メニュー

人権に関するデータベース

全国の地方公共団体をはじめ、国、国連関係機関等における人権関係の情報を調べることができます。

条約や法律

その他 人権に関する条約や法律

地方公共団体関係資料

和歌山県人権施策基本方針
情報の種類 地方公共団体関係資料
タイトル 和歌山県人権施策基本方針
時期 2004/08/01
主体名 和歌山県
【 内容 】

和歌山県人権施策


すべての人の人権が尊重される

平和で明るい社会の創造を目指して


  今世紀は、戦争という最大の人権侵害が繰り返された20世紀の反省を込めて、「人権の世紀」と呼ばれています。

 しかし、残念なことに私たちの周りには、女性に対する暴力や子どもなどへの虐待をはじめ、さまざまな予断や偏見から生じる差別などの人権侵害が存在し、また、社会環境の急速な変化を背景に新たな問題も生じてくるなど、人権問題は多様化・複雑化してきています。

 「空青し、山青し、海青し/日はかがやかに/南国の五月晴れこそゆたかなれ」と佐藤春夫が謳った、豊かですばらしい和歌山の自然。この自然の大きな懐に抱かれ、豊かな人間性が育まれた本県において、自然と共生を図りながら、現在及び将来の県民が、「人権という普遍的な文化が根付いた平和で明るい社会の豊かさを等しく享受できる社会」を築くことが、県民及び県政の重要な課題です。

 そこで、本県は、人権尊重の社会づくりを進めるために不断の努力を傾注することを決意して、平成14年4月に「和歌山県人権尊重の社会づくり条例」を施行し、そして、この条例に基づき、人権施策の総合的な推進を図るための基本的な方向を示すものとして、このたび「和歌山県人権施策基本方針」を策定しました。

 今後は、この基本方針に基づき人権行政を県政の重要な柱と位置づけて、県民の皆様と協働しながら、すべての人の人権が尊重される平和で明るい社会の創造を目指して、総合的な施策を全庁あげて推進してまいります。

 終わりに、この基本方針の策定にあたっては、「和歌山県人権施策推進審議会」において2年間にわたりご審議いただくとともに、県民の皆様からも貴重なご意見をいただき、厚くお礼を申し上げます。

  平成16年8月              和歌山県知事    

     

                        目次  

第1章 基本的考え方      
1 基本方針策定の趣旨    
2 基本方針策定の背景    
(1)国際的動向    
(2)国内の動向    
(3)本県での取組   
3 基本方針の位置づけ  
4 人権施策の基本理念  

第2章 人権施策の推進    
1 人権の視点に立った行政の推進  
2 人権教育・啓発の推進     
(1)人権教育・啓発の基本的方向   
(2)人権教育の基本的なとりくみ   
(3)人権啓発の基本的なとりくみ   
(4)特定職業従事者に対する教育・啓発の充実・強化 
(5)人材の育成と調査・研究の推進   
3 相談・支援・救済の推進    
(1)相談・支援体制の充実・強化 
(2)救済体制の整備  

第3章 分野別施策の推進     
○ 公権力と人権   
○  環境と人権    
○  情報と人権    
1 女性の人権     
2 子どもの人権    
3 高齢者の人権    
4 障害者の人権    
5 同和問題      
6 外国人の人権    
7 感染症(ハンセン病、HIV等)・難病患者等の人権 
8 犯罪被害者とその家族の人権 
9 さまざまな人権       

第4章 施策の総合的な推進
1 人権行政の推進体制等の整備 
(1)県の推進体制       
(2)(財)和歌山県人権啓発センターの充実   
(3)国、市町村、関係団体等との連携    
(4)県民、企業、NPO等との連携・協働 
2 人権施策等の公表と基本方針の見直し  
(1)情報の収集と提供  
(2)施策の点検・評価  
(3)基本方針の見直し  

○ 用語の解説 

資料
1 和歌山県人権尊重の社会づくり条例
2 和歌山県人権施策推進審議会規則
3 和歌山県人権施策推進審議会委員名簿
4 人権関係年表
5 世界人権宣言
6 日本国憲法(抄)
7 人権教育及び人権啓発の推進に関する法律
8 「人権教育のための国連10年」和歌山県行動計画(抄)


第1章 基本的考え方 
1 基本方針策定の趣旨

 一人ひとりが人権を尊重し、また尊重される豊かな社会づくりを進めるため、本県では平成14年(2002年)4月に「和歌山県人権尊重の社会づくり条例」(以下「条例」という。)を施行しました。

 条例では、人権尊重の社会づくりに関しての県と県民の責務を明らかにするとともに、人権施策の総合的な推進を図るための基本となる方針(以下「基本方針」という。)を策定することを定めています。

 基本方針は、条例のこの定めに基づき、県民の意見を聴き、和歌山県人権施策推進審議会の審議を経て策定したものです


2 基本方針策定の背景

(1)国際的動向

 20 世紀において、人類は二度にわたる世界的な規模の戦争を経験し、世界各地で多くの犠牲者を出す結果となりました。このことへの反省を込め、昭和23年 (1948年)、人権の確立を通じて平和な社会を築くため、国際連合総会において「世界人権宣言」が採択されました。

 この世界人権宣言は、国際的な人権保障の理念と基準を示し、すべての人が世界中、誰でも、いつでも、どこでも、等しく人権が保障されなければならないことを、歴史上初めて公的に明らかにした画期的な意義を持つものです。

 その後、国連では、この世界人権宣言をより具体化し、各国の実施を義務づけるための基本的、包括的な条約としての「国際人権規約」のほか「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(以下「人種差別撤廃条約」という。)、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」、「児童の権利に関する条約」などを採択するとともに、「国際人権年」や「国際婦人年」「国際児童年」「国際障害者年」などを通して、各国に人権確立への取組を呼びかけてきました。

 こうした取組にも関わらず、東西冷戦構造の崩壊後も期待された世界平和は訪れず、むしろ、人種、民族、宗教の違いなどから生じる対立が表面化し、地域紛争が多発し、貧困・飢餓・難民など世界の各地で深刻な人権侵害をもたらすなど、世界人権宣言の精神が薄らぐ懸念が生じてきました。

 このような厳しい国際社会の状況を受けて、国連では平成7年(1995年)から10年間を「人権教育のための国連10年」と定め、すべての政府に人権教育に積極的に取り組むよう行動計画を示し、人権教育を通じて人権文化を世界に築くための取組を展開してきています。

 ところが、その取組が半ばを過ぎても状況は好転せず、平成13年(2001年)にアメリカで起こった同時多発テロなど、重大な人権侵害が世界各地で起き、多くの犠牲者を出しています。

 「平和のないところに人権は存在し得ない」「人権のないところに平和は存在し得ない」という大きな教訓を得た国際社会ですが、今、再び「人権の尊重が平和の基礎である」ということが、世界の共通の認識として再確認される必要があります。このような中で「人権の世紀」と言われる21世紀が始まりました。

(2)国内の動向

 わが国においては、昭和22年(1947年)に基本的人権の尊重を基本原理とする日本国憲法が施行され、昭和31年(1956年)には国連に加入して国際社会の仲間入りを果たしました。そして、「国際人権規約」をはじめ「人種差別撤廃条約」などの諸条約を批准するとともに、国連が提唱する「国際人権年」など各種国際年について積極的な取組を行いながら、国際的な人権保障の潮流に沿う方向で人権施策の充実・普及が図られてきました。

 また、わが国では、部落差別という深刻で重大な人権侵害が存在し、この問題の解決こそが人々を真に人権に目覚めさせ、これを確立する基になるとの考えから、長い年月にわたる努力が積み重ねられてきました。特に、昭和40年(1965年)の同和対策審議会答申に始まる特別対策は、わが国における人権確立への歩みの中で大変重要な役割を果たし、この同和問題解決に向けての取組があらゆる差別の撤廃、人権問題の解決へと向かわせたと言えます。

 そして、実態的差別がほぼ解消されたとして特別対策の終了を迎える中で、平成8年(1996年)5月、地域改善対策協議会意見具申では、同和問題に関する教育・啓発を、すべての人の人権を尊重していくための人権教育・啓発として発展的に再構築すべきものとし、また、同和問題をわが国の人権問題における重要な柱と捉え、「人権教育のための国連10年」の施策の中でも差別意識の解消に努めるべきとの方向が示されました。この流れの中で「人権擁護施策推進法」の制定や「『人権教育のための国連10年』に関する国内行動計画」の策定がなされ、そしてその推進へとつながりました。

 その後、人権擁護施策推進法により設置された人権擁護推進審議会では、「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項」及び「人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策の充実に関する基本的事項」の審議がなされ、国ではその答申に基づき、人権教育・啓発に関する施策の総合的な推進と、人権侵害による被害を救済するための組織体制の整備に取り組むこととしています。

 また、人権教育・啓発に関する施策の推進について、国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにし、必要な措置を定めることを目的として、平成12年 (2000年)12月には「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が制定されるとともに、現在、人権侵害による被害を救済するための新たな制度が検討されているところです。

 このほかにも、「高齢社会対策基本法」や「男女共同参画社会基本法」「児童虐待の防止等に関する法律」「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の制定などにより、21世紀を人権の世紀にふさわしいものとするためのさまざまな取組が積極的に進められています。

(3)本県での取組

 本県においても、人権尊重の社会づくりに向けて先導的役割を果たしてきたのは、同和問題解決への取組でした。昭和23年(1948年)には国に先駆けて地方改善事業補助制度を創設、同和問題の解決を県政の重要課題と位置づけて、市町村とともに総合的・計画的に同和対策を推進するとともに、昭和31年(1956 年)に設置した「和歌山県同和委員会」の提唱による「県民みんなの同和運動」を展開してきました。

 なお、同和問題解決に向けての教育・啓発の取組については、国の動向を受けて「『人権教育のための国連10年』和歌山県行動計画」として再構築され、従来よりその範囲を広げながら、その内容に即した形の新しい取組がなされてきました。

 また、女性や子ども、高齢者、障害者、外国人等の人権問題についても、個別分野ごとに計画やプランを策定するなど、関係部局を中心に国や市町村、関係団体と連携しながら、それぞれの課題解決のため計画的に各種施策に取り組んできました。      

 しかしながら、今なお、さまざまな偏見から生じる差別や、虐待などの人権侵害が後を絶たず、また、国際化、少子・高齢化、技術革新など社会環境の急速な変化を背景に新たな人権問題も発生するなど、問題は多様化・複雑化の道をたどっています。

 このような社会情勢の中、本県は、平成14年(2002年)に人権行政のよりどころとなる「和歌山県人権尊重の社会づくり条例」を制定・施行し、すべての人権が尊重される新しい時代の豊かな社会づくりのため、行政が主体的に取り組むことを明らかにし、人権行政の政策提言機能の充実を図るため「和歌山県人権施策推進審議会」を設置するとともに、あらゆる人権に関する教育啓発の推進機能を高めるため「和歌山県人権啓発センター」を設置しました。


3 基本方針の位置づけ

 この基本方針は、条例に掲げる人権尊重の社会の実現を目指した施策を、総合的・計画的に推進するため、各種施策の基本的方向を示しています。

 県が策定している既存の各種計画に基づき施策を行う場合、または今後新たに各種計画を策定したり、既存の施策の見直しを行う際には、この基本方針の趣旨を尊重し、整合性を図るものとします。

 市町村については、この基本方針の趣旨に沿いつつ、地域の特性に応じた幅広い各種施策を行うことを期待します。

 また、県民や企業、民間団体等については、その生活や活動の中で、一人ひとりが人権尊重の精神を基本として、自主的かつ積極的に取り組むことを期待します。

 この基本方針においては、人権の共通・普遍性を明らかにするとともに、人権問題が持つ個別の性質を認識し、行政施策推進のための基本的方向を示しています。

 この基本方針は、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」の趣旨に積極的に対応するものであり、平成16年(2004年)に終了する「『人権教育のための国連10年』和歌山県行動計画」を受け継ぐものとします。


4 人権施策の基本理念

 「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。」との世界人権宣言の理念のもとに、条例の前文では、県民の総意として、自然と人間との共生を目指す和歌山県で、すべての人の人権が尊重される社会づくりを推進することは、県民一人ひとりの責務であり、そのために不断の努力を傾注することを宣言しています。

 また、県民一人ひとりが社会の構成員としての責任を自覚し、常に他者の人権の尊重を念頭に置いて、自らの人権を行使すべきとの責任を明確に示しています。

 本県が推進する人権施策の基本理念は、総合的な取組を県民との協働によって推進し、この前文に掲げる「現在及び将来の県民が人権という普遍的な文化が根付いた平和で明るい社会の豊かさを等しく享受できる」和歌山県をつくることです。

 すべての人が人権尊重の精神を身につけ、共通の行動基準として日常生活の中で実践することができる社会が、「人権という普遍的な文化が根付いた社会」と言えます。そして、このような生き方を可能にする社会的な環境や条件を整備することによって、県民一人ひとりの人権が尊重され、お互いが共存できる「平和な社会」、「明るい社会」の豊かさを手にすることができます。

 このような認識のもとに、本県は

         すべての人が、互いに、人間としての尊厳性を何よりも大切に認め合う社会

         一人ひとりが、それぞれの違いを認め合い、偏見を持たず、差別することなく、思いやりを持って、
         共に生きる平和な社会

         人がその努力によって、自由に自己実現を図れる、公平な機会が保障された、希望の持てる明
          るい社会

         すべての人が、自然を大切にする、豊かな心をいだく社会


の構築を目指し、人権に関する教育・啓発、差別解消のための諸事業など、さまざまな分野における人権施策を総合的に推進します。


第2章 人権施策の推進
1 人権の視点に立った行政の推進

県行政は、県民一人ひとりの幸せ実現のため、自己実現や自立を支援し、そのための環境を整えることを目的としています。したがって、県が行うすべての業務は、あらゆる分野で人権と関わっており、常に人権の尊重を念頭に置きつつ行われるべきです。

このため、本県は、人権の視点に立った取組を企画・立案し、全庁的に推進する専門部局として人権局を設置するとともに、各部局の課・室等には人権施策推進担当者を配置して、以下のような取組を総合的に推進します。

人権の保障を基本においた施策や制度などの創設・運用に努めるとともに、既存の施策や制度などの点検・見直しを行います。

また、各種申請等に対する公平な取扱いや迅速な処理、適正な情報公開の実施や個人情報の保護など、人権を重んじた取組を推進します。

なお、職員一人ひとりの人権意識の高揚を図り、人権行政の担い手としての自覚を促すため、人権に関する職員研修の充実に努めるとともに、職員の採用等にあっても、人権尊重の視点から適切に対処します。

そして、これらの取組が県行政に定着するような仕組みづくりを検討します。

2 人権教育・啓発の推進
(1) 人権教育・啓発の基本的方向

本県では、県民一人ひとりの人権意識の高揚を図るため、あらゆる分野において、さまざまな機会を通じて、人権教育・啓発に積極的に取り組んできました。

しかし、人間の尊厳や人権尊重の理念についての正しい理解やこれを実践する態度が未だに定着していないことなどにより、依然としてさまざまな人権問題が生じています。

県民一人ひとりが人権を自らの問題として捉え、人権の意義や人権尊重、そして共に生きることの重要性について、理性及び感性の両面からの理解を深めるとともに、自分の権利の行使に伴う責任を自覚し、自分の人権と同様に他人の人権をも尊重することが大切です。

このため、家庭・学校・地域社会・職域など、あらゆる場と機会を通じた総合的な教育・啓発活動をより一層充実していく必要があります。

ア 多様な機会の提供

ますます複雑・多様化する傾向にある人権問題について、教育・啓発を効果的かつ総合的に推進するため、国・市町村などの関係行政機関や関係団体、民間団体等との連携を強化し、多様な学習機会を提供していくこととします。

イ 効果的な方法

人権教育・啓発の手法については、「法の下の平等」「個人の尊重」といった人権一般の普遍的な視点からのアプローチと、具体的な人権課題に即した個別的な視点からのアプローチとがあり、この両者が相まって人権尊重についての理解が深まっていくと考えられます。

このような認識のもと、実施にあたっては家庭、学校、地域社会、職域における日常生活の経験などを具体的に取り上げるなど、さまざまな創意工夫によって、効果的に行っていくこととします。

ウ 県民の自主性の尊重

人権教育・啓発は、一人ひとりの心の在り方に密接に関わるものでもあることから、県民の自主性を尊重し、異なる意見に対する寛容の精神に立って、自由な意見交換ができる環境づくりに努めることとします。
 

(2) 人権教育の基本的なとりくみ

人権教育は、生涯学習の視点に立ち、家庭における教育も視野に入れつつ、学校教育と社会教育とが相互に連携を図りながら実施する必要があります。

また、これまで行われてきた人権教育は、知識伝達型に偏りがちであったことから、今後は、県民一人ひとりが自ら進んで学び、主体的に取り組んでいく学習と実践が重要です。

ア 家庭における人権教育

家庭における教育は、幼児期から豊かな情操や思いやり、いのちを大切にする心、善悪の判断など人間形成の基礎を育むという点で、すべての教育の出発点となる重要なものです。

親が持っている人権感覚は、その態度や行動を通じて子どもに伝わるものであり、親自身が偏見を持たず、差別をしないことなどを日常生活を通じて自らの姿をもって子どもに示していくことが必要です。

このような認識のもと、関係行政機関や民間団体等が連携しながら、親子共に人権感覚が身につくような家庭教育に関する親の学習機会の充実や情報の提供に努めるとともに、父親の家庭教育参加の促進、子育てに不安や悩みを抱える親等への相談体制の充実など、家庭教育への支援を図ります。

イ 学校教育における人権教育

学校教育では、教育活動全体を通じて、幼児・児童・生徒・学生が社会生活を営むうえで必要な知識・技能や態度を身につけることにより、人権尊重の精神を養っていく必要があります。

幼稚園・保育所においては、遊びや動植物とのふれあいなどを通して幼児に人権尊重の芽生えを育むことが必要です。

小・中・高等学校及び盲・ろう・養護学校においては、一人ひとりの違いを尊重しつつ、自ら学び自ら考える力や豊かな心などの「生きる力」を育む中で、いのちを大切にすることや、自分や他人の権利を尊重することなど人権についての知識・理解を深め、それが主体的に態度や行動に現れるような実践力を育成することが必要です。

また、大学等については、人権尊重の理念についての理解を更に深め、社会の中に活かしていく力を開発することを目指した人権教育を一層促進することが必要です。

このような認識のもと、学校などにおける指導方法の改善のため、効果的な教育実践や学習教材などについての情報収集や調査研究に努めるとともに、社会教育との連携を図りながら、社会奉仕体験活動や自然体験活動など多様な体験活動や高齢者・障害者等との交流の機会の充実を図ります。

また、各学校が人権の視点に立った教育指導や学校運営に努めるとともに、養成・採用・研修を通じて教職員の資質向上を図り、人権尊重の理念などについての十分な認識や指導力を持った人材の確保に努めます。

ウ 社会教育における人権教育

社会教育においては、生涯学習の振興のための各種施策を通じて、人権に関する学習の一層の充実を図っていく必要があります。また、この人権に関する学習では、単に人権問題を知識として学ぶだけではなく、日常生活において態度や行動に現れるような人権感覚を養っていくことが求められます。

このような認識のもと、公民館などの社会教育施設を中心として、学校やNPO等の民間団体との連携を図りながら、人権に関する多様な学習機会の提供や、社会奉仕体験活動や自然体験活動など多様な体験活動や高齢者・障害者等との交流の機会の充実を図るとともに、人権に関する学習意欲を高めるための指導方法の研究・開発及びその普及に努めます。

また、地域社会において人権教育を推進する指導者の養成及び、資質の向上など社会教育における指導体制の充実を図ります。
 

(3) 人権啓発の基本的なとりくみ

人権啓発は、県民一人ひとりが人権を尊重することの重要性や、人権を侵害された場合に救済するための制度がどのようになっているかなどについて正しく認識し、日常生活の中でこれらの認識が態度や行動に確実に根付くようにすることを目的としており、その内容や実施方法については、県民の理解と共感を得られるものであることが必要です。

