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人権に関するデータベース

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地方公共団体関係資料

香川県人権教育・啓発に関する基本計画
情報の種類 地方公共団体関係資料
タイトル 香川県人権教育・啓発に関する基本計画
時期 2004/01/01
主体名 香川県
【 内容 】

香川県人権教育・啓発に関する基本計画

1 はじめに
 21世紀は、「人権の世紀」と言われています。これには、二度の世界大戦や
冷戦後の各地の局地紛争、経済開発の優先による地球規模での深刻な環境破
壊・環境汚染等により人類に多くの災いをもたらした 20世紀の経験を踏まえ、
全人類の幸福が実現する時代にしたいという全世界の人々の願望が込められ
ています。
 人権とは、人々が生存と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利です。
人権は、すべての人間が人間の尊厳に基づいて持っている固有の権利であり、
何よりも大切なものです。この人権の尊重こそが、すべての国々の政府とすべ
ての人々の行動基準となるよう期待されています。
 我が国の人権状況を見ると、基本的人権の尊重を基本原理とする日本国憲法
のもとに、人権尊重主義は次第に定着しつつあると言えます。しかし、国内外
から、公的制度や諸施策そのもののあり方に対して人権の視点からの意見があ
るほか、公権力と国民との関係や国民相互の関係においてさまざまな人権問題
が存在すると指摘されています。また、社会の複雑化、人々の権利意識の高揚、
価値観の多様化等に伴い、従来あまり問題視されなかった分野においても、各
人の人権が強く認識されるようになってきました。
 本県においては、学校や職場はもとより家庭や地域のあらゆる場を通じて人
権教育・啓発を推進するとともに、女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題
等の個別人権課題の解決に積極的に取り組み、県民の人権尊重意識の高揚に努
めてきました。しかし、今日においても、生命・身体の安全にかかわる事象や、
不当な差別等の人権侵害がなお存在しており、近年の国際化、情報化、高齢化
等の進展に伴い、新たな人権問題も生じています。
 このような人権問題が存在する要因としては、人々の中に見られる同質性・
均一性を重視しがちな性向や非合理な因習的な意識、物の豊かさを追い求め心
の豊かさを軽視する社会的風潮、社会における人間関係の希薄化の傾向等が挙
げられますが、その根底には、一人一人に人権尊重の理念、すなわち、「自分
の人権のみならず他人の人権についても正しく理解し、その権利の行使に伴う
責任を自覚して、人権を相互に尊重しあうこと(人権共存の考え方)」につい
ての正しい理解がいまだ十分に定着したとは言えない状況があることが指摘
されています。
 すべての個人が自律した存在として、それぞれの幸福を最大限に追求するこ
とができる平和で豊かな社会を実現するためには、一人一人が人権尊重の理念
について正しく理解することが重要であり、そのために行われる人権教育・啓
発の果たす役割は極めて大きいと言えます。
 なお、人権教育・啓発は、一人一人の意識の問題に帰着するものであり、本
来社会を構成する人々の相互の間で自発的に取り組まれるべきものです。しか
し、さまざまな人権問題が存在する本県の現状にかんがみれば、人権教育・啓
発に関する施策の推進について責任を負う県は、自らその積極的推進を図り、
他の実施主体とも連携しつつ、県民の努力を促すことが重要です。
 本県では、このような認識に立ち、本基本計画に基づき、人権が共存する人
権尊重社会の実現に向け、人権教育・啓発に関する施策を総合的かつ計画的に
推進します。

2 人権をめぐる動き

(1)国際社会における取り組み
世界平和を希求して 1945(昭和 20)年 10月に創設された国際連合は、 1948(昭和 23)年 12月に「世界人権宣言」を採択し、その第1条で「すべての
人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等
である。」と全世界に表明しました。
 それ以降、国際連合は世界人権宣言の理念を実効性のあるものとするため、
「国際人権規約」、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」、「女
子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」、「障害者の権利宣言」
等の多くの人権に関する条約や宣言を採択するとともに、「国際婦人年」、「国
際児童年」、「国際障害者年」等の国際年を定め、人権が尊重される世界の実
現をめざして取り組んできました。
 一方、人権教育の重要性の高まりを受け、1974(昭和49)年 11月の第 18
回ユネスコ総会において「国際理解、国際協力及び国際平和のための教育並
びに人権及び基本的自由についての教育に関する勧告」が採択されました。
また、1993(平成5)年6月、世界人権宣言採択 45周年を機にこれまでの人
権活動の成果を検証し、現在直面している問題や今後進むべき方向を協議す
ることを目的としてウィーンで開催された「世界人権会議」では、人権教育
の重要性が強調されました。これを受けて、1994(平成6)年 12月の第 49
回国際連合総会では、1995(平成7)年から 2004(平成16)年までの 10年
間を「人権教育のための国連 10年」とすることが決議され、各国において人
権教育を積極的に推進するよう行動計画が示されました。

(2)国における取り組み
 我が国は、1947(昭和 22)年5月に施行された日本国憲法において「自由
権」、「法の下の平等」、「社会権」等の基本的人権を保障するとともに、国際
連合が採択した「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」、「女子
に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」等の国際人権諸条約を締
結し、人権尊重社会の形成に努めてきました。
 「人権教育のための国連 10年」に関しては、1995(平成7)年 12月に内
閣総理大臣を本部長とする「人権教育のための国連 10年推進本部」が設置さ
れ、1997(平成9)年7月には国内行動計画が策定されました。
 また、1996(平成8)年5月の地域改善対策協議会の意見具申等を踏まえ、
1997(平成9)年3月に「人権擁護施策推進法」が施行されました。同法で
は、人権の擁護に関する施策の推進について、国の責務が明記されるととも
に、これらの施策の推進に関する基本的事項を調査審議するための「人権擁
護推進審議会」の設置が定められました。
 同審議会は、1999(平成 11)年7月に「人権尊重の理念に関する国民相互
の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基
本的事項について」、また、2001(平成13)年5月に「人権救済制度の在り
方について」関係大臣に対して答申を行いました。
 さらに、2000(平成12)年 12月には、「人権教育及び人権啓発の推進に関
する法律」が施行されました。同法では、人権教育・啓発に関する国、地方
公共団体及び国民の責務が明記され、また、人権教育・啓発に関する基本的
な計画の策定が国に義務づけられました。そして、2002(平成14)年3月、
同法に基づく国の基本計画が策定されました。

(3)本県における取り組み
 本県では、1972(昭和47)年に策定した「香川県長期振興計画」や引き続
き策定した「香川県県民福祉総合計画」、「香川県 21世紀長期構想」において、
社会福祉の増進、生活環境の改善、産業の振興、職業の安定、教育の充実等
に向けた取り組みを行ってきました。
 また、1998(平成 10)年3月に知事を本部長とする「香川県人権教育のた
めの国連 10年推進本部」を設置し、1999(平成11)年3月には、本県にお
ける人権教育の基本方針と施策の方向を示す「「人権教育のための国連 10年」
香川県行動計画」を策定しました。
 2000(平成 12)年6月には、21世紀最初の 10年間の県政運営の基本指針
となる「香川県新世紀基本構想」を策定しました。この構想では、「安全で快
適な生活空間」、「ささえあい、安心して暮らせる社会」、「きらめく個性、豊
かな心」、「創造性と活力あふれる地域」及び「新時代の基盤」を施策体系の
柱としています。
 特に、人権教育・啓発に関しては、「ささえあい、安心して暮らせる社会」
の実現のための重要な柱として、「人権が尊重される社会の構築」を位置づけ、
学校や職場はもとより家庭や地域のあらゆる場を通じて「普遍的な人権教
育・啓発活動の推進」に努めるとともに、女性、子ども、高齢者、障害者、
同和問題、外国人、HIV感染者等の「個別の人権課題に対応した人権教育・
啓発活動の推進」に積極的に取り組んでいます。

