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人権に関するデータベース

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研修講義資料

京都会場 講義8 平成25年10月31日(木)

「ネット被害の現状とその対応」

著者
安川 雅史
寄稿日(掲載日)
2014/02/03

 みなさん初めまして。私は全国Webカウンセリング協議会理事長の安川雅史です。今日は皆さんに、子ども達へのインターネット被害の現状と、その対策についてお話しします。

 

◆事例

 まずは、インターネット被害についての事例を7つお話しします。
 1つ目の事例は、ブログの内容がインターネット上に流出したというものです。
 被害者は東京都立の学校に通う女の子です。東日本大震災が起こった日のことです。女の子は学校から自転車に乗って帰宅しました。そこへ、向こうからおばあちゃんが歩いてきました。その女の子はおばあちゃんのことを見ていませんでした。歩道を携帯片手にメールをしながら自転車に乗っていたからです。その結果、女の子はおばあちゃんをバンとはねました。おばあちゃんは車道の方に飛んでけがをしました。しかし、その子は「ばばあ、むかつくんだよ」と言って、そのまま家に帰ったのです。
 家に帰る途中で地震が起こりました。やっとのことで家に帰ると、家の中がめちゃくちゃな状態になっていました。その子の家にもおばあちゃんが居ます。そのおばあちゃんが1人で留守番をしていたのですが、何が起こったのか分からずにパニックになってしまったのです。女の子はそんなおばあちゃんに腹が立ってきました。「ばばあ、仕事もしてねえんだから、家のことぐらいちゃんとやれよ」などと自分のおばあちゃんを殴り始めたのです。
 その時に友達から電話が来ました。「びっくりしたよね。今すごく揺れたよね。こんな地震めったにないから、みんなで記念にプリクラ撮らない?早くおいでよ。電車とか全部止まっているから、今すぐ自転車で来なよ。まだここ閉まってないからさ」と。その子は急いで、友達の待っているところに行きました。そこでプリクラを撮るのです。「イエイ。ピース」なんて不謹慎なプリクラを撮って、自分のブログに貼っていました。
 女の子は、ブログの内容を親や先生に見られてはまずいと思っていたのでしょう。パスワードを設けていました。4桁のパスワードを入力しなければ、この子のブログは見られないようになっていたのです。しかし、簡単に解読されました。パスワードを解読することを趣味にしている人がいるのです。今どきの子どもは、パスワードを用いている子がかなりいるのですが、未成年がパスワードを設けているとかえって、「こいつらまずいことやっているんだろ。やっていること全部さらし者にしてやろう」という大人がいます。この子のパスワードも解読され、今までブログに書いていた内容が全部2ちゃんねるにまとめられました。「自分のおばあちゃんを虐待しているぞ。ひき逃げの犯人だ。その上、高校生の分際でタバコを吸っているぞ。ここの学校通っているぞ」と。
 翌日、学校の電話はパンク状態です。「あなたの学校ってどういう指