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宮崎県人権教育・啓発推進方針
情報の種類 地方公共団体関係資料
タイトル 宮崎県人権教育・啓発推進方針
時期 2005/01/01
主体名 宮崎県
関連URL http://www.city.iwade.lg.jp
【 内容 】

宮崎県人権教育・啓発推進方針


第1章 はじめに

1 方針策定の背景

(1) 国際社会の動向
 20世紀、人類は二度の世界大戦を経験して、大量虐殺や特定民族への迫害などの人権侵害や人権抑圧に対する反省から、平和の大切さを学び、人権の尊重が平和の基礎であるという教訓を得ました。
 そして、世界の平和を願って昭和20年(1945年)に国際連合(国連)が結成され、昭和23年(1948年)12月10日の第3回国連総会で生命・身体の安全その他多くの基本的人権についての基準を示した「世界人権宣言」が採択されました。
 その後、この宣言に法的拘束力を持たせるため、国際人権規約をはじめ人種差別撤廃条約や女性差別撤廃条約、子どもの権利条約など人権に関する国際条約が採択されました。また、国際婦人年や国際児童年、国際障害者年を定め、人権が尊重される社会の実現に取り組んできました。
 しかしながら、世界各地では依然として、人種、民族、宗教等の対立による地域紛争が多発し、人権が侵害される状況が続いています。
 このような中で、平成5年(1993年)にウィーンにおいて世界人権会議が開催され、「現代社会の諸問題の解決には人権意識の徹底・人権教育が不可欠であること」などが確認されました。
 そして、平成6年(1994年)の第49回国連総会において、平成7年 (1995年)から平成16年(2004年)までを「人権教育のための国連10年」とすることを決議するとともに行動計画を示し、「人権という普遍的文化」が構築されることを目指して、世界各国において国内行動計画を策定するよう求めました。
さらに、平成16年(2004年)の第59回国連総会において、人権教育がすべての国で取り組まれるよう、「人権教育のための国連10年」の取組を継承する「人権教育世界プログラム」を平成17年(2005年)から開始することが決議されました。

(2) 国内の動向
 国連が「人権教育のための国連10年」を決議したことを受けて、わが国では、平成7 年(1995年)12月に、内閣総理大臣を本部長とする「人権教育のための国連10年推進本部」を内閣に設置し、平成9年(1997年)7月に「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画(以下「国内行動計画」という。)を策定しました。この国内行動計画では、人権の概念及び価値が広く理解され、人権という普遍的文化の構築を目指して、学校をはじめ地域や企業などのあらゆる場を通じた人権教育を推進するとともに、女性、子ども、高齢者、障害のある人、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者等を重要課題として位置づけ、その現状や課題に応じた取組を積極的に行っていくこととしています。
 また、人権教育・啓発の在り方や人権侵害の被害者救済の在り方などについて検討していた人権擁護推進審議会が、平成11年(1999年)に人権教育・啓発の基本的な在り方について国に答申を行い、これを受けて、平成12年(2000年)12月に「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」(以下「人権教育・啓発推進法」という。)が施行されました。この法律には、国及び地方公共団体は人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、実施する責務を有すること及び国は施策を総合的かつ計画的に推進するために基本的な計画を策定しなければならないことが規定されています。これに基づき、国では、平成14年(2002年)3月に「人権教育・啓発に関する基本計画」を公表し、様々な人権教育・啓発に関する取組を行っています。

(3) 本県の動向
 本県においても、平成9年(1997年)12月に「人権教育のための国連10年」宮崎県推進本部を設置し、平成11年(1999年)2月に「人権教育のための国連10年」宮崎県行動計画(以下「県行動計画」という。)を策定しました。そして、これまで、県行動計画に基づき、人権という普遍的文化(人権文化)の創造を目指し、一人ひとりが有している人権を尊重し、共に生きる社会の実現に向けて、様々な施策を実施してきました。
 しかし、この県行動計画は目標年次を平成16年(2004年)までとしていたこと及び人権教育・啓発推進法第5条で地方公共団体の責務として、人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、実施することが規定されていることから、県行動計画を継承し、人権教育・啓発推進法の趣旨を踏まえたものとして、新たに「宮崎県人権教育・啓発推進方針」(以下「方針」という。)を策定することにしました。
 なお、方針の策定に当たっては、県民の幅広い意見を反映させるように配慮しながら検討を重ね、その取りまとめを行ったところです。

2 方針の目標
 県政運営の指針となる「新しい宮崎県総合長期計画」の「長期ビジョン」では、その基本目標を「人と自然にやさしい『元気のいいみやざき』」とし、その目指す将来像の一つとして「未来を拓く人が育つ社会」を掲げ、さらにはその具体的な将来像として「一人ひとりが尊重され、個性と能力が発揮される社会」を掲げています。
 人権とは、すべての人が生まれながらに持っている、人間らしく生きていくために必要な、誰からも侵されることのない基本的な権利です。
 その人権がすべての人に保障され、誰もが自由に生き生きと暮らせる社会であるためには、

県民一人ひとりが人権尊重の態度を習慣として身につけ、日常生活において互いの人権に配慮して生活することが当たり前となっている社会
年齢や性別、国籍、民族、文化の違いや障害の有無などにかかわらず、互いの個性や価値観の違いなど、その多様性を理解し認識し合える社会
一人ひとりの様々な生き方の可能性が否定されず、その能力が十分に発揮できる社会
を築いていくことが必要です。
 したがって、この方針では、これらの社会づくりを基本理念としながら、その目標を「長期ビジョン」と同様に「一人ひとりが尊重され、個性と能力が発揮される社会」の実現とします。

3 方針の性格
この方針は、本県の人権教育・啓発の推進に当たって、次の性格を持つものとします。
(1) 県行動計画及び人権教育・啓発推進法の趣旨を踏まえ人権教育・啓発を総合的 かつ効果的に推進するために策定するものです。

(2) 県が行う人権教育・啓発の施策推進の方向性を示すものです。

(3) 市町村、民間団体(企業・NPO(*1)等をいう。以下同じ)及び県民が、この方針の趣旨を踏まえ、それぞれが主体者であることの認識のもとに、自主的な取組を実施することを期待するものです。


第2章 人権教育・啓発の基本的な在り方

1 人権教育の意義・目的
 人権教育とは、人権教育・啓発推進法では「人権尊重の精神の涵養を目的とする教育活動」と定義されており、その基本理念において、「国民が、その発達段階に応じ、人権尊重の理念に対する理解を深め、これを体得することができるよう」行うことが求められています。すなわち、人権教育は、基本的人権の尊重の精神が正しく身につくよう、地域の実情を踏まえつつ、学校教育及び社会教育を通じて行われる教育活動となります。
 このため、学校教育では、幼稚園、小学校、中学校及び高等学校等の教育目的や目標の実現を目指して、自ら学び自ら考える力や豊かな人間性などを培う教育を組織的・計画的に行っていく中で、幼児・児童・生徒・学生の発達段階に応じた人権尊重の意識を高める教育を行っていく必要があります。
 また、社会教育では、生涯学習の視点に立って、青少年のみならず、幼児から高齢者までを対象に多様な学習の機会や場所を提供していく中で、人権尊重の意識を高める教育を行っていく必要があります。
 こうした学校教育及び社会教育における人権教育によって、人々が、自らの権利を行使することの意義や他者に対して公正・公平であり、その人権を尊重することの必要性、様々な課題などについて学び、人権尊重の精神を生活の中に生かしていくことが求められています。

2 人権啓発の意義・目的
 人権啓発とは、人権教育・啓発推進法では「国民の間に人権尊重の理念を普及させ、及びそれに対する国民の理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動(人権教育を除く。)」と定義されており、人権教育と同様、その基本理念において、「国民が、その発達段階に応じ、人権尊重の理念に対する理解を深め、これを体得することができるよう」行うことが求められています。すなわち、広く県民の間に、人権尊重思想の普及高揚を図ることを目的に行われる研修、情報提供、広報活動等で人権教育を除いたものが、人権啓発となります。
 このため、県民に対しては、県民の一人ひとりが人権を尊重することの重要性を正しく認識し、他人の人権にも十分に配慮した行動がとれるようにするための啓発活動が重要であり、「人権とは何か」、「人権の尊重とはどういうことか」、「人権を侵害された場合に、これを排除し、救済するための制度がどのようになっているか」等について正しい認識を持つとともに、それらの認識が日常生活の中で、その態度面、行動面等において確実に根づくようにすることが人権啓発の目的になります。

3 人権教育・啓発の基本的な在り方
 人権教育・啓発は、人権尊重社会の実現を目指して、日本国憲法や教育基本法などの国内法、人権関係の国際条約などに即して推進していくべきものです。その基本的な在り方としては、人権教育・啓発推進法が規定する基本理念を踏まえ、次のような点が挙げられます。

(1) 実施主体間の連携と県民に対する多様な機会の提供
 人権教育・啓発にかかわる活動は、国・県・市町村・民間団体など様々な実施主体により、家庭、学校、地域社会、職域などあらゆる場と機会を通して実施されることによって効果を上げるものと考えられます。
 このため、これらの実施主体がその担うべき役割を踏まえた上で、相互に十分な連携をとって、県民の一人ひとりに対して、その生涯を通して、多様な学習機会を提供していくことが重要です。

(2) 発達段階等を踏まえた効果的な方法
 人権教育・啓発は、幼児から高齢者に至る幅広い層を対象とするものであり、その活動を効果的に推進していくためには、人権教育・啓発の対象者の発達段階を踏まえ、地域の実情等に応じて、その対象者の家庭、学校、地域社会、職域などにおける日常生活の経験などを具体的に取り上げるなど、創意工夫を凝らして、ねばり強くこれを実施する必要があります。
 また、「法の下の平等」、「個人の尊重」といった普遍的な視点から人権尊重の理念を県民に訴えかけることも重要ですが、真に県民の理解や共感を得るためには、これと併せて、具体的な人権課題に即し、県民に親しみやすく分かりやすいテーマや表現を用いるなど、様々な創意工夫が求められます。