このことから、内容的には、人権に関わる国内法令や国際条約などの基本的な知識の習得を図る啓発や、自他の生命の尊さや他人との共生・共感の大切さを真に実感できるような啓発、一人ひとりがそれぞれの違いを認め合い、尊重し合うことが大切であることを訴えかける啓発が求められています。また、実施方法については、対象者の理解度に応じたものとする必要があり、具体的な事例を活用した啓発、参加型・体験型の啓発などが求められています。

本県においては、人権文化創造のための情報発信基地として人権啓発センターを設置しており、このセンターの活動を中心に、人権尊重の精神が地域に広く定着するよう効果的な啓発活動を推進します。

ア 県民への啓発

本県では、県民全体の人権意識の高揚が図られるよう、人権啓発センターに委託するなどして、人権に関する情報の収集や発信、啓発資料の募集・作成、マスメディアを活用しての広報・啓発などの人権啓発事業や、参加型・体験型を活用した各種研修事業、専門職員による人権相談業務などを通して県民への啓発を総合的に実施していきます。

なお、関係部局はそれぞれの人権に関わる分野において、民間団体等と連携しながら積極的に啓発に取り組みます。

さらに、国の地方機関や市町村等と連携して人権啓発活動を推進することとし、和歌山県人権啓発活動ネットワーク協議会による啓発活動の充実を図ります。

イ 企業等への啓発

地域や社会へ大きな影響力を持つ企業等においては、人権が尊重される職場づくりや、人権尊重の視点に立った企業活動を行う意味から、計画的・継続的に従業員等の研修などに努めることが大切です。本県では、これらの研修の実施を要請するとともに、指導者の養成を目的とした研修等の開催、啓発資料や情報の提供、研修講師派遣などの支援に努めます。

また、採用にあたっては公正な採用選考の確立を図り、雇用の機会均等が図られるよう、国と連携しながら啓発を推進します。

 
(4) 特定職業従事者に対する教育・啓発の充実・強化

人権教育や啓発を通じて県民の人権意識の高揚を図るためには、まず人権に関わりの深い特定の職業に従事する者が自らの人権意識を高め、常に人権尊重の視点に立って職務を遂行していくことが重要です。

このため、職場研修などの各種研修によって、行政職員・教職員・社会教育関係職員・警察職員・消防職員や医療・福祉関係職員などに対する人権教育・啓発の充実・強化を図るとともに、研修指導者の養成や研修に必要な情報の提供に努めます。
 

(5) 人材の育成と調査・研究の推進

県民が、さまざまな場において人権に関する学習・実践をしようとするとき、それを支援するための指導者が必要となることから、講師の派遣要請に応じるため講師団の充実に努めるとともに、人権教育・啓発が地域・職場等に浸透するよう、指導者の育成に努めます。

また、現状の人権意識の調査・分析などを通して教育・啓発に関する手法や体系についての研究を進め、それぞれの地域や理解度に応じた啓発や、マスメディアの活用など効果的な人権教育・啓発に努めます。

さらに、個人情報の流出に伴うプライバシーの侵害やインターネット等を利用した人権侵害、環境問題、遺伝子問題など、新たな人権問題に関する調査・研究に努めます。


3 相談・支援・救済の推進

(1) 相談・支援体制の充実・強化

本県では、人権に関する相談に対応するため、振興局に人権に関する専門職員を配置するとともに、人権啓発センターにさまざまな人権の相談に応じる総合的な窓口を設置しています。

個別的な課題の相談については、女性や子ども、高齢者に関する相談をはじめ、障害者の権利擁護に関する相談、外国人の生活相談、HIV・エイズやハンセン病に関する相談、警察安全相談など各種相談窓口を設置して対応しています。

また、市町村や社会福祉関係などの各種団体も関係の相談窓口を設け、それぞれ相談を受け付けています。

しかし、人権意識の高まりなどによる相談件数の増加や内容の多様化・複雑化などにより、相談・支援体制の充実強化や相談窓口に関する情報の提供が求められていることから、以下のような取組を推進します。

ア 県民が戸惑うことなく速やかに人権に関わる相談をできるようにするため、相談・支援に関する制度や、各種相談・支援機関の情報を積極的に提供するとともに、人権相談の総合窓口である人権啓発センターの周知を図ります。

イ 人権を侵害された、または侵害されている被害者が、安心して気軽に相談できるように、利用者のプライバシーの保護、相談の場所や時間、方法などを十分考慮しながら、相談機能の充実を図ります。

ウ 県の各相談・支援機関が、人権に関するさまざまな相談について、迅速かつ適切に対応できるように、各相談員や関係職員に対し研修を行い資質の向上に努めるとともに、その連携強化のため、連絡協議会を設置します。

エ 多様化・複雑化する人権問題を個別の機関だけで相談・支援を完結することは困難なため、国・県・市町村の機関、弁護士会、NPO等民間支援団体等との相互の連携・協力を図ります。
 

(2) 救済体制の整備

現在、人権侵害に対する被害者の救済については、地方法務局及び人権擁護委員による人権相談や人権侵犯事件の調査処理、最終的な紛争解決手段である裁判制度のほか、労働問題、公害、児童虐待等の分野においては裁判制度を補完する制度や被害者保護のための特別の仕組みがあります。

また、一部の県や市では、人権侵害に対する救済のために、条例に基づき設置した第三者機関が加害者に対して勧告や意見表明、要請を行うようにするなど、独自の取組が始まっています。

本県では、ドメスティック・バイオレンスや児童虐待などにより、緊急に避難や保護を必要とする女性や子どもについては、女性相談所や子ども・障害者相談センター等が、一時保護や自立支援等の取組を行っているほか、さまざまな分野で設置している各種相談機関が、それぞれ専門性を持った対応により救済を図っています。

なお、さまざまな分野の人権問題に関わる誹謗、中傷、忌避、排除などの人権侵害事件については、行政が主体的に取り組む必要があるとの認識のもと、市町村と連携しつつその処理体制を整備し、加害者への啓発や話し合いへの仲介、あるいは被害者への助言や情報提供などを行うことにより、救済の一翼を担うこととしています。

具体的には、原則としてその発生した区域の市町村が処理委員会を設置するなどして、関係機関と連携を図りつつ、主体的にその処理に当たります。また、特に問題性の大きなものや一市町村で対応が困難なものなど、広域的に取り組む必要がある人権侵害事件については、県庁内に編成する処理対策会議が、第三者で構成する和歌山県人権侵害事件対策委員会から必要な助言を受けながら処理を行います。そして、人権局は、これらの人権侵害事件の処理にあっては中心となって、県の人権問題関係課室や関係機関との調整機能を果たすとともに、個別分野における救済機関等で処理された事件を含めて総合的に把握し、人権教育・啓発への活用を図ることとしています。

しかしながら、以上のような既存の救済体制だけでは、現在の多様化・複雑化する人権問題について、簡易、迅速、柔軟な対応や傷つけられた被害者の心を満たす真の意味での被害者の救済とは言えないところがあり、行政による新たな救済制度を整備することが必要と考えられます。

このような認識のもと、人権擁護推進審議会が出した「人権救済制度の在り方について(答申)」に基づく実効性のある救済制度を、必要な法的措置を含め、早期に整備するよう国に対して要望するとともに、人権侵害に対する調査、勧告、公表、訴訟援助などの救済手法や組織体制など、被害者の視点に立った、より有効な救済の在り方について、条例化も含めて検討します。

なお、その検討にあたっては、児童相談所など特定の分野で既に行われている救済への取組との連携や、国・市町村における救済への取組との関係も十分考慮します。


第3章 分野別施策の推進

本章においては、「女性の人権」、「子どもの人権」、「高齢者の人権」、「障害者の人権」など、国の「人権教育・啓発に関する基本計画」を参考として、昨今の人権に関わる重要課題を分野別施策として取り上げ、その課題解決のための施策の基本的方向などを示していますが、現実社会の中ではこれらの人権は互いに重なり合って存在しており、このことを十分認識したうえで施策を実施していくものとします。

また、このような分野別の課題とは別に、行政や企業活動あるいは県民の日常生活の中で、すべての人がその人権を侵害される当事者となりうるという問題があります。特に、近年このような人権問題の重要度が増してきていることから、以下にまずこのような問題を取り上げ、そして分野別施策を示すこととします。

 
 ○ 公権力と人権

現代社会において、行政の活動は以前に増して私たちの生活に深く関わってきており、国民の権利・自由に関わる行政の在り方が人権上、極めて重要な問題となってきています。

公権力による人権侵害には、まず一つには、封建時代の身分制度に起因する部落差別や長く法律上の権利をも認められていなかったという女性に対する差別、不当な隔離政策に見られるハンセン病に関わる差別などのように、もとをただせば法律や制度など公権力が作り出したとも言えるものがあります。

これらの中には、過去においてはむしろ当然のこととされていたり、見過ごされてきたことが、近年の人権意識の高揚や人権尊重の流れの中で、改めて人権侵害として取り上げられるようになってきたものもあります。

このような状況を受け、本県は、公権力に携わるものとしての責任の重大さを十分に認識し、人権の保障を基本においた施策や制度の創設・運用に努めるとともに、既存の施策や制度の点検・見直しを行うこととします。なお、さまざまな施策等は、県民へ説明する責務を果たしながら県民との協働により推進されることが重要であり、情報の共有はその前提条件です。このことを踏まえ、ホームページや県民意見募集などにより、県民が意見を表明する機会の確保を積極的に行うこととします。

また、最近大きな社会問題となっている刑務所での刑務官による暴力や虐待などのように、公務員が全体の奉仕者としての精神や人権意識に欠ける言動を行うことによる人権侵害も見受けられます。

本県は、職員の言動によって県民の人権が侵害されることのないように、新規採用職員から幹部職員までの各階層ごとの研修や各部局の各課室に配置している人権施策推進担当者による研修など、職責や職務内容等に応じてさまざまな人権課題に即した研修を実施して、職員の人権意識の高揚に努めるとともに、人権の視点に立った行政を推進します。

 
 ○ 環境と人権

近代における産業社会の発展は、暮らしに便利さを追い求める人々の欲求を背景に、利益優先の生産活動とも相まって、大気汚染や水質汚濁などさまざまな公害や乱開発による自然破壊を引き起こしました。こうした生活環境や自然環境の破壊を未然に防ぐことは、人間の現在及び将来の生命と健康を守るために大変重要です。

今日、環境問題は、特定の産業や企業の生産活動を原因として発生するものだけではなく、大量生産・大量消費・大量廃棄という私たちの生活様式や社会経済システムそのものが原因となって発生する問題へと拡大しています。

そして、これらを原因とする温室効果ガスの増加による地球温暖化やフロンによるオゾン層の破壊、ダイオキシン類などの化学物質(環境ホルモン)問題などは、地球的規模で未来に影響を及ぼす重大な問題として認識されるようになっています。

特に、地球温暖化に対応するため、国際的には「地球温暖化防止京都会議」において、各国の温室効果ガスの削減目標を定めてその達成に向けて取り組むこととしており、国内にあっては、地球温暖化対策推進法や改正省エネ法、循環型社会形成推進基本法などの施行によりその防止策を実施しています。また、本県においても、平成9年(1997年)10月に和歌山県環境基本条例を制定して各種施策を推進することとしており、今後も、環境に配慮した経営管理システムとしてのISO14001の認証取得事業者として環境への負荷の低減に取り組む一方、「緑の雇用事業」などの推進によって貴重な二酸化炭素吸収源である森林の保全・育成に努めながら、自然との共生を図っていきます。

また、本県では、民間の処理業者が行った産業廃棄物の不適正な処理によって、土壌がダイオキシン類に汚染されるという問題が生じました。この問題に対して県は、処理技術を全国から募集したうえで、有識者や地元住民からなる対策協議会を立ち上げ、公開の場で処理方法を決定し、汚染された土壌の無害化処理を現地で行うなどの対策を行っています。

かけがえのない地球の環境を守りお互いの生命と生活を守るためには、環境問題は重要な人権問題であるとの認識に立って、新しい社会経済システムの再構築や一人ひとりの価値観・生活スタイルの転換が必要となっていることから、本県では、人権尊重の視点に立った環境保全意識の向上と環境教育などに積極的に取り組んでいきます。
 

 ○ 情報と人権

情報産業の発達に伴って、他人に知られたくない個人の私生活上の秘密が、自分の知らないうちに集められ、利用される心配や、それが国や企業などに管理されるのではないかという心配が広がってきたことから、私生活を他人にのぞかれず、秘密にしておきたいという「プライバシーの権利」が主張されるようになりました。今日、個人情報の保護は、プライバシー保護の観点から、国民一人ひとりに保障されるべき基本的人権の問題であるとの認識が重要です。

近年、情報化社会の急速な進展の中で、企業や行政機関などが保有する顧客情報や住民情報などの個人情報が、大量に流出する事件が相次いで発生しています。また、インターネットの急速な普及を背景に、ホームページや電子掲示板の匿名性・拡散性を利用して、他人を誹謗中傷する表現や差別を助長する表現等によって、個人や団体にとって有害な情報を掲載するなどのプライバシーに関わる人権侵害も多発しています。

このことから、国においては、平成14年(2002年)5月にいわゆる「プロバイダー責任制限法」を制定し、その防止への取組を行っています。また、平成15年(2003 年)5月には「個人情報保護法」等を制定し、行政機関や企業に対して個人情報の適正な取扱いを義務づけています。

本県においても、県や事業者が保有する個人情報の適正な取扱いを確保するための基本的事項や、県が保有する個人情報の開示・訂正・利用停止を求める権利、いわゆる個人情報のコントロール権を定めた「和歌山県個人情報保護条例」を平成14年(2002年)12月に制定し、平成15年7月から施行しています。また、県民が安心・信頼して行政サービスを利用できるようにするとともに、継続的かつ安定的な行政事務の実施を確保するため、和歌山県情報セキュリティ基本方針などを定めています。これらの適正な運用や遵守により、個人の権利利益の保護を今後一層図っていきます。

一方、国や地方公共団体の動きについて正確な情報がなければ主権者としての判断ができないことから確認された権利が「知る権利」です。

本県では、県が保有する情報を広く県民に公開するとともに、県が行う諸活動を県民に「説明する責務」を果たすため、平成13年(2001年)3月に「和歌山県情報公開条例」を制定しており、この条例に基づき県民の「知る権利」を尊重することとします。また、この情報公開にあたっては、個人の正当な権利利益を侵害することのないよう、個人に関する情報について最大限の保護を行うこととします。

1 女性の人権
(1)現状と課題

日本国憲法は、その第14条に「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と定め、性別による差別を禁止しています。

私たちは、性別の違いを理由として、自らの能力や個性を制限されたり否定されたりすることなく、自らの意思で社会のあらゆる分野での活動に参画し、その能力を発揮することのできる機会を持ちます。

しかし、昭和54 年(1979年)に国連において採択された「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(女子差別撤廃条約)では、女性に対する差別が依然として存在していることを指摘したうえで、男女の固定的な性別役割分担の修正や男女がともに育児に責任を負うことなどを求めています。特に、固定的な性別役割分担意識や制度のもとで、政策・方針の決定過程への女性の参画が妨げられる、就職や職場において男女間に格差がある、育児や介護の負担が女性にかかるなどの課題があります。

また、ドメスティック・バイオレンス(夫やパートナーからの暴力)、セクシュアル・ハラスメント(性的いやがらせ)、性犯罪、売買春、ストーカー行為などの女性に対する精神的暴力や身体的暴力といった重大な人権侵害や望まない妊娠、性感染症などの増加が社会的な課題となっています。こうした女性に対する暴力的行為の背景には、男性優位の意識や男女間の経済力の格差などの社会意識や構造が存在します。

男女間の格差の是正や固定的な性別役割分担意識の修正を図り、男女が対等な社会の構成員としてあらゆる分野の活動に参画する機会を確保するためには、男女が互いに人権を尊重し、性別にかかわらず個性と能力を発揮することのできる男女共同参画社会を実現する必要があります。

本県では、平成 14年(2002年)4月に「和歌山県男女共同参画推進条例」を施行し、男女共同参画のための基本理念を定めるとともに、平成15年(2003年)3月には男女共同参画を総合的・計画的に推進するため「和歌山県男女共同参画基本計画」を策定し、男女の人権が尊重され、活力あるふるさとの実現を目指しています。

  
(2)基本的方向

女性の人権と尊厳が重んじられ、差別的な取扱いを受けず、個人として能力を発揮する機会が確保される社会を実現するためには、女性であることを理由に社会における活動を制約することがないよう配慮していく必要があります。

本県では「男女共同参画基本計画」のもと、男女共同参画や人権について啓発や教育を進めるとともに、政策・方針決定過程や働く場、家庭における男女共同参画を推進することで、新しいふるさとづくりを推進します。

女性に対する精神的暴力や身体的暴力は重大な人権侵害です。女性に対する暴力の根絶に向け、相談支援体制の充実を図るとともに、積極的、厳正な対応をしていきます。また、女性の直面するライフサイクル上のさまざまな課題に対する取組を推進します。
 

(3)基本的なとりくみ

ア 新しいふるさとづくりへの男女共同参画の推進

① 家庭や地域、仕事の場などのあらゆる分野で、すべての男女が性別にかかわらず、それぞれの個性と能力を発揮し、互いに支え合う社会づくりを進めます。

 男女共同参画社会への取組を通じ、一人ひとりの人権が尊重され、安心していきいきと暮らすことのできる新しいふるさとの実現を目指します。

② 農林水産業や商工業等において、女性は、地域活動や生産・経営活動の中で男性とともに責任や役割を果たしています。しかし、その責任や役割に見合った適正な評価が十分になされていません。地域活動や生産・経営活動における方針決定へ女性が参画できる環境づくりを推進します。

 
イ 政策・方針決定過程での男女共同参画の促進

① 県の設置する審議会等への女性委員の登用が進むよう取組を図ります。また、女性職員の採用・登用等に努め、県の政策・方針決定過程への女性の参画を促し、女性の意見を政策に反映しやすくします。

② 県は身近な政策を決定する立場にある市町村の審議会等の政策・方針決定過程への女性の登用が進むように市町村に協力を依頼するとともに、市町村の政策・方針決定過程への男女共同参画の取組を支援します。また、民間企業・団体等の方針決定過程への男女共同参画を促進するために、女性が能力を発揮しやすい環境づくりのための情報提供や啓発を行います。
 

ウ 男女共同参画に向けての社会的気運の醸成

① 男女共同参画に向けての環境を整えるために必要な取組を把握するために、調査、研究し、その成果を県及び市町村の施策へ反映できるよう努めます。

② 男女共同参画について、県民が身近な問題として捉えることができるように広報・啓発活動を進めるとともに、女性の人権に関する相談体制を充実させ、一人ひとりが自らの個性と能力を発揮し、社会参画できるための支援に努めます。

 
エ 働く場での男女共同参画の推進 

① 雇用の分野における男女の均等な機会と待遇の確保を図るために、女性労働者が性別により差別されることなく、かつ母性を尊重されつつ充実した職業生活を営むことができるという「男女雇用機会均等法」の基本理念について労働者、事業者双方に周知するとともに、国の関係機関等と連携しながら雇用実態の把握に努めます。

② 産業構造の変化や地域のニーズに対応した職業訓練や能力開発を実施し、性別にかかわらず個人の能力を発揮できるよう支援に努めます。また、女性が妊娠・出産を理由に不利益を被らないよう啓発活動や相談体制の整備を図ります。

③ セクシュアル・ハラスメントのない安心して働くことのできる職場づくりに向けて、啓発や防止に向けた取組を行います。また、県が県内企業のモデルとなるよう職員に対する研修を実施するなど、率先した取組を進めます。

④ さまざまなライフスタイルや就業ニーズに対応するため、情報技術等を利用した新しい就業環境の整備の促進や新しい就業形態の発展を促すための施策の充実に努めます。

 
オ 仕事と家庭の両立支援

① ライフスタイルが多様化し女性の社会進出が進む中、家庭生活における責任の多くが依然として女性により担われています。今後は、男性のこれまでの働き方を含め、家庭活動の重要性について改めて考える必要があります。男女がともに、子育てや介護に家族としての責任を果たしながら、働き続けることのできる環境を整えます。