3 計画の基本的考え方

(1)計画策定の趣旨
 本県においては、あらゆる場を通じて人権教育・啓発を推進するとともに、
個別人権課題に積極的に取り組んできましたが、不当な差別等の人権侵害が
なお存在しています。また、社会経済情勢の変化により、新たな人権問題も
生じてきており、より一層効果的な取り組みが求められています。
 また、地方分権の推進に伴い、県は、国や市町等との新たな関係を構築す
るとともに、限られた財源をもとに、自己決定と自己責任の原則に立ち、県
民のニーズ、地域の実情、緊急性等に応じた独自の施策を効率的に展開する
ことが求められています。
 さらに、近年、県民の県政への参加意識が高まってきており、人権教育・
啓発の分野においても、情報公開はもとより、政策立案過程における県民参
画、実施過程におけるボランティア団体やNPO法人等との協働が求められ
ています。
 本県では、これらの課題を踏まえ、人権教育・啓発に関する施策を総合的
かつ計画的に推進するため、本基本計画を策定します。

(2)計画の基本的理念
 この計画は、県民一人一人が、学校や職場はもとより家庭や地域のあらゆ
る場において実施される人権教育・啓発を通じて、人権尊重の理念、すなわ
ち、人権共存の考え方について正しく理解することにより、人権が尊重され
る社会を構築し、すべての個人が自律した存在としてそれぞれの幸福を最大
限に追求することができる平和で豊かな社会の実現をめざすことを基本的理
念とします。

(3)計画の性格
①「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」に関する本県の基本計画
として、中長期的展望に立って、今後の人権教育・啓発の基本方針と施策
の方向を定めるものであり、国の基本計画の趣旨を踏まえたものです。
②「香川県新世紀基本構想」との整合性を保ち、本県の他のさまざまな施
策に関する諸計画に対しては、人権教育・啓発に係る基本的計画としての
性格を有するものです。
③「「人権教育のための国連 10年」香川県行動計画」を踏まえ、より充実
した内容のものとするものです。

4 人権教育・啓発の推進

(1)人権教育・啓発の意義と目的
① 人権教育
 人権教育とは、「人権尊重の精神の涵養を目的とする教育活動」を意味
し(「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」第2条)、「国民が、
その発達段階に応じ、人権尊重の理念に対する理解を深め、これを体得す
ることができるよう」にすることを旨としており(同法第3条)、人権尊
重の精神が正しく身につくよう、地域の実情を踏まえつつ、学校教育と社
会教育を通じて推進されます。
 学校教育については、それぞれの学校種の教育目的や目標の実現をめざ
して、自ら学び自ら考える力や豊かな人間性等を培う教育活動を組織的か
つ計画的に実施するものであり、こうした学校の教育活動全体を通じ、幼
児児童生徒、学生の発達段階に応じて、人権尊重の意識を高める教育を行
っていきます。
 また、社会教育については、生涯学習の視点に立って、学校外において、
青少年のみならず、幼児から高齢者に至るそれぞれのライフサイクル(生
涯過程)における多様な教育活動を展開していくことを通じて、人権尊重
の意識を高める教育を行っていきます。
 こうした学校教育と社会教育における人権教育によって、人々が、自ら
の権利を行使することの意義、他者に対して公正・公平であり、その人権
を尊重することの必要性、さまざまな課題等について学び、人間尊重の精
神を生活の中に生かしていくことが重要です。

② 人権啓発
 人権啓発とは、「国民の間に人権尊重の理念を普及させ、及びそれに対
する国民の理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動(人権教
育を除く。)」を意味し(「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」
第2条)、「国民が、その発達段階に応じ、人権尊重の理念に対する理解
を深め、これを体得することができるよう」にすることを旨としています
(同法第3条)。すなわち、広く人権尊重思想の普及高揚を図ることを目
的に行われる研修、情報提供、広報活動等で人権教育を除いたものであり、
一人一人が人権を尊重することの重要性を正しく認識し、これを前提とし
て他人の人権にも十分に配慮した行動がとれるようにすることを目的とし
ています。

(2)人権教育・啓発の現状と課題
① 人権教育
 本県では、学校や地域社会等におけるあらゆる学習の場を通じて、人権
教育に取り組んでいます。
 学校教育においては、人権教育に関する種々の研修を通じて教職員の資
質向上を図りつつ、学習用指導資料の配布や、人権教育の実践に対する指
導助言等を通じて、学校での人権教育の推進に努めています。各学校にお
いては、幼児児童生徒一人一人を大切にした教育を進める中で、家庭や地
域社会、校種間の連携を図りながら、社会科をはじめとする各教科や道徳、
特別活動、総合的な学習の時間等で、発達段階に応じて、人権の意義や大
切さを教えるとともに、さまざまな人権課題についての正しい理解とその
解決に向けた学習を行っています。また、人権集会での意見発表、障害者
や高齢者との交流活動等の実践的取り組みも多くの学校で実施されていま
す。
 しかし、学校での人権教育については、その内容や手法が、ともすると
知識・理解の面にとどまる傾向があるため、豊かな人権感覚が十分には育
ちにくいこと、教職員の人権尊重理念についての認識を更に高める必要が
あること等の課題が指摘されています。
 社会教育においては、人権問題の解決に向け、一人一人の人権意識を高
めることができるよう、学校や家庭・地域社会との連携を大切にしながら、
公民館等での研修講座の開催や各地域における人権講演会の実施、研修資
料や各種パンフレットの配布等を行うことにより、家庭や地域社会の人々
に対する人権教育の推進に取り組んでいます。指導者育成についても、社
会教育指導者等に対する研修を通じて、その資質向上に努めています。ま
た、家庭は子どもの人権意識を育てる上で非常に重要な場であることから、
幼・小・中学校等の保護者に対して、人権教育に関する家庭用指導資料を
配布するなど、家庭教育の支援に努めています。
 しかし、近年、人権問題の複雑化・多様化が進む中にあって、更に総合
的な推進が必要となっていること、知識伝達型の傾向が見られる研修内容
について改善の必要があること等の課題が指摘されています。

② 人権啓発
 本県では、広く県民を対象に、さまざまな啓発活動を展開しています。
具体的には、人権週間等節目となる機会をとらえて全県的な取り組みを展
開しているほか、イベント的要素を取り入れ明るく楽しい雰囲気の中でよ
り多くの人々に人権問題を考えてもらう「じんけんフェスタ」の開催、街
頭キャンペーンの実施、啓発ポスター・パネル展の開催等、年間を通して
さまざまな啓発活動を実施しています。啓発手法としては、人権一般や個
別の人権課題に応じて作成するリーフレット・パンフレット・啓発ポスタ
ー等の配布、人権に関する講習会・研修会等の開催、新聞広報やテレビ・
ラジオのスポットの放送等のマスメディアを活用した啓発活動を行うなど、
多種多様な手法を用いるとともに、それぞれに創意工夫を凝らしています。
また、人権啓発のより一層効果的な推進を図るとの観点から、国、市町、
公益法人、民間団体、企業等と連携を図りながら、各種啓発活動を実施し
ています。
 しかし、昨今、その内容や手法が必ずしも県民の興味・関心・共感を呼
び起こすものになっていないことや、実施主体間の連携が不十分であるこ
と等の問題点が指摘されています。

(3)人権教育・啓発の基本的あり方
 人権教育・啓発は、人権尊重社会の実現をめざして、憲法や教育基本法等
の国内法、人権関係の国際条約等に即して推進していくべきものであり、そ
の基本的あり方としては、計画策定の趣旨等を踏まえると、次のような点を
挙げることができます。

