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人権に関するデータベース

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地方公共団体関係資料

高知県人権施策基本方針
情報の種類 地方公共団体関係資料
タイトル 高知県人権施策基本方針
時期 2000/03/01
主体名 高知県
【 内容 】

高知県人権施策基本方針

 すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利と
について平等である。世界人権宣言にうたわれているこの理念は、人類普
遍の原理であり、日本国憲法においても、法の下の平等及び基本的人権の
保障について定められている。

 この理念の下に、すべての人々がそれぞれ一人の人間として人を大切に
し、大切にされる人権尊重の社会をつくることは、私たちみんなの願いで
ある。
 
 しかし、現実社会には、同和問題をはじめ、女性、子ども、高齢者、障
害者、HIV 感染者等、外国人などに対する人権侵害の問題が依然として
存在している。県は、これらの問題の解決に先導的な役割を果たすべきで
あり、また、私たちは、力を合わせてあらゆる人権問題の早急な解決を図
っていかなければならない。

 県では、人権が尊重される明るい社会を目指し、平成10 年4 月に施
行した「高知県人権尊重の社会づくり条例」において、人権尊重の社会づ
くりを進めていくために県、市町村、県民の責務を明らかにした。また、
同年7月に策定した「人権教育のための国連10 年」高知県行動計画では、
人権教育・啓発に関する県の取り組みや企業・県民に期待する取り組みを
具体的に示した。

 ここに、同和問題をはじめとするあらゆる人権に関する問題の解決に向
けて、すべての県民が自主的に取り組むよう意識の高揚を図るとともに、
市町村及び県民の取り組みを一層促進させるために、同条例第5条に基づ
き、人権教育・啓発に関する施策の基本方針を定めるものである。

<推進方針>
 今後の人権施策の推進については、さまざまな人権の中から、県民に関わりが深く、身
近な人権問題として、「高知県人権尊重の社会づくり条例」及び「人権教育のための国連
10 年高知県行動計画」で例示してある同和問題、女性、子ども、高齢者、障害者、HI
V 感染者等、外国人に関わる人権問題について共通する施策の方向性を示すとともに、そ
れぞれの問題の現状と課題を明らかにし、推進方針を定めるものとする。

1 共通事項
(1)人権教育・啓発の推進
 「人権教育のための国連10年」高知県行動計画に基づき人権教育・啓発を推進
する。

ア 就学前教育、学校教育、社会教育などのあらゆる場において、同和問題をはじ
めとするさまざまな人権問題について正しい認識と理解を深め、人権意識の高
揚を図るための人権教育を推進する。

イ 県民一人ひとりが人権問題についての関心と正しい認識を深め、人権尊重の社
会づくりに向けて自主的に行動していけるよう、人権に関する講演会や研修会
の開催、マスメディアの活用による広報、実践につなげることのできる啓発パ
ンフレットの作成、配布など、さまざまな機会を通じた啓発活動を推進する。

ウ 企業内研修の充実のため、体制の整備を支援する。

エ 人権に関する家庭での学習を促進するため、人権に関する学習機会の提供や学
習情報等の提供を行う。

オ 県職員や市町村職員はもとより、教育職員、警察職員、消防職員、福祉関係職員、
医療関係職員など人権に関わりの深い職業に従事する職員に対する人権教育を
充実する。

(2)相談・指導体制の充実
ア 県民が人権侵害を受けたとき、その内容等について相談ができる体制の充実や、
適切な指導・助言ができる人材の育成に努める。

イ 人権尊重の社会づくりに取り組む市町村、関係機関、NPO などに対する指
導・助言・支援を行うとともに、県民の自発的な取り組みを支援する。

(3)調査・研究の推進
県民の人権意識や人権侵害の実態などを把握・公表し、これまでの人権教育・
啓発活動の実施状況や効果等について点検を行い、効果的な人権施策の研究・開
発を行う。

(4)推進体制
ア 高知県人権尊重の社会づくり協議会などの意見を踏まえ、国連人権教育高知県
推進委員会(※1)を中心に、人権施策を総合的に推進する。

イ 人権教育・啓発を行う県の関係機関等の取り組みを充実・強化する。

ウ 市町村やその他の公的機関、企業、関係団体との緊密な連携を図る。

2 個別事項(身近な課題ごとの推進方針)
(1)同和問題
ア 現状と課題
 これまでの同和対策事業の実施により、対象地域の生活環境などは相当整備さ
れてきた。一方、児童生徒の学力・進路に関わる問題や不安定な就労の実態、ま
た同和問題に対する誤った知識や偏見による差別意識の存在など多くの課題が残
されている。

イ 推進方針
 同和問題は人権問題の重要な柱であるとの認識のもと、その解決に向けた取り
組みを推進し、差別のない社会の実現を図る。
(ア) 「同和問題の解決は行政の責務であり、県民一人ひとりの課題である。」と
いう認識の醸成
(イ) 我が国の歴史における支配・被支配の関係やその起源等について、科学的に
解明された教材を使用するなど、同和問題への正しい認識を深める教育・啓発
の推進