② 家庭、職場、地域、学校等が互いに協力しながら、子どもを産み育てやすくするため、保育サービスの質、内容の充実やファミリーサポートセンターの設置、子育て相談など子育て支援策を積極的に進めていきます。

 また、育児・介護休業法の周知を図るとともに、労働者が育児・介護休業を取得しやすく復帰しやすい職場づくりや、仕事と子育て・介護を両立しやすくする各種制度の普及・充実に向けた取組を行います。


カ 男性の女性に対するあらゆる暴力的行為の根絶

① 男性の女性に対するあらゆる暴力的行為の根絶のために、相談窓口の機能強化や相談機関の連携を強化するなど相談体制の充実を図るとともに、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(DV防止法)などに基づき、配偶者等からの暴力的行為への厳正な対応、被害者である女性の保護や自立支援を行います。

② 学校・地域社会におけるセクシュアル・ハラスメントを防止するため、あらゆる機会にセクシュアル・ハラスメントが女性に対する人権侵害であることの啓発を行います。

③ 性犯罪やストーカー行為などの発生を防ぐ環境づくりと被害者である女性への配慮ある対応を強化し、性犯罪対策を推進します。

④ 男性の女性に対する暴力を助長したり、連想させる表現や、過度の性的な表現が各種メディアに多く存在する中、これらの表現が女性の人権を侵害したり、侵害するおそれのあることを周知・啓発します。
 

キ 男女が互いの性を尊重する意識づくり・健康づくり

① 男女互いの性が尊重され、妊娠・出産をはじめ性と生殖に関し、男女それぞれの意見が尊重されることの大切さを啓発します。また、学童期から男女互いの人権を尊重する意識づくりに努めるとともに、妊娠や出産など性についての正しい知識の普及を図ります。

② 女性は、妊娠、出産をはじめ一生を通じて男性とは異なる健康上の課題に直面します。女性の健康をめぐるさまざまな問題について、相談体制を整備するとともに、女性の生涯にわたる健康支援を行います。

 
ク 男女共同参画推進のための教育の充実

① 男女共同参画が生活の中に定着するためには、男女それぞれの人権が正しく認識されなければなりません。学校、家庭、地域における教育や学習の役割は重要であり、それぞれの分野で男女平等を推進する教育・学習の充実を図ります。

 学校においては、人権の尊重や男女平等についての教育の充実を図るとともに、学校内の慣行が固定的な性別役割分担意識を反映して、男女の主体的で自由な活動の選択を制約することがないよう配慮します。

 親やこれから親になろうとする人が、男女共同参画の視点に立った家庭教育を進めることができるよう学習の場を設けます。

 また、教職員や社会教育関係者に、男女共同参画に関する研修や啓発等を行います。

② 主体的に考え、男女共同参画の視点で行動できる人材の育成を図るための学習機会の提供に努めます。また、女性の能力を開発するための支援に努めます。


2 子どもの人権
(1)現状と課題

わが国では、昭和 22年(1947年)に児童福祉法、昭和26年(1951年)には「児童憲章」が制定され、すべての子どもの幸福を図るために児童福祉施策が進められてきました。しかし永らく、子どもは未熟な存在であり保護されるべき客体にすぎないと考えられてきました。

平成6年 (1994年)「児童の権利に関する条約」が批准され、子どもも大人と同じ権利の行使主体であると同時に成長を保障されるべき権利を有すること、そのために必要かつ重要な子どもの最善の利益を確保するため、子どもには意見表明権があることが明らかにされました。

こうした中、本県でも「喜の国エンゼルプラン」や「わかやま青少年プラン」などを策定し、子どもの人権が尊重され、健やかに生まれ育つため、育成環境の整備・支援等のさまざまな施策に取り組んできました。

しかしながら、子どもを取り巻く環境は依然として厳しく、子どもの人権が十分に保障されているとは言い難い状況にあります。例えば、平成3年度に全国の児童相談所に寄せられた児童虐待の相談処理件数は1,171件でしたが、平成13年度は23,274件と10年間で約20倍にまで増加しています。本県においても児童虐待の増加は大きな問題となっており、「児童虐待の防止等に関する法律」が施行された平成12年度の県内の児童虐待の相談処理件数は一挙に前年度の約2倍の160件にのぼり、依然として現在も深刻な状況にあります。

その社会的背景としては、核家族化の進行など家庭環境の変化や地域社会のつながりの希薄化などがあげられ、子育て家庭が親族の援助を受けられなかったり地域から孤立することによって子育てへの不安や負担が大きくなっていること、経済的不安定や離婚などにより家庭そのものが崩壊したり親のストレスが増加するなどさまざまな要因が考えられます。一方、被虐待経験が少年非行などの問題行動や将来の虐待行動につながる例も少なくないと言われており、児童虐待への取組は重要な課題の一つです。

また、近年少年非行についても、低年齢化や凶悪化などをめぐってさまざまな議論がなされています。少年非行を起こす子どもについては、育ってきた環境や抱えている問題はさまざまであり一様に捉えることはできませんが、全体的な特徴として規範意識や人とのコミュニケーション能力が低く、感情や行動をコントロールする力が弱いことが指摘されています。また、自己評価が低く人との愛着関係の形成に支障が生じていることがうかがわれ、これらが相互に関係しながら社会への不適応につながっているという考え方もあり、子どもの人権という観点からもこの問題を捉えていく必要があります。

さらに、インターネットや携帯電話等の普及と利用者の拡大に伴った児童買春等性的搾取の急増、シンナー・薬物乱用のまん延、学校への不登校、体罰・いじめ、「学級崩壊」と言われる現象やひきこもりなど、子どもの人権を侵害する問題はさまざまな形で現れています。

他方、家庭や地域、学校、また行政の取組において、子どもの意見表明権を含む子どもの参加の権利を認め、尊重するという意識は未だ不十分な状況です。子どもは未来の社会を築いていく存在であると同時に、大人と同じく現在の社会を構成する一員です。したがって、子どもたちの意見を行政の諸分野においてどのように受けとめ、対応していくかも課題の一つです。

(2)基本的方向

子どもも大人と同じ人権の享有主体であり、一人の市民として尊重されなければならないことを当然の前提とし、すべての子どもの人権が保障されるとともに、子どもが自分に関わるあらゆることに関し自らの意見を表明し、参加する権利が尊重される社会環境づくりを進めます。

また、すべての子どもが性別、国籍、障害の有無、生まれた環境等にかかわらず、自らをかけがえのない存在であると実感でき、自分の人権の大切さを知ることによってこそ、他者の命の尊さや他人の人権を侵害してはならないという意識

を持つことができると言えます。このような認識のもと、子どもの人権についての教育・啓発を進め、子どもが主体性を持って健やかに成長していけるよう、発達段階に応じた総合的な支援を図ります。

そして子どもの人権が侵害された場合には、速やかにその救済を図り、子どもや家族の支援に努めます。

(3)基本的なとりくみ
ア 児童虐待などへの取組

児童虐待の問題に対しては、専門機関等の連携による個々のケースに応じたきめ細やかな支援をより効果的に実施していきます。また、児童虐待の未然防止のためには、育児負担の軽減や育児の孤立化を防ぐことが重要であることなどからも、家庭や地域、学校等のさまざまな場における子育て支援・健全育成施策を推進し、総合的にこの問題の解決を図ります。

① 児童虐待に対しては児童福祉法及び平成12年(2000年)施行の「児童虐待の防止等に関する法律」により、児童相談所が救済機関として対応しています。前記のように虐待件数が増加していることなどから、児童福祉司・心理判定員など児童相談所(「子ども・障害者相談センター」及び「紀南児童相談所」)における専門職員の充実を図り、児童虐待の早期発見と救済及び保護者へのカウンセリングの充実による児童虐待の防止に努めます。

また、保健・医療・教育・警察など関係機関の連携を強化し、市町村等子どもに身近な地域での児童虐待防止ネットワークづくりを促進するとともに、「和歌山県子どもの虐待防止ネットワーク推進協議会(仮称)」を設立し、児童虐待の未然防止、早期発見・早期対応に努めます。

② 児童虐待や家庭崩壊の増加に伴い、児童養護施設に入所する子どもの数が増加しつつあることから、児童養護施設への心理療法担当職員の配置など職員体制の充実や、プライバシーに配慮した生活空間の確保、各施設で起きた人権侵害や苦情に対応するための施設内第三者機関の設置、自立支援など児童養護施設における子どもの人権の尊重に努めます。

③ 児童虐待などにより、親と暮らすことのできない子どもが家庭環境の中で個別的かつきめ細やかな養育を受けられる点において効果的かつ重要な制度である専門里親及び里親制度の普及、啓発を図ります。

 
イ 子育てしやすい環境づくり

乳幼児期は、母親や父親など特定の人に対し、人間への基本的信頼関係と愛の感情を育てていく基礎となる強い愛着関係を形成するとともに、複数の人々との関わりを通じて情緒を発達させ人格を形成していく時期であり、この時期における子育てしやすい環境づくりに取り組みます。

① 育児に不安や悩みを持つ親が増えていることから、親子が集う場の確保、子育てボランティアや子育てサークル活動の促進など、地域全体で子育てを支援する環境づくりを推進するとともに、子育てに関するさまざまな情報の提供を図ります。また各種相談機関の機能を強化させ、個々の相談により的確に応じる体制の充実を図ります。

② 多様な保育サービスの充実や、会員間で相互援助を行うファミリーサポートセンターの整備など、育児と仕事の両立への支援を図ります。

③ 休日夜間急患センターにおける小児科の診療体制の充実や、小児科医が24時間常駐する病院の確保など、小児救急医療体制の整備を進めます。

④ 企業の育児休業制度整備や看護休暇制度導入等、職場環境の整備を進め、労使とも子育て中の人を支援することに積極的に取り組む施策を推進しま す。

 
ウ 子どもの健全な成長を促す環境づくりと子どもの人権についての教育・啓 発

学童期は後の成長の基礎となる多様な知識経験を蓄積する時期であり、また他の人との相互関係の中で社会 性を身につけていきます。思春期は子ども期からさらに大人に成長していく移行期であり、自分らしさを模索する時期でもあります。そのため子どもたちが主体性を持って健やかに成長していける環境づくりに取り組みます。

① 学校や地域において、子どもの意見表明権と参加の権利が尊重されるよう教職員、民生児童委員はもちろんのこと、県民に対し「児童の権利に関する条約」など子どもの人権についての教育・啓発活動を行います。

② 校内暴力やいじめ、不登校、ひきこもりなどの解決やシンナー・薬物依存等の防止・救済のため、学校へのスクールカウンセラー等の配置を進め、また電話相談等による教育相談体制の充実を図ります。

③ 子どもが命の大切さ、それぞれの個性の尊重及び自分と他人の人権の重要性について十分理解できるよう人権教育を充実させるとともに、一人ひとりの子どもが基礎的・基本的な学力を身につけることができるよう少人数学級編制など学校教育における人的物的条件の整備に努めます。

④ 「遊び」は、子どもが他者とのかかわりや人間関係を学ぶ場であると同時に、「遊び」を通して自ら考える力や身体的能力を高める場でもあります。このため、さまざまな自然体験活動の機会の充実に努めるとともに、地域の児童館、社会教育施設、学校施設等の活用などにより、子どもがのびのび遊べる場や交流の場の充実を図ります。

⑤ 児童買春・性的いたずら等を含め、犯罪被害を受けた子どもと家族の悩みや問題に対して、警察における少年問題に関する専門組織である「少年サポートセンター」や、学校、児童相談所等関係機関が連携し支援活動を進めるとともに、こうした犯罪の防止に努めます。

⑥ 図書、ビデオ、インターネット等による有害情報などから子どもを守るため、関係機関等による環境浄化の取組を一層強化し、非行が芽生えない環境づくりを推進します。また、非行に陥ってしまった子どもに対しては、社会適応能力を高め、社会的自立を果たすため、本人や家族への支援に努めるとともに、このような子どもたちの更生が図られる社会意識の醸成に努めます。

 
エ 子どもの人権救済機関の設置

子どもの人権が侵害された場合、被害者である子ども自身は自ら必要な対応をとることが困難で、どこに相談すればよいのかさえわからないことが少なくありません。

そこで被害者である子ども自身や親、関係者からの被害相談・通告を受け、調査や子どもの人権救済のための活動を行うことができる第三者機関の設置なども視野に入れながら、有効な救済制度の検討を進めます。

 
3 高齢者の人権
(1)現状と課題

わが国は、平均寿命80年という世界最長寿国となる一方、出生率の低下による少子化傾向も加わり、人口の高齢化は急速に進行し、本格的な少子・高齢社会を迎えようとしています。

本県における高齢者比率(全人口に占める65歳以上人口の割合)は、平成6年には17.1%でしたが、平成16年には22.8%へと上昇しており、近畿府県では最も高い比率になっています。特に山間過疎地域において高齢者比率は高くなっています。今後も高齢化は進むことが予測され、平成19年には県民の約4人に1人が高齢者になると見込まれます。

超高齢社会を迎える中、高齢者を一括りにした偏見や固定観念、年齢制限等による就業機会の不足や、年齢を重ねることによる高齢者自身の身体的・精神的変化などにより、高齢者の経済的な自立や社会参加が困難となる場合があります。

また、家族の介護力の低下や介護期間の長期化の傾向もあり、介護を必要とする高齢者を抱える家族の心身の負担は、重くなりつつあります。加えて、高齢者に対する虐待や介護放棄、財産・金銭面での権利侵害などの問題も提起されています。

高齢者の方々が持つ豊富な経験と知識が社会の貴重な財産として活かされ、すべての高齢者が社会を構成する一員として尊重されることが大切です。

 本県においては、いつまでも健康で長寿を喜びあえる社会、誰もが住んでみたい活力ある和歌山県の実現を目指して「わかやま長寿プラン2003」を策定し、高齢者保健・福祉の向上や介護保険制度の円滑な実施を図っています。

今後も、高齢者が住み慣れた地域で生きがいを持ち、優れた知識・経験等を活かして社会参加し、安心して自立した生活を送ることができる社会づくりを進めていく必要があります。
 

(2)基本的方向

高齢者の人権を確立するためには、人を年齢で決めつけることなく一人ひとりの多様性を認め合い、すべての人が健康状態や年齢に関わらず社会を構成する一員として尊重されることが重要です。

また、高齢者が培ってきた貴重な経験や知識を活かすことにより、社会に貢献できる立場にあるということについて、高齢者自身の理解が深まるよう広報啓発に努めるとともに、高齢者が家庭・地域・職場等の日常生活において、存在感、充実感を得られるような取組やバリアフリー化が必要です。

さらに、手助けが必要となった状態であっても人としての誇りを保持し、適切な介護サービスを受けられるなど、地域で安心して暮らし続けられるように、地域のみんなで支え合う体制づくりをNPO・ボランティア団体等と連携しながら進めていく必要もあります。

このため、高齢者の人権尊重と意識の啓発、世代間の理解の促進、生きがいや自立に通じる就労の機会の確保、ボランティア活動等の地域社会活動への参加促進、生活環境の整備等、総合的に諸施策を推進します。

また、介護サービスの充実、十分な情報提供と相談体制の確立、権利擁護制度の活用などを推進し、高齢者の人権に配慮した自立支援を促進します。
 

(3)基本的なとりくみ

ア 高齢者の人権尊重と意識の啓発

① 高齢者の人権に対する理解と長寿社会への対応について県民の関心を高めるため、さまざまな機会を通じて広報啓発に努めます。

② 高齢者はいきいきと暮らし、社会に貢献することを望まれているため、老人クラブ等における人権学習や啓発活動への取組を推進し、高齢者自身の人権意識の高揚を図ります。

 
イ 世代間の理解の促進

多くの人生経験を積んだ高齢者と接することは、特に人格形成期の子どもたちの成長過程や環境を豊かにします。子どもの頃から、学校や家庭の中で、高齢者を家族や社会の大切な一員として理解し、敬愛する気持ちを育てることが大切です。そのため、高齢者への理解を深める副読本を作成し、学校授業での活用を進めます。また、課外活動などにより、地域における世代間の交流活動を促進します。
 

ウ 高齢者の人権を尊重したサービスの推進

高齢者福祉施設や介護サービス提供事業所で働く人たちは、専門的な知識や技術とあわせて、高い倫理観が必要です。そのため、高齢者の人権尊重やプライバシーの保護についての研修を積極的に行うよう指導するなど、介護支援専門員(ケアマネジャー)や社会福祉士、介護福祉士、ホームヘルパー等の資質の向上を図ります。また、施設においては、入居者のプライバシーに配慮したサービスの向上と個室化を中心とした居住環境の整備を促進します。

 
エ 十分な情報提供と相談体制の充実

高齢者とその家族がいつでも必要な時に、適切なサービスを選択できるように、介護保険やその他の高齢者保健福祉サービスのわかりやすい情報提供に努めます。

また、当事者間では解決困難な福祉サービスに関する苦情等に対しても、相談、調査、あっせん等を行う体制を整備し、適切な苦情解決体制の充実を図ります。

 
オ 認知症高齢者に対する総合的な施策の推進

① 判断能力が不十分なことにより日常生活に不安のある高齢者の生活を支援するため、福祉サービスの利用援助や金銭管理の援助等の地域福祉権利擁護事業を推進するとともに、成年後見制度の利用を促進し、地域で自立した生活を送れるよう支援します。

② 認知症に対する正しい理解を促進するとともに、適切な介護についての知識や技術の普及啓発に努めます。

③ 認知症高齢者が、家庭的な環境の中で、より安心して生活できるグループホームの整備を促進します。


カ 高齢者の生きがい対策の推進

① 生涯学習を通じて得た知識や技能を意欲や能力に応じて地域社会に活かせるように、ボランティア活動への参加を促進します。

② シルバー人材センターの拡充を促進するなど、高齢者が長年培ってきた豊富な知識や経験、能力を活かせる就労機会の提供に努めます。


キ 高齢者を介護する家族への配慮  

高齢者の虐待につながりやすい状況として、介護による身体的・精神的苦痛やストレス、不安などが報告されています。高齢者を介護する家族が過重な負担を強いられることのないよう、介護保険、その他の高齢者保健福祉サービスの利用促進を図るとともに、家族介護支援対策を推進し、家族や社会全体で高齢者の介護を支え合える環境づくりを進めます。

 
ク 地域ケア体制の構築とボランティア等による取組の促進

高齢者が安心して住み慣れた地域で暮らすことができるように、地域住民やNPO・ボランティア団体の自主的な活動を促進し、地域全体で高齢者を支える取組を推進します。また、地域の多様なケア機関をネットワーク化し、必要な情報の共有を図り、高齢者や家族への効果的なサービスの提供を促進します。

 
ケ 生活環境の整備

「高齢者・身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(ハートビル法)や「高齢者・身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通バリアフリー法)、「和歌山県福祉のまちづくり条例」等に基づき、住宅、建築物、公共交通機関、歩行空間など生活空間全体のバリアフリー化を促進し、すべての人が安心して生活できる環境整備を進めます。

また、高齢者が安全かつ安心して生活することができるよう、福祉施策と住宅施策の連携を図りながら、高齢者の日常生活に配慮した居住空間の整備を促進します。

※ 人権施策基本方針に用いている「痴呆性高齢者」の表現は、「認知症高齢者」に置き換えて記載しています。


4 障害者の人権
(1)現状と課題

障害者の「完全参加と平等」をテーマとした昭和56年(1981年)の「国際障害者年」や、昭和58年(1983年)から平成4年(1992年)における「国連障害者の 10年」などの取組を通じて、障害者を特別視するのではなく、一般社会の中で普通に生活が送れるような条件を整え、共に生きる社会こそがノーマルな社会であるという「ノーマライゼーション」の理念が次第に定着しつつあります。