① 発達段階に応じた創意工夫
 人権教育・啓発に当たっては、人権の意義や重要性が知識として確実に
身につき、人権問題を直感的にとらえる感性や日常生活において人権への
配慮がその態度や行動に現れるような人権感覚が十分に身につくようにし
ていくことが極めて重要です。このため、対象者の発達段階に応じながら、
その対象者の日常生活の経験等を具体的に取り上げるなど、創意工夫を凝
らしていく必要があります。その際、人格が形成される早い時期から、人
権尊重の精神の芽生えが感性としてはぐくまれるよう努める必要がありま
す。

② 効果的な手法の採用
 人権教育・啓発の手法については、法の下の平等、個人の尊重といった
人権一般の普遍的な視点からのアプローチと、具体的な人権課題に即した
個別的な視点からのアプローチとがあり、この両者があいまって人権尊重
の理念についての理解が深まっていくものと考えられます。この両者に十
分配慮しながら、人権教育・啓発を進めていく必要がありますが、個別的
な視点からのアプローチに当たっては、地域の実情等を踏まえるとともに、
人権課題に関して正しく理解し、物事を合理的に判断する精神を身につけ
ることができるように働きかける必要があります。

③ 多様な機会の提供
 人権教育・啓発は、県民の一人一人の生涯の中で、学校や職場はもとよ
り家庭や地域のあらゆる場を通じて実施されることにより効果を上げるも
のと考えられます。従って、人権教育・啓発の各実施主体は、人権に関す
る多様な学習機会を県民に提供することが重要です。

④ 県民参加の促進と行政の中立性の確保
 人権教育・啓発は、本来社会を構成する人々の相互の間で自発的に取り
組まれるべきものであり、県民一人一人が自分自身の課題として人権尊重
の理念についての理解を深めるよう努める必要があります。このため、人
権教育・啓発の推進に当たっては、県民の主体的な参加を促進するととも
に、その内容はもとより実施の方法等においても、県民から幅広く理解と
共感を得られるよう、行政の主体性や中立性を厳に確保することが重要で
す。なお、人権教育・啓発は、県民一人一人の心のあり方に密接にかかわ
る問題であることから、行政はもとより民間団体等においても、押しつけ
にならないように十分留意する必要があります。

⑤ 実施主体間の連携
 人権教育・啓発は、さまざまな実施主体によって行われています。今日、
人権問題がますます複雑化・多様化する傾向にある中で、これをより一層
総合的かつ効果的に推進していくためには、これら人権教育・啓発の各実
施主体がそれぞれの役割と責任を踏まえた上で、相互に有機的かつ補完的
な関係を構築できるよう連携を強化することが重要です。

⑥ 評価を踏まえた取り組み
 人権教育・啓発を効果的に推進するためには、取り組みの必要性や有効
性等を客観的に評価し、次なる取り組みに反映させることが重要です。
また、差別意識の解消に向けた教育・啓発に当たっては、これまでの同
和教育や啓発活動の中で積み上げられてきた成果とこれまでの手法への評
価を踏まえることが重要です。

⑦ 特定の職業に従事する者に対する人権教育・啓発の強化
 公務員、教職員、警察職員等の人権にかかわりの深い特定の職業に従事
する者は、人権尊重の理念を十分理解した上で、それぞれの業務に当たる
必要があります。従って、人権教育・啓発の推進に当たっては、これらの
者に対する研修等の取り組みを強化することが重要です。

(4)人権教育・啓発の推進方策
① 人権教育
 人権教育は、学校教育と社会教育のあらゆる場を通じて、相互の密接な
連携のもと、総合的かつ計画的に推進されなければなりません。このため、
県教育委員会では、2003(平成15)年3月に、これからの人権教育推進の
指針として、「香川県人権教育基本方針」を策定しました。今後、この基本
方針に基づき、人権教育の積極的な推進に努めます。

ア 学校教育における人権教育
 学校教育においては、学校(園・所)における推進体制を確立すると
ともに、人権教育を教育計画に位置づけた上で、保育や各教科、道徳、
特別活動等の特質に配慮しながら、これまでの同和教育の成果を生かし
つつ、次のような基本的な考え方のもと、教育活動全体を通じて推進し
ます。

(ア)理解・認識の深化と意欲・態度の育成に向けた指導の充実
 人権についての理解と認識を深め、人権を尊重する意欲や態度を育
成するため、指導内容や方法の充実に努めます。そのため、学校(園・
所)においては、人権課題の当事者による講演会や人権フィールドワ
ークをはじめとする、人権の意義やさまざまな人権課題の理解に役立
つ学習活動を取り入れたり、ボランティア活動や参加型学習等の主体
的に取り組む体験活動を導入するなど、多様な教育実践の推進に努め
ます。また、日常生活の中の不合理を敏感に感じ取る感性や、人権尊
重の気持ちが態度として自然に現れるような豊かな人権感覚を育てる
指導法の開発に努めます。さらに、これらの取り組みを促進するため、
指導資料を整備するとともに、学校(園・所)に対する実践事例及び
学習教材等の情報提供や、その活用についての指導助言を行います。

(イ)人権意識の基礎の育成に向けた指導の充実
 人権意識を身につけるための基礎を培うため、人権尊重の視点に立
った教育指導や学校運営の充実に努めます。そのため、学校(園・所)
においては、自己をかけがえのない存在として認識する中で、人権が
すべての人に保障され、尊重されなければならないということを認識
できるよう、自尊感情の育成に向けた支援のあり方についての工夫や、
いじめや仲間はずれ等のない、相互の違いも含め認めあうことのでき
る仲間づくりを進めます。また、個に応じた学習指導や、一人一人の
人権を大切にした学校運営を通じて、安心して楽しく学ぶことのでき
る環境づくりを推進します。

(ウ)地域社会等との連携の強化
 社会奉仕活動等の多様な体験活動や、地域の人々との交流機会の充
実等を通じて、人権教育を効果的に推進するため、地域社会との連携
の強化を図ります。また、学校(園・所)においては、家庭における
人権教育の重要性を示しながら、家庭の協力のもとに人権教育を推進
できるよう、保護者との連携に努めます。さらに、幼児児童生徒の発
達段階を考慮しながら、適時性・系統性を踏まえた一貫性ある指導が
行えるよう、保・幼・小・中・高の連携を推進します。

(エ)大学等における人権教育への協力
 大学等においては、人権尊重の理念についての理解を更に深め、そ
れまでの教育の成果を確かなものとすることが重要です。また、大学
等は、社会のさまざまな分野での人材養成を担っているという観点か
らも人権教育の一層の充実が求められています。このため、大学等の
自主的判断により、法学教育等のさまざまな分野において、人権教育
に関する取り組みに一層の配慮がなされるよう、情報提供等の協力に
努めます。

(オ)教職員研修の充実
 すべての教職員は、人権尊重の理念に関する十分な理解と認識をも
つとともに、幼児児童生徒に対する人権教育の実践的指導力を身につ
ける必要があります。そのため、人権や人権問題についての知識・理
解を深める研修や、指導方法等に関する研修の充実に努めます。

(カ)評価の実施
 講座内容等に関する参加者からの意見・感想の集約や、幼児児童生
徒の変容の把握、教職員間での授業研究等を通じて実践に対する評価
を行い、今後の取り組みに反映させます。

イ 社会教育における人権教育
 社会教育においては、生涯学習の視点に立ち、人権問題を単に知識と
して学ぶだけでなく、すべての人が豊かな人権感覚を身につけることが
できるよう、次のような基本的な考え方のもと、人権教育を推進します。

