のため構築された組織。

ひ 病児デイケア 19 頁に記載
 子どもが病気治療中や病気の回復期にあって、保護者の就労や
病気等により保育が困難な場合、病院や保育所で一時的な預かり
保育を行うこと。

ふ 福井型コミュニティ・スクール 19 頁に記載
 国が進めている「コミュニティ・スクール」は、地域の方を交
えて予算、人事、学校改革など開かれた学校をめざしているが、
福井県が進めている「コミュニティ・スクール」は、国の進めて
いる考えをそのまま取り入れるのではなく、家庭、地域、学校が
連携して社会全体の力で教育を推進し、開かれた学校をめざして
いる。

ふ 福井県人権啓発活動ネットワーク協議会 24,38頁に記載
 福井県内に所在する人権啓発活動に関わる機関等が連携・協力
関係を確立し、県内における各種人権啓発活動を総合的かつ効果
的に推進することを目的に平成11年11月設置された。
 福井地方法務局が事務局で、現在、県、県内全市町、福井県人
権擁護委員連合会が構成員となっている。

ほ 放課後児童クラブ 19頁に記載
 昼間保護者のいない小学校低学年児童を対象として、児童館・
児童センター、公民館、学校の空き教室、保育所等を利用し、遊
びや生活の場を与えて、その健全な育成を図る。

ほ 法定雇用率 23頁に記載
 「障害者の雇用の促進等に関する法律」第11条および第14
条に基づき、国・地方公共団体および一般事業主が雇用すべき障
害者の割合。

ま行

ま まちなかキッズルーム 20頁に記載
 公共施設や商業施設等において、幼児を連れた保護者が授乳や
おむつ交換を安心してできる設備が整ったスペース。

ま マニフェスト 3頁に記載
 政策公約に具体的な数値目標や実現の期限を入れたもの。

ら行

ら ライフステージ 22頁に記載
 人間の一生を段階区分したもの。例えば、出生、乳幼児、就学、
成年、高齢の各期に区分する。

ら らい予防法 12頁に記載
 1907年の「癩予防ニ関スル件」(「旧らい予防法」)制定以来、
基本的には患者の隔離政策が取られ、強制入所や外出制限、断種・
中絶手術の強制等により患者のQOL(クオリティー・オブ・ラ
イフ)と人権を無視し続けることによって、患者、家族、親族な
どへの結婚や就職の差別、偏見をもたらし、自殺に至った例もあ
った。
 そのため、患者自身による「らい予防法」撤廃と連帯の運動も
続けられた。同法は、平成8年3月31日公布、翌4月1日施行
の「らい予防法の廃止に関する法律」により廃止された。

り リハビリテーション 9頁に記載
 障害者の身体的、精神的、社会的な自立能力向上を目指す総合
的なプログラムであるとともに、それにとどまらず障害者のライ
フステージのすべての段階において全人間的復権に寄与し、障害
者の自立と参加を目指すとの考え方。

り 隣保館 24頁に記載
 同和地区および周辺地域の住民を含めた地域社会全体の中で、
福祉の向上や人権啓発のための住民交流の拠点となる地域に密着
した福祉センター(コミュニティセンター)として、生活上の各種
相談事業をはじめ、社会福祉等に関する総合的な事業や、人権・
同和問題に対する理解を深めるための活動を行い、市町村が設置
運営するもの。

わ行

わ ワークショップ 34頁に記載
 もともとは、「共同作業場」「工房」を意味する英語。
 最近では、所定の課題についてあらかじめ研究した成果を持ち
寄って討議を重ねる形で、教員・社会教育指導者の研修や企業教
育に採用されることが多い。具体的には、10~15名程度でグ
ループをつくり、リーダー(ファシリテーター)が議論のきっかけ
をつくり、参加者とともに、あるいは参加者同士で議論する。