わが国においても、「リハビリテーション」と「ノーマライゼーション」の理念のもと、取組が行われてきました。     

平成5年 (1993年)に「心身障害者対策基本法」が「障害者基本法」に改正され、障害者の自立と社会参加の一層の推進を図るとともに、精神障害者も福祉施策の対象としての「障害者」と定義づけられ、障害者基本法の対象となりました。平成12年(2000年)には、利用者の立場に立った社会福祉制度の構築や地域福祉の推進を柱とした、社会福祉基礎構造改革が実施され、「社会福祉事業法」の「社会福祉法」への改正等が行われ、新たな福祉施策の枠組みがつくられました。平成15年(2003年)には、障害者福祉の分野でも、利用者本位の考え方に立った自己選択、自己決定を尊重した利用契約に基づく支援費制度が導入されました。

また、平成14年 (2002年)12月に、障害者の社会への参加、参画に向けた施策の一層の推進を図るため、新たな「障害者基本計画」が策定されました。

本県では、障害者の社会への完全参加と平等を実現するため、昭和57年(1982年)に「障害者にかかる和歌山県長期行動計画」を、平成6年(1994年)には、その後継計画として「紀の国障害者プラン」を策定しました。また、平成10年(1998年)には「紀の国障害者プラン実施計画」を策定し、総合的に障害者施策を推進してきました。

しかし現状においては、まだまだ建物の段差等があり自由に移動することができない、生活情報などを十分に入手できない、働く場が少ないなどさまざまな障壁があります。障害者や障害そのものに対する誤った認識や偏見による心の障壁も残っています。これらの障壁が障害者の就労や文化活動、地域社会への参加などを困難にしています。また、福祉施設や医療機関において、身体拘束や虐待・暴力などの人権侵害や、障害者の財産権を侵すような事例も発生しています。

とりわけ、精神障害者については、社会からの偏見や差別が根強く、また精神科病院における閉鎖的な処遇環境のもとで人権侵害事例が生じてきました。現在、特に精神障害者の人権に配慮した適切な施策が求められています。

平成16年 (2004年)には、平成25年(2013年)までの10か年を期間とする、新たな「紀の国障害者プラン2004」を策定し、障害のある人もない人も、社会の一員として互いに人権を尊重し合う共生社会の実現を目指し、地域での自立生活や社会参加に向けた施策の一層の推進を図ります。

障害者は自立した主体的存在です。このことが損なわれることのないよう、障害者施策を進めていく必要があります。

 
(2)基本的方向

障害者の社会への「完全参加と平等」の実現のため、リハビリテーションとノーマライゼーションの理念のもと、障害のある人もない人も、すべての人がお互いの人格と個性を尊重し、支え合いながら共に生活できる社会を実現する必要があります。

しかし、社会のさまざまな障壁が障害者の社会参加と自立を阻んでいます。地域や日常生活における障壁のバリアフリー化や、障害者に対する心のバリアフリー化を進めていきます。また、障害者が地域の中で自立し安心した生活を送ることができるよう、在宅サービスや保健・医療体制の充実、権利擁護の推進を図ります。

また、障害者の社会参加と自立を図るために、教育を通じ障害児一人ひとりの能力や個性、可能性を伸ばしていくとともに、職域の拡大や職業訓練などにより雇用・就労対策を推進します。

精神障害者については、社会参加と自立を図るため、社会的入院の解消に向けた取組や生活支援などを行うとともに、入院患者の人権擁護と安全で快適な入院生活を確保していきます。

 
(3)基本的なとりくみ

ア 心のバリアフリー化の推進

① すべての人が相互に人権を尊重し、支え合う共生社会の実現に向け、県民が障害者や障害そのものに対する理解を深められるよう、啓発・広報活動を推進します。

② 地域や学校などにおいて障害のある人とない人の交流の機会の拡大に努め、相互理解が深まるよう取組を進めます。また、学校教育や社会教育において教育・啓発活動を進めます。

 
イ 社会参加の促進と能力発揮支援

① 特殊教育から特別支援教育への移行を進め、学習障害、注意欠陥/多動性障害、高機能自閉症も含め、障害児がその持てる能力を発揮し、将来、社会的・職業的に自立した生活を営むことができるよう、一人ひとりのニーズを的確に把握し、それをもとに適切な支援教育を行います。

障害の重度・重複化、多様化の状況やそれぞれの地域特性を踏まえ、障害児の多様なニーズに応えるため、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した相談・支援を行う体制の充実を図る必要があります。盲・ろう・養護学校などの専門機関が地域の特別支援教育のセンター的な役割を果たすことのできるよう体制の整備を図ります。

また、地域における学校卒業後の学習機会の充実のため、生涯学習を支援していきます。


② 雇用・就労は、障害者の社会参加や自立のためにも、また自己実現を図るためにも重要です。障害者の職域の拡大及び職業訓練の充実を図るとともに、民間企業への就労を支援するため、就職促進相談員を配置し、必要に応じ職場定着のための相談援助を実施します。

また、就業面と生活面の一体的な支援を行い障害者の雇用を推進します。一方、一般就労が困難な人に対しては、授産施設等の福祉的就労の場の整備や第3セクター方式による重度障害者雇用の場の活用に努めます。

企業等において、障害を理由とした雇用差別などの人権侵害を受けることがないように努めるとともに、障害者の雇用率の向上に向けた取組を進めます。


③ 「高齢者・身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(ハートビル法)や「高齢者・身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通バリアフリー法)、「和歌山県福祉のまちづくり条例」等に基づき、住宅、建築物、公共交通機関、歩行空間など生活空間全体のバリアフリー化を促進し、すべての人が安心して生活できる環境整備を推進します。

障害者一人ひとりのニーズに対応した適切な設備・仕様を有する障害者向けの公共賃貸住宅の供給を図るとともに、バリアフリー化された住宅ストックの形成、住宅のバリアフリー化に対する助成を実施します。


④ IT等の新しい情報技術を活用した情報のバリアフリー化の推進やさまざまなコミュニケーション手段を確保し、情報・コミュニケーション支援体制の充実を図ります。
 

ウ 障害者の主体性の尊重及び地域での自立生活支援

① 障害者やその家族からの財産・権利などに関わる問題について弁護士等が対応する「ハートフル110番」など人権擁護のための相談体制の充実を図るとともに、障害者一人ひとりの権利が守られ、安心して日常生活を送れるよう地域福祉権利擁護事業や成年後見制度の利用促進に努めます。 

自己選択・自己決定など利用者本位の考え方にたった福祉サービスが提供されるよう、福祉サービスに関する苦情解決体制の充実や評価制度の整備などを図り、サービスの質の向上に努めます。

② 障害者が地域で自分らしさを活かして、自立して生活できるよう支援するため、生活の場となるグループホーム等の整備を進めるとともに、ホームヘルプサービス等の在宅サービス事業の充実を図ります。また、外出のための移動支援を推進します。

③ 施設の整備においては、地域的なバランスに配慮しながら、障害者のニーズに対応した必要な施設の整備を図っていくとともに、施設におけるプライバシーの確保や生活の質(QOL)を高めるための整備を図ります。

④ 障害の早期発見や治療、機能回復訓練により、障害者に対する適切な保健サービスの提供を進めます。また、保健・医療・福祉の連携による取組を進めます。

 
エ 精神障害者に対する自立の支援と社会参加等の促進

① 精神障害者に対する誤解や偏見が、精神障害者の社会での自立や就労などを妨げています。精神障害者や精神障害について正しい知識の普及・啓発を行うとともに、ボランティア活動などを支援することにより交流の場づくりを図ります。

② 県内のすべての精神科病院に人権擁護委員会を設置し、入院している精神障害者の人権擁護と安全で快適な入院生活を確保していきます。また、精神障害者やその家族、あるいは弁護士等病院外の委員の参加による人権擁護委員会の透明性の確保などを通し、精神障害者の人権擁護を図ります。

③ 精神障害者の入院治療については、人権尊重を基本とした、適正な医療の提供と病院における処遇の向上に努めます。また、社会的入院者の退院と地域社会での生活支援を促進し、精神障害者の自立と社会参加を進めます。

④ 退院後、地域において生活する精神障害者をより身近な地域できめ細かく支援していく必要があります。保健所、市町村、福祉機関、医療機関などの関係機関が連携し、相談や訪問指導などを行います。また、社会復帰施設へのあっせん、調整、在宅福祉事業の適切な提供を行うとともに、通院医療の促進を図るなど必要なサービスを提供していきます。


5 同和問題
(1)現状と課題

 昭和40年(1965年)の「同和対策審議会答申」は、その前文で「いうまでもなく同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法に保障された基本的人権に関わる課題である。」とし、その早急な解決こそ「国の責務」であり、「国民的課題」であると位置づけました。

この答申の理念に基づき、国において、昭和44年(1969年)に「同和対策事業特別措置法」が制定され、その後33年間、特別立法による同和対策事業が推進され幾多の成果をあげてきました。

平成8年 (1996年)の「地域改善対策協議会意見具申」は、それまでのまとめとして、同和問題を人権尊重の国際的な潮流の中に捉え、早期解決に向けた今後の方策の基本的在り方を示しています。この中で、「同和問題は多くの人々の努力によって、解決に向けて進んでいるものの、残念ながら依然としてわが国における重要な課題」であり、「同和問題など様々な人権問題を一日も早く解決するよう努力することは、国際的な責務である」との認識を述べたうえで、今後の方向として、「同和問題の解決に向けた今後の取組を人権に関わるあらゆる問題の解決につなげていくという、広がりを持った現実の課題である」と展望しています。そして、このような基本認識のもとで、同和問題の解決に向けた今後の主要な課題として、依然として存在している差別意識の解消、人権侵害による被害の救済等の対応、教育、就労、産業等の面でなお存在している較差の是正などがあげられています。

本県では、昭和 23年(1948年)に、国に先駆けた独自施策として「地方改善事業補助制度」を創設し、基本的人権の尊重と同和問題の一日も早い解決を目指し、実態的差別と心理的差別の解消に努めてきました。昭和44年(1969年)の「同和対策事業特別措置法」施行後はさらに、市町村をはじめ県民と一致協力して総合的かつ計画的に同和対策を推進して、大きな成果を収めてきました。

特に、住環境整備については、国、県、市町村が一体となり、地域住民の理解と協力を得ながら推進してきた結果、住宅、地区道路、下水排水路等の劣悪な状況は大きく改善されてきました。

また、教育や就労については、地域住民の生活基盤に関わる問題であるとの認識のもと、積極的に取り組んできた結果、教育の機会均等や基礎学力の向上等について大きな成果をあげるとともに、若年層の就労等にも一定の成果をあげてきました。

さらに、差別意識の解消に向けた啓発についても、「県民みんなの同和運動」を展開するなど社会教育とともに積極的に推進し、県民の同和問題に対する基本的理解と認識は深まり、人権意識の高揚も進んできました。

このように、同和問題は多くの人々の努力によって解決に向かってはいるものの、今なお結婚等に関する差別事件や、最近では特にインターネット上での差別落書き等の匿名性と拡散性を特徴とした人権侵害が発生しています。

また、脆弱さが残る同和地区の生活・経済基盤などにより、今なお教育や産業・就労をはじめとする解決しなければならない課題も残されています。

さらには、企業等に対して不当な要求や不法な行為を行い、結果的に同和問題の解決を妨げている「えせ同和行為」の問題も残されています。

同和問題における結婚差別、就職差別、並びに不合理な地価の較差に代表されるような同和地区の土地への差別(いわゆる土地差別)などの背景には同和地区、地区住民、地区出身者を避けようとする根強い意識が潜在していると考えられ、それぞれの課題を解決するための努力が必要です。

(2)基本的方向

同和問題の早期解決を図るための特別対策は、大きな成果をあげ、平成8年(1996年)の「地域改善対策協議会意見具申」により、概ねその目的が達成されたとして、「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」は、平成14年(2002年)3月をもって失効しました。

しかしながら、同和行政は行政の責務として同和問題の早期解決に向け取り組んできたものであり、また、同和問題に関する人権侵害が今なお発生していることから、一般施策とともに実施された特別措置法の失効のみをもって終了されるものではありません。

今後、同和問題解決のための施策は、同和問題を人権問題という本質から捉え、現在までの成果と現状を踏まえつつ、さまざまな課題に対し、人権尊重の視点に立った取組として実施していくことが重要です。

社会構造や住民の意識が多様化している中で、地域により抱える問題も多様化していることから、それぞれの地域ごとにその課題に応じたまちづくりを進め、個人の自己実現を図るという観点に立った取組を総合的に推進していきます。

また、「依然として根深く存在している」差別意識の解消と、人権意識の高揚のための教育啓発活動に積極的に取り組みます。

しかし教育啓発活動のみでは、人権侵害(差別、虐待など)を防止することは難しく、悪質な差別などの人権侵害や差別助長行為には法的な規制が必要であり、その中で人権侵害は社会的に許し難い行為であることを、明確に意思表示されることが重要です。

教育啓発と悪質な人権侵害等への法的な規制は、人権侵害防止の基本的な施策ですが、それにも関わらず発生してくる人権侵害の被害の救済も重要です。

(3)基本的なとりくみ

ア 教育・啓発の一層の推進

① 家庭は、同和問題を真剣に話し合える大切な学習の場であり、同和問題解決のカギは家庭にあると言えます。今後とも広報紙やマスメディア等を活用し、情報の提供を行うなど啓発活動を推進します。また、家庭教育に関する親の学習機会の充実など支援に努めます。

② 学校教育では、幼児期から一人ひとりの児童生徒の発達に応じ、人権感覚を育む学習活動の充実と、人権意識の高揚を図り、主体的に考え行動し課題の解決に取り組む態度を養います。

また、学力面に課題のある子どもに対しては、学校が家庭、地域と連携を図り、基礎的・基本的な学力を身につけられるように努めるとともに、進路指導の充実を図ります。

③ 社会教育などを通じて、県民の人権意識を高揚し、同和問題についての認識を深めるための教育・啓発活動を推進します。

また、地域における指導者の充実を図るとともに、住民が自ら進んで学習活動に取り組めるよう、地域の実情に即した学習機会の充実に努めます。

④ 職場の指導者の養成と資質の向上を図り、明るく働きやすい職場づくりが進められるよう啓発に努めます。また、企業や各種団体において、同和問題についての理解と認識を深めるための系統的、計画的、継続的な研修ができるよう指導に努めるとともに、えせ同和行為の根絶に向けても、粘り強い啓発活動に取り組みます。

⑤ 性別・年齢・職業などが違うさまざまな人々が、お互いを尊重し合い、共に地域をつくっていけるよう、さまざまな視点に配慮したきめ細かな啓発活動を展開するよう努めます。

⑥ 県民の理解と認識が一層深められるよう、人権啓発センターや関係機関・団体等が連携し、内容・手法等に創意工夫をした啓発活動を推進します。

 
イ 産業の振興・雇用の促進

① 企業の自立意欲を高め、独自の生産、販売、サービス提供手法の開発や内容の質的向上など中小企業振興を図ります。

② 農林漁業について、農林漁家の経営安定を図るため、高品質化、省力化を図りつつ、特に施設園芸の導入や経営の複合化を推進し、小規模農林漁家の自立経営に向けた取組を支援します。

③ 企業等に対して同和問題についての正しい理解と認識を深めるための啓発を行い、本人の資質、能力に関係のない理由による不利益がないよう、職業選択の機会均等を図ります。

 
ウ 福祉・保健衛生の充実

① すべての人が自分のライフスタイルを選択することができ、明るく、幸せで、生きがいを持って住み続けられる地域社会の形成のため、子育て支援をはじめ高齢者や障害者への支援など、個々のニーズに応じた福祉サービスの充実に努めます。

② 少子高齢化を踏まえた健康増進や衛生についての普及・啓発や、生活習慣を重視した健康づくりを総合的に推進し、地域住民の健康の保持及び増進に努めます。

③ 隣保館については、同和問題の解決という本来の目的を踏まえたうえで、地域社会全体の福祉の向上や人権啓発の住民交流の拠点となるコミュニティセンターとしての役割が期待されており、その活動を支援します。

 
エ 生活環境等の整備

これまでの取組により、生活環境については大きく改善されてきたところですが、今後においてはすべての人が住み慣れた地域で、また、安全な生活環境の中で安心して暮らせることが大切です。このため、市町村が行う、周辺地域と一体となった、住民の主体的な参加による、今日的視点での課題意識に基づいた人権が尊重されるまちづくりを支援します。

 
オ 差別事象への対応と差別による被害者の救済

① 同和問題を理由とする結婚差別、就職差別、インターネット上の差別落書きなど、悪質な事象が発生した場合は、市町村と連携した差別事件処理体制の中で、適切な解決を図ると共に、関係者に対し正しい認識と理解を深めるための啓発活動を行います。

② 結婚差別、就職差別、インターネット上の差別落書きなどで、悪質なケースについては法的な規制を国に求めていきます。

③ 人権侵害(差別、虐待など)の被害を救済する機関の設置を国に求めるとともに、国や市町村と連携し被害者の救済を迅速に行います。


6 外国人の人権
(1)現状と課題

交通手段や情報通信技術の急速な進展により、人、モノ、情報の交流が国境を越えて活発化し、社会、経済、文化の面において、国際的な相互依存の関係が深まる中、定住する外国人は年々増加しています。

日本社会では、在日韓国・朝鮮人などに加えて、1980年代以降、インドシナ3国などから難民として来た人々や国際結婚による定住者、また、アジア各地や中南米から来日した外国人労働者など、いわゆるニューカマーと呼ばれる人々が増加し、民族、文化、宗教的にますます多様化の様相を呈しています。

本県の外国人登録者数も平成5年末には39か国、6,044人から平成15年末には67か国、7,135人と増加しており、私たちは、学校や職場だけではなく、地域社会における日常生活のさまざまな場面で、外国人と接する機会が増えてきています。

平成7年 (1995年)に日本が批准した「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(翌年から日本国内において効力発生)では、人種的相違に基づく優越性のいかなる理論も科学的に誤りであることを明記しており、また、日本国憲法が規定する基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみを対象と解されているものを除き、日本に在留している外国人に対しても等しく及ぶものとされています。

しかし、地域社会では、文化(特に言語、宗教)、習慣、価値観の相違による理解不足などから外国人に対する偏見や差別が生じています。特に、日本と朝鮮半島をめぐるさまざまな歴史的経緯から、日本において永住者として生活せざるを得なかった在日韓国・朝鮮人に対する正しい理解と認識は、未だ十分とは言えない面があります。

また、就労の場では、特にニューカマーの人々が、賃金や労働時間などの点で日本人に比べて不利な条件で雇用されるなどの問題も起こっています。

さらに、定住外国人の公務員への採用や地方参政権の付与に係る国籍要件も問題視されてきています。

本県では、平成 10年(1998年)に「和歌山県国際交流センター」を設置、また、平成15年(2003年)に策定した「和歌山県国際化推進指針」に基づき、国際化社会に対応した施策を推進するとともに、外国人に対する偏見や差別を解消するための教育・啓発に努めているところです。

今後も、同じ地域に暮らす住民であるとの視点から、外国人も地域社会の一員として人権が尊重され、安心して生活できる共生社会を構築していく必要があります。
 

(2)基本的方向

国籍や民族に関わらず地域に暮らす住民の一人として外国人も人権及び基本的自由の平等な享有又は行使が保障されているとの認識を深めるなど、国際化社会にふさわしい人権意識を育むことが重要です。

また、日常生活では、外国人を特別視せずに、文化、習慣、価値観等の違いを尊重するとともに、就労の場においても、日本人と平等に扱われ、さらに能力が十分に発揮されるなど、外国人が偏見や差別を受けることなく、地域社会の一員として、いきいきと安心して生活できる社会づくりも大切です。

こうした認識に立ち、外国人の人権尊重のための教育・啓発活動や情報提供、相談事業の充実など、外国人が安心して暮らせる環境づくりを、外国人からの意見を聴くとともに、民間団体等とも連携を図りながら推進します。