(3) 県民の自主性の尊重と教育・啓発における中立性の確保
 人権教育・啓発は、県民の一人ひとりの心の在り方に密接にかかわる問題でもあることから、その自主性を尊重し、押しつけにならないように十分留意する必要があります。
 また、人権教育・啓発の推進に当たっては、行政や教育の主体性や中立性を確保した上で、政治運動や社会運動との関係を明確に区別して行わなければなりません。


第3章 人権教育・啓発の推進

1 あらゆる場を通じた推進
 県民の一人ひとりが、家庭や学校、地域社会などあらゆる場を通じた様々な人権問題に関する教育・啓発によって、人権尊重の理念について正しい理解を深め、それが日常生活の中で態度や行動として根づくことをめざして、より効果的な人権教育・啓発活動を総合的に推進します。

(1) 家庭における人権教育・啓発
 家庭は、すべての教育の出発点であり、家族とのふれあいを通じ、幼児期から豊かな情操や思いやり、生命を大切にする心、善悪の判断、生活習慣やマナーを身につけるなど、人間形成の基礎を育む上で重要な役割を担っていますが、近年、少子化・核家族化などの家庭環境の変化などに伴い、子どもへの過保護や過干渉、放任といった現状が見られ、家庭における教育機能の低下が指摘されています。
 また、家庭内においては、子どもへの虐待、高齢者への介護放棄、更には配偶者によるドメスティック・バイオレンス(*2)などの様々な人権問題が生じており、人間形成における家庭の機能の維持・充実を図る必要があります。

ア 大人自身が偏見を持たず差別をしないことなどを日常生活を通じて自らの姿をもって子どもに示していくことが重要であることから、大人も子どもも共に人権感覚が身につくような家庭教育に関する学習機会の充実に努めます。

イ 子育てや家事、介護などについての不安や悩みに関する相談体制の充実等に努めます。

ウ 子育てや家事、介護などについて、固定的な役割分担にとらわれることなく、男女が共に協力し合える男女共同参画社会の実現に向けた家庭づくりを図るため、啓発活動の充実に努めます。

エ かけがえのない生命、身体そして家族を大切にする心や習慣を大人も子どもも持てるよう、豊かな人間性を育む家庭教育の支援に努めます。

(2) 学校における人権教育
 学校においては、幼稚園、小学校、中学校及び高等学校等の教育目的や目標の実現を目指した教育活動が展開される中で、幼児・児童・生徒・学生が、社会生活を営む上で必要な知識・技能、態度などを確実に身につけることを通じて、人権に関する知識や人権を尊重する意識・態度を身につけるようにしていく必要があります。
 このため、以下のような施策の推進を図ります。
ア 子どもたちの人権尊重の精神を育成していくためには、まず子どもの人権を尊重することが大切です。このため、「児童の権利に関する条約」の趣旨を踏まえて、一人ひとりの子どもの人権を尊重した学校運営や教育指導に努め、子どもたちが豊かな人間関係の中で安心して楽しく学ぶことのできる環境の確保に努めます。

イ 子どもたちが、人権問題について正しい理解を深めるとともに、人権尊重の意識を高めることができるように、人権教育に関する指導方法の改善に努めます。また、研究指定校等による実践的研究や各種資料等の作成等により、人権教育に関する指導内容や方法を充実させます。

ウ 豊かな人間性や社会性を育むため、社会教育との連携を図りつつ、ボランティア活動など多様な体験活動や高齢者、障害のある人、外国人等との交流の機会などの充実に努めます。

エ 高等教育については、大学等の主体的判断により、法学教育など様々な分野において人権教育に関する取組に一層の配慮がなされるように促していきます。特に教育、医療、福祉に関わる分野において人権に関する講座が開設されるように促していきます。

オ 幼稚園、保育所の幼児に対しては、人権を大切にする心を育てるため、家庭や地域の実情に応じた適切な教育や保育が実施されるように促していきます。

カ 子どもたち一人ひとりに応じたきめ細かな指導が一層可能となるよう、教職員等配置の改善を進めていきます。

(3) 地域社会における人権教育・啓発
 地域社会には、家庭とともに、お互いの人権を尊重する意識や他者に対する思いやりの心を育む役割があります。人権教育の原点が家庭、学校とともに地域社会にあることを再認識し、家庭と学校、地域社会が連携して、各種学習機会や情報の提供、生涯学習の振興のために行われる各種施策を通じて、人権に関する学習の一層の充実を図っていくことが必要です。
 その際、人権に関する学習においては、単に人権問題を知識として学ぶだけではなく、日常生活において人権上問題のある出来事に接した際に人権への配慮がその態度や行動に現れるような人権感覚の高揚を図る必要があります。
 また、地域の実情に応じ、住民一人ひとりが自分自身の課題として人権尊重の理念について理解を深めるような啓発活動を実施することが必要です。
 このため、以下のような施策の推進を図ります。

ア 社会教育の視点から公民館等の社会教育施設を中心として、地域の実情に応じた人権に関する多様な学習機会の充実に努めます。
 また、学校教育との連携を図りつつ、青少年の社会性や思いやりの心など豊かな人間性を育むための社会奉仕体験活動・自然体験活動などの多様な体験活動や高齢者、障害のある人、外国人等との交流の機会の充実に努めます。


イ 高齢者の学習機会の体系的整備をはじめとして、生涯にわたって、いつでも、どこででも自由に人権に関する意識を高める教育が受けられるような学習機会の整備、充実に努めます。

ウ 学習意欲を高めるような参加体験型の学習プログラムの開発を図るとともに、身近な課題を取り上げたり、様々な人とのふれあい体験を通して自然に人権感覚が身につくような活動を仕組んだり、学習意欲を高める手法を創意工夫するなど指導方法に関する研究開発に努めます。
 また、人権問題について正しい理解を深めるための学習資料の提供に努めます。

エ 地域社会における啓発活動は、地域に密着したきめ細かい多様な事業が展開される必要があることから、県、市町村が連携を図り、また、NPO(*1)等のボランティア団体の協力を得ながら、啓発イベントの開催、資料の作成・配布、啓発映画の放映などを行うことにより、県民が人権尊重の重要性を認識するとともに、それが日常生活の中で態度面、行動面等において根づくよう効果的な事業の展開を図ります。

オ PTAをはじめとする社会教育関係団体、民生委員・児童委員、消防団等の各種団体等は、地域社会を基盤として活動を続けていることから、地域社会における人権教育・啓発を推進する上で重要であり、会員等の連帯や団体相互の交流を通じて人権意識の高揚を図るよう支援します。

カ 地域社会において人権教育・啓発を先頭に立って推進していく指導者の養成及び、その資質の向上を図り、地域社会における教育指導体制の充実、さらには、NPO(*1)等のボランティア団体の育成に努めます。

(4) 企業における人権教育・啓発
 企業では、男女間等の不公正な採用や賃金・昇進、職場におけるセクシュアル・ハラスメント(*3)やパワー・ハラスメント(**4)などの人権問題を解決することが重要な課題となっています。また、企業は、本来営利を目的とする組織ですが、今日では、企業も社会を構成する一員であるとする「企業市民」という考えが定着し、その社会的責任や社会貢献が重要視されていることから、企業には、人権問題についての従業員研修の積極的な実施及び地域における人権啓発活動や各種イベント等への積極的な参加・協力など、人権意識のさらなる高揚のための取組が期待されています。
 このため、以下のような施策の推進を図ります。

ア 企業が従業員を採用するに当たっては、採用方針・採用計画の決定-募集-選考-採否通知-教育・訓練-職場配置等の一連の過程において、一貫して人権が尊重され、公正に行われるようその指導・啓発に努めます。
 また、差別のない公正な採用・選考の確立と人権啓発を図るため、企業内での重要な役割を果たす公正採用選考人権啓発推進員の選任について指導するとともに、選任された推進員に対しては、必要な研修を行います。

イ 企業内で取り組まれる人権教育・啓発活動に対しては、資料や教材の提供、研修講師の派遣・斡旋を行うなど、企業内での人権教育・啓発の取組を支援します。

ウ 県等が啓発事業として開催する講演会等への積極的な参加を促進するため、企業への講演会等の開催の情報提供に努めます。

(5) 特定職業従事者等に対する人権教育・啓発
 人権教育・啓発の推進に当たっては、以下に掲げるような人権との関わりの深い特定の職業に従事する者に対する人権教育・啓発を強化し、その人権意識の高揚を特に図る必要があります。
 このため、それぞれの職業に応じた次のような施策の推進を図ります。

ア 公務員
 人権に配慮した行政を推進するためには、すべての公務員が、人権問題を正しく理解し、豊かな人権感覚を身につけることにより、人権尊重の視点に立って職務を遂行することが求められています。
 このため、人権意識の高揚を図るための研修等の内容や手法を充実させるとともに、人権問題に関する研修会等への職員の参加に努めます。

イ 教職員等
 教職員や保育士(以下「教職員等」という。)は、学校や幼稚園・保育所における教育活動・保育活動を通じて、すべての幼児・児童・生徒・学生に豊かな人権意識を育むため、自らの人権意識の高揚に努めるとともに、人権教育の推進者として必要な知識・技術・態度を修得することが求められています。
 このため、参加体験型の研修方法を取り入れるなど人権教育に関する研修の一層の充実に努めるとともに、教職員等にとって魅力のある学習につながり、人権意識が高まり、将来への生き方や教育活動・保育活動の在り方に生かすことができる資料等の作成に努めます。

ウ 医療関係者
 医師、歯科医師、薬剤師、看護師、理学療法士、作業療法士、精神保健福祉士等の医療 関係者は、医療現場における患者の人権の重要性を認識し、インフォームドコンセント*5)の徹底や適切な患者の処遇など人権に配慮した行動がとれるよう人権意識の一層の高揚が求められています。
 このため、関係機関・団体に対し、これら関係者の人権意識の高揚を図るための研修等の充実を要請します。

エ 福祉関係者
 民生委員・児童委員、主任児童委員、身体障害者・知的障害者相談員、社会福祉施設職員、ホームヘルパー等の福祉関係者は、高齢者や障害のある人をはじめ様々な人々の生活相談や身体介護などに携わっており、その職務の遂行に当たっては、個人の人権尊重や秘密保持など人権に配慮した行動が求められています。
 このため、福祉関係者の資質向上のために行われている社会福祉研修センター事業等を通して、これら関係者の人権意識の高揚を図るための研修等の充実を図ります。