(2)女性
ア 現状と課題
 法律や制度面からの整備は着実に進んでいるが、固定的な性別役割分担意識や
雇用の場における格差、女性に対する暴力など、いまだに広く女性に対する直接、
間接の差別が存在している。
 こうした差別の解消をはじめ、政策や方針決定の場など、あらゆる場における
女性参加、参画を一層促進する必要がある。

イ 推進方針
 女性に対するさまざまな差別を解消することにより、女性の人権が男性と対等、
平等に尊重され保障される社会の実現を図る。
(ア) 両性の尊厳・平等を目指す教育・啓発の推進
(イ) 女性への差別の解消に向けた普及・啓発
・雇用の場における実質的な男女平等
・家庭生活や地域社会への男女共同参加
・政策、方針決定への参画
・女性に対するあらゆる暴力の根絶
・メディアにおける女性の人権の尊重

(3)子ども
ア 現状と課題
 少子化や核家族化の進行、受験競争の激化などにより生活のゆとりの喪失や家
庭・地域での子ども同士のふれあいの機会が減少するなど、子どもと家庭を取り
巻く環境は大きく変化している。こうした中、非行、いじめ、児童虐待などの問
題が深刻化し、その早急な解決が求められている。

イ 推進方針
 子どもが一人の人間として尊重され、偏見や差別によって人権の侵害を受ける
ことのない社会の実現を図る。
(ア) 個性や人権を尊重した教育の推進
(イ) 子どもの人権に関する社会的関心の喚起、意識啓発
(ウ) 家庭における親子の対話やふれあい、地域社会における生活体験や自然体験
の機会の充実

(4)高齢者
ア 現状と課題
 高齢化先行県である本県においても、高齢者が自立し安心して暮らすために、
就労機会の確保や保健福祉サービスの充実などの環境づくりが大きな課題となっ
ている。
 また、介護する家族の負担や、痴呆性高齢者(※2)らが受ける人権侵害なども高
齢者を取り巻く社会の大きな問題である。

イ 推進方針
 高齢者が社会の一員として、人権が尊重され、健康で生きがいをもって生活し
ていける社会の実現を図る。
(ア) 高齢者に対する理解の促進
・加齢に伴う心身機能の低下に対する理解
・財産管理や権利擁護などの福祉サービスの周知
(イ) 高齢者の社会参加の促進
・世代を越えた交流やふれあいの機会の充実
・雇用や社会参加の充実

(5)障害者
ア 現状と課題
 障害のある人が地域の一員として活動し、自立した生活を送ろうとするとき、
物理的な障壁(道路、建物、バスの段差など)や制度的な障壁(各種の資格制度、
就職試験などでの差別)などが問題となる。
 中でも、大きな問題は、障害に対する理解が十分でない人達の心ない言葉や行
動によって障害のある人やその家族が、人間としての尊厳を傷つけられることで
あり、社会全体が障害について正しく理解することが必要である。

イ 推進方針
 障害のある人もない人も、地域でともに生活できる社会の実現を図る。
(ア) 障害や障害のある人に対する理解の促進
・障害のある人との交流やふれあいの機会の充実
・財産管理や権利擁護などの周知
(イ) 障害のある人の社会参加の支援
・「ひとにやさしいまちづくり」の推進
・雇用の促進や働きやすい環境の整備

(6)HIV 感染者等
ア 現状と課題
 エイズ、結核、ハンセン病、腸管出血性大腸菌O -157 などの感染症にか
かった患者・感染者が誤った認識や偏見などにより差別を受ける場合がある。
感染症についての正しい情報の提供と啓発活動などにより、患者・感染者の権利
を守るための取り組みを進める必要がある。

イ 推進方針
 さまざまな感染症にかかった患者・感染者が差別を受けることなく、安心して
治療を受け、地域でともに生活できる社会の実現を図る。
(ア) エイズ等についての正しい情報の提供
(イ) 感染予防対策を通じた啓発活動の実施

(7)外国人
ア 現状と課題
 国際化の進展とともに、外国人に対する偏見や差別などの人権問題が顕在化し
ている。
 一般的には、欧米諸国に比べアジアの人たちを軽視する傾向があり、歴史的・
地理的に関係が深いアジアの近隣諸国についての理解や認識を深める必要がある。

イ 推進方針
 外国人にとっても暮らしやすい、差別や偏見のない地域社会の実現を図る。
(ア) 外国人や外国の文化との交流、国際理解の促進
(イ) アジアの近隣諸国について理解を深めるための知識の普及

※1 本文中にある「国連人権教育高知県推進委員会」については、「高知県人権施
策推進委員会」と読み替えるものとします。

※2 本文中にある「痴呆性高齢者」という用語については、厚生労働省からの通知
により、平成16年12月24日以降「認知症高齢者」を用いることとなってい
ます。