また、企業における外国人の適正な雇用の促進や定住外国人の地方自治への参画にも取り組む必要があります。

   
(3)基本的なとりくみ

ア 人権尊重のための教育・啓発活動の充実

① 文化、習慣、価値観の違いなどから生じる外国人に対する偏見や差別をなくすため、学校や行政・各種団体が行う教育・学習や地域交流など、さまざまな機会を通じて互いの理解を深めます。

さらに、在日韓国・朝鮮人を取り巻く歴史的経緯や環境について、正しい理解と認識のための教育・啓発に努めます。

② 外国人の人権が尊重される社会をつくるためには、一人ひとりが暮らしの中の問題として身近なところから取り組むことが必要なことから、人権啓発センターなどにおいて、セミナーやワークショップなど、関係団体等と連携しながら啓発活動を展開します。

 
イ 情報提供、相談事業の充実

① 外国語による生活ガイドブックや情報誌の作成、道路標識や公共施設等での外国語併記をさらに進めるとともに、外国語による施設の利用方法や交通アクセスの情報提供に努めます。

② 地震や台風等の災害に関する情報について、緊急時だけでなく普段から必要な情報の提供に努めます。

③ 和歌山県国際交流センターを拠点に、民間団体等と連携しながら、外国人への生活に関する情報の提供に努めるとともに、日常生活におけるさまざまな問題の相談窓口となれるスタッフの拡充や関係機関とのネットワークの形成を進めるなど、相談事業の充実に努めます。

 
ウ 児童生徒の教育環境の整備

日本語教育が必要な外国人の児童生徒が通学する公立小中学校への指導者のきめ細かな配置に努めるなど、外国人の児童生徒が安心して勉学に励むことができる環境づくりを進めます。  

 
エ 医療・保健、福祉等の充実

外国人が健康で安心して生活を送ることができるように、外国語に対応できる医療機関の情報提供や緊急時の医療機関との連絡調整など、医療・保健について利用しやすい環境、支援体制の整備を推進します。また、定住外国人が、福祉に関する情報について容易に得られる仕組みを整備する一方、国民健康保険・国民年金の未加入者とならないよう制度の周知に努めます。

 
オ 適正な雇用の促進

県内で仕事を求める外国人のために、労働局等関係機関と連携を図りながら相談体制の充実に努める一方、民間企業において日本人と平等に扱われないなどの問題が生じないよう雇用主等に対する指導や啓発などを行うことにより、適正な雇用を促進します。

 
カ 定住外国人の地方自治への参画

① 幅広い県民の意見を県政推進に活かしていくためには、多様な文化的背景や考え方を持つ定住外国人の意見も求める必要があるため、審議会等の委員の選任にあたっては、審議会等の設置目的を踏まえ、定住外国人も含めた幅広い人材の登用に努めます。

② 県職員への採用について、これまでも国籍条項の見直しを行ってきたところですが、今後も公務員の任用に関する基本原則を踏まえつつ、引き続き職務の内容と国籍の必要性を検討し、適切に対処します。


7 感染症(ハンセン病、HIV等)・難病患者等の人権 
(1)現状と課題

現在、さまざまな感染症や難病等の病気を抱え暮らしている方々がおられ、患者や家族の中には、治療等の負担だけでなく、病気に対する誤った知識や理解不足による偏見や差別を受けることがあり、肉体的、精神的な負担が大きくなっています。

ハンセン病は、わが国では特殊な病気として扱われ、「癩予防法」が明治40年(1908年)に制定されて以来、施設入所を強制する隔離政策がとられ、患者は行動や住居、職業選択、学問、結婚の自由など人間としての権利を奪われてきました。さらに、強い偏見や差別は患者だけでなく家族にまで及び、なかには患者が家族から絶縁されるという状況さえありました。この強制隔離政策は、その後治療薬ができた後も、「らい予防法の廃止に関する法律」が制定された平成8年(1996年)まで続けられました。

このように、全国的に厳しい状況がある中、本県では昭和32年(1957年)ハンセン病専門の相談所として設立した「和歌浦健康相談所」が中心となり、施設への隔離ではなく患者と家族の立場に立った在宅療養を支援するなど、「救らい県」としての取組を進めてきました。

また、元患者らが長年の国の隔離政策が誤りであり、多大の被害を被ったとして提訴した「らい予防法国家賠償請求訴訟」に対し、平成13年(2001年)5月、熊本地裁で国の責任を認めた原告勝訴判決がなされました。これを契機として、国はじめ都道府県が、患者、元患者の方々への謝罪を行い、これらの方々の名誉の回復と、社会復帰のための施策を進めています。

しかし、これまでの政策や病気に対する誤った知識により、未だに偏見が存在しています。また、療養所入所者の多くが、長い間の隔離により家族や親族との関係を絶たれていたり、高齢化や病気が完治した後も障害が残っていることにより、療養所に残らざるを得ず、社会復帰が非常に困難な状況にあります。さらに、遺骨の里帰りについての課題も残っています。

HIV感染者及びエイズ患者については、わが国では昭和60年(1985年)、安全対策を怠った非加熱性血液製剤によるHIV感染被害である薬害事象によりエイズ患者が表面化しました。HIV(ヒト免疫不全ウィルス)は非常に感染しにくいウィルスですが、当時、簡単に感染し、発病すれば必ず死亡するという誤った知識が広がり、患者や感染者等への差別が発生しました。

近年、わが国においてもHIV感染者は増加の傾向にあり、感染原因については性行為によるものが大部分を占めています。また、感染者の年齢構成を見ると、特に10代、20 代の若者がその半数近くを占める状況がある中で、母子感染を防ぐ点からも、若い世代がエイズの疾病概念や感染経路、そして何よりもその予防法を正しく知ることが重要であると言えます。

現在HIVに対しては、免疫の低下を抑え、エイズの発症をくい止める抗HIV薬が効果をあげており、近い将来特効薬やワクチンの発見も期待され、本県でも県内2か所に拠点病院を設置し医療体制の整備を進めています。しかしながら、今でも人目が気になるということでエイズ相談や検査を受けられないことや、職場に病名がもれ、差別を受けたり、職場を追われてしまうということを恐れて、感染していることや患者であることを隠さなければならないという状況があります。

また、近年の医療の進歩や衛生水準の向上により、コレラ、赤痢及び腸チフスなど多くの感染症が克服されてきましたが、一方で新たな感染症の出現や既知の感染症の再興、さらに、海外への渡航者の増加などによる輸入感染症等の問題もあります。

難病は原因がわからず、治療法も確立されておらず、生涯にわたって治療・闘病を要します。また、経済的な問題だけでなく、介護等に著しく労力を要するため家庭の負担が重く、精神的な負担が大きくなることもあります。難病は種類も多くさまざまな病気の特性があり、個人差があるため、一見して病気とわかるものもあれば、外見は全く健康な人と変わらないこともあります。

就労については、重症患者など多くの患者が働くことができず、また軽症の人や症状が回復した人で意欲があっても、治療や療養の制約があるため思うように働くことができず、安定した収入のある仕事につけないこともあります。

また、患者の中には、病気に対する無理解により、心ない言葉をかけられたり、就労の機会が失われることや、本人や家族が結婚差別を受けるということもあり、なかには病気を周囲に隠して生きている人も少なくなく、これら差別や偏見の解消が課題となっています。

このように、さまざまな病気をめぐる状況は、その時代の医療水準や社会環境により変化するものですが、これらの患者の方々の置かれている状況を踏まえ、患者の人権に配慮した対応が求められています。

 
(2)基本的方向

ハンセン病やHIVなどの感染症については、発生の予防と患者等の人権の尊重の両立を基本とし、個人の意志や人権に配慮し、一人ひとりが安心して社会生活を続けながら、良質かつ適切な医療を受けられ、また、入院等の措置がとられた場合には早期に社会に復帰できるような環境の整備に努めることが必要です。

難病については患者等それぞれの人権が尊重され、安心して社会生活に参加できる環境整備のほか、必要な医療の提供、さらには疾患の克服を目指した研究を推進することも必要となってきます。

このような観点から、ハンセン病やHIV、難病などに対する偏見や差別をなくす正しい知識や理解の普及啓発を図るとともに、適正な医療の確保と患者や家族への支援体制の整備を進めます。
 

(3)基本的なとりくみ

ア 正しい知識の普及啓発と理解の促進

① エイズ予防啓発として、各保健所における住民に対する研修会や講習会の開催や、「世界エイズデー」(12月1日)にあわせた、感染予防や正しい知識の普及啓発により、患者・感染者への理解を県民に求めていきます。

② 学校教育の場において、正しい知識や理解により、エイズや感染症等病気に対する偏見・差別を払拭し、思春期教育を含めた男女共生や人を思いやる心を育む教育を、学校、家庭、地域が連携して推進します。

③ 難病やハンセン病等病気に関する正しい知識の普及啓発により理解を深 め、誤った知識に基づく差別・偏見を防止します。
 
イ 良質かつ適切な医療の提供

① エイズ拠点病院において良質な医療を提供するとともに、HIV診療支援システムで全国の拠点病院と治療方法や治療薬の情報交換を行い、また、カウンセラーを派遣し、患者や感染者に対する精神面のケアを推進します。

② 原因不明、治療方法が未確立であり、かつ後遺症を残すおそれが少なくない難病のうち、診断基準が一応確立し、かつ難治度、重症度が高いものについて、原因や治療方法究明のための調査研究を進め、また、医療費の公費負担を行い患者負担の軽減を図る特定疾患治療研究事業を行います。

③ 患者と医療従事者との信頼関係に基づき、最善の医療を提供するため、医療従事者が患者に診療の目的や内容などについて適切な説明を行う一方、患者自身が正確な情報に基づいて、納得したうえで、主体的に検査や治療などの医療行為を選択し、決定する「インフォームド・コンセント」を促進します。

ウ 相談・支援体制の整備

① ハンセン病療養所入所者の里帰り事業や、高齢のため里帰りの負担が大きい入所者への訪問事業を推進し、社会復帰を支援します。また、遺骨については遺族の同意を得ながら里帰りに努めます。

② 在宅で長期療養を続ける難病患者の日常生活の質を向上させるために市町村が実施するホームヘルプサービス、ショートステイ及び日常生活用具給付の事業を支援するとともに、質の高い介護サービスを提供するためにホームヘルパー養成研修を実施します。

③ 難病患者の在宅療養を支援するため、保健所が中心となって市町村、専門医師、理学療法士、難病患者会との連携のもとに医療相談、訪問診療等の施策を推進しながら総合的なサービスを提供できる地域支援体制の整備を図ります。

④ 重症神経難病患者が入院治療を必要とするとき適時に適切な入院施設の確保や、円滑な在宅療養への移行を支援できるよう協力医療機関の確保に努め、医療従事者や在宅支援関係者への研修等を実施するなどネットワークの強化を図ります。

⑤ 同じ病気を持つ患者や家族が悩みを分かち合い、情報交換を行える患者会や家族会の活動を支援します。

⑥ 子ども保健福祉相談センターにおいて、難病の子どもたちや家族に対する相談支援活動を推進します。

⑦ 病気のため長期間入院しなければならない児童・生徒の精神的な支えとなり、学習の機会を保障するため院内学級の充実を図ります。


8 犯罪被害者とその家族の人権
(1)現状と課題

平成8年 (1996年)2月に警察庁において被害者対策に関する基本方針を取りまとめた「被害者対策要綱」が制定されるなど、犯罪被害者の人権が大きく取り上げられるようになったのは比較的新しいことです。

犯罪被害者については、基本的な「個人の尊厳」や「プライバシー」などが尊重されなければならないことは当然であり、犯罪被害者は「可哀想だから」保護されるのではなく、基本的人権の尊重という観点から当然支援されるべき立場にあります。

わが国における犯罪被害者数は、平成8年から増加し、平成15年における総数は約279万人となっていますが、犯罪による被害は、直接の被害者だけでなく、その家族などの精神面や生活面にも大きな影響を与えるものであり、これらの間接的被害も含めると被害を受けている方は相当の数になります。

また、性犯罪に係る事件では、被害者のさまざまな心理的要因や再被害を恐れること等により、被害にあっても警察に届けたり、裁判に訴えたりしない場合も相当数あり、実際の数字ははるかに上回るとさえ言われています。

犯罪被害者は、生命、身体、財産上の直接的な被害だけでなく、事件に遭ったことによる精神的ショック、失職・転職などによる経済的困窮、捜査や裁判の証人出廷などの過程における精神的・時間的負担、無責任なうわさ話やプライバシーをも侵害しかねない執拗な取材・報道によるストレス・不快感など、被害後に生じる「二次的被害」に苦しめられる場合もあります。

特に、大きな精神的・心理的衝撃を受けることにより、トラウマ(心的外傷)やPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状が残ることもあり、被害者が受ける精神的被害は深刻です。

ことに、和歌山においては、平成10年(1998年)7月いわゆるカレー毒物混入事件が発生し、被害者及び被害者の家族が生命・身体・財産のみならず、深刻な精神的被害を受け、今なお回復されない状態におられます。

欧米を中心とする諸外国では、犯罪被害者の権利として、①個人として尊重されること、②加害者の刑事手続等に関与し、知る権利、③被害回復を求める権利、④物質的・精神的・心理的・社会的支援を受ける権利等を確立し、犯罪被害者の法的地位を充実する法制度を整備するとともに、多様な支援を提供できる民間の被害者支援機関が組織され、国と社会をあげて総合的な被害者支援対策を推進しています。

近年、わが国でも、犯罪被害者の問題に対する社会的関心が高まる中、刑事訴訟法の一部改正や、「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」及び「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」等が施行され、犯罪被害者等の保護や救済が図られてきています。

しかし、欧米に比べわが国では、犯罪被害者支援対策が相当立ち遅れていると言えます。

犯罪被害者やその家族の人権が侵害されるケースはさまざまですが、被害者の人権の尊重を基本とした、被害者が求める各種支援を推進する必要があります。
 

(2)基本的方向

犯罪被害者に対する支援のためには、まず、被害の救済は被害者の人権に基づくものであり、誰もが被害者になる可能性があるとの認識のうえに立って、被害者を社会全体で支え合うことができる社会づくりを推進する必要があります。

このため、犯罪被害者の現状や支援の必要性について、県民の認識を深めるとともに、犯罪被害者と最も密接に関わる警察や行政職員においては、高い人権意識による被害者の視点に立った対応を徹底します。

また、犯罪被害者を総合的に支援するために、犯罪被害者の相談機関、支援関係の諸機関や民間団体等が相互に連携を強化して支援体制の充実を図り、被害者が可能な限り被害を回復し、苦しみから立ち直り、元の生活に戻ることができるよう被害者支援活動を効果的に推進します。

さらに、再被害防止措置や重大な犯罪の未然防止措置にも取り組みます。

 
(3)基本的なとりくみ

ア 啓発活動の推進

① 犯罪被害者が受けている直接的・間接的被害に対する現状や援助の必要性について、体験談や講演等を通じ県民の認識を深めるための啓発活動を推進します。

② 犯罪被害者と最も密接に関わる警察や行政職員などの研修を行い、高い人権意識による適切な対応を促進します。

③ マスコミの過剰な取材・報道による犯罪被害者やその家族への二次的被害については、マスコミに対し、自主規制による対応への理解を求めます。

 
イ 相談・支援体制の充実

① 犯罪被害者が大きな打撃から立ち直り、幸福を求めて再び歩み始められるように、県内の全警察署に被害者の相談窓口を設けていますが、さらに性犯罪相談などの対応を充実するため、各相談窓口への女性の相談員の配置や相談窓口の周知などに努めます。

② 警察以外のところにも、性犯罪の相談など被害者が安心して相談できる場所を設置することが必要なため、相談機関、支援関係の諸機関や民間団体等が、相互に連携を強化し支援体制の充実を図り、被害者が求める救済に即した総合的な被害者支援活動を効果的に推進します。

③ 医師や臨床心理士等のカウンセラーが必要な場合、適切なカウンセリングを受けられるような支援体制を整えます。

④ 故意の犯罪行為により不慮の死亡、重傷病、障害という重大な被害を受けたにもかかわらず、公的救済や加害者側からの損害賠償も得られない被害者又は遺族に対して、「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」に基づき、給付金を支給することにより、その精神的・経済的打撃の緩和を図っております。引き続き適切な事務処理を行うとともに、国に制度の拡充を働きかけることにより、支援を推進します。

 
ウ 再被害防止措置の確保

犯罪被害者及びその家族が同じ加害者から再度危害を受けることを未然に防止し、安全確保を徹底するため、警察及び関係機関における防犯指導、警戒措置等の再被害防止措置を強化します。


エ 重大な犯罪の未然防止措置

重大な犯罪が未然に防止できれば、それは最高の犯罪被害者対策とも言えます。

今日、重大な犯罪は家庭内や男女関係の間でも発生することが多く、また、民事上のもめ事からも発生することから、民事不介入や家族問題には立ち入らないとの考え方が、時として手遅れとなってしまうケースもあるため、警察及び関係機関等は積極的に未然防止に取り組みます。

① 犯罪発生後の捜査のためではなく、ストーカー行為や無言電話、その他不審な行動等に対する警戒などの防犯活動を強化します。

② 被害者相談窓口の充実を図るとともに、被害者支援に関係する機関等と連携を密にして、家庭内や地域における犯罪の芽を早期に発見し、より重大な犯罪による被害発生の未然防止に努めます。


9 さまざまな人権

 前述の8つの重点的に取り組むべき人権課題の他にも、次のような人権課題が存在します。 

① 刑を終えて出所した人など

刑を終えて出所した人は、社会の根強い偏見などのため、住宅の確保や就職など基本的な生活基盤を築くことさえ難しく、本人に真摯な更生意欲があったとしても、その社会復帰は厳しい状況にあります。刑を終えて出所した本人だけでなく、その家族も社会からの偏見や差別を受けることがあります。刑を終えて出所した人が真摯に更生し、地域社会の一員として生活を営むためには、本人の更生意欲はもちろん、地域社会など周囲の人々の理解と協力が欠かせません。そのため、刑を終えて出所した人に対する偏見や差別意識を解消するための啓発活動を進めます。また、更生保護活動を行う民間団体等に対し支援を行います。

被疑者(捜査対象とされているが、まだ公訴を提起されていない者)や被告人(公訴を提起され、その裁判が確定していない者)は裁判により有罪であることが確定するまでは無罪の推定を受けます。しかし、刑が確定していない段階で被疑者・被告人を犯罪者のように扱い、本人やその家族の人格を著しく侵害している事例が見受けられます。また、被疑者には不当に身体拘束されない権利などが、被告人には国選弁護権や迅速な裁判を受ける権利などが憲法により保障されています。しかし、被疑者・被告人の諸権利が形式的なものになっているのではないかとの強い指摘もあり、より実質的な権利保障の在り方が議論されています。

受刑者についても、一定の権利の制限はありますが、人間としての尊厳は当然守られるべきであり、最近の刑務所での看守による受刑者に対する不当な拘束や暴力は人権侵害の顕著な現れです。

こうした人々に対する偏見や差別意識をなくすために、関係諸機関と連携・協力しながら啓発活動の推進に努めます。

 
② 野宿生活者(ホームレス)

失業や家庭問題等さまざまな要因により、自立の意思がありながら、特定の住居を持たずに野宿生活を余儀なくさせられている人たちがいます。野宿生活者の中には衛生状況が悪い、十分な食事をとることができないなど、憲法で保障された健康で文化的な生活を送ることができない人もいます。また野宿生活者と地域社会との間にあつれきが生じたり、野宿生活者への暴力なども発生しています。

平成14年 (2002年)には「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」が施行されました。地域社会との協力のもと、職業能力の開発などによる就業機会や安定した居住空間、保健医療の確保などの施策を通して、野宿生活者の自立を促進していくことや、野宿生活者となることを防止するための生活上の支援などについて定めています。