オ 消防関係者
 消防関係者は、火災をはじめとする各種災害から住民の身体・生命・財産を守ることを職務としており、人権に配慮した行動が求められています。
 このため、県消防学校における人権意識の高揚を図るための研修等の充実を図るとともに、各市町村に対しても、その充実に努めるよう要請します。

カ 警察職員
 警察職員は、公共の安全と秩序の維持という責務を遂行するに当たり、個人の権利や自由と直接に深い関わりをもつことから、人権に対する正しい理解と認識をもつ必要があります。
 このため、職務倫理の確立を図るとともに、各種相談者、被害者、被疑者、その他関係者に対する人権に配慮した適切な処遇等の在り方等についての研修等の充実を図ります。

キ マスメディア関係者
 新聞、テレビ、ラジオなどのマスメディアは、社会の情報の大部分を提供しており、人々の価値判断や意識形成に大きな影響力を有するとともに、一方では、個人の名誉やプライバシーを侵害するなど人権侵害の危険性も有しています。
 このため、マスメディア関連の企業・団体に対して、正確な情報を県民に提供するという公共的使命を踏まえながら、人権尊重の視点に立った取材及び紙面や番組の編集を行うように、社員等関係者の研修等をより一層充実するための取組を要請します。

ク 相談員
 自治会長、公民館長など地域住民と関わりの深い人々への人権教育・啓発については、各市町村に対し、その推進に努めるよう要請します。
 また、議会関係者等についても、議会等において人権教育・啓発の取組が行われるよう、情報の提供や講師の紹介等に努めます。

2 総合的かつ効果的な推進
 人権教育・啓発の総合的かつ効果的な推進を図るためには単なる知識の伝授にとどまらず、日常生活における行動に結びつけるための技術や人権に配慮した態度を総合的に育んでいくことが重要となります。
 このため、以下のような施策の推進を図ります。

(1) 実施主体の強化及び周知度の向上
 人権教育・啓発を効果的に推進するため、県、市町村、民間団体等の人権教育・啓発の実施主体の体制を充実・強化するよう努めます。
 また、一般に、実施主体の組織及び活動について対象者が十分な認識を持っていればいるほど、人権教育・啓発の効果も大きなものを期待することができることから、実施主体は、広報用のパンフレットの作成やホームページの開設などの積極的な広報活動を通じてその周知度の向上に努めます。

(2) 人材の育成
 県民一人ひとりが人権問題を身近な問題としてとらえ、日常生活において人権を尊重する態度を身につけていくためには、人権教育・啓発を日常生活の身近なところから推進していくことが重要となります。このため、日常生活の身近なところで人権教育・啓発を行うことのできる指導者の養成に努めるとともに、これらの指導者を養成したり、体系的な研修を企画できる、より専門的な指導者の養成に努めます。
 さらに、これらの指導者については、人権感覚を豊かにするため、日頃から自己研鑽に努めることが大切であることから、人権教育・啓発の指導者として主体的な取組を促すように努めます。

(3) 教材・資料等の整備・充実
 人権に関する教材や資料等は、効果的な人権教育・啓発を実施していく上で不可欠なものであり、その整備・充実に努めます。

ア 人権教育・啓発の各実施主体等関係諸機関が保有する教材・資料等について、その有効かつ効率的な活用を図る観点から、各機関相互における利用を促進するための情報ネットワーク化や多くの人々がこうした情報にアクセスしやすい環境の整備・充実に努めます。

イ 人権に関する情勢は時の経過とともに変遷するものなので、時代の流れを反映した文書等、新たな文献や資料等の収集・整備を図るとともに、従来必ずしも調査研究が十分でなかった分野等に関するものについても、積極的に収集に努めます。

ウ 人権教育・啓発で使用する教材・資料等について、対象者の知識や習熟度等を考慮し、基礎的なものから専門的なものまで体系的な教材・資料等を開発するとともに、その充実に努めます。

(4) 学習プログラムの開発
 人権に関する学習を促進するためには、様々な人権問題を総合的に取り上げるとともに、家庭・学校・地域社会・職場などの日常生活の中で発生する人権問題に焦点を当て、自分とのつながりが自覚できるように促す必要があります。また、学習者が主体的に参加することが重要であり、学習者相互の交流、意見の交換など様々な体験を通じて学び合うことができるようなプログラムの研究開発に努めます。

(5) 人権教育・啓発の内容及び手法の充実
ア 人権教育・啓発の内容については、プライバシーなどの問題に留意しつつ、身近で具体的なものを題材に取り上げるなど、表現や内容を受け手にとって理解しやすいものにするとともに、単なる知識の伝授にとどまることなく、受け手の感性や理性に訴え、自己の問題として実際の行動に結びつくような効果的なものとなるようその充実に努めます。

イ 人権教育・啓発の手法については、これまで様々な人権問題の教育・啓発活動の中で蓄積された成果を踏まえるとともに、従来の講義形式に加えて、参加体験型研修(ワークショップ)など対象者や教育・研修レベルなどに応じた多様な手法の導入を図ります。

ウ 広く県民に対して自然な形で人権問題について興味を持ってもらう手法も効果的であるため、県民参加体験型のイベントである人権啓発フェスティバルのような事業を、創意工夫を凝らしながら積極的に推進していきます。

(6) (財) 宮崎県人権啓発協会事業等の充実
(財)宮崎県人権啓発協会は、人権教育・啓発活動を総合的に行う拠点としての役割を担っています。
 このため、民間団体や県民運動の推進母体である宮崎県人権啓発推進協議会等との連携・協働に努めるなど同協会の機能の充実を図るとともに、資料ライブラリーの活用、人権啓発指導者養成研修のプログラムや人権教育・啓発に関する資料の作成など、同協会において実施している事業のより一層の充実が必要です。

(7) マスメディアの活用
 人権教育・啓発の推進に当たっては、その媒体としてテレビ、ラジオ、新聞などマスメディアの果たす役割は極めて大きいことから、より多くの県民に効果的に人権尊重の理念の重要性を伝えるために、マスメディアの積極的な活用に努めます。

(8) 民間団体のノウハウの活用
 民間団体の有する人権教育・啓発に関するノウハウの活用により、多角的な視点から、より効果的な手法を駆使した教育・啓発の実施が期待できることから、その積極的な活用に努めます。
 なお、民間団体の活用に当たっては、委託方式も視野に入れ、より効果を高めていく努力をするとともに、教育・啓発の中立性に十分注意します。

(9) インターネット等IT関連技術の活用
 近年のインターネット等IT関連技術の長足な進歩により、大量、高速、双方向といった情報伝達が県民の身近なものとなっており、これらの特性を活用して、広く県民に対して、様々な人権に関する情報(例えば、法令等や冊子、リーフレット、ポスター、ビデオ等)の各種啓発資料等を提供するとともに、基本的人権の尊重の理念を普及高揚させるための人権啓発活動(例えば、世界人権宣言の内容紹介、各種人権問題の現況及びそれらに対する取組の実態の紹介、その他人権週間行事など各種イベントの紹介等)を推進します。
 また、人権教育・啓発に関する情報に対して、多くの人々が容易に接し、活用することができるよう、人権教育・啓発の実施主体によるホームページの開設、掲載内容の充実、リンク集の開発などに努めます。

(10) 人権問題に関する相談窓口の充実・連携
 人権問題に関する相談窓口としては、国(法務省)が常設及び特別の人権相談所を開設しているほか、各市町村に人権擁護委員を配置し、その対応に当たっています。また、県及びNPO(*1)、ボランティア団体においても、女性、子ども等各人権問題に応じた相談窓口を設置しています。
 しかしながら、自分の人権が侵害されたと思っても、黙って我慢したり、家族や知人に相談したりする人が大半で、このような相談窓口を利用する人は少数にとどまっています。 このため、県の相談窓口の充実を図るとともに、各相談窓口との連携を図ります。また、県及び市町村の広報誌やインターネットなどの様々な広報媒体を用いて、どこにどのような相談窓口があるのかなどの情報提供の推進に努めます。


第4章 分野別施策の推進
1 人権を取り巻く状況
 我が国においては、基本的人権の尊重を基本原理の一つとする日本国憲法の下で、国政の全般にわたり、人権に関する諸制度の整備や諸施策が推進されています。
 しかし、依然として、私たちの身の回りには、女性、子ども、高齢者、障害のある人、同和問題、外国人、HIV感染者等、ハンセン病患者・元患者等、などに関する様々な人権問題が存在しています。例えば、女性に対する採用や待遇面での差別、セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)(*3)、ドメスティック・バイオレンス(*2)、学校におけるいじめや家庭における子どもへの虐待、障害のある人への偏見や障害のある人の社会参加の問題などです。
 また、近年、犯罪被害者及びその家族(以下、「犯罪被害者等」という。)の人権問題に対する社会的関心が大きな高まりを見せており、刑事手続等における犯罪被害者等への配慮といった問題に加え、マスメディアの犯罪被害者等に関する報道によるプライバシーの侵害、名誉毀損、過剰な取材による私生活の平穏の侵害等の問題が生じています。そのほかにも、新たにインターネット上における差別的情報の掲示や性的少数者に対する偏見等の人権問題も生じています。
 このように様々な人権問題が生じている背景としては、人々の中に集団と異なる文化や習慣、立場、行動を異質なものとして容易に受け入れない精神的風土や非合理的な因習的意識が存在すること等が挙げられていますが、国際化、情報化、高齢化、少子化等の社会の急激な変化なども、その要因になっていると考えられます。また、より根本的には、人権尊重の理念についての正しい理解やこれを実践する態度が未だ人々の中に十分に定着していないために、「自分の権利を主張して他人の権利に配慮しない」ばかりでなく、「自らの有する権利を十分に理解しておらず、正当な権利を主張できない」、「物事を合理的に判断して行動する心構えや習慣が身についておらず、差別意識や偏見にとらわれた言動をする」といった点も指摘されています。
 人権教育・啓発に関しては、これまでも各方面で様々な努力が払われてきていますが、このような人権を取り巻く諸情勢を踏まえ、より積極的な取組が必要となっています。