(ア)理解・認識の深化と意欲・態度の育成に向けた学習の充実
 人権についての理解と認識を深め、人権を尊重する意欲や態度を育
成するため、学習内容や方法の充実に努めます。そのため、知識・理
解のみにとどまらず、差別をなくし人権を尊重する姿勢が身につくよ
う、公民館等での講演会や現地での学習会等のほか、ボランティア活
動等、主体的に取り組む体験活動を取り入れた学習の推進に努めます。
 また、日常生活において、人権尊重意識に基づく態度や行動が無意
識のうちに現れるよう、人権感覚を育成する学習プログラムの開発に
努めます。そして、効果的な学習方法や実践事例及び指導資料等につ
いて市町等に情報提供を行うとともに、その活用についての指導助言
を行います。

(イ)人権意識形成のための家庭教育の充実
 家庭は、幼児期における自尊感情の育成や子どもの成長過程におけ
る人権意識の形成のために重要な場であることから、家庭教育の充実
を図ります。親が差別や偏見を許さないという姿勢を子どもに示すこ
とは特に重要であるため、保護者に対する学習機会の充実や、家庭用
指導資料の整備、家庭教育に役立つさまざまな情報の提供に努めます。
また、父親の家庭教育への参加促進や、保護者等に対する子育ての不
安や悩みについての相談体制の充実等を図ります。

(ウ)多様な学習機会の提供
 県民の主体的な参加を促進するため、身近な課題や地域の実情に応
じたテーマを取り入れたり、社会奉仕活動等の体験活動や参加体験型
学習、人権に関する行事等の企画運営に携わる参画型の学習を導入す
るなど、学習内容を創意工夫することにより、多様で魅力ある学習機
会の提供を図ります。

(エ)国や市町等との連携の強化
 各実施主体の協力関係のもと、施策を総合的かつ効果的に推進する
ため、国や市町及び社会教育団体との連携に努めます。また、地域の
実態に応じた人権教育を進めるため、学校(園・所)・家庭・地域間の
連携を促進します。

(オ)指導者の養成と資質向上
 地域社会における人権教育の推進は、指導者に負うところが大きい
ことから、研修講座や指導資料等の充実を図ることにより、指導者の
養成と資質向上に努めます。

(カ)評価の実施
 講座内容や運営方法に関する、参加者からのアンケートによる意
見・感想の集約等を通じて、実践に対する評価を行い、今後の取り組
みに反映させます。

②人権啓発
 人権啓発は、その内容はもとより実施の方法においても、県民から幅広
く理解と共感が得られるものでなければなりません。このため、次のよう
な基本的な考え方のもと、人権啓発を推進します。

ア社会情勢を踏まえた内容の充実
 内閣府が 2003(平成 15)年2月に実施した「人権擁護に関する世論調
査」では、憲法施行後 50年以上を経過した今日においても、基本的人権
が侵すことのできない永久の権利として憲法で保障されていることにつ
いて、20%の人が知らないと答えています。このため、憲法をはじめと
した人権にかかわる国内法令や国際条約の周知を図るなど、人権に関す
る基本的な知識の普及に努めます。
 また、近年、いじめや児童虐待、ストーカー行為、近隣でのトラブル
に起因する事件等、日常生活のあらゆる場面において、ささいなことか
ら簡単に人が殺傷される事件が跡を絶たず、人の生命を尊重する意識が
薄れてきていることが指摘されています。このため、生命の尊さ・大切
さや、自己がかけがえのない存在であると同時に他人もかけがえのない
存在であること、他人との共生・共感の大切さを真に実感できるような
取り組みを進めます。
 さらに、世間体や他人の思惑を過度に気にする一般的な風潮や横並び
意識の存在等が安易な事なかれ主義に流れたり、人々の目を真の問題点
から背けさせる要因となり、各種差別の解消を妨げている側面があるこ
とから、これらの風潮や意識の是正を図ることが必要です。このため、
異なる個性を前提とし、互いの違いを認め、尊重しあうことの大切さに
ついて県民に訴えかけます。

イ 県民参加型の啓発活動の実施
 県民一人一人に人権尊重の理念を普及し、それに対する県民の理解を
深めるため、県民参加型の人権啓発イベントを国、市町、関係団体、NPO法人等と連携して開催するとともに、各課題別の啓発活動を定期的
かつ重点的に実施します。
 また、ボランティア団体やNPO法人等による啓発活動を促進し、県
民が幅広く人権問題について主体的に考え、体験できる機会の充実に努
めるとともに、県民参加型の啓発活動に役立つ教材や資料等について、
人権教育担当部門と連携しながら充実を図ります。

ウ 親しみやすくわかりやすい情報の発信
情報の発信に当たっては、啓発対象となる年齢層等を考慮し、具体的
な事例を活用しながら、県民の視覚や感性に訴えるものにするなど、県
民に親しみやすいものとするとともに、民間の斬新なアイデアや手法を
活用するなどして創意工夫を凝らし、明瞭でわかりやすいものとするよ
う努めます。また、より多くの県民に効率的に人権尊重の理念の重要性
を伝えるため、テレビ、ラジオ、新聞等のマスメディアやインターネッ
トを活用した啓発活動を推進します。

エ 人権啓発の拠点施設の活用
 人権啓発は社会を構成する人々の相互の間で取り組まれるべきもので
あることから、最終的な人権啓発の主体は県民であると言えます。この
ため、地域のコミュニティ施設である公民館や隣保館等が、住民に身近
な人権啓発の拠点としての機能を十分に果たすことができるよう支援に
努めます。
 また、県民一人一人が人権尊重の理念についての理解を深めることが
できるよう、本県の人権啓発の拠点施設である「香川県人権啓発展示室」
の利用の促進を図ります。

オ 関係機関等との連携の強化と協働の推進
 各実施主体の協力関係のもと、施策を総合的かつ効果的に推進するた
め、市町等で構成する「香川県人権啓発推進会議」や高松法務局等で構
成する「香川県人権啓発活動ネットワーク協議会」等との連携を強化し
ます。また、ボランティア団体やNPO法人等の民間団体についても、
人権啓発の実施主体として重要な一翼を担っていくことが期待されてい
ることから、それぞれの役割や立場を尊重しつつ、協働の推進に努めま
す。

カ 企業における人権啓発の支援
 人権が企業活動を含めてあらゆる活動の国際基準として尊重されるす
う勢にあることから、企業は、個々の実情や方針等に応じて、自主的、
計画的、継続的に事業所内における啓発活動を展開することが大切です。 
また、事業所の規模等に応じて人権啓発のための運営体制を構築するこ
とも重要です。このため、啓発資料の作成や提供等を通じ、企業におけ
る啓発活動が充実するよう支援に努めます。

キ 指導者等の養成・活用
 県民一人一人の人権尊重の理念についての理解を深めるためには、地
域や職場等に密着したきめ細かな啓発活動を粘り強く実施していくこと
が重要です。このため、啓発の中核的な役割を担う指導者等の養成や資
質の向上に努めるとともに、各人権課題別の専門家等の情報を収集・整
理し、その活用を図ります。

ク 評価の実施
 県民の人権問題に関する意識調査、各啓発活動の参加者からのアンケ
ートによる意見・感想の集約等を通じて、実践に対する評価を行い、今
後の取り組みに反映させます。