野宿生活者に関する問題について県民の理解を促進するとともに、地域の実情に応じ、必要な施策を行います。

 
③ 性同一性障害者       

性同一性障害者は、からだの性とこころの性が一致しないために自分自身に対し強い違和感を持つと同時に、社会の無理解や偏見あるいは日常生活のさまざまな場面で奇異な目で見られることで、強い精神的な負担を受けています。就職をはじめ日常生活の中で、自認する性での社会参加が難しい状況にあるだけでなく、偏見によりいやがらせや侮蔑的な言動をされるなどの問題があります。性別再判定手術を受けた人については、戸籍上の性別と外観が一致せず本人確認等で問題が生じているため、平成15年(2003年)に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」を制定し、家庭裁判所の審判によって性別の変更が認められることとなりました。

性同一性障害者や障害に対する正しい認識が深まるよう啓発活動の推進に努め、偏見のない社会づくりを進めていきます。

 
 その他にも、患者の人権や色覚特性を持つ人々の人権、アイヌの人々の人権、中国残留孤児やその家族の人権などの問題があります。また、ひきこもりの問題や、医療技術の進展に伴う新たな問題の懸念もあります。

 このような、さまざまな人権に関する問題に対して、あらゆる機会を通して人権意識の高揚を図り、差別や偏見をなくしていくための施策の推進に努めます。

 また、今後新たに生じる人権課題についても、それぞれの課題の状況に応じた取組を行っていきます。


第4章 施策の総合的な推進
1 人権行政の推進体制等の整備
(1)県の推進体制

本県では、人権行政を県政の重要な柱と位置づけ、人権局が核となって総合的に施策の推進を図ることとします。

人権施策の推進にあたっては、関係部局がこの基本方針を踏まえ、必要な予算の確保に努めながら諸施策を積極的に推進します。なお、全庁的な推進組織として和歌山県人権施策推進協議会を設置し、関係部局の密接な連携を図ることにより、効果的な推進に努めます。

また、政策提言機能を有する和歌山県人権施策推進審議会の意見を聴きながら、より実効性のある施策の推進を図っていきます。

 
(2)(財)和歌山県人権啓発センターの充実

人権啓発センターは、人権文化創造のため、民間団体としての特質を活かしながら、人権に関する情報の収集・提供や人権啓発活動などを行うことを目的として設立されたものであり、センターが核となって関係する行政機関やNPO等との連携・協力を図ってネットワークづくりを行うなど、人権教育・啓発活動を総合的に行う拠点としての役割が期待されています。

今後も、組織・機構の整備充実や人権に関する専門的知識を有するスタッフの育成・確保などの機能強化に努めるとともに、インターネットなどを利用しての総合的な情報発信を行いながら、人権ライブラリー・ギャラリーの活用、人権啓発指導者養成研修のプログラムや人権教育・啓発に関する教材や資料の作成など、より一層の充実を図ります。

 
(3)国、市町村、関係団体等との連携

人権施策は国、県、市町村がそれぞれの特性に応じた役割分担のもとで、連携を図りながら実施することにより効果的に推進することができます。

このため、国(和歌山地方法務局)や和歌山県人権擁護委員連合会、和歌山弁護士会など、人権に関わる機関と連携・協力して人権に関する取組を推進します。

また、国に対しては、県や市町村が人権施策を推進するために必要な財政面での適切な支援等の要請も行っていきます。

さらに、市町村は住民にとって最も身近な自治体であり、市町村が取り組む人権に関わるさまざまな施策は大変大きな影響力を持っています。本県では、人権に関わる情報を市町村と共有し施策の連携を図るとともに、市町村が取り組む人権施策について必要な助言や財政面での支援に努めます。

 
(4)県民、企業、NPO等との連携・協働

人権が尊重される社会づくりを推進するためには、県民一人ひとりがその責任ある主体者として、すすんで社会のあらゆる分野において寄与することが求められています。

ドメスティック・バイオレンスや児童虐待、いじめなど、外からは見えにくく表面化しにくい人権侵害の早期発見や保護を図るためには、地域住民の協力が不可欠です。また、企業やNPO、ボランティア団体等が行う人権に関わる広範な活動は、機動性、柔軟性に優れるという特性を持っており、さまざまな人権問題の解決に向けて大変重要なものです。

このことから、今後さらに県民や企業、NPO、ボランティア団体等との連携・協働を図ることによって、人権教育・啓発や相談・支援などの取組を推進することとします。

また、これらの自主的・主体的な活動を促進するため、人権に関する情報や活動の場の提供など、その支援に努めます。


2 人権施策等の公表と基本方針の見直し

(1)情報の収集と提供

この基本方針に則った人権施策が適正に遂行されるよう、随時、適切な方法により人権に関する実態の把握に努めます。

また、県民と協働して人権施策を推進するため、県が実施した人権施策について定期的に公表するほか、県民が意見表明を行いやすい条件の整備検討に努めます。

 
(2)施策の点検・評価

人権施策の実施状況やその効果を総合的かつ個別、分野ごとに点検・評価し、これを今後の施策の適正な実施に反映させるよう努めます。

 
(3)基本方針の見直し

この基本方針は、社会情勢や価値観の変化などによる新たな課題に対応するため、必要に応じて、適宜見直しを行います。



用語の解説
 
【ア行】
 
ISO14001

 ISOはスイスに本部を置く国際標準化機構のことで、ISO14001とは、地球環境問題に対応するため、事業活動に伴う環境への負荷を減らす目的でISOが定めた環境マネジメントシステムの国際規格のことをいいます。
 本県は、平成12年からグリーン購入(限りある資源を有効に活用する製品を優先的に購入すること)やゴミの減量化、省エネなどの取組を始め、平成13年2月に認証を取得しています。
 
あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)

 締結国が人権及び基本的自由の十分かつ平等な享有(生まれながらに持っていること)を確保するため、あらゆる形態の人種差別を撤廃する政策及びあらゆる人種間の理解を促進する政策を、すべての適当な方法により遅滞なくとること等を内容とした条約です。わが国は、平成7年(1995年)に批准しました。
 
エイズ

 エイズとはヒト免役不全ウィルス(HIV)によって起こる疾患で、正確には「後天性免疫不全症候群」といいます。
 また、HIV感染者とは、HIVの感染が抗体検査等により確認されているが、エイズに特徴的な指標疾患であるカリニ肺炎等を発症していない状態の人を指します。

エイズ拠点病院

 エイズ患者に対する総合的、専門的医療を提供するため、各都道府県が設置しているエイズ治療の拠点となる病院です。県内では県立医科大学附属病院、国立病院機構南和歌山医療センター(旧国立南和歌山病院)があります。

 
えせ同和行為

 同和問題は怖い問題であり避けた方がよいとの誤った意識に乗じて、あたかも同和問題の解決に努力しているかのように装い、同和の名のもとに、さまざまな不当な利益や義務のないことを要求する行為をいいます。

 えせ同和行為は、これまで同和問題の解決に真摯に取り組んできた人々や同和関係者に対するイメージを損ねるばかりでなく、これまで培われてきた教育や啓発の効果を覆し、同和問題に対する誤った意識を植え付けるという悪影響を生じさせるなど、問題解決の大きな阻害要因となっています。毅然とした態度で対処することが望まれます。

 
NPO

 Non Profit Organizationの略で、民間非営利組織という意味です。営利を目的としない民間団体の総称とされます。平成10年(1998年)には、「任意団体」に「法人格」を与え、NPOの活動を側面から支援することを目的とした特定非営利活動促進法(NPO法)が施行されています。

 
オゾン層の破壊

 オゾン層は高度1万m以上の成層圏にあり、太陽光に含まれる有害な紫外線を吸収し人間や動植物をその影響から守っています。このオゾン層がフロン等により破壊され、地上に到達する紫外線の量が増加することによって、人の健康被害や生態系への影響が懸念されています。

 
【カ行】

学習障害

 基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示すさまざまな障害を示すものです。

 
カレー毒物混入事件

 平成10年(1998年)7月25日、和歌山市園部の園部第14自治会が開催した夏祭りで、カレーライスを食べた67人が急性ヒ素中毒を発症し、うち4人が翌26日に死亡した事件のことです。
 

環境ホルモン

 内分泌かく乱化学物質のことで、環境省では次のように定義しています。

 「動物の生体内に取り込まれた場合に、本来、その生体内で営まれている正常なホル モン作用に影響を与える外因性の物質」

 内分泌かく乱化学物質は、人や野生生物の内分泌作用をかく乱し、生殖機能障害、悪性腫瘍等を引き起こす可能性がある物質等の総称で、生物の世代を越えた影響をもたらすおそれの指摘もあり、環境保全上の重要課題となっています。

 
グループホーム

 痴呆性高齢者や知的障害者等が、少人数(5~9人)の家庭的な雰囲気の中で、食事の支度や掃除、洗濯などをスタッフとともに行い、互いに助け合いながら共同生活を送ることです。

 
県民意見募集(パブリックコメント)

 県が計画等を策定する過程において、その案等を県民に公表して広く意見を求めて、出された意見を計画等に反映させる機会を確保し、またその意見に対する県の考え方を公表する一連の手続きをいいます。その過程の公平性及び透明性の確保並びに県政の説明責任を果たし、県民の県民による県民のための県政を推進することを目的としています。

 
高機能自閉症

 自閉症は発達障害の一種として捉えられ、主な症状として、「言葉の意味が理解できず、共感的なコミュニケーションがとれない」「行動の様式や興味の対象が限定されて同じような行動を反復する」等があげられますが、このうち知的発達の遅れを伴わないものを 高機能自閉症といいます。

 
国際人権規約

 ①「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約又はA規約)」、②「市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約又はB規約)」、③自由権規約の議定書から成り立っています。わが国は、①及び②の2つの規約について、昭和54年(1979年)に批准しています。

 
【サ行】

色覚特性

 色覚異常は、黄色人種では男性の20人に1人(5%)、女性の500人に1人(0.2%)にみられると言われており、わが国では300万人を超えると推計されます。

 人にはさまざまな個人差があり、色の見え方も必ずしも同じではなく個人差があることから、本県においては色覚異常をその人の持つ特性と捉えて、色覚バリアフリーを進めることにしています。

 
児童虐待

 「児童虐待の防止等に関する法律」において、保護者が監護する児童に対し「児童の身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えること」「児童にわいせつな行為をすること、またはさせること」「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食または長時間の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること」「児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと」と定義されています。

 
児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)

 平成元年(1989年)11月に国連総会で採択されました。子どもの人権や自由を尊重し、子どもに対する保護と援助を進めることを目指した条約です。わが国は、平成6年(1994年)に批准しました。

 
社会的入院

 病状が安定し必ずしも入院治療の必要はないが、家庭環境や精神障害者社会復帰施設、在宅福祉サービス等の地域における受け皿とのつながりがないなどのため、病院への入院を余儀なくされている状態をいいます。

 
情報セキュリティ

 保有する情報(主に電磁データ)を自然災害やシステム等の故障・誤動作、人間による不法行為や過失等の様々な活用阻害要因から保護し、情報資産の亡失や改ざん、外部への流出を防止することです。

 
女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)

 すべての人間は、そもそも生まれながらにして自由かつ平等であることから、男子も女子も個人として等しく尊重されるべきであるとした条約です。わが国は、昭和60年(1985年)に批准しました。

 
人権啓発センター

 用語の解説71ページ「和歌山県人権啓発センター」を参照

 
人種差別撤廃条約

 用語の解説66ページ「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」を参照

 
ストーカー行為

 同一の者に対して、恋愛感情等その他の好意の感情またはそれが満たされなかったことに対する怨念の感情を充足する目的でつきまとう等、身体の安全、住居等の平穏や名誉を害し、不安を覚えさせるような行為を反復することをいいます。

 
成年後見制度

 知的障害者、精神障害者、痴呆性高齢者等の判断能力が不十分な人を保護するため、家庭裁判所の手続きを通じて、代理権等を付与された成年後見人や保佐人等が財産管理等を行う制度です。

 
世界人権宣言

 昭和23年(1948年)12月、国連総会において採択された国際的な人権宣言。市民的・政治的自由のほか経済的・社会的な権利について、各国が達成すべき基準を定めています。

 なお、採択された12月10日は、「世界人権デー」とされ、わが国では、12月10日までの1週間を「人権週間」と定め、人権思想の普及高揚のための啓発活動を全国的に展開しています。

 
セクシュアル・ハラスメント

 相手の意に反した、性的な言動を行い、それに対する対応によって、不利益を与えたり、またはそれを繰り返すことによって相手の生活環境を著しく悪化させることをいいます。

 
専門里親

 里親制度は、さまざまな事情で家庭での養育が困難となった子どもを、暖かい愛情と正しい理解を持った別の家庭で養育する制度です。また、専門里親制度は、増加する児童虐待の対応策として国が平成14年度に創設した制度で、親から虐待を受けたことが原因で人間関係をうまく結べなくなっている子どもを預かり、最終的には元の家庭に戻すことを目標としています。

 
【タ行】

第三者機関

 行政組織からの独立性と、高度な専門性を持つ機関のことで、子どもや女性の人権の分野では、条例に基づいて設置された第三者機関による相談・救済への取組が始まっています。

 
地域福祉権利擁護事業

 判断能力が不十分な知的障害者、精神障害者や高齢者等に対し、社会福祉協議会が、契約により、各種福祉サービスの利用援助、日常生活の各種手続きや金銭管理等を行う事業をいいます。
 

地球温暖化

 大気中に含まれる二酸化炭素やメタン、一酸化窒素などの温室効果ガスの濃度が上昇し、地球全体の平均気温の上昇を招くことをいいます。温暖化によって気候が変動すると、生態系への悪影響や、人間への健康被害、農業への影響、洪水や高潮の発生などが懸念されます。

 
注意欠陥/多動性障害

 年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものです。

 
特別支援教育

 従来の特殊教育の対象の障害だけでなく、学習障害、注意欠陥/多動性障害、高機能自閉症を含めて障害のある児童生徒の自立や社会参加に向けて、その一人ひとりの教育的ニーズを把握して、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するために、適切な教育や指導を通じて必要な支援を行うことです。

 
ドメスティック・バイオレンス(DV)

 夫婦や恋人など親密な間柄にある男女間において、主として男性から女性に加えられる身体的、精神的・性的な暴力をいいます。殴る、蹴るといった物理的な暴力だけでなく、脅し、ののしり、無視、行動の制限・強制、苦痛を与えられることなども含まれた概念をいいます。

 
トラウマ(心的外傷)

 犯罪や事故による被害、自然災害、戦争被害、家族や友人の死等の個人では対処できない衝撃の大きな出来事に遭遇したときに受ける精神的な傷をいいます。例えば、子どもを失った親が、その後社会から離れて自宅に引きこもることもあれば、逆にとりつかれたように仕事にのめり込んだりすることもあるなど、その症状は、遭遇した出来事によってもさまざまです。

 
【ナ行】

難病

 昭和47年、厚生省(現厚生労働省)が策定した「難病対策要綱」によると、「原因不明、治療方法未確立であり、かつ、後遺症を残すおそれが少なくない疾病」「経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病」とされています。 

 
ニューカマー

  1980年代以降、インドシナ3国(ベトナム、ラオス、カンボジア)などから難民として来た人々や国際結婚による定住者、また、アジア各地や中南米からの外国人労働者など、多くの人々が来日しました。これらの人々を在日韓国・朝鮮人など(オールドカマー)と区別して呼ぶ表現です。

 
【ハ行】

バリアフリー

 障害者が社会生活をしていくうえで、物理的・心理的障壁(バリア)となるものを除去するという意味です。

 もとは、建築用語として、建物内の段差解消等物理的障壁の除去という意味合いが強かったが、より広く障害者の社会参加を困難にしている社会的、制度的、心理的なすべての障壁の除去という意味でも使用されています。


ハンセン病

 明治6年(1873年)にノルウェーのハンセン博士により発見された「らい菌」による慢性の細菌性感染症です。しかし、感染力は極めて弱く、仮に発病した場合でも治療方法が確立された現在では、早期発見、早期治療により短期間で治癒する病気です。

 
PTSD(心的外傷後ストレス障害)

 事件等の出来事によりトラウマ(心的外傷)を受けた人が、その出来事の数週間から数ヶ月後に「その時の苦痛をたびたび再体験する」「事件等を思い出させる行為や状況を回避する」「緊張感からくる不眠や、びくびくしたりする状態が長期間続く」などの持続的な精神的、身体的症状を呈することをいいます。

 
ひきこもり

 特定の病名や診断名でなく、さまざまな要因によって社会的な参加の場面がせばまり、就労や就学などの自宅以外での生活の場が長期にわたって失われている状態のことを指します。

 確かな調査統計はありませんが、このような状態にある人は全国に50万人から100万人いるとも言われています。

 
【マ行】

緑の雇用事業

 地球的な規模での環境保全への取組が急務となる中、森林が持つ環境保全等の公益的機能に着目し、その保全対策を展開することによって、新たな雇用を創出し、地域の活性化を図る施策として、本県知事が提唱したものです。

 
【ラ行】

リハビリテーション

 障害者の身体的、精神的、社会的な自立能力向上を目指す総合的なプログラムにとどまらず、ライフステージのすべての段階において全人間的復権に寄与し、障害者の自立と参加を目指すという考え方です。

 
【ワ行】

ワークショップ

 もともとは「工房」「共同の作業場」を表す言葉です。

 参加体験型とも呼ばれるワークショップによる人権研修では、そこで学ぶ人の主体性と水平な関係が大切にされ、教える、教えられる人が固定されていません。参加者がさまざまなプロセスに参加し、体験することで自ら気づいてゆく、主体的・双方向的な学習がワークショップ型研修の特徴です。
 

和歌山県人権啓発活動ネットワーク協議会

 県内に所在する人権啓発に関わる機関等が連携・協力関係を確立し、各種人権啓発活動を総合的・効果的に推進することを目的とする組織で、和歌山地方法務局、県、市町村、和歌山県人権擁護委員連合会、(財)和歌山県人権啓発センターで構成されています。

 
和歌山県人権啓発センター(TEL 073-435-5420)

 平成10年(1998年)8月に策定された「『人権教育のための国連10年』和歌山県行動計画」において、人権啓発の拠点としての人権啓発センターが位置づけられ、これに基づいて、平成14年(2002年)4月に設置されたものです。

 また、平成15年(2003年)9月には財団法人化され、各種啓発事業や研修事業、人権相談業務など、県民の人権意識の高揚を図るための事業を総合的に行っています。

 
和歌山県人権侵害事件対策委員会

 インターネットによる差別事件など広域にわたるものや複数市町村に関わる問題で社会的影響の大きなもの、県庁内で発生した差別事件や県職員が関与した差別事件の処理について、県は主体的に取り組んでいますが、行政のみの判断だけではなく、迅速で効果的な解決を図るため、県からの諮問に対し必要な助言を行う、第三者で構成する機関のことです。

 
和歌山県人権施策推進協議会

 さまざまな人権問題の解決を図るため、県の行政における人権行政を明確に位置づけ、有機的な連携と、総合的・計画的に強力な取組を実施するために、必要な連絡調整を行うことを目的に設置した全庁的な推進組織です。

 
和歌山県人権施策推進審議会

 平成14年4月に施行された「和歌山県人権尊重の社会づくり条例」第5条に基づき、人権行政に関する政策提言機能を果たすことを目的に設置されているものです。 

 人権に関して学識経験を有する者のうちから知事が任命した委員(15人以内)で組織されています。



和歌山県人権尊重の社会づくり条例

   平成14年3月26日
   和歌山県条例第16号

 すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。世界人権宣言にうたわれているこの理念は、人類普遍の原理であり、日本国憲法の精神にかなうものである。
 この理念の下に、社会的身分、門地、人種、民族、信条、性別等を理由としたあらゆる人権侵害や不当な差別が行われることなく、すべての人の人権が尊重される社会をつくることは、私たちみんなの願いである。
 同時に、私たちは、社会の構成員としての責任を自覚し、常に他者の人権の尊重を念頭に置いて、自らの人権を行使するようにしなければならない。
 このような認識に立ち、私たちは、現在及び将来の県民が人権という普遍的な文化が根付いた平和で明るい社会の豊かさを等しく享受できるようにすることが、私たちの責務であると確信する。
 ここに、私たちは、自然と人間との共生を目指す和歌山県で、人権尊重の社会づくりを進めるために、不断の努力を傾けることを決意し、この条例を制定する。