2 分野別施策の推進
 人権教育・啓発を推進し、一人ひとりの人権が尊重され、真に豊かでゆとりのある社会を育んでいくためには、今日特に重要となっている人権問題に対して、地域の実情に応じた効果的な施策を重点的に展開していく必要があります。
 このため、重要課題として、女性、子ども、高齢者、障害のある人、同和問題、外国人、HIV感染者・ハンセン病患者等、犯罪被害者等、インターネットによる人権侵害、性的少数者、刑を終えて出所した人などの人権問題を取り上げ、積極的な推進を図ります。

(1) 女性に関する問題
ア 現状と課題
 国連では、従来から性に基づく差別の禁止を重要な課題として位置づけ、積極的な取組を進めてきましたが、平成7年(1995年)9月に北京で開催された世界女性会議において、「女性の権利は人権である」ことが改めて確認され、人権教育の重要性が指摘されました。
 わが国では、憲法で基本的人権として男女平等が保障され、その実現に向けて昭和60年(1985年)に男女雇用機会均等法が制定されるなど各種法律や制度の整備が行われました。その後も、平成11年(1999年)6月には、男女共同参画社会(*6)の形成の促進を総合的かつ計画的に推進することを目的とする「男女共同参画社会基本法」が制定され、翌年12月には、同法に基づいた初めての計画である「男女共同参画基本計画」が策定されました。さらに、平成13 年(2001年)1月には内閣府に「男女共同参画会議」及び「男女共同参画局」が設置され、男女共同参画社会の推進体制が強化されました。また、近年社会問題となってきている女性に対する暴力に関しては、平成12年(2000年)に「ストーカー行為等の規制等に関する法律」が施行され、さらに、平成13年(2001年)に施行された「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」が平成16年(2004年)に改正されました。
 本県においても平成13年(2001年)に男女共同参画社会づくりの推進拠点となる宮崎県男女共同参画センターを開設し、情報提供、啓発、相談事業や民間団体等の支援などを行っています。また、平成14年(2002年)3月に「みやざき男女共同参画プラン」を策定するとともに、平成15年(2003年) 4月には、宮崎県男女共同参画推進条例を施行しました。
 しかしながら、依然として性別による固定的役割分担意識(*7)やそれに基づく慣行などが根強く存在しており、真の男女平等には至っていない状況にあります。 平成12年(2000年)度に実施した県の「男女共同参画社会づくりのための県民意識調査」では、男女の地位の平等感について、家庭生活、職場、慣習等の多くの分野で「男性優遇」という結果が出ており、社会全体としては「男女の地位は平等になっている」と感じる割合は1割程度にとどまっています。
 一方、男女雇用機会均等法の施行等により、女性の働く環境の法律面での整備は改善されつつあるものの、賃金をはじめ配置や昇進などにおいて、事実上の男女格差が残っており、また、セクシュアル・ハラスメント(*3)などの問題も発生しています。
 また、近年、ドメスティック・バイオレンス(*2)に関する相談が増加するとともに、社会生活において表面化しにくい性犯罪の実態もあり、被害女性への相談・支援体制の充実が求められています。
 このような問題は、今後社会が発展していく上で大きな障害となる問題であり、少子・高齢化の進展など社会経済情勢の変化に対応し、豊かで活力ある社会を築いていくためには、女性と男性が互いに人権を尊重し、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる「男女共同参画社会」の実現を目指した取組のより一層の推進が求められています。

イ 施策の方向
 女性と男性が互いに人権を尊重しあい、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会づくりを進めるため、「みやざき男女共同参画プラン」に基づき、以下のような施策の推進を図ります。

(ア) 男女平等意識の確立

a.学校教育、家庭教育及び社会教育において、自立の意識を育み、男女平等の理念を推進する教育・学習の一層の充実を図ります。(地域生活部、教育委員会)
b.学校や地域において行われる性別や世代を超えた様々な活動を通して、男女がお互いの人格を尊重し、一人ひとりの個性と能力を発揮できるような教育・啓発活動を推進します。(教育委員会)
c.男女共同参画社会を実現するに当たっての大きな障害のひとつである固定的な性別役割分担意識を解消するための広報・啓発活動を推進します。(地域生活部)
d.家庭、職場、地域社会などのあらゆる場面で、男女の立場の違いなどを反映し、結果的に中立に機能していない慣習・慣行について、その見直しのための啓発を行います。(地域生活部)

(イ) 政策・方針決定過程への男女共同参画の促進

a.多様な考え方を活かした豊かで住みよい社会を築いていくため、各種審議会等委員への女性登用を拡大するとともに、民間企業や各種団体等に対しても女性の参画促進を呼びかけます。(全部局
b.あらゆる政策・方針決定過程への女性の参画を進めるため、指導的な役割を果たす女性リーダーを育成するとともに、幅広い分野からの人材情報を収集・整備します。(全部局)

(ウ) 男女共同参画推進体制の充実

a.宮崎県男女共同参画推進会議を中心に、関係各課のより一層の連携を図るとともに、各市町村に対して、推進体制の整備や男女共同参画計画の策定について働きかけます。(地域生活部)
b.宮崎県男女共同参画センターにおいて、県民のニーズに応じた事業展開を行うとともに、拠点としてふさわしい機能の充実を図っていきます。(地域生活部)
c.男女共同参画に関して自主的活動を行っている団体・グループの活動を支援するとともに、相互の連携を図ります。(全部局)

(エ) 男女の平等な就業環境の整備

a.就業に関する実質的な男女の機会均等確保の実現に向けて、男女雇用機会均等法の遵守やポジティブ・アクション(*8)の促進を図るための啓発活動をより一層推進します。また、職場におけるセクシュアル・ハラスメント(*3)の防止など、女性が働きやすい環境の整備を促進します。(地域生活部、商工観光労働部)
b.女性がその能力を十分に発揮できるように、結婚や出産、育児のために退職した女性に対して、再就職のための支援に努めます。(商工観光労働部)
c.農林漁業における女性の役割に対する適正な評価が図られるよう、女性の経営や地域の方針決定過程への参画を促進するための啓発活動や研修等を実施するとともに、男女が対等な立場で快適に働くための環境整備を推進します。(環境森林部、農政水産部)
d.パートタイム労働者等に対して、通常の労働者との均衡等を考慮した適正な労働条件の確保と雇用管理の改善を図ります。また、女性を含めた起業家の育成・支援のための施策の充実を図ります。(商工観光労働部)

(オ) 男女の自立と家庭・地域生活の両立支援

a.多様なニーズに対応した保育サービス等の充実及び子育ての孤立感や不安の解消を図るための相談・支援体制の充実に努めます。(総務部、福祉保健部、商工観光労働部、教育委員会)
b.仕事と育児・介護の両立に関する意識啓発を推進するとともに、育児・介護休業の取得及び職場復帰がしやすい環境の整備や、育児・介護を行う就業者が働き続けやすい環境の整備を進めます。(商工観光労働部)
c.ボランティア、NPO(*1)などによる活動を通じて、各種の地域活動へ男女がともに積極的に参画できる方策の充実を図ります。また、これまで家庭や地域への参画の少なかった男性の家庭・地域生活への積極的な参画の促進を図ります。(地域生活部、福祉保健部、商工観光労働部、教育委員会)
d.社会全体で支えていく考え方に立った介護体制の整備を図るとともに、高齢期の男女の社会参画機会の拡大や経済的自立を確保し、生き生きと安心して暮らせる条件の整備に努めます。(福祉保健部、商工観光労働部、教育委員会)
e.ひとり親家庭の経済的・社会的自立を促進するための施策の充実を図るとともに、ノーマライゼーション(*9)の理念に基づいて、障害のある人などのニーズに対応した施策を推進します。(福祉保健部、商工観光労働部)
f.国際社会の一員として、広い視野と豊かな国際感覚を身につけ相互理解を深めるとともに、その責任と役割を果たすため、国際交流・協力活動を促進します。(地域生活部)

(カ) 女性に対するあらゆる暴力の根絶

a.暴力は決して許されないものであるとの社会的認識を醸成するための広報・啓発活動を行います。また、暴力の発生を防ぐ環境づくりを推進します。(地域生活部、警察本部)
b.被害者の心情等に配慮するとともに意思を十分に踏まえた上で、関係法令等を厳正に運用し、適切な措置を行います。(警察本部)
c.女性相談所や警察署等の被害相談、男女共同参画センターなどにおける相談支援体制を充実するとともに、関係機関が相互に協力し緊密な連携のもと、被害者のニーズに対応した支援活動を効果的に行う体制づくりを推進します。(地域生活部、福祉保健部、警察本部)

(キ) 生涯を通じた女性の健康支援

a.女性が精神的、身体的及び社会的に良好で、より自分らしく生きるため、性と生殖に関して、自己の意思が十分反映され、自らの決定が尊重されるよう、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(*10)に関する意識を広く社会に浸透させ、女性の生涯を通じた健康を支援するための取組の重要性について、男女が共に関心を持ち、正しい知識・情報を得て認識を深めるための施策を推進します。(福祉保健部、教育委員会)
b.女性がその健康状態に応じて的確に自己管理を行うことができるようにするための健康教育や相談体制を充実させるとともに、思春期、妊娠・出産期、更年期、高齢期等各ステージに応じて、女性の健康の保持増進を図ります。(福祉保健部)
c.女性の健康に甚大な影響をもたらすHIV感染や性感染症についての正しい知識の普及啓発を行うとともに、薬物乱用対策の強化を図ります。(福祉保健部、警察本部)

(ク) メディアにおける女性の人権の尊重

a.メディア関連の企業・団体に対し、人権尊重の視点に立ち、性差別的な表現をなくすための自主的な取組を行うように働きかけるとともに、メディア・リテラシー(*11)の育成・向上を図るための普及啓発を進めます。また、性や暴力に関する有害図書類等の有害環境の浄化対策を推進します。(地域生活部)
b.性別に基づく固定観念にとらわれない、男女の多様なイメージを社会に浸透させるため、まずは行政自らが、男女共同参画の視点に立った表現の推進に努めるとともに、男女の描写方法に関するガイドラインの作成について検討し、他の機関・団体における自主的な取組を促進します。(全部局)