5 個別人権課題への対応

(1) 女性
① 現状と課題
 本県では、「かがわ男女共同参画プラン」を2001(平成 13)年 11月に策定
するとともに、「香川県男女共同参画推進条例」を 2002(平成 14)年4月に
施行し、女性の人権が尊重され、真に心の豊かさを実感できる社会の実現
に向けた取り組みを進めています。
 しかし、人々の意識や行動、社会の習慣・慣行の中に男女の固定的な役
割分担意識が根強く残っています。また、雇用の場での管理職への登用や
地方公共団体の議員、各種審議会の委員や各団体の役員等、政策・方針決
定過程への女性の参画が進んでいない状況にあります。さらに、夫・パー
トナーからの暴力、セクシュアル・ハラスメント、性犯罪、売買春、スト
ーカー行為等の女性に対する暴力が社会問題になっているほか、メディア
においては、性の商品化や暴力表現を扱った放送番組、出版物、ビデオ等
が多く見受けられます。
 こうした状況を踏まえ、女性の人権についての正しい理解と認識を促進
するとともに、女性へのあらゆる暴力の根絶や女性の社会参画の促進等に
向けた推進体制の充実や関係機関との連携の強化に努める必要があります。

② 施策の方向
ア 女性の人権についての理解と認識の促進
 男女の固定的役割分担意識の是正に向けて、県民一人一人がジェンダ
ーに敏感な視点に立って、職場、家庭、地域等のさまざまな場での慣習・
慣行の見直しを進めることができるよう、あらゆる機会と媒体を活用し
た啓発活動を推進します。
 また、男女が相互に理解・協力し、それぞれの個性や能力を主体的に
発揮して人間性豊かに生きるためには、人権意識に基づいた男女平等観
を確立することが必要であることから、家庭、学校、地域等の社会のあ
らゆる分野において男女平等を推進する教育・学習の充実に努めます。

イ 女性へのあらゆる暴力の根絶
 夫・パートナーからの暴力、セクシュアル・ハラスメント、性犯罪、
売買春、ストーカー行為等の女性に対する肉体的、性的、心理的な傷害
や苦痛をもたらす、またはもたらすおそれのあるあらゆる暴力行為は、
女性の人権を侵害するものであるという認識が広く浸透するよう、啓発
活動を通じて、社会意識の醸成に努めます。
 また、被害者からの相談に適切に対応できるよう相談機能の充実を図
るとともに、被害者のプライバシーの保護や精神的打撃に配慮しつつ、
暴力の潜在化の防止、被害者の救済・保護への取り組みの充実に努めま
す。

ウ 社会参画の促進
 政策・方針決定過程への参画はもとより、職場、地域社会活動、国際
交流等のあらゆる分野に、男女が対等な構成員として参画することがで
き、社会の発展に貢献できるよう社会参画を促進します。特に、県の審
議会等への女性委員の参画については、2005(平成17)年度末までに30%
以上、2010(平成 22)年度末までに概ね 40%以上にすることを目標とし
ています。このため、啓発活動の充実はもとより、女性の人材育成にか
かる情報収集・提供や地域指導者の養成を推進します。

エ 性と生殖に関する健康・権利に関する意識の浸透
 リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康・権利)の
視点から、女性のライフサイクルを通じた健康上の問題の重要性につい
て男性を含め、広く社会全体の認識が高まり、積極的な取り組みが行わ
れるよう機運の醸成を図るとともに、学習機会の提供や啓発活動を通し
て、正しい知識や情報の提供に努めます。

オ メディアにおける女性の人権尊重の確保
 メディアが自主的に女性の人権を尊重した表現を行うよう、関係業界
に働きかけるとともに、女性への暴力の発生に影響を及ぼす可能性のあ
る有害環境の浄化のための取り組みを推進するとともに、県の広報・出版
物の内容や表現が性別に基づく固定観念にとらわれたものにならないよ
う努めます。

(2)子ども
① 現状と課題
 本県では、「新香川県子育て支援計画(かがわエンゼルプラン 21)」を 2001(平成 13)年3月に策定し、「子どもの権利の尊重」を重点推進プランと
して位置づけ、虐待やいじめの問題に早期かつ適切に対応できる体制強化
やその防止につながる施策の充実に向けた取り組みを進めています。
 しかし、少子化の進行、都市化や核家族化の進展、夫婦共働き家庭の一
般化、家庭や地域社会における子育て機能の低下等が進む中で、子どもを
取り巻く環境は一層厳しさを増してきています。例えば、児童虐待が社会
問題になっているほか、児童買春・児童ポルノ、薬物乱用等の子どもの健
康や福祉を害する犯罪も見受けられます。また、学校をめぐっては、暴力
行為やいじめ、不登校等の問題が依然として憂慮すべき状況にあります。
さらに、少年非行についても、刑法犯検挙人員のうち、少年が占める割合
は約半分となり全国平均を上回るなど、厳しい状況にあります。
 こうした状況を踏まえ、子どもの人権についての正しい理解と認識を促
進するとともに、子どもへのあらゆる暴力の根絶やいじめ問題の解決等に
向けた推進体制の充実や関係機関との連携の強化に努める必要があります。

② 施策の方向
ア 子どもの人権についての理解と認識の促進
 児童憲章や「児童の権利に関する条約」の趣旨を踏まえ、すべての子
どもが差別や権利の侵害を受けることなく、人格を持った一人の人間と
して尊重されるよう、あらゆる機会と媒体を活用した啓発活動を推進し
ます。
 また、学校教育と社会教育を通じて、憲法や教育基本法の精神に則り、
人権尊重の意識を高める教育の一層の推進に努めるとともに、子どもの
社会性や豊かな人間性をはぐくむ観点から、社会体験活動や自然体験活
動等を積極的に推進します。

イ 子どもへのあらゆる暴力の根絶
 児童虐待、体罰、児童買春等の子どもに対する肉体的、性的、心理的
な傷害や苦痛をもたらす、またはもたらすおそれのあるあらゆる暴力行
為は、子どもの人権を侵害するものであるという認識が広く浸透するよ
う、啓発活動を通じて、社会意識の醸成に努めます。
 また、被害を受けた子どもに対する救済・保護を目的とした相談体制
の強化に努めます。特に、児童虐待については、子ども女性相談センタ
ーや西部子ども相談センターの機能の充実を図るとともに、保健、医療、
福祉、教育、警察等の関係機関や地域住民が一体となってネットワーク
を構築し、早期発見や子どもの安全確保に重点を置いた対応に努めます。
また、再発を防止するため、虐待を受けた子どもの心のケアや、虐待を
行った保護者等に対するカウンセリングの充実を図ります。

ウ いじめ問題の解決
 いじめ問題についての教員に対する研修をさらに充実するとともに、
児童生徒や保護者等が気軽に悩みを相談できるよう、学校、教育委員会、
関係機関からなるサポートチームを組織するなど支援体制の整備を図り
ます。
 また、学校、家庭、地域社会が連携し、児童生徒が、なかま意識や自
分を大切にする気持ちを育てるために、さまざまな体験活動や集団活動
の機会や場の提供に努めます。

エ 青少年の健全育成の推進
 青少年の自主企画による事業の実施、諸外国の青少年との交流等の社
会参加活動の促進、リーダーの育成等を通して、青少年の自主性・社会
性を育てる活動機会の拡充を図ります。
 また、地域の中で心豊かでたくましい子どもを育てるため、家庭・学
校・地域や関係機関・団体がともに連携し、一体となって、地域の大人
みんなで積極的に子どもたちと関わり、はぐくむ県民運動を展開します。
 さらに、青少年の福祉を阻害する映像、広告物等の取締りを行うなど、
香川県青少年保護育成条例の適切な運用を図り、家庭・学校・地域や関
係機関・団体が一体となって青少年を取り巻く社会環境の浄化の促進や
非行防止に関する啓発活動の充実に努めます。

