メニュー

人権に関するデータベース

全国の地方公共団体をはじめ、国、国連関係機関等における人権関係の情報を調べることができます。

アイユ記事

DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)の新しい理解と人権/355号(2020年12月発行)掲載

芝大門人権講座 LGBTQだけじゃない。

主催
(公財)人権教育啓発推進センター
実施日
2020年10月20日(火)実施

 10月の芝大門人権講座では、臨床心理士でネクスDSDジャパン主宰、日本性分化疾患患者家族会連絡会のヨ・ヘイル代表がDSDsについて講演した。
 DSDsとはDifferences of SexDevelopment(体の性の様々な発達)の略称で、医学的には性分化疾患と呼ばれている。染色体、性腺、または解剖学的に体の性の発達が先天的に非定型的である状態のことを表し、生まれつき膣や子宮がない不妊状態である場合や、尿道下裂によって外性器の見た目では男性と分からない場合など、その状態は様々。当事者やその家族の多くは、「インターセックス」や「性分化疾患」という包括用語自体に否定的という。出生時・思春期・あるいは不妊治療や出生前診断の段階等でDSDsが判明する場合が多いという。


 ヨ代表は、「男らしさ・女らしさ」といった固定的性別役割分担意識の変革は社会的に進んでいるが、染色体や外性器などの「男女の体の構造に関する固定概念」への認知度は低いことを指摘。それによって当事者やその家族が苦しんでいるという。「生まれつき、男性は染色体がXYで精巣があり、女性はXXで卵巣・子宮があるという社会の固定観念から外れた体ということだけで、男でも女でもないと誤解されてしまう。診察時などに心ない言葉を受けることもあり、トラウマを抱える当事者は多い」と述べた。また、トランスジェンダー(性別違和)と混同して捉えられることも多いが、DSDsは事故や病気で外性器や子宮を損なった人と同様であり、性別違和を感じている人は極めて少ないという。「例えば、病気で子宮を切除した女性に、『性自認は女性ですね』とは聞かないのに、先天的に子宮のないDSDs当事者には『性自認は何ですか?』と聞いてしまう。また、性のグラデーションに関する授業はLGBTQの子どもにとっては大切なことだが、DSDsの子どもが同じ授業を受けた際に、自分が完全な男性・女性ではないと否定されたように感じ、トラウマになることもある。学校や企業研修では、『性自認・性的指向・性の表現』のグラデーションモデルとともに『体の性の構造』を男女に分けるカリキュラムにするなど、様々な体の性があることについても触れてほしい」と訴えた。


 最後に「DSDsに限らず、自分と異なる他者がいること、相手の感じていることを想像する共感を持つことが、人を大切にすることにつながる」と述べた。