(2) 子どもに関する問題
ア 現状と課題
 国連では、平成元年(1989年)に「児童の権利に関する条約」を採択し、わが国も平成6年(1994年)に批准しています。この条約では、「国家は、子どもの最善の利益を考慮しながら、子どもの権利実現のために適当なあらゆる措置をとる」こととされています。
 また、児童福祉法においても、「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」と規定されています。
 本県においては、こうした理念に基づき、宮崎県青少年健全育成条例(昭和52年(1977年)制定)の適正な運用などにより、子どもが健やかに成長できるような環境づくりを推進しています。
 しかし、わが国が急速な経済発展を遂げ、物質的に豊かになり、生活の利便性が向上する一方で、生活体験や自然とふれあう機会が減少したことにより、子どもたちに生命や自然を大切にする心、我慢する心や物を大切にする心が育ちにくくなっています。
 さらに、少子化、核家族化の進行や、都市化の進展などに伴う地域の人間関係の希薄化により、子育て中の家庭が孤立しがちになっています。このため、子育てについての不安や悩みなど精神的負担が増大するとともに、過保護や過干渉、放任という状況も表れており、子どもに対して、規範意識、社会性、共生の心を育てにくい環境となっています。
 その上、露骨な性描写、暴力・残虐シーンなどの有害情報の氾濫、覚せい剤等薬物乱用、テレクラ、援助交際という名の売買春行為など憂慮すべき社会状況も見られます。
 近年においては、少年による凶悪犯罪が発生しており、一方で、実親等による子どもに対する虐待が深刻になっています。また、犯罪による被害を受ける少年の数が増加するなど憂慮すべき状況にあります。さらに、学校では校内暴力やいじめ、ひきこもり、不登校の問題が依然として深刻な状況にあります。
 このような中、国では、平成11年(1999年)に「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」を制定、また、平成12年(2000年)に施行された「児童虐待の防止等に関する法律」を平成16年(2004年)に改正するなどの対応を進めています。
 さらに、平成15年(2003年)に「次世代育成支援対策推進法」を制定し、地方公共団体や企業に対し、次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ、育成される環境の整備のための取組に関する行動計画を策定することを求めています。
 県では、平成14年(2002年)に「ひむか青少年プラン21」を策定し、「新次代を切り拓く心豊かでたくましく行動力に富んだ青少年」の育成を掲げ、その実現に向けて、各種の施策を進めています。
 このような子どもを取り巻く状況の中で、今後、健やかに子どもを育てるためには、家庭や学校等、地域社会が互いに連携を図りながら、それぞれの教育力を高め、その力を十分に発揮するとともに、子どもの人権の尊重及び保護に向けた取組を積極的に推進していくことが求められています。

イ 施策の方向
 県民一人ひとりの人権意識の高揚を図るためには、特に子どもの時期の対応が重要であり、子どもの人権意識や思いやりの心を育成するための教育・啓発を、就学前、小・中・高校を通じ一貫した学校教育等の中で実施するとともに、家庭や地域においても一体となって推進されるようにするため、以下のような施策の推進を図ります。

(ア) 子どもの健全な成長・発達のためには、子どもを保護の対象としてだけではなく権利の主体として位置づけ、子どもにとって最善の利益を保障する観点 から捉えるなど、「児童の権利に関する条約」の理念の具現化に努めることが重要です。
 学校においては、生命や人権を尊重する心、正義感や公正さを重んじる心を持った子どもを育成するとともに、違いを受け入れる能力の育成など共に生きる社会の実現を目指すよう努めます。
 家庭においては、思いやりの心、感謝の心を持った子どもが育成されるよう、また、家族が支え合い、互いに尊重されるべきであるとの観点に立って、安定した人間関係の下、親権が正しく行使され、子どもの権利が認められるよう啓発に努めます。(福祉保健部、教育委員会)

(イ) いじめは、児童・生徒の人権に関わる重要な問題であり、いじめは人間として絶対に許されないとの認識のもとに、その解決を図るため、相談体制の整備・充 実、体験学習や適応指導の充実、教職員研修の充実、家庭や地域社会等への啓発の充実に努めるとともに、開かれた学校の視点に立った、学校、家庭、地域社会 及び関係機関等との連携を強化します。(教育委員会)

(ウ) 子どもの健全育成のための環境整備に、家庭、学校、地域社会、関係機関・団体等が連携して取り組みます。特に、子どもに有害な情報や環境については、健や かに育成される権利を侵害するものとして、除去・防止のための取組に努めます。
 また、ボランティア活動などの地域社会への参加・奉仕活動等や自然とのふれあい活動等を通して、体験と出会いの中で、思いやりや人権尊重の精神の涵養、社会の一員としての役割の自覚を促すことにより、心豊かな子どもの育成に努めます。(地域生活部、福祉保健部、教育委員会)

(エ) いろいろな悩みを持つ子育て中の家庭や子どもからの多様な相談に対応するため、児童相談所等相談機関をはじめ、各種の電話相談、民生委員・児童委員、主任 児童委員やスクールカウンセラー等各種相談体制及びその機能の充実に努めます。
 また、子どもの人権を著しく侵害する児童虐待などについては、関係機関等が連携して早期発見、早期対応に努めるとともに、家庭や地域社会等に対して、その防止の啓発に努めます。(福祉保健部、教育委員会)

(オ) 幼児期は、生涯にわたる人間形成の基礎が培われ、また周囲の環境から受ける影響が大きい時期であり、この時期に相手を思いやる心や豊かな人権感覚 を身につけることが大切です。
 このため、幼稚園・保育所などにおいて、一人ひとりの生活環境を十分把握しつつ、子どもの発達段階や個性に応じた適切な指導を行うとともに、家庭や地域とが連携を図り、思いやりのある心の育成に努めます。(総務部、福祉保健部、教育委員会)

(3) 高齢者に関する問題
ア 現状と課題
 わが国では、平均寿命の伸びや少子化の進行等に伴い高齢化が急速に進んでおり、平成 27年(2015年)には4人に1人が65歳以上の高齢者という本格的な高齢社会を迎えると予測されています。
 また、本県でも、全国平均より5年ほど早く高齢化が進んでおり、平成15年(2003年)10月1日現在、38の市町村で高齢化率が20%を超える超高齢社会を迎えている状況にあります。
 このような中、本来、長寿とは喜ばしいことであることを踏まえつつ、今後、高齢者が人間としての尊厳を保ちながら、住み慣れた地域の中で自立した生活を送ることができ、高齢社会を支える一員として健康で生きがいを持って社会参加できるような条件を整備することが重要となります。
 このため、国においては、平成7年(1995年)に「高齢社会対策基本法」を制定するとともに、翌平成8年(1996年)に「高齢社会対策大綱」を定め、各種の対策を進めてきました。そして、平成13年(2001年)には、より一層の対策を推進するため新しい高齢社会対策大綱を閣議決定し、地域社会が自立と連帯の精神に立脚して形成される社会づくりを推進しています。
 本県では、平成15年(2003年)3月に策定した「第三次宮崎県高齢者保健福祉計画・第二期宮崎県介護保険事業支援計画」に基づき、高齢者の自立した生活を支援するための基盤整備などの施策を積極的に推進しています。
 しかしながら、高齢者に対する心理的ないじめ、介護を要する高齢者に対する不適切な処遇、判断能力の不十分な高齢者に対する詐欺商法等による財産侵害をはじめとする高齢者の人権侵害が社会問題となっており、今後、高齢者の人権に配慮し、高齢者が安心して心豊かに生涯を過ごせる社会づくりのため、地域での支援システムを構築するなどの基盤整備を進めるとともに、高齢者の人権に関する啓発を積極的に推進することが求められています。

イ 施策の方向
 本格的な高齢社会の到来に向けて、高齢者の人権に配慮し、高齢者が安心して自立した生活を送られるよう支援するとともに、高齢者がそれぞれの知識と経験を活かし、高齢社会を支える重要な一員として各種の社会的な活動に積極的に参加できるようにするため、以下のような施策の推進を図ります。

(ア)学校教育においては、高齢化の進展を踏まえ、主に社会科や道徳、特別活動、総合的な学習の時間に、福祉に関する教育としての高齢者の人権に関する教育を推進します。(福祉保健部、教育委員会)

(イ)高齢者の学習機会の体系的な整備を図るとともに、高齢者の持つ知識・経験等を生かしての社会参加を可能にする条件整備を促進します。(福祉保健部、教育委員会)

(ウ)高齢者に対する人権侵害の発生を防止するため、県高齢者総合相談センターと市町村の相談機関との連携を深め、多様な相談内容に対応するとともに、高齢者の権利を守るための成年後見制度が改正されていることを踏まえ、この制度を地域において十分に活用するための支援システムの構築に努めます。(福祉保健部)

(エ)「老人の日・老人週間(9月15日~21日)」や県の「文化交流ウイーク」などを通じて、高齢社会に対する県民の関心と理解を深めるため、高齢者と他の世代との世代間交流を促進するとともに、研修会の実施、パンフレットの作成・配布などを通じて、高齢者に関する様々な課題についての効果的な啓発・広報活動を推進します。(福祉保健部)

(オ)高齢化が急速に進行している農山漁村において、高齢者が精神的、身体的、経済的、社会的な面において生涯現役を目指し、安心して住み続けられるよう支援します。(地域生活部、福祉保健部、環境森林部、農政水産部)

(カ)高齢者が長年にわたり培ってきた知識、経験等を活用し、65歳まで現役として働くことができる社会を実現するため、定年の引き上げ、継続雇用の推進、多様な形態による雇用・就業機会の確保のための啓発活動に取り組むとともに、職業能力開発や研修の機会の確保に努めます。(商工観光労働部)