 (目的)
第1条 この条例は、人権尊重の社会づくりに関し、県及び県民の責務を明らかにするとともに、その施策の推進に必要な事項を定め、もってすべての人の人権が尊重される豊かな社会の実現を図ることを目的とする。

 (県の責務等)
第2条 県は、前条の目的を達成するため、人権意識の高揚を図るための施策その他の人権尊重の社会づくりに関する施策(以下「人権施策」という。)を積極的に推進するものとする。
2 県は、人権施策の推進に当たっては、国及び市町村と連携するものとする。
3 県は、市町村が実施する人権施策について、必要な助言その他の支援を行うものとする。
4 県は、人権施策の推進に当たっては、人権に関する実態の把握に努めるとともに、県が実施した人権施策について定期的に公表するものとする。

 (県民の責務)
第3条 県民は、互いに人権を尊重し、自らが人権尊重の社会づくりの担い手であることを自覚して、人権意識の高揚に努めるとともに、家庭、地域、学校、職域その他の社会のあらゆる分野において人権尊重の社会づくりに寄与するよう努めなければならない。

 (人権施策基本方針)
第4条 知事は、人権施策の総合的な推進を図るための基本となる方針(以下「人権施策基本方針」という。)を定めるものとする。
2 人権施策基本方針は、次に掲げる事項を定めるものとする。
 一 人権尊重の社会づくりの基本理念
 二 人権意識の高揚を図るための施策に関すること。
 三 人権に関する相談支援体制の整備に関すること。
 四 人権問題における分野ごとの施策に関すること。
 五 その他人権施策を推進するために必要な事項
3 知事は、人権施策基本方針を定めるに当たっては、あらかじめ和歌山県人権施策推進審議会の意見を聴かなければならない。

 (和歌山県人権施策推進審議会の設置等)
第5条 和歌山県人権施策推進審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、人権施策基本方針に関する事項を審議するほか、知事の諮問に応じ、人権尊重の社会づくりに関する基本的事項を審議する。
3 審議会は、人権尊重の社会づくりに関する基本的事項に関し、知事に意見を述べることができる。

 (審議会の組織等)
第6条 審議会は、委員15人以内で組織する。
2 委員は、人権に関し学識経験を有する者のうちから、知事が任命する。
3 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の委員の残任期間とする。
4 委員は、再任されることができる。

 (委任)
第7条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

   附 則
 この条例は、平成14年4月1日から施行する。



--------------------------------------------------------------------------------


  和歌山県人権施策推進審議会規則

   平成14年3月29日
   和歌山県規則第41号

 (趣旨)
第1条 この規則は、和歌山県人権尊重の社会づくり条例(平成14年和歌山県条例第16号)第7条の規定に基づき、和歌山県人権施策推進審議会(以下「審議会」という。)の組織及び運営に関し必要な事項を定めるものとする。

 (会長)
第2条 審議会に会長を置き、委員の互選によってこれを定める。
2 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。
3 会長に事故があるとき、又は会長が欠けたときは、会長があらかじめ指名する委員がその職務を代理する。

 (会議)
第3条 審議会の会議は、会長が招集する。
2 会長は、審議会の議長となる。
3 審議会は、委員の過半数が出席しなければ、会議を開き、議決をすることができない。
4 審議会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

 (庶務) 
第4条 審議会の庶務は、企画部人権局人権政策課において処理する。
      (平15規則58・平16規則16・一部改正)

 (委任)
第5条 この規則に定めるもののほか、審議会の運営に関し必要な事項は、会長が審議会に諮って定める。
   附 則 
 この規則は、平成14年4月1日から施行する。
   附 則(平成15年3月28日規則第58号)
 この規則は、平成15年4月1日から施行する。
   附 則(平成16年3月30日規則第16号)
 この規則は、平成16年4月1日から施行する。



--------------------------------------------------------------------------------


  和歌山県人権施策推進審議会委員名簿

   ◎印は会長、○印は会長代理


氏 名 所属等
  稲 垣 恵美子 醸造業
  大 畠 信 雄 精神障害者家族会連合会会長
  橘   英 彌 和歌山大学教授
○ 谷 口 曻 二 弁護士
◎ 月 山   桂 弁護士
  辻   絋 子 元高等学校校長
  都 村 尚 子 関西医療技術専門学校専任講師
  中 川 利 彦 弁護士
  中 谷 公 子 WINコンコード事務局長
  中 村 富 子 WACわかやま理事長
  西   栄 一 和歌浦健康相談所所長
  村 田 溥 積 実務法学研究会代表
  村 田 恭 雄 元桃山学院大学学長
  柳 瀬 貴美子 元ガールスカウト日本連盟副会長
  吉 澤 義 則 弁護士

(50音順、敬称略)



--------------------------------------------------------------------------------

  人権関係年表
年 国際状況 国内状況 県内状況
昭和21年(1946年)   「日本国憲法」公布  
昭和22年(1947年)   「日本国憲法」施行  
「教育基本法」施行
「労働基準法」施行
昭和23年(1948年) 「世界人権宣言」採択 「児童福祉法」施行  
「民法」改正
昭和25年(1950年)   「身体障害者福祉法」施行  
「精神衛生法」施行
「生活保護法」施行
昭和26年(1951年) 「難民条約」採択 「児童憲章」制定  
「社会福祉事業法」施行
昭和34年(1959年) 「児童の権利に関する宣言」採択    
昭和38年(1963年)   「老人福祉法」施行  
昭和40年(1965年) 「人種差別撤廃条約」採択 「同和対策審議会答申」提出  
昭和41年(1966年) 「国際人権規約」採択    
昭和43年(1968年) 国際人権年    
第1回世界人権会議
昭和44年(1969年)   「同和対策事業特別措置法」施行  
昭和45年(1970年) 国際教育年 「心身障害者対策基本法」施行 「和歌山県同和対策長期計画」策定
昭和46年(1971年) 人種差別と闘う国際年    
「精神薄弱者の権利宣言」採択
昭和48年(1973年)     「和歌山県同和教育基本方針」策定
昭和50年(1975年) 国際婦人年    
「障害者の権利宣言」採択
昭和51年(1976年) 「国連婦人の10年(1976~1985)」宣言    
昭和54年(1979年) 国際児童年 「国際人権規約」批准  
「女子差別撤廃条約」採択  
昭和56年(1981年) 国際障害者年 「難民条約」加入  
昭和57年(1982年) 「国連障害者の10年(1983~1992)」宣言 「障害者対策に関する長期計画」決定 「障害者にかかる和歌山県長期行動計画」策定
「高齢者に関する国際行動計画」 「地域改善対策特別措置法」施行
昭和58年(1983年)     「和歌山県同和対策基本計画」策定
昭和60年(1985年) 国際青年年 「女子差別撤廃条約」批准  
昭和61年(1986年) 国際平和年 「男女雇用機会均等法」施行  
「長寿社会対策大綱」
昭和62年(1987年)   「地域改善対策特定事業にかかる国の財政上の特別措置法に関する法律」施行  
昭和63年(1988年)     「わかやま女性プラン」策定
「和歌山県同和対策総合推進計画」策定
平成元年(1989年) 「子どもの権利条約」採択 「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律」施行  
平成2年(1990年) 国際識字年   「和歌山県同和保育基本方針」策定
平成4年(1992年) 「アジア太平洋障害者の10年(1993~2002)」行動課題採択 「地対財特法の一部を改正する法律」施行  
平成5年(1993年) 世界先住民年 「障害者対策に関する新長期計画」決定 「和歌山県老人保健福祉計画」策定
世界人権会議開催(ウィーン) 「障害者基本法(「心身障害者対策基本法」改正)」施行
「障害者の機会均等に関する標準規則」
「女性に対する暴力の撤廃に関する宣言」採択
平成6年(1994年) 「人権教育のための国連10年(1995~2004)採択 「男女共同参画推進本部」設置 「紀の国障害者プラン」策定
「子どもの権利条約」批准
「ハートビル法」施行

平成7年(1995年)   「人権教育のための国連10年推進本部」設置
「障害者プラン ノーマライゼーション七カ年戦略」策定
「人種差別撤廃条約」批准
「高齢社会対策基本法」施行
平成8年(1996年)   「男女共同参画2000年プラン」策定 「和歌山県福祉のまちづくり条例」制定
「らい予防法の廃止に関する法律」施行 「和歌山県国際協力推進指針」策定
「同和問題の早期解決に向けた今後の方策の基本的な在り方について」地域改善対策協議会意見具申
「人権擁護施策推進法」制定
平成9年(1997年)   「人権擁護施策推進審議会」設置 「喜の国エンゼルプラン」策定
「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」 「和歌山県環境基本条例」制定
「人権教育のための国連10年に関する国内行動計画」策定
平成11年(1999年) 国際高齢者年 「人権教育の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本事項について」人権擁護推進審議会答申 「人権教育のための国連10年和歌山県行動計画」策定
「男女共同参画社会基本法」施行 「和歌山県同和行政総合推進プラン」策定
「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」制定 「わかやま長寿プラン2000」策定
平成12年(2000年)   「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」施行 「和歌山県男女共生社会づくりプラン」策定
「男女共同参画基本計画」策定
「ストーカー行為等の規制等に関する法律
「交通バリアフリー法」施行
「児童虐待の防止等に関する法律」施行
「社会福祉法(「社会福祉事業法」改正)」施行
「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」施行
平成13年(2001年) 「国連識字の10年(2003~2012)」宣言 「人権救済制度の在り方について」人権擁護推進審議会答申 「和歌山県情報公開条例」制定
「人権擁護委員制度の改革について」人権擁護推進審議会答申 「わかやま青少年プラン」策定
「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」施行
平成14年(2002年) 「新アジア太平洋障害者の10年(2003~2012)」行動課題採択 「人権教育・啓発に関する基本計画」策定 「和歌山県男女共同参画推進条例」制定
「身体障害者補助犬法」施行 「和歌山県人権尊重の社会づくり条例」制定
「プロバイダー責任制限法」施行 「和歌山県個人情報保護条例」制定
「障害者基本計画」策定
「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」施行
平成15年(2003年)   「個人情報保護法」制定 「和歌山県男女共同参画基本計画」策定
「和歌山県国際化推進指針」策定
「わかやま長寿プラン2003」策定
平成16年(2004年)   「性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律」施行 「紀の国障害者プラン2004」策定



--------------------------------------------------------------------------------

  世界人権宣言

   1948年12月10日
   第3回国際連合総会 採択

前文
 人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎であるので、
 人権の無視及び軽侮が、人類の良心を踏みにじった野蛮行為をもたらし、言論及び信仰の自由が受けられ、恐怖及び欠乏のない世界の到来が、一般の人々の最高の願望として宣言されたので、
 人間が専制と圧迫とに対する最後の手段として反逆に訴えることがないようにするためには、法の支配によって人権を保護することが肝要であるので、
 諸国間の友好関係の発展を促進することが、肝要であるので、
 国際連合の諸国民は、国際連合憲章において、基本的人権、人間の尊厳及び価値並びに男女の同権についての信念を再確認し、かつ、一層大きな自由のうちで社会的進歩と生活水準の向上とを促進することを決意したので、
 加盟国は、国際連合と協力して、人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守の促進を達成することを誓約したので、
 これらの権利及び自由に対する共通の理解は、この誓約を完全にするためにもっとも重要であるので、
 よって、ここに、国際連合総会は、
 社会の各個人及び各機関が、この世界人権宣言を常に念頭に置きながら、加盟国自身の人民の間にも、また、加盟国の管轄下にある地域の人民の間にも、これらの権利と自由との尊重を指導及び教育によって促進すること並びにそれらの普遍的かつ効果的な承認と遵守とを国内的及び国際的な漸進的措置によって確保することに努力するように、すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準として、この世界人権宣言を公布する。
 
第1条
  すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。

第2条
1 すべて人は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、門地その他の地位又はこれに類するいかなる事由による差別をも受けることなく、この宣言に掲げるすべての権利と自由とを享有することができる。
2 さらに、個人の属する国又は地域が独立国であると、信託統治地域であると、非自治地域であると、又は他のなんらかの主権制限の下にあるとを問わず、その国又は地域の政治上、管轄上又は国際上の地位に基づくいかなる差別もしてはならない。

第3条
  すべて人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する。

第4条
  何人も、奴隷にされ、又は苦役に服することはない。奴隷制度及び奴隷売買は、いかなる形においても禁止する。
第5条

  何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは屈辱的な取扱若しくは刑罰を受けることはない。

第6条
  すべて人は、いかなる場所においても、法の下において、人として認められる権利を有する。

第7条
  すべての人は、法の下において平等であり、また、いかなる差別もなしに法の平等な保護を受ける権利を有する。すべての人は、この宣言に違反するいかなる差別に対しても、また、そのような差別をそそのかすいかなる行為に対しても、平等な保護を受ける権利を有する。

第8条
  すべて人は、憲法又は法律によって与えられた基本的権利を侵害する行為に対し、権限を有する国内裁判所による効果的な救済を受ける権利を有する。

第9条
  何人も、ほしいままに逮捕、拘禁、又は追放されることはない。

第10条
  すべて人は、自己の権利及び義務並びに自己に対する刑事責任が決定されるに当っては、独立の公平な裁判所による公正な公開の審理を受けることについて完全に平等の権利を有する。

第11条
1 犯罪の訴追を受けた者は、すべて、自己の弁護に必要なすべての保障を与えられた公開の裁判において法律に従って有罪の立証があるまでは、無罪と推定される権利を有する。
2 何人も、実行の時に国内法又は国際法により犯罪を構成しなかった作為又は不作為のために有罪とされることはない。また、犯罪が行われた時に適用される刑罰より重い刑罰を科せられない。

第12条
  何人も、自己の私事、家族、家庭若しくは通信に対して、ほしいままに干渉され、又は名誉及び信用に対して攻撃を受けることはない。人はすべて、このような干渉又は攻撃に対して法の保護を受ける権利を有する。

第13条
1 すべて人は、各国の境界内において自由に移転及び居住する権利を有する。
2 すべて人は、自国その他いずれの国をも立ち去り、及び自国に帰る権利を有する。

第14条
1 すべて人は、迫害を免れるため、他国に避難することを求め、かつ、避難する権利を有する。
2 この権利は、もっぱら非政治犯罪又は国際連合の目的及び原則に反する行為を原因とする訴追の場合には、援用することはできない。

第15条
1 すべて人は、国籍をもつ権利を有する。
2 何人も、ほしいままにその国籍を奪われ、又はその国籍を変更する権利を否認されることはない。

第16条
1 成年の男女は、人権、国籍又は宗教によるいかなる制限をも受けることなく、婚姻し、かつ家庭をつくる権利を有する。成年の男女は、婚姻中及びその解消に際し、婚姻に閲し平等の権利を有する。
2 婚姻は、両当事者の自由かつ完全な合意によってのみ成立する。
3 家族は、社会の自然かつ基礎的な集団単位であって、社会及び国の保護を受ける権利を有する。

第17条
1 すべて人は、単独で又は他の者と共同して財産を所有する権利を有する。
2 何人も、ほしいままに自己の財産を奪われることはない。

第18条
  すべて人は、思想、良心及び宗教の自由に対する権利を有する。この権利は、宗教又は信念を変更する自由並びに単独で又は他の者と共同して、公的に又は私的に、布教、行事、礼拝及び儀式によって宗教又は信念を表明する自由を含む。

第19条
  すべて人は、意見及び表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉を受けることなく自己の意見をもつ自由並びにあらゆる手段により、また、国境を越えると否とにかかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由を含む。

第20条
1 すべての人は、平和的集会及び結社の自由に対する権利を有する。
2 何人も、結社に属することを強制されない。

第21条
1 すべて人は、直接に又は自由に選出された代表者を通じて、自国の政治に参与する権利を有する。
2 すべて人は、自国においてひとしく公務につく権利を有する。
3 人民の意志は、統治の権力の基礎とならなければならない。この意思は、定期のかつ真正な選挙によって表明されなければならない。この選挙は、平等の普通選挙によるものでなければならず、また、秘密投票又はこれと同等の自由が保障される投票手続によって行われなければならない。

第22条
  すべて人は、社会の一員として、社会保障を受ける権利を有し、かつ、国家的努力及び国際的協力により、また、各国の組織及び資源に応じて、自己の尊厳と自己の人格の自由な発展とに欠くことのできない経済的、社会的及び文化的権利を実現する権利を有する。

第23条
1 すべて人は、勤労し、職業を自由に選択し、公正かつ有利な勤労条件を確保し、及び失業に対する保護を受ける権利を有する。
2 すべて人は、いかなる差別をも受けることなく、同等の勤労に対し、同等の報酬を受ける権利を有する。
3 勤労する者は、すべて、自己及び家族に対して人間の尊厳にふさわしい生活を保障する公正かつ有利な報酬を受け、かつ、必要な場合には、他の社会的保護手段によって補充を受けることができる。
4 すべて人は、自己の利益を保護するために労働組合を組織し、及びこれに参加する権利を有する。

第24条
  すべて人は、労働時間の合理的な制限及び定期的な有給休暇を含む休息及び余暇をもつ権利を有する。

第25条
1 すべて人は、衣食住、医療及び必要な社会的施設等により、自己及び家族の健康及び福祉に十分な生活水準を保持する権利並びに失業、疾病、心身障害、配偶者の死亡、老齢その他の不可抗力による生活不能の場合は、保障を受ける権利を有する。
2 母と子とは、特別の保護及び援助を受ける権利を有する。すべての児童は、嫡出であると否とを問わず、同じ社会的保護を受ける。

第26条
1 すべて人は、教育を受ける権利を有する。教育は少なくとも初等の及び基礎的の段階においては、無償でなければならない。初等教育は、義務的でなければならない。技術教育及び職業教育は、一般に利用できるものでなければならず、また、高等教育は、能力に応じ、すべての者にひとしく開放されていなければならない。
2 教育は、人格の完全な発展並びに人権及び基本的自由の尊重の強化を目的としなければならない。教育は、すべての国又は人種的若しくは宗教的集団の相互間の理解、寛容及び友好関係を増進し、かつ、平和の維持のため国際連合の活動を促進するものでなければならない。
3 親は、子に与える教育の種類を選択する優先的権利を有する。

第27条
1 すべて人は、自由に社会の文化生活に参加し、芸術を鑑賞し、及び科学の進歩とその恩恵とにあずかる権利を有する。
2 すべて人は、その創作した科学的、文化的又は美術的作品から生ずる精神的及び物質的利益を保護される権利を有する。

第28条
  すべて人は、この宣言に掲げる権利及び自由が完全に実現される社会的及び国際的秩序に対する権利を有する。

第29条
1 すべて人は、その人格の自由かつ完全な発展がその中にあってのみ可能である社会に対して義務を負う。
2 すべて人は、自己の権利及び自由を行使するに当っては、他人の権利及び自由の正当な承認及び尊重を保障すること並びに民主的社会における道徳、公の秩序及び一般の福祉の正当な要求を満たすことをもっぱら目的として、法律によって定められた制限にのみ服する。
3 これらの権利及び自由は、いかなる場合にも、国際連合の目的及び原則に反して行使してはならない。

第30条
  この宣言のいかなる規定も、いずれかの国、集団又は個人に対して、この宣言に掲げる権利及び自由の破壊を目的とする活動に従事し、又はそのような目的を有する行為を行う権利を認めるものと解釈してはならない。



--------------------------------------------------------------------------------


  日本国憲法(抄)

   昭和21年11月3日公布
   昭和22年5月3日施行

 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

 第3章 国民の権利及び義務

第10条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

第15条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2 すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

第16条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

第17条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

第18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならい。

第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

第23条 学問の自由は、これを保障する。

第24条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

第27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。

第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

第29条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

第30条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第32条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

第33条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

第34条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、拘留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第35条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

第36条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

第37条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制手続により証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

第38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

第39条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

第40条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の判決を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