(3)高齢者
① 現状と課題
 本県では、「香川県高齢者保健福祉計画」を 2003(平成 15)年3月に策
定し、高齢者が住み慣れた家庭や地域の中で、自立と社会参加が保障され、
みんなでささえあいながら、安心して生活できる社会の構築に向けた取り
組みを進めています。
 しかし、今後、高齢化のさらなる進展により、寝たきりや痴呆等の介護
を必要とする高齢者が増加するとともに、核家族化の進展により、高齢者
のみの世帯や高齢者の一人暮らし世帯が増加すると見込まれています。こ
のような状況の中、高齢者の人権にかかわる問題としては、虐待やその有
する財産権の侵害が指摘されているほか、社会参加の困難性等が挙げられ
ます。さらに、職業生活からの引退や配偶者との死別等により、孤独感に
陥ったり、生きがいを失うという問題もあります。
 こうした状況を踏まえ、高齢者の人権についての正しい理解と認識を促
進するとともに、高齢者へのあらゆる暴力の根絶、高齢者の雇用と社会参
加の促進等に向けた推進体制の充実や関係機関との連携の強化に努める必
要があります。

② 施策の方向
ア 高齢者の人権についての理解と認識の促進
 高齢者に対する誤った先入観や固定観念を改め、高齢者が社会の重要
な担い手として主体的に社会参加をすることができるよう、あらゆる機
会と媒体を活用した啓発活動を推進します。
 また、学校教育においては、高齢化の進展を踏まえ、教育活動全体を
通じて、高齢者に対する尊敬や感謝の心を育てるとともに、高齢社会に
関する基礎的理解や介護・福祉の問題等の課題に関する理解を深めるた
めの教育を推進します。

イ 高齢者へのあらゆる暴力の根絶
 虐待や財産権の侵害等の高齢者に対する肉体的、心理的な傷害や苦痛
をもたらす、またはもたらすおそれのあるあらゆる暴力行為は、高齢者
の人権を侵害するものであるという認識が広く浸透するよう、啓発活動
を通じて、社会意識の醸成に努めます。
 また、関係機関との連携のもと、介護や日常生活の悩みごとに関する
相談に対応するとともに、虐待等への対応や成年後見制度の普及と利用
の促進を図ります。

ウ 雇用の促進
 雇用施策を実施する国の機関等と密接な連携関係を構築し、相互の施
策の連携・協力を進めるとともに、高齢者が長年にわたり培ってきた知
識、経験等を活用し、できるだけ長く現役として働くことができる社会
を実現するため、定年の引き上げ等による安定した雇用の促進を図りま
す。また、高齢者個々の就業ニーズに応じた就業機会の確保を図るため、
シルバー人材センターの設置促進等に努めます。

エ 生きがいづくりと社会参加の促進
 高齢者人口の増加に伴い、高齢者自身の意識やライフスタイルが多様
化していることに配慮しつつ、高齢者が豊富な経験や能力を生かし、社
会において重要な役割を果たしながら生きがいを持って充実した生活を
送ることができるよう、社会参加活動の促進、多世代交流の促進に努め
ます。

(4) 障害者
① 現状と課題
 本県では、「かがわ障害者プラン」を2003(平成15)年3月に策定し、
障害者にとっても安心して暮らせる、住みがいのある「かがわ」の構築に
向けた取り組みを進めています。また、「香川県福祉のまちづくり条例」を
1996(平成8)年4月に施行し、すべての人が、住み慣れた地域の中で安
心して生活でき、積極的に社会参加できるような福祉のまちづくりを推進
しています。
 しかし、障害者が活動していく中では、さまざまな物理的、心理的、社
会的なバリア(障壁)のために不利益を被ることが多く、その自立と社会
参加が阻まれていることがあります。また、障害についての理解不足等に
より、偏見や差別意識を持たれることもあり、そのことが、障害者に対す
る虐待等につながるという問題も指摘されています。さらに、精神障害者
に関しては、偏見や差別意識の存在による社会復帰の困難性が指摘されて
います。
 こうした状況を踏まえ、障害者の人権についての正しい理解と認識を促
進するとともに、障害者へのあらゆる暴力の根絶や障害者の雇用の促進等
に向けた推進体制の充実や関係機関との連携の強化に努める必要がありま
す。

② 施策の方向
ア 障害者の人権についての理解と認識の促進
 障害や障害者に対する偏見や差別意識を解消し、障害の有無にかかわ
りなく、誰もがささえあいながらともに生きる共生社会を実現するため、
あらゆる機会と媒体を活用した啓発活動を推進します。
 また、学校教育においては、障害のある子どもに対する理解と認識を
促進するため、小・中学校等や地域における交流活動を通じて、児童生
徒、保護者及び教職員等に対する啓発活動を推進するとともに、障害者
に対する理解や、福祉の問題等に関する理解を深めるための教育を推進
します。

イ 障害者へのあらゆる暴力の根絶
 虐待や差別的発言等の障害者に対する肉体的、性的、心理的な傷害や
苦痛をもたらす、またはもたらすおそれのあるあらゆる暴力行為は、障
害者の人権を侵害するものであるという認識が広く浸透するよう、啓発
活動を通じて、社会意識の醸成に努めます。
 また、障害者相談所や障害者支援センターを中心とした関係機関の連
携のもと、障害者からのさまざまな相談に対応し、また、虐待等への対
応や成年後見制度の活用を含む支援を実施できるような体制づくりを進
めるとともに、適切な指導や苦情を解決する仕組みづくりに努めます。

ウ 雇用の促進
 雇用施策を実施する国の機関等と密接な連携関係を構築し、相互の施
策の連携・協力を進めるとともに、障害者雇用促進運動を展開し、事業
主をはじめ広く県民に対し、障害者雇用に関する理解を深めるための啓
発活動を実施します。また、技能労働者として働く障害者の能力に関す
る理解と認識を深め、障害者の雇用促進と地位の向上に努めます。

エ 社会参加の促進
 障害者のスポーツや文化活動への支援、障害者のさまざまな活動をサ
ポートするボランティアの推進等、障害者がさまざまな生活経験を広げ
ていくための環境づくりを進めます。

(5)同和問題
① 現状と課題
 本県では、「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する
法律」失効後の同和行政の推進に関する具体的な施策の方向を明らかにし
た「香川県同和行政推進計画」を 2002(平成 14)年3月に策定し、同和地
区住民の自立と自己実現を支援するという視点に立ち、一般対策を有効か
つ適切に活用することを基本として、同和地区住民の生活の安定と向上を
図るための施策を総合的に推進するとともに、県民の同和問題に対する正
しい理解と認識の徹底を図るための取り組みを進めています。また、1996(平成8)年7月には、結婚と就職に際しての差別事象の発生を防止する
ことを目的として、「香川県部落差別事象の発生の防止に関する条例」を施
行しました。
 しかし、本県が 2000(平成 12)年に実施した「香川県同和地区実態把握
調査」や「同和問題に関する県民意識調査」の結果からは、日常生活を中
心に結婚や就職に際しての同和地区住民に対する偏見や差別意識が依然と
して存在していることがうかがえます。また、差別事象も跡を絶たず、同
和問題に対する県民の理解を妨げる「えせ同和行為」も依然として横行し
ています。
 こうした状況を踏まえ、同和問題についての理解と認識を促進するとと
もに、同和地区住民の雇用の促進や「えせ同和行為」の排除等に向けた推
進体制の充実や関係機関との連携の強化に努めることが必要です。

② 施策の方向
ア 同和問題についての理解と認識の促進
 同和問題に対する正しい理解と認識の徹底を図るためには、県民一人
一人がこの問題を自分自身の課題としてとらえることが必要です。この
ため、同和問題を人権問題の重要な柱としてとらえ、あらゆる機会と媒
体を活用した啓発活動を推進するとともに、福祉の向上や人権啓発の住
民交流の拠点である隣保館において日常生活に根ざした啓発活動の充実
が図られるよう支援に努めます。
 また、学校教育と社会教育を通じて、幼児児童生徒の発達段階や地域
の実態等に応じた同和教育の内容の充実を図るとともに、同和問題に対
する保護者の正しい理解と認識を深めるための保護者啓発の充実を図り
ます。