(4) 障害のある人に関する問題
ア 現状と課題
 国連では、障害のある人の人権問題に取り組んでいくため、昭和56年(1981年)を「国際障害者年」と定め、翌昭和57年(1982年)には総会で「障害者に関する世界行動計画」を採択、さらには「障害者のための国連10年(1983-1992年)」が宣言され、その終了後は国連のアジア太平洋経済社会委員会において「アジア太平洋障害者の10年(1993-2002年)」が採択されました。
 これらを受けて、わが国では、障害のある人の自立と社会参加を促進するため、平成5年(1993年)に、今後10年の基本的方向を定めた「障害者対策に関する新長期計画」が策定されるとともに、「心身障害者対策基本法」が「障害者基本法」に改正されました。また、平成7年(1995年)には、平成8年度(1996年度)から平成14年度(2002年度)までを計画期間とする「障害者プラン~ノーマライゼーション7か年戦略~」を策定し、関係省庁が一体となった障害者施策を展開してきました。
 また、平成12年(2000年)には、「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通*12 バリアフリー法)を制定、平成13年(2001年)に障害者の資格・免許取得について、欠格条項を見直す改正法の施行、平成14年(2002年)に「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(ハートビル法)を改正しました。
 さらに、平成14年(2002年)12月には、平成15年(2003年)度から平成24年(2012年)度までを計画期間とする新たな「障害者基本計画」及び「重点施策実施5か年計画」を策定し、障害の有無にかかわらず国民だれもが相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」とするための施策を推進していくことにしました。
 また、平成16年(2004年)に「障害者基本法」が改正され、基本的理念として「何人も、障害者に対して、障害を理由として差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。」ことが規定されました。
 本県では、国際障害者年を契機に様々な取組を進め、昭和57年(1982年)に「宮崎県障害者施策の長期計画」を、そして、平成7年(1995年)には「宮崎県障害者施策の新長期計画」を策定し、「完全参加と平等」の実現を目指した各種施策を総合的に展開してきました。
 しかしその後、高齢化、障害の重度化・重複化、障害のある人の自立と社会参加意識の高まりなど、障害のある人を取り巻く状況は大きく変わってきており、このような情勢の変化に的確に対応し、21世紀に向けた住みよいふるさと宮崎づくりを進めていくため、平成12年(2000年)に「人にやさしい福祉のまちづくり条例」を制定、平成13年(2001年)には「宮崎県障害者計画」を策定しました。
 今後は、この計画に基づき、障害のある人が社会の一員として地域の中で生き生きと暮らし、積極的に社会参加を行う「完全参加と平等」の実現を目指して、各人の主体性を尊重しながら、県民一体となって、平等な社会づくりを進めていくことが必要となります。

イ 施策の方向
 障害のある人も地域の中で普通の暮らしができる社会を目指す「ノーマライゼーション」の理念の下に、「宮崎県障害者計画」に基づき、国の障害者基本計画や市町村の障害者計画にも配慮しつつ、以下のような施策の推進を図ります。

(ア)地域における障害のある人の自立と社会参加が進むよう、市町村への支援を行うとともに、ライフステージや個別の状況に応じて、一貫して福祉サービスが受けられるよう、体系的なサービスの充実を図ります。(福祉保健部)

(イ)障害のある人が生きがいを持って地域で生活していくため、「バリアフリーの施設づくり」を進めるとともに、住宅改造費の助成や知的障害者・精神障害者のためのグループホーム等の充実に努めます。(福祉保健部)

(ウ)ふれあいフェスティバルや障害のある人自身のボランティア活動等を通じて、自分を表現できる場を設けるとともに、社会参加を促進するため、ガイドヘルパーをはじめ手話奉仕員や点訳奉仕員の養成に努めるほか、小規模作業所の運営の安定を図ります。(福祉保健部)

(エ)障害のある人がそれぞれの適性と能力に応じた職業に就くことを通じて社会参加を促進することにより、安定した生活基盤づくりを図るため、障害者雇用促進激励大会の開催、障害者雇用優良事業所等の表彰、街頭キャンペーンやキャラバン隊による啓発活動などを行います。
また、障害者の日(12月9日)、障害者週間(12月3日~9日)、知的障害福祉月間(9月)等の様々な機会を通じて、障害及び障害のある人についての理解を深めるための啓発、広報活動を行います。(福祉保健部、商工観光労働部)

(オ)障害のある人に対する理解を深め、思いやりの心を育むとともに、ボランティア等の福祉活動への参加を促進するため、学校教育において交流教育等の取組を積極的に推進するとともに、教育関係者への研修を行います。また、公民館、地域活動団体等の地域活動を通して、住民に対する福祉体験活動参加への働きかけを強めていきます。(福祉保健部、教育委員会)

(カ)県ボランティアセンターにおいて、児童・生徒のボランティア活動を普及させるため、その福祉体験活動への参加を促進します。また、サラリーマンや高齢者等の福祉意識を高めるため、社会人の福祉体験活動への参加の機会提供の拡充に努めます。
 また、県ボランティアセンターにおける福祉教育推進委員会や福祉教育合同研修会等を通して、福祉教育をより効果的に進めていくための協議・研究を行うとともに、福祉教育に関する各機関や団体との連携を強化していきます。(地域生活部)

(キ)障害への早期対応と療育システムを構築するため、保健・医療機関や教育機関との連携強化に努めるとともに、重症心身障害児(者)通園事業や障害児通園(デイサービス)事業を実施します。(福祉保健部)

(ク)身体障害者更生相談所、児童相談所及び知的障害者更生相談所の相談体制等の充実をはじめ、障害児療育の拠点であるこども療育センターの総合的な機能の充実に努めます。(福祉保健部)

(ケ)障害のある人自らがサービスを選択し、契約によりサービスを利用する支援費制度の適正な運営に努めるとともに、居宅介護事業、短期入所事業、デイサービス事業などの在宅福祉サービスの充実に努めます。(福祉保健部)

(コ)障害のある人の権利を守るための障害者110番運営事業をはじめとした相談支援体制の充実に努めます。(福祉保健部)

(サ)精神障害者の人権に配慮した適正かつ良質な医療を確保するため、医療従事者の人権教育を促進するとともに、適切な医療体制の整備の促進に努めます。(福祉保健部)

(シ)回復途上の精神障害者の地域での自立や就労、あるいは社会復帰施設の整備等に当たっての大きな阻害要因となっている地域住民の精神障害に対する不当な偏見・差別や過剰な不安の除去を図るため、地域住民に対する正しい知識の普及・啓発に努めるとともに、精神障害者と地域住民との交流の場の確保に努めます。(福祉保健部)

(ス)精神障害者の社会復帰及び自立と社会参加を促進するため、関係機関と連携し、精神障害者社会復帰施設等や地域で生活する精神障害者の支援体制を整備するとともに、精神保健福祉センターや保健所における相談指導や訪問指導等の保健サービスの提供体制の充実に努めます。(福祉保健部)

(5) 同和問題
ア 現状と課題
 国においては、同和問題の早期解決を図るため、昭和40年(1965年)の同和対策審議会の答申を受けて、昭和44年(1969年)に同和対策事業特別措置法(昭和44年7月10日~昭和57年3月31日)を制定し、その後、地域改善対策特別措置法(昭和57年4月1日~昭和62年3月31日)及び地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(以下「地対財特法」という。)(昭和62年4月1日~平成14年3月31日)を制定し、数々の施策を推進してきました。
 このような状況の中、平成8年(1996年)5月に地域改善対策協議会意見具申が出されました。この答申では、これまでの特別対策により生活環境の改善をはじめとする物的面での較差は大きく改善されましたが、「今後の主要な課題は、依然として存在している差別意識の解消、人権侵害による被害の救済等の対応、教育、就労、産業等の面でなお存在している較差の是正、差別意識を生む新たな要因を克服するための施策の適正化である」とし、また、「今後、差別意識の解消を図るに当たっては、これまでの同和教育や啓発活動の中で積み上げられてきた成果とこれまでの手法への評価を踏まえ、すべての人の基本的人権を尊重していくための人権教育、人権啓発として発展的に再構築すべき」と提言されました。
 これを受けて、平成9年3月、地対財特法はその対象とする事業を絞り込み、さらに5年間の延長で平成14年3月31日までに事業を完了させることとなり、特別対策は終了、その後は一般施策の中で対応することとなりました。
 本県においては、同和問題の早期解決に向けて同和対策事業を推進し、その結果、生活環境などの物的面においては相当程度に改善が進みました。
 また、教育については、昭和52年(1977年)に「宮崎県同和教育基本方針」を策定し(昭和62年改定)、教育基本法の理念のもとに、すべての学校及び地域社会において、人間の尊厳、人権の尊重を基調とする教育活動を積極的に展開しています。
 さらに、啓発については、県内の様々な機関、団体及び企業で組織する宮崎県人権啓発推進協議会や、県、市町村及び主要企業が出資する財団法人宮崎県人権啓発協会が中心となって、講演会の開催、資料の作成・配布などの様々な啓発活動を積極的に展開するなど同和問題の早期解決に向けた人権意識の高揚に努めています。
 しかしながら、いまだに差別事象が発生するなど、差別意識の解消という点では今なお課題を残しています。また、同和問題に対する県民の理解を妨げる「えせ同和行為」も依然として跡を絶たない状況です。
 今後、これまでの取組の経緯と成果を踏まえ、差別意識の解消に向けたより積極的な教育・啓発活動が求められています。

イ 施策の方向
 同和問題を人権問題の重要な柱としてとらえ、その早期解決を図っていくため、地域改善対策協議会意見具申(平成8年(1996年)5月17日)を尊重し、これまでの経緯と成果を踏まえながら、以下のような施策の推進を図ります。

(ア)県民一人ひとりが同和問題についての正しい理解と認識を深め、自らの課題としてその心理的差別の早期解決に主体的かつ積極的に取り組むことを基本とし、市町村や関係機関等とも連携しながら、総合的な県民啓発を推進します。(地域生活部)

(イ)学校教育及び社会教育においては、人権尊重の教育をより深く推進することにより、部落差別に対する科学的認識を深め、広い人類愛に裏づけられた、真に差別をなくしていく意志と実践力とをもった人間の育成を目指します。また、そのための意欲と実践力に富んだ指導者の養成や研修の充実に努めます。(教育委員会)

(ウ)財団法人宮崎県人権啓発協会との連携を図りながら、啓発指導者の育成、企業・団体等が実施する研修会への講師の派遣、啓発研修教材の研究・作成を行うなど、より効果的な啓発活動を推進します。(地域生活部)