 第10章 最高法規

第97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。



--------------------------------------------------------------------------------


  人権教育及び人権啓発の推進に関する法律

   平成12年11月29日制定
   平成12年12月6日施行

 (目的)
第1条 この法律は、人権の尊重の緊要性に関する認識の高まり、社会的身分、門地、人種、信条又は性別による不当な差別の発生等の人権侵害の現状その他人権の擁護に関する内外の情勢にかんがみ、人権教育及び人権啓発に関する施策の推進について、国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにするとともに、必要な措置を定め、もって人権の 擁護に資することを目的とする。

 (定義)
第2条 この法律において、人権教育とは、人権尊重の精神の涵養を目的とする教育活動をいい、人権啓発とは、国民の間に人権尊重の理念を普及させ、及びそれに対する国民の理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動(人権教育を除く。)をいう。

 (基本理念)
第3条 国及び地方公共団体が行う人権教育及び人権啓発は、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて、国民が、その発達段階に応じ、人権尊重の理念に対する理解を深め、これを体得することができるよう、多様な機会の提供、効果的な手法の採用、国民の自主性の尊重及び実施機関の中立性の確保を旨として行われなければならない。

 (国の責務)
第4条 国は、前条に定める人権教育及び人権啓発の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (地方公共団体の責務)
第5条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との連携を図りつつ、その地域の実情を踏まえ、人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (国民の責務)
第6条 国民は、人権尊重の精神の涵養に努めるとともに、人権が尊重される社会の実現に寄与するよう努めなければならない。

 (基本計画の策定)
第7条 国は、人権教育及び人権啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、人権教育及び人権啓発に関する基本的な計画を策定しなければならない。

 (年次報告)
第8条 政府は、毎年、国会に、政府が講じた人権教育及び人権啓発に関する施策についての報告を提出しなければならない。

 (財政上の措置)
第9条 国は、人権教育及び人権啓発に関する施策を実施する地方公共団体に対し、当該施策に係る事業の委託その他の方法により、財政上の措置を講ずることができる。


附則
(施行期日)
第1条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第8条の規定は、この法律の施行の日の属する年度の翌年度以後に講じる人権教育及び人権啓発に関する施策について適用する。
(見直し)
第2条 この法律は、この法律の施行の日から3年以内に、人権擁護施策推進法(平成8年法律第120号)第3条第2項に基づく人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策の充実に関する基本的事項についての人権擁護推進審議会の調査審議の結果をも踏まえ、見直しを行うものとする。



--------------------------------------------------------------------------------


「人権教育のための国連10年」和歌山県行動計画
~人権文化の創造を目指して~(抄)


□和歌山県行動計画策定の趣旨

 21世紀のキーワードは、「平和・人権・環境」と言われています。平成6年(1994年)12月、国際連合は人権教育を通じ、個人の尊厳を確立し、世界平和の礎を築くため、平成7年(1995年)から平成16年(2004年)までの10年間を「人権教育のための国連10年」と定め、全ての政府に対し人権尊重の強化のための教育啓発の推進を呼びかけました。
 これを受け、我が国においても平成7年12月に内閣総理大臣を本部長とする「人権教育のための国連10年」推進本部を設置し、真に人権が尊重される社会の実現を目指し平成9年7月4日に「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画が策定されました。
 本計画は、「国内行動計画」の趣旨に沿って、それをより具体的なものとして推進するため、本県における人権問題の現状を明らかにするとともに、今後の取り組むべき人権教育啓発の基本的な方向をまとめたものです。私たちの身の回りにはわが国固有の人権問題である同和問題をはじめ、女性、子ども、高齢者、障害者などの人権にかかわる深刻な問題が存在しています。また、科学技術の進歩や急速な情報化の進行が一方で新たな人権問題を生んでいます。本計画の目標は、<人権が尊重される社会づくり>と<人権文化の創造>です。すべて県民がお互いの人権を尊重し合い、どの地域にあっても、どんな立場にあっても和歌山に住んで良かったと実感できる社会の実現を目指し、あらゆる場を通じて人権教育啓発の総合的な取組を行っていきます。

  「人権教育」とは
 「知識と技術の伝達及び態度の形成を通じ、人権という普遍的文化を構築するために行う研修、普及及び広報努力」であると「人権教育のための国連10年行動計画」において定義されています。


□和歌山県行動計画の目標

<人権が尊重される社会づくり>
 人権が尊重される社会とは、一人ひとりの尊厳が認められ、個人が個人として生き生きと輝いて生きていける社会を言います。しかし、私たちの社会には様々な尺度で「違い」を作り、そのことによって人間の尊厳をないがしろにすることがあります。「違う」ということで差別したり、排除したりすることは、人間の尊厳を侵すことであり、重大な人権侵害です。一人ひとりが自立した人間としての尊厳を自覚し、お互いを認め合いながら共生することのできる社会の形成につとめることが大切です。

<人権文化の創造>
「人権尊重は大切なこと」という考え方は、戦後50年間にわたる教育により普及してきました。しかし、その考え方は私たちの暮らしの中に本当に根づいているのでしょうか。本音とは別に建て前だけのことになっていないでしょうか。私たちが知らず知らずのうちに身につけてきた方言や日常のあいさつなどのように、人権尊重の精神や人権感覚が日常生活のあらゆる言動に自然とあふれ、文化となるような取組が大切です。


□人権文化を創造するための共通認識

 人権問題はすべての人の日常的な問題であり、特定の人の特定の問題ではありません。ここでは、人権教育啓発を推進していくための共通認識として8つの視点を記述しました。8つの視点を踏まえ、あらゆる場を通じて様々な角度から身の回りの人権問題を見つめ直し、人権問題に対する感性を高めるとともに、重要課題である同和問題をはじめ女性、子ども、高齢者、障害者などの人権問題の解決につなげていくことが大切です。

(1)「点検と気付き」からの始まり
 日常生活の中で、知らず知らずのうちに誰かの人権を侵害してしまっていることがあります。人権を侵害している側は、相手の人権について全く気づいていなかったり、若しくはそのことを深刻な問題であるという認識に欠けていたりします。人権は侵害される側には重大で深刻な問題であるという認識が必要です。人権に対する「点検と気付き」が人権文化を創造するための第一歩です。

(2)「人権意識の継続」からの始まり
 私たちは普段生活しているとき、特に人権ということを意識することなく過ごしています。人権尊重の精神が社会に定着するためには、このような状況を克服し、人権についての意識を普段から持ち続けることが大切です。この人権に対する意識の継続的な持続が、人権を普遍的な文化とするための第一歩です。

(3)「偏見からの脱却」からの始まり
 人権侵害につながる言動の背景には、偏見や誤った知識、迷信などに基づくものが多く見受けられます。人権教育啓発を通じ、人権問題に対する正しい理解と認識を深めることにより、私たちの心の中に潜む偏見や誤った考え方を払拭し、人々の心に人権尊重の意識を育むことが社会に人権文化を根づかせる第一歩です。

(4)「世間体からの脱却」からの始まり
 私たちの日常生活の中で、「世間体」とか、「世間のしきたり」、「他の人が皆そうしている」というようなことに自分の行動や考えが流されてしまい、そのことによって他の人の人権を侵害してしまうことがよくあります。自分も大勢の側にいるという安心感から、少数の人の気持ちに対する配慮に欠け、少数の人の人権を侵害してしまうのではないでしょうか。世間体に流されることなく、常に自立した個人として主体的に考える習慣を身につけることが社会に人権文化を根づかせる第一歩です。

(5)「家意識からの解放」からの始まり
 「家意識」や「一族意識」が私たちの考えや行動を束縛し、個人の尊厳を損なうことがあります。家族や親族の絆は大切なものであり、それを守り発展を願うことは自然なことですが、「家意識」や「一族意識」の中に誤った古い因習や考えが潜み、そのことが人権侵害につながることがあります。これらの誤った古い因習や考え方を人権という視点から積極的に打破していくことが、人権を文化として定着させる第一歩です。

(6)「多様性の容認」からの始まり
 普段の生活の中では同じ基盤にある者同士が集まり、行動したり、考えたりする傾向があります。そして、同じ行動をしない者、同じ考えをしない者を避けようとする傾向があります。このような傾向は、自分と同質でない者をよそ者として排除し、認めないという人権侵害につながることがあります。
社会は自分と同質の者ばかりで構成されているわけではありません。様々な違いを認め合い、その違いをお互いに尊重し合うことが人権を普遍的文化として根づかせるための第一歩です。

(7)「痛みの共感」からの始まり
 私たちの身の回りには様々な差別があります。差別のあらわれ方はそれぞれ異なりますが、人権が侵されるという点で共通であり、またお互いに関わり合って存在しています。様々な差別はそれぞれの特性をもっていますが、私たちは誰でも、自分の経験する辛さや痛みを通して、他の異なる差別の痛みを共感することができます。私たちの回りにある様々な差別の痛みを共感し、差別を一つひとつなくすよう努力を積み重ねていくことが、人権文化を構築するための第一歩です。

(8)「共生の心」からの始まり
 人は社会の中でひとりだけで生きているのではなく、お互いに支え合って生きています。私たちは普段自分の人権が守られているとき、それは自分以外の人の努力によるということを忘れがちになっています。自分中心で相手の人権を顧みないようでは、真に人権が尊重される社会とは言えません。自分の人権を守るということは、あらゆる人の、あらゆる人権を守っていくことでもあるのです。
 人権について考えるとき、常に自分の人権と他人の人権が相互に関連しているものであることを認識していくことが、人権を普遍的文化としていくための第一歩です。


□重要課題の現状と人権教育啓発の視点

 人権教育啓発というと、ともすれば具体性を欠き、概念的なものになりがちです。しかし、前に述べたように人権問題は特定の人の特定の問題ではありません。人権問題は私たちが今生きているこの社会の現実の問題であり、家庭、学校、地域、職場などのあらゆる場におけるあらゆる社会関係において生じる具体的な問題です。人権教育啓発を抽象的なものに終わらせないためには、私たちの身の回りの具体的な人権問題の現状を把握しておくことが大切です。

 ここでは、人権問題についての議論をあらゆる場において深めていく手がかりとして、国内行動計画の重要課題である9項目についての現状と教育啓発の視点を人権という観点から記述しました。人権教育啓発を進めるに当たっては、前節で記述した「点検と気付き」「人権意識の継続」「偏見からの脱却」などの「人権文化を創造するための共通認識」を踏まえ、各課題についての正しい理解と認識を深め、各課題の解決につなげていくことが大切です。

 人権問題は大変幅が広く奥行きの深い問題であり、人権に関わる課題は国内行動計画の重要課題に限られるものではありませんが、一つの人権問題を学ぶことにより他の人権問題への理解が深まります。また、様々な人権問題を学ぶことにより新しい展望が開けていくものです。ここで例示した人権問題を通して人権感覚を養い、あらゆる人権問題の解決へと広がりを持たせることが大切です。

<同和問題>
○同和問題に対する正しい理解と認識を深め、同和問題の解決を自分自身の課題としてとらえ、差別や偏見の払拭に努めよう!
○差別事象を教材として研修会等で学ぶことにより、根深い差別の現実について理解を深めよう!

<女性の人権>
○あらゆる分野において男女が平等な立場で参画するために、「男は仕事、女は家庭」などという固定的な性別役割分担意識の解消に努めよう!
○歴史的・社会的・文化的に作られてきた性差(ジェンダー)を固定化する慣習やしきたりを見直そう!

<子どもの人権>
○子どもを人格をもった一人の人間として尊重し、意見を表明する機会を積極的に設けることなどを通じて子ども自身が権利の主体であるという認識を持とう!
○子どもに対し、自らの人権が保障されていると同時に、他人の人権を尊重しなければならないということを教えよう!

<高齢者の人権>
○高齢者の尊厳についての正しい理解と認識を深め、心豊かな長寿社会を目指そう!
○高齢者が地域で安心して快適な生活を送れるよう、地域全体で高齢者を支え合おう!

<障害者の人権>
○障害や障害者の問題は、障害者の立場に立って、その理解と認識を深め、障害者に対する偏見や差別を取り除こう!
○障害者の立場からバリアフリーのまちづくりを考え、点字ブロックの上に自転車を置かないなど身近なことからみんなにやさしい「福祉のまちづくり」に取り組もう!

<外国人の人権>
○外国の文化や風習、歴史について正しい理解と認識を深め、理解不足から生じる差別や偏見の払拭に努めよう!
○人種、民族、国籍の違いを越え、個人として尊重し合い、共に生きる地域社会の形成に努めよう!

<HIV感染者等の人権>
○エイズやハンセン病などの感染症に対する正しい理解と認識を深めよう!
○患者・感染者やその家族がいじめや不当な取扱いをうけないような地域社会の形成に努めよう!

<アイヌの人々の人権>
○アイヌ語やアイヌ伝統文化に対する理解を深め、アイヌの人々の文化を尊重しよう!
○アイヌの人々に対する差別や偏見を払拭しよう!

<刑を終えて出所した人の人権>
○刑を終えた人やその家族に対する先入観を払拭し、偏見や差別をなくしましょう!
○刑を終えて更生しようとする人を受け入れる社会環境を育もう!


□人権教育啓発の推進

 人権はすべての人にとって極めて大切なものであり、人権が尊重される社会はすべての人の願いです。私たち一人ひとりが人権意識の高揚を図り、人権を文化として育んでいかなければなりません。そのためには、生涯学習の視点に立って、すべての人が人権問題を自らの課題ととらえた自発的な学習活動の推進を図っていかなければなりません。

「人権教育のための国連10年」は、すべての人の人権が尊重され、人々が平和で豊かな生活を営む社会を実現するために、人権教育啓発の機会をあらゆる場を通じて提供することを提案しています。そしてまた、人権に関わりの深い特定の職業に従事する者に対しても改めて人権という原点に立ち返った教育啓発の強化を求めています。

 県行政において積極的に人権教育啓発を推進することはもちろん、国の地方機関や地方自治体、民間団体等の取組との連携や支援を行うとともに、家庭、学校、地域、職場等においてそれぞれの独自の取組が行われるよう働きかけてまいります。

 和歌山県は、
  あらゆる場を通じて人権教育啓発を実施します。
  あらゆる場を通じた人権教育啓発を支援します。
  あらゆる場を通じて人権教育啓発が行われるよう働きかけます。

〔学校教育における人権教育啓発の推進〕
<幼稚園>
○友達と一緒に活動する楽しさを知ることにより、人と支え合って生活する力を育てるようにします。
○友達とのコミュニケーションの中で、言ってはいけないことやしてはいけないことがあることに気付くようにします。
○動植物など、生命あるものに直接ふれる体験を通して、生きることや命の大切さに気付くようにします。

<小学校> 
○児童が日常生活において、人権尊重の精神に沿った行動ができるよう指導するとともに、差別をすることがいかに間違っているかに気付かせ、公正で合理的なものの見方ができるよう指導します。
○学校の教育活動全体を通して、人権尊重にかかわる指導を進め、同和問題をはじめ、女性、高齢者、障害者などの人権問題について正しく理解、認識するための基礎を身につけるようにします。
○友達の喜びや悲しみを共感を持って受け止めるとともに、お互いが持つ違いや良さを認め合い、尊重する中で、学級や学校の中にある様々な問題に対し、全員で考え、解決していこうとする態度を育てます。
○児童一人ひとりの基礎的な学力の一層の向上、多様な個性の伸張を図るとともに、自発的・主体的に学習し、相互に助け合い、共に向上しようとする態度を育てます。
○いじめなど弱い立場の人に対する人権侵害に対し、傍観することなく、断じて許さない態度を育てます。

<中学校>
○すべての生徒に科学的、合理的なものの見方や考え方及びお互いに人権を尊重し、協力し合う生活態度を身につけるようにします。
○人権教育の推進に当たっては、生徒の発達段階や学校・地域の実態に即した指導計画を作成し、学校の教育活動全体を通して、同和問題をはじめ、女性、高齢者、障害者などの人権問題とのかかわりの中で、正しい知識を身につけるようにします。
○部落差別の歴史、現在の部落差別の事実等について、自分の生き方や生活とのかかわりの中で正しく認識させ、同和問題の解決を自らの課題とする自覚を育てるとともに、あらゆる差別をなくす意欲と実践力をもった生徒を育てます。
○友達の喜びや悲しみを共感をもって受け止めると共に、お互いが持つ違いや良さを認め合い、尊重する中で、学級や学校の中にある様々な問題に対し、自らの問題として全員で考え、解決していこうとする態度を育てます。
○家庭、地域との連携を密にしながら、基本的な生活習慣を身につけ、意欲をもって学習に取り組む生徒の育成に努めます。
○生徒の進路を阻む不合理な差別的取り扱いの排除に努めるとともに、就職先等での実態の把握に努めます。
○社会の様々な問題に対して関心を持ち、自らの問題として傍観することなく積極的に取り組む態度を育てます。

<高等学校>
○学校の全教育活動を通じて、同和問題をはじめ、女性、高齢者、障害者などの人権問題に対する認識を深め、差別の解消に向けて、主体的、積極的に取り組む態度を育成します。
○生徒の進路を阻む不合理な差別的取り扱いを排除し、就職・進学の機会均等の確保に努めます。
○社会教育との連携を図り、様々な人権に対する家庭や地域の理解と協力を得られるように努めます。

<盲・ろう・養護学校>
○学校や身近な生活の中にある問題を通して、人権の大切さを指導していきます。
○自己の人権の大切さに気付かせ、あわせて他の人びとの人権を大切にする心を育成します。
○小学校、中学校、高等学校との連携や交流を図り、互いに理解し合う教育を実践します。

〔社会教育における人権教育啓発の推進〕
<公民館等>
  公民館をはじめとする社会教育施設において、人権問題についての啓発を図るとともに、人権に関わる諸課題についての学級・講座を開設するなど学習機会の充実に努めます。

<社会教育関係団体>
  PTAや女性団体などの社会教育関係団体に対し、人権問題を取り入れた指導者研修会を開催するなど人権教育の推進に努めます。

<青少年団体> 
  青少年団体に対し、「世界人権宣言」や「児童の権利条約」の周知に努めるとともに、青少年自らが権利の主体であるということを認識し、すべての人が「人間らしく生きる」社会の実現に向けて、前進していけるための活動に取り組むよう働きかけます。

<識字教育>
  識字問題の啓発を通して「世界人権宣言」の周知を図るとともに、文字の読み書きが不自由な人をなくすための識字教育の推進に努めます。

〔企業その他一般社会における人権教育啓発の推進〕
<企業>
○人権意識の高揚を図るための教育啓発の推進を企業等に働きかけます。
○企業等に対して就職の機会均等を確保するための公正な採用選考システムの確立が図られるよう指導・啓発を行います。

<各種団体>
 人権意識の高揚を図るための研修会の実施や「世界人権宣言」や「人権教育のための国連10年」について会員に対し周知を図るよう、各種団体に対し働きかけます。

<県民広報>
 広報紙「県民の友」、テレビ、ラジオ、電光ニュース等の多様な広報媒体を活用し、県民の方々に対し、「人権教育のための国連10年」の周知に努め、様々な人権意識の高揚を図るための広報を実施します。


□和歌山県行動計画の目標達成に向けて

① 本計画の推進のために、本県においては「人権教育のための国連10年」和歌山県推進本部を中心に全庁あげて人権教育啓発を総合的に推進します。
 本県が策定した各種の計画、プラン、指針等における人権教育啓発に関しては本計画の推進を基本として取組を進めるものとします。

② 本計画を県民全体にくまなく浸透させていくために「人権教育のための国連10年」和歌山県推進本部を軸に国の地方機関、市町村、民間団体等との連携体制の整備を図り人権教育啓発の推進をします。

③ 人権尊重気運の盛り上がりのためには、社会全般での取組が大切であり、市町村や民間団体等を中心とした地域社会での独自の人権教育啓発の取組を期待します。

④ 本計画の目標年次は「人権教育のための国連10年」の目標年次である平成16年(2004年)とします。なお、「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画の変更があった場合や「人権擁護施策推進法」の動向等により本計画に変更を加える必要が生じた場合には本計画の見直しを行います。