イ 雇用の促進
 雇用施策を実施する国の機関等と密接な連携関係を構築し、相互の施
策の連携・協力を進めるとともに、公正採用選考人権啓発推進員や事業
主を対象とした講演会を計画的に開催して、本人の適性や能力に応じた
公正な採用選考に関する啓発を推進するとともに、この講演会を活用し
て、同和問題についての正しい理解と認識を深め、差別意識の解消に努
めます。

ウ 「えせ同和行為」の排除
 「えせ同和行為」は、同和問題を口実とする不当な要求や行為であり、
差別意識の解消に向けて、これまでなされてきた啓発の効果を一挙に覆
し、同和問題に対する誤った意識を植えつける大きな原因となっていま
す。また、「えせ同和行為」の横行は、行政や企業等の適正な活動の障害
となるものであり、到底これを放置することはできません。このため、
法務局等の関係機関と連携しながら、適切な対応等について事業主をは
じめ広く県民に対し周知を図るなど、「えせ同和行為」排除に向けた取り
組みに努めます。

(6)外国人
① 現状と課題
 本県では、真に国際化された社会の実現をめざし、外国人が同じ地域に
住むことを当然とする意識の醸成を図るとともに、地域社会への外国人の
積極的な参加を促進するなど、県民と在住外国人とが協力関係を築くこと
ができる環境の整備に努めています。
 しかし、現実には、外国人に対する雇用や入居等の日常生活における摩
擦が時として生じています。そして、その背景には、我が国の地理的条件
や歴史的経緯等に加え、人種、言語、宗教、文化、習慣等の違いへの理解
不足からくる外国人に対する偏見や差別意識の存在等が挙げられます。こ
れらの偏見や差別意識は、県民と在住外国人との相互理解の増進により着
実に改善の方向に向かっていますが、未だ完全に解消されたという状況に
はありません。
 こうした状況を踏まえ、外国人の人権についての正しい理解と認識を促
進するとともに、社会参加の促進等に向けた推進体制の充実や関係機関と
の連携の強化に努めることが必要です。

② 施策の方向
ア 外国人の人権についての理解と認識の促進
 外国人に対する偏見や差別意識を解消し、外国人の持つ文化、習慣等
の多様性を尊重するなど、国際化時代にふさわしい人権意識を育てるこ
とをめざした啓発活動を推進します。また、地域での交流や相互の文化、
習慣等を体験できる機会の提供等を通じ、県民と在住外国人の相互理解
と協力関係の構築を促進します。
 また、学校教育においては、教育活動全体を通じて、広い視野を持ち、
異文化を尊重する態度や異なる習慣・文化を持つ人々と共に生きていく
態度を育成するための教育の充実を図ります。

イ 社会参加の促進
 地域において外国人の積極的な社会参加を促すため、外国人のための
日本語講座の開催や人権、法律上のトラブルについて弁護士等による相
談を行うなど、関係機関との連携のもと、在県外国人への支援に努めま
す。

(7)ハンセン病回復者・HIⅤ感染者等
① 現状と課題
 本県では、「香川県感染症予防計画」を 1999(平成11)年5月に策定し、
感染症の予防と患者等の人権尊重との両立を基本とする観点から、人権に
配慮しつつ、良質かつ適切な医療の確保、早期の社会復帰のための環境の
整備、病気に関する正しい知識の普及啓発等に努めています。
 しかし、感染症についての理解不足等により、ハンセン病患者・回復者
やHIV感染者等が偏見や差別意識を持たれることが少なくありません。
 また、ハンセン病に関しては、1996(平成8)年に「らい予防法の廃止
に関する法律」が施行され、強制的な隔離政策は終結しましたが、療養所
入所者の多くは、長期にわたる隔離等により、家族・親族や地域社会との
関係が絶たれ、また、入所者自身の高齢化や後遺症による障害により、病
気が完治した後も療養所に残らざるを得ないなど、社会復帰が困難な状況
にあります。
 こうした状況を踏まえ、ハンセン病患者・回復者やHIⅤ感染者等の人
権についての正しい理解と認識を促進するとともに、社会復帰の促進等に
向けた推進体制の充実や関係機関との連携の強化に努めることが必要です。

② 施策の方向
ア ハンセン病回復者・HIV感染者等の人権についての理解と認識の促進
 ハンセン病患者・回復者やHIV感染者等に対する偏見や差別意識を
解消し、人間としての尊厳と自由を認めあい、共に生きる社会の実現を
めざして、感染症に関する啓発資料の作成・配布、各種イベントの開催
を行うなど、感染症とその感染者等への理解を深めるための啓発活動を
推進します。特に、ハンセン病に関しては、大島青松園の入所者等から
聞き取り調査した過去のハンセン病政策の実態についての記録や、大島
青松園を舞台としたドキュメンタリー映画等を、ハンセン病問題に対す
る県民の理解を深めるために活用します。また、大島青松園の入所者と
園外の住民との相互理解を深めるため、地域での交流等を促進します。
 また、学校教育においては、ハンセン病患者・回復者やHIV感染者
等に対する偏見や差別意識の解消を図るため、これらの感染症に関する
正しい知識を身につけるための教育を推進するとともに、そのための教
職員研修や指導資料の充実に努めます。

イ 社会復帰の促進
 ハンセン病患者・回復者等が自立した社会生活を送れるよう、関係機
関と連携して、適切な相談体制の充実等に努めます。

(8)犯罪被害者等
① 現状と課題
 近年、犯罪被害者やその家族の人権問題に対する社会的関心が大きな高
まりを見せており、犯罪被害者等に対する配慮と保護を図るための諸方策
を講じることが課題になっています。このため、本県では、犯罪被害者等
が、安全で平穏な生活を送るための取り組みを推進しています。
 犯罪被害者等は、犯罪行為により生命、身体又は財産に対して直接的な
被害を受けるだけでなく、事件に遭ったことで精神的ショックを受け、そ
の後の日常生活に支障をきたしたり、医療費の負担や失職・転職等によっ
て経済的に困窮する場合もあります。また、捜査や裁判の過程で精神的負
担や時間的負担を感じたり、さらには近隣の無責任なうわさ話やマスメデ
ィアの取材・報道による不快感から深刻なストレスを受けるなど、被害後、
新たに生じるさまざまな問題にも苦しめられています。
 こうした状況を踏まえ、犯罪被害者等の人権についての正しい理解と認
識を促進するとともに、犯罪被害者等の支援の充実等に向けた推進体制の
充実や関係機関との連携の強化に努めることが必要です。

② 施策の方向
ア 犯罪被害者等の人権についての理解と認識の促進
 県民一人一人が犯罪被害者等の人権に配慮することができる社会の実
現をめざして、犯罪被害者等への理解を深めるための啓発活動を推進す
るとともに、社会の風潮等に大きな影響力を持っているマスメディアの
自主的な取り組みが図られるよう理解を求めていきます。

イ 犯罪被害者等に対する支援の充実
 犯罪被害者等への情報提供、相談・カウンセリング体制の整備、捜査
過程における犯罪被害者等の負担軽減等の施策を推進するとともに、支
援ネットワークを柱とした関係機関との連携を強化して犯罪被害者等へ
の支援施策を一層充実させます。