(エ)宮崎県人権啓発推進協議会を中心として、人権週間(12月4日~10日)や人権啓発強調月間(8月)における集中的な啓発活動を展開するとともに、人権啓発フェスティバルなど県民が主体となって取り組める多彩な事業の推進を図ります。(地域生活部)

(オ)差別のない明るい職場づくりを推進するため、公正採用選考人権啓発推進員の設置や従業員に対する啓発活動の充実を図るよう、企業に対して要請します。(商工観光労働部)

(カ)えせ同和行為は、これまで積み重ねてきた同和問題についての啓発効果を一挙に覆し,ひいては同和問題に対する誤った意識を県民に植えつけるなど,同和問題の解決を妨げる大きな要因となっているため、関係機関等との連携を図りながら、えせ同和行為の排除を一層強化します。(地域生活部)

(6) 外国人に関する問題
ア 現状と課題
 国連は、昭和23年(1948年)に「世界人権宣言」、昭和40年(1965年)に「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する条約」、昭和41年(1966年)に「国際人権規約」などの国際条約を採択し、わが国でもこれらの条約を批准しています。
 わが国では、国際化の進展に伴い、全国的に、在留する外国人が増加し、その国籍も多様化する傾向にあります。
 このため、言語や習慣、文化の違いにより相互理解が十分でないなどの理由で様々な問題が発生しています。
 このような中、本県では、平成13年(2001年)3月に、外国の文化や習慣、外国人の人権を尊重した国際化を推進することなどを目的とした「宮崎県国際化推進基本指針」を策定しました。今後も、この指針を基本として、外国人の人権を擁護するために、児童・生徒・学生に対する人権教育の充実や県民に対する啓発活動を行い、外国人と県民がともに安心して生活できる環境づくりを推進することが求められています。

イ 施策の方向
 国際化の進展に伴い、外国との交流が増大している中、県民一人ひとりが心の中の国境をとり払い、外国人の人権に配慮した行動ができるよう、地域の内外において多様な文化や人々が共存していける多文化共生社会の実現に向けて「宮崎県国際化推進基本指針」に基づき、以下のような施策の推進を図ります。

(ア)外国の文化や習慣等の正しい理解を深めるとともに、国際交流・協力団体等と連携しながら、国際親善、国際協力の精神を培う教育を推進します。(地域生活部、教育委員会)

(イ)外国人の人権が尊重され、安心して生活できるよう、外国語による相談窓口の整備や各種パンフレット等の外国語表記を推進します。(地域生活部)

(ウ)外国人の利便性の向上を図るため、道路標識のローマ字併記や観光案内板、公共交通機関等における外国語表記を促進するとともに、公共施設を中心に外国人の利用を念頭に置いた整備を進めます。(地域生活部、商工観光労働部、土木部)

(7) HIV感染者・ハンセン病患者等に関する問題
ア 現状と課題
(ア)HIV感染者等
 HIV(ヒト免疫不全ウイルス)によって引き起こされる後天性免疫不全症候群のことをエイズと呼んでおり、HIV感染者とは、HIVの感染が確認されているが、エイズを発症していない状態の人をいいます。
 世界のHIV感染者及びエイズ患者(以下、「HIV感染者等」という。)は約4,000万人(国連合同エイズ計画(UNAIDS)の平成15年(2003年)末現在推計)、またわが国でのHIV感染者等は約8,600人(平成15年(2003年)12月末現在 厚生労働省エイズ動向委員会報告)とされており、これらの多くの人々は、生命の危機に加えて、今まで生活してきた社会から疎外されるという二重の苦しみにさらされています。
 世界保健機構(WHO)は、昭和63年(1988年)に、エイズの蔓延防止と患者・感染者への偏見と差別の解消を図るため、毎年12月1日を「世界エイズデー」と定めました。また、平成8年(1996年)に開催された第2回HIV及びエイズと人権に関する国際専門会議において、「HIV及びエイズと人権に関するガイドライン」が採択され、HIV感染者等の人権保障において各国のとるべき措置が規定されました。
わが国においては、平成元年(1989年)に、「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律」を定め、エイズの予防に必要な施策を講じてきましたが、平成 11年(1999年)新たに「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」を制定し、感染症患者全般に対する人権を尊重した対策がとられることになりました。
本県においても、平成11年(1999年)に「宮崎県感染症予防計画」を策定し、エイズ予防キャンペーンや専用電話「エイズホットライン」による相談事業等により、偏見や差別をなくすための正しい知識の普及・啓発に取り組んでいます。

(イ)ハンセン病患者・元患者等
 ハンセン病は、らい菌による感染症ですが、らい菌に感染しただけでは発病する可能性は極めて低く、現在では、発病した場合であっても、治療方法が確立しています。また、遺伝病でないことも判明しています。
 したがって、ハンセン病患者を隔離する必要は全くありませんでしたが、従来、わが国においては、発病した患者の外見上の特徴から特殊な病気として扱われ、古くから施設入所を強制する隔離政策が採られてきました。この隔離政策は、平成8年(1996年)に「らい予防法の廃止に関する法律」の施行により終結しました。
 また、平成13年(2001年)5月11日にハンセン病患者に対する国の損害賠償責任を認める熊本地裁判決が下されましたが、これが大きな契機となって、ハンセン病問題の重大性が改めて国民に明らかにされ、国によるハンセン病患者・元患者等に対する損失補償や、名誉回復及び福祉増進等の措置が図られることになりました。
 しかし、療養所入所者の多くは、強制隔離の期間が長期に及んだことや高齢化、社会の偏見や差別が未だに存在することなどにより、社会復帰が困難な状況にあります。
 今後とも、エイズ及びハンセン病についての正しい知識の普及・啓発を図るとともに、その本人や家族の人権を尊重し、偏見や差別意識を解消するための啓発活動など、一人ひとりが安心して医療を受けつつ暮らすことのできる社会づくりの一層の推進が求められています。

イ 施策の方向
 エイズ、ハンセン病についての正しい知識の普及・啓発を図ることにより、その本人や家族が尊厳をもって周囲の人々と同じように暮らせる社会づくりとともに、その社会復帰のための体制づくりのため、以下のような施策の推進を図ります。

(ア)HIV感染者等

a.ポスター、パンフレットの作成・配布や講演会の開催等のキャンペーン(エイズブロック作戦)を通じて、エイズに関する正しい知識の普及・啓発に努めます。(福祉保健部)
b.保健所におけるエイズ関係の匿名による相談・検査体制を推進します。(福祉保健部)
c.HIV感染者等の病気や生活上の不安等心のケアを支援するために、主治医の要請に基づき、カウンセラーの派遣を行います。(福祉保健部)
d.学校教育における、エイズ教育等を通じたHIV感染者等に関する正しい知識の普及に努めます。(教育委員会)

(イ)ハンセン病患者・元患者等
セミナーや 講演会の開催などにより、ハンセン病に関する正しい知識の普及・啓発を図るとともに、療養所の本県出身在園者に対し、里帰り事業や中学生、高校生を対象とした療養所訪問事業等を推進することにより、社会復帰に向けての関係機関との支援体制づくりに努めます。(福祉保健部)

(8)犯罪被害者等に関する問題
ア 現状と課題
 近年、わが国では、犯罪被害者等の人権問題に対する社会的関心が大きな高まりを見せており、犯罪被害者等の人権に対する配慮と保護を図ることが課題となっています。
 国際的にも、近年の人権意識の高まりを背景に、犯罪による身体的・精神的に被害を受けた犯罪被害者等に対して、国家による救済、支援が行われるべきであるとの主張が高まってきています。
 昭和60年(1985年)、国連総会において「犯罪及び権力濫用の被害者のための司法の基本原則宣言」が採択され、各国政府は、警察、裁判、医療、社会福祉等の関係機関の職員に十分な教育訓練を行い、司法上・行政上の敏速な対応を進めるため適切な制度整備等を行うこと、などが提言されました。また、欧米諸国等では、犯罪被害者等支援のための様々なシステム整備が進められており、犯罪被害者等支援は国際的な潮流となっています。
我が国においては、昭和56年(1981年)、「犯罪被害者等給付金支給法」が施行され、犯罪被害者等に対する経済的支援が行われてきましたが、平成3年(1985年)開催の「犯罪被害給付制度発足10周年記念シンポジウム」等を契機に、犯罪被害者等が受ける被害は、犯罪の直接的被害だけでなく精神的・肉体的・経済的な被害についても極めて深刻なものがあることが認知されるようになりました。また、マスメディアによる行き過ぎた報道等によるプライバシーの侵害や過剰な取材による私生活の平穏の侵害等も指摘されています。
このような中、平成12年(2000年)に犯罪被害者等の保護を図るため、「刑事手続きに付随する措置に関する法律」の制定、「刑事訴訟法」や「検察審査会法」、「少年法」の改正、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」、「児童虐待の防止等に関する法律」の公布等一連の法的措置によって、司法手続きにおける改善や保護措置が進められたほか、平成13年(2001年)には、給付制度の拡充や犯罪被害者等早期援助団体(民間犯罪被害者支援団体)等との連携及び調和を内容とした犯罪被害者等給付金支給法の改正が行われました。
 さらに、平成16年(2004年)には、「犯罪被害者等基本法」が制定され、犯罪被害者等の権利利益の保護のための国、地方公共団体、国民の責務が明らかにされ、各種施策を総合的かつ計画的に推進することとなりました。
本県では、警察本部において、平成8年(1996年)に「被害者対策要綱」が制定されたほか、平成11年(1999年)に犯罪被害者対策室を設置して、犯罪被害者等の立場に立った支援を行っています。また、平成16年(2004年)4月に設立された社団法人宮崎犯罪被害者支援センターでは、犯罪被害者等支援についての広報啓発、専門的研修を受けたボランティア相談員等による電話・面接相談や病院、警察、裁判所など行政機関・団体等への付き添い・仲介などの直接的支援等、専門的・継続的かつきめ細かな支援を行っています。
 今後とも、関係法を適切に運用しながら、犯罪被害者等のニーズを踏まえた支援策を行うとともに、犯罪被害者等の人権への配慮と保護を図るため啓発活動等を推進する必要があります。

イ 施策の方向
 犯罪被害者等の人権を守るために、関係機関・団体の連携と県民の理解と協力のもと、犯罪被害者の心情に配慮しつつ、以下のような施策の推進を図ります。

(ア)多くの県民に、犯罪被害者等に対する支援はもとより、「地域の安全は、地域住民の手で守ること」という思いやり意識を広め、安全で安心し、心豊かに暮らせるような宮崎県を創ることを訴えるため、犯罪被害者等の悲惨な現状と命の尊さ、そして犯罪被害者等に対する支援の必要性等についての広報啓発事業を推進します。(警察本部)

(イ)犯罪によって受けた被害を回復・軽減するために、受けることのできる支援の内容や、刑事手続きに関することなど、犯罪被害者等にとって早期に必要な情報や、捜査の状況、加害者の処分状況など犯罪被害者等にとって関心のある情報を提供できるよう、手引きの作成・配布や犯罪被害者等連絡制度等、各種施策の推進と充実に努めます。(警察本部)

(ウ)警察本部並びに各警察署に警察安全相談、暴力相談、少年相談、性犯罪相談等の被害者等のニーズに応じた相談窓口を設け、県民からの各種相談に応じるよう努めていますが、今後もその受理体制の充実を図ります。また、犯罪により大きな精神的被害を受けた犯罪被害者等に対するカウンセリング体制について、関係機関・団体と連携を図りながら、その充実に努めます。(警察本部)

(エ)捜査過程における捜査官の言葉や態度が犯罪被害者等の心理状況に及ぼす影響は大きなものがあることから、犯罪被害者等が捜査によって余計な負担を負わず、二次被害を受けないよう、犯罪被害者等に接する際にはできる限りの配慮を行うなど、犯罪被害者等の人権に配意した捜査に努めます。
 また、事件発生直後から専門的な犯罪被害者等支援が必要とされる犯罪被害者等に対しては、犯罪被害者等支援システムの充実を図り、犯罪被害者等に対する支援活動を推進します。(警察本部)

(オ)犯罪被害者等の経済的負担を軽減するため、利用できる制度の紹介や充実を図ります。
また、殺人事件の遺族や身体に障害を負わされた被害者等に対して国が給付金を支給する犯罪被害給付制度について広報を行うとともに、これを適切に運用し、犯罪被害者等の精神的・経済的被害の緩和を図るよう努めます。(警察本部)

(カ)「社団法人宮崎犯罪被害者支援センター」との連携を図り、相談事業、直接支援事業、広報啓発事業等の充実を図るとともに、宮崎県犯罪被害者等支援連絡協議会、宮崎県弁護士会犯罪被害者支援委員会等の関係機関・団体との連携を強化し、犯罪被害者等のニーズに沿ったきめ細かな支援に努めます。(警察本部)

(9) インターネットによる人権侵害の問題
ア 現状と課題
 近年のインターネットの普及に伴い、その匿名性や情報発信の容易さから、個人の名誉を侵害したり、差別を助長する表現が掲載されるなど、人権にかかわる様々な問題が発生しています。
 また、携帯電話のメール等を使った誹謗中傷等による人権侵害も発生しています。
 このため、平成14年(2002年)5月には「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(プロバイダ責任法)が施行され、インターネットによる情報の流通により、自己の権利を侵害されたとする者が、関係するプロバイダ等に対し、当該プロバイダ等が保有する発信者の情報の開示を請求できることとなりました。
 インターネットを悪用した人権侵害を防止するため、一般のインターネット利用者やプロバイダ(*13)等が、個人の名誉をはじめとする人権に関する正しい理解を深めるための各種啓発活動を展開することが求められています。

イ 施策の方向
 インターネットを利用する一人ひとりが人権侵害を行わないように人権意識の高揚が重要なため、以下のような施策の推進を図ります。

(ア)インターネット利用者が情報モラルを守り、人権を侵害するような情報をインターネット上に掲載しないよう啓発を推進します。(地域生活部)

(イ)学校においては、情報に関する教科等で、情報の収集・発信における個人の責任や情報モラルについて理解させるための教育の充実に努めます。(教育委員会)

(10) 性的少数者に関する問題
ア 現状と課題
 心の性とからだの性との食い違いに悩む人々(性同一性障害)や同性愛の人々など、性的少数者に関する問題もあります。
 同性愛者に対する差別的取扱いについては、現在では、世界各国において禁止法が制定されるなど、不当であるという認識が広がっていますが、いまだ偏見や差別を受けています。また、性同一性障害者に対する周囲の無理解などが社会生活を制限したりしています。
 このため、平成16年(2004年)に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が施行され、一定の要件を満たした場合、戸籍上の性別を変更できることになりました。
 人間を男女の二つの性に分けて固定的に判断することは、性的少数者を「異常」とみなし、その人間性を否定することにもなりかねません。性的多様性を認めあうことがすべての人々の人権を守るために大切です。

イ 施策の方向
 性的少数者の人権を守るためには、職場、地域社会などの周囲の人々が性に対する多様な在り方を認識し、理解を深めていくことが必要です。このため、イベントや研修会等機会を捉えた各種の教育・啓発活動の推進を図ります。(地域生活部)

(11) 刑を終えて出所した人に関する問題
ア 現状と課題
 刑を終えて出所した人に対しては、本人に真しな更生の意欲がある場合であっても、県民の意識の中に根強い偏見や差別意識があり、就職や住居の確保に際して大きな障害となるなど、社会復帰を目指す人たちにとって現実は極めて厳しい状況にあります。
 刑を終えて出所した人が真に更生し、社会の一員として円滑な生活を営むことができるようにするためには、本人の強い更生意欲とともに、家族、職場、地域社会など周囲の人々の理解と協力が欠かせないことから、刑を終えて出所した人に対する偏見や差別意識を解消し、その社会復帰に資するための啓発活動を今後も積極的に推進する必要があります。

イ 施策の方向
 刑を終えて出所した人の人権を守るために、偏見や差別をなくし、社会復帰に資するための啓発の推進を図ります。(福祉保健部)

(12) その他の問題
 これまで述べてきた人権問題のほかにも、アイヌの人々などの問題などが存在しています。 その他の人権に関する課題においても、その問題の原因となっている偏見や差別をなくし、一人ひとりの人権が尊重されるよう、それぞれの問題の特性に応じた人権教育・啓発の推進を図ります。


第5章 方針の推進

1 県の推進体制
 方針の総合的かつ効果的な推進を図るため、関係部局相互の緊密な連携・協働の下に全庁的な取組を推進することとします。
 なお、各部局は、この方針の趣旨を十分に踏まえて、施策の実施に当たることとします。

2 国、市町村との連携
 方針に基づく人権教育・啓発の推進を図るために、国や市町村の役割分担を踏まえつつ、密接な連携・協働の下に取組を進めていきます。
 特に県民にとって一番身近な市町村において、地域の実情に即して行われる人権教育・啓発は、より大きな効果が期待されることから、情報の提供、事業の支援等、その連携・協働の強化に努めます。

3 民間団体との連携
 人権問題が複雑化・多様化する中、方針に基づく人権教育・啓発を総合的に推進するために、民間団体との連携・協働に努めます。
 特にNPO(*1)は個別課題に柔軟に対応できるなど優れた特性を持っていることから、様々な要望に対応した人権施策を実施するためにNPOの自主性や自発性を尊重しながら、その連携・協働に努めます。

4 施策の点検及び方針の見直し
 方針の目標を達成するため、毎年、方針に基づく施策の実施状況を点検し、その結果を以後の施策に適正に反映させるように努めます。なお、実施状況については県民へ公開します。
 また、今後の人権問題を取り巻く国際的な動向や国の状況及び社会情勢の変化等へ適切に対処するため、県民の人権に関する意識の状況を把握し、必要に応じてこの方針の見直しを行います。


用語解説
*1 NPO [Non Profit Organization]
民間非営利活動組織などと訳され、非営利(利潤の追求や利益の配分を目的としない)で自主的、自発的に公益的な活動を行う組織や団体をいう。
*2 ドメスティック・バイオレンス
配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった人から振るわれる暴力。
*3 セクシュアル・ハラスメント
性的嫌がらせ。相手の意に反した性的な発言や行動で、例えば身体への不必要な接触、性的関係の強要、性的な冗談やからかいなど、さまざまな態様のものが含まれる。女性が被害者になる場合が大多数であるが、男性が女性から被害を受ける場合もある。
*4 パワー・ハラスメント
職場における組織の規範や慣習、または職権というパワーを使って行う強制やいやがらせ。
*5 インフォームドコンセント
患者が医療行為の内容について医師等から十分な説明を受け、納得のうえで同意すること。
*6 男女共同参画社会
男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うことができる社会。
*7 固定的役割分担意識
「男は仕事、女は家庭」というような性によりあらかじめ役割を固定した考え方。
*8 ポジティブ・アクション
男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会に係る男女間の格差を改善するため必要な範囲内において、男女のいずれか一方に対し、当該機会を積極的に提供することをいう。男女共同参画社会基本法第2条では「積極的改善措置」として規定されている。形式的に法の下に平等を定め、機会を均等にしても、慣行や偏見により格差はいつまでも解消しないので、一定の有利な措置を設けることによって、積極的に差別の解消を図るというもの。
*9 ノーマライゼーション
障害のあるなしや年齢などに関係なく、すべての人が同じ社会の中で普通の暮らしができる社会がノーマル(普通)であるという考え方。
*10 リプロダクティブ・ヘルス/ライツ
性と生殖に関する健康と権利。1994年にカイロで開催された国際人口・開発会議において提唱された概念で、重要な人権の一つとして認識されている。リプロダクティブ・ヘルス/ライツの中心的課題には、いつ何人子どもを産むか産まないかを選ぶ自由、安全で満足のいく性関係、安全な妊娠・出産、子どもが健康に生まれ育つことなどが含まれている。また、これらに関連して、思春期や更年期における健康上の問題等生涯を通じての性と生殖に関する課題が幅広く議論されている。
*11 メディア・リテラシー
メディアからの情報を主体的に選択し、内容を分析・読解し、活用できる能力やメディアを適切に選択し発信する能力のことをいう。
*12 バリアフリー
障害者や高齢者などが生活していく上での「障壁(バリア)」となるものを取り除くこと。
*13 プロバイダ
インターネットへの接続サービスを提供する団体