(9)インターネットによる人権侵害
① 現状と課題
 インターネットには、電子メールのような特定の利用者間の通信のほか
に、ホームページのような不特定多数の利用者に向けた情報発信、電子掲
示板を利用したネットニュースのような不特定多数の利用者間の反復的
な情報の受発信等があり、情報化の急速な進展に伴い、現代社会の隅々ま
で普及しています。
 本県では、一般に許される限度を超えて他人の人権を侵害する悪質な情
報発信に対しては、憲法の保障する表現の自由に十分配慮しながら、プロ
バイダ等に対して当該情報等の停止・削除を申し入れるなど、業界の自主
規制を促すことにより個別的な対応を図っています。
 しかし、発信者に匿名性があり、情報発信が技術的・心理的に容易にで
きるといった面があることから、他人を誹謗中傷する表現や差別を助長す
る表現等の個人や集団にとって有害な情報の掲載等が跡を絶ちません。
 こうした状況を踏まえ、個人のプライバシーや名誉についての正しい理
解と認識を促進することが必要です。

② 施策の方向
 一般のインターネット利用者やプロバイダ等が個人のプライバシーや名
誉に関する正しい理解や認識を深めるための啓発活動を推進します。
 また、学校教育においては、情報に関する教科等において、インターネ
ット上の誤った情報や偏った情報をめぐる問題を含め、情報化が社会にも
たらす影響について知り、情報の収集・発信における個人の責任や情報モ
ラルについての理解を深めるための教育を推進します。

(10) その他
 以上の課題のほかにも、アイヌの人々、刑を終えて出所した人、同性愛者
等への差別といった問題が指摘されています。
 このような各種の問題についても、それぞれの問題状況に応じて、その解
決のための施策の検討を行います。

6 特定の職業に従事する者に対する人権教育・啓発の推進
 人権教育・啓発の推進に当たっては、人権にかかわりの深い特定の職業に従
事する者に対する研修等の取り組みが不可欠です。
 本県では、「人権教育のための国連 10年」香川県行動計画に基づき、公務員、
教職員、警察職員等の人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者に対する
研修等を実施してきましたが、今後も、研修プログラムや研修教材の充実を図
るなど、取り組みの強化に努めます。

(1) 公務員
 公務員は、全体の奉仕者として、基本的人権の尊重を基本原理の一つとす
る憲法を尊重し擁護するという責務を有しています。
 このため、県行政に従事する職員については、公務員としての責務と使命
を自覚し、人権問題に対する正しい理解と認識を深め、それぞれの分野にお
いて人権尊重の精神に立った行政施策の推進を図ることができるよう、自治
研修所等における研修の充実に努めます。また、各職場においても、県民の
立場に立った窓口接遇を徹底するなど、職員一人一人が日常的な職務の遂行
に当たって人権に配慮した適切な対応ができるよう努めます。
 県内において職務に従事しているその他の公務員についても、それぞれの
機関における人権教育・啓発の取り組みの充実が図られるよう、情報の提供
等の協力に努めます。

(2) 教職員
 教職員は、学校教育のあらゆる場を通じて、人権を尊重する意欲や態度を
身につけた子どもを育成するという役割を担っています。
 このため、すべての教職員が、人権問題についての深い認識と人権教育に
関する高い指導力のもと、人権尊重の精神に根ざした学校教育を展開できる
よう、県教育委員会においては、参加型学習等の効果的な手法を取り入れた
研修会の開催や各種指導資料の整備等を通じて、教職員研修の充実に努めま
す。研修内容については、いじめ等の人権にかかわる今日的課題の解決に向
けた学習機会を設けたり、教職員一人一人が子どもの人権に配慮した行動や
適切な対応を行っていくための内容を取り入れるなど、その充実に努めます。
また、県の関係課や市町教育委員会においても、人権問題に関するさまざま
な研修会等を実施しています。
 各学校(園・所)においては、子どもの実態に即し、全教職員の協力体制
のもと、学校が一体となって人権教育を推進し、人権尊重の考えに立った行
動がとれる子どもを育成できるよう、校内研修の充実に努めます。

(3) 警察職員
 警察職員は、個人の生命、身体及び財産を保護し、公共の安全と秩序を維
持するという責務を有しています。
 このため、警察職員が、個人の権利や自由を尊重した警察活動を徹底する
など、職務の遂行に当たって人権に配慮した適切な対応ができるよう、警察
学校における教育の充実に努めます。また、各職場においても、相談者、被
害者、被疑者等に対する適切な処遇の徹底が図られるよう、職場教養の充実
に努めます。なかでも、女性の犯罪被害者や少年問題等に対して、その特性
を理解した専門的な対応ができるよう、相談業務等に携わる職員の研修の充
実に努めます。

(4) 消防職員
 消防職員は、火災をはじめとする各種災害から県民の生命、身体及び財産
を守るという役割を担っています。
 このため、消防職員が、人命の尊重を第一義とした現場活動を徹底するな
ど、職務の遂行に当たって人権に配慮した適切な対応ができるよう、消防学
校における教育の充実に努めます。

(5) 保健・医療関係者
 医師、歯科医師、薬剤師、看護職員等の保健・医療関係者は、人の命と健
康を守ることを使命とし、疾病の予防や治療、保健指導等の役割を担ってい
ます。
 このため、保健・医療関係者が、個人のプライバシーへの配慮やインフォ
ームドコンセントの徹底を図るなど、職務の遂行に当たって人権に配慮した
適切な対応ができるよう、保健・医療関係専門職の養成施設や団体における
人権教育・啓発の取り組みの充実に向けた協力に努めます。

(6) 福祉関係者
 福祉事務所職員、民生委員・児童委員、社会福祉施設職員、ホームヘルパ
ー等の福祉関係者は、高齢者や障害者をはじめとするさまざまな人々の生活
相談や、身体介護等の役割を担っています。
 このため、福祉関係者が、個人のプライバシーへの配慮や人間の尊厳につ
いての認識の徹底を図るなど、職務の遂行に当たって人権に配慮した適切な
対応ができるよう、福祉関係専門職の養成施設や団体における人権教育・啓
発の取り組みの充実に向けた協力に努めます。

(7) マスメディア関係者
 新聞、テレビ、ラジオ等のマスメディアは、人々の人間形成や社会の風潮
に大きな影響力を持っていることから、人権教育・啓発の媒体として果たす
役割が極めて大きいと言えますが、一方では、個人の名誉やプライバシーを
侵害するなどの危険性も有しています。
 このため、マスメディア業界において人権教育・啓発のための自主的な取
り組みが行われるよう、情報の提供等に努めます。

(8) その他
 以上の者のほか、弁護士や司法書士等の人権にかかわりの深い特定の職業
に従事する者についても、それぞれの関係団体等における人権教育・啓発の
取り組みの充実が図られるよう、情報の提供等に努めます。

7 計画の推進
(1) 庁内の推進体制の充実
 人権教育・啓発の総合的かつ計画的な推進を図るため、「香川県人権・同和
政策本部」を中心とした関係部局の緊密な連携のもとに本基本計画を推進し
ます。また、関係部局は、本基本計画の趣旨を十分に踏まえて、その所掌に
属する施策に関する実施体制の整備・充実を図るなど、その着実かつ効果的
な実施を図ります。

(2) 国や市町等との連携・協力
 人権教育・啓発の総合的かつ効果的な推進を図るため、国、市町、公益法
人、民間団体、企業等との連携のもとに本基本計画を推進します。
また、本基本計画の趣旨を実現するためには、県民一人一人の理解と協力
が必要不可欠であることから、本基本計画の趣旨が広く県民に浸透するよう、
さまざまな機会をとらえてその周知を行います。

(3) 計画の見直し
 本県の人権をめぐる諸状況、人権教育・啓発の現状、県民の意識等につい て把握するよう努めるとともに、社会経済情勢の変化等に適切に対応するため、必要に応じて本計画の見直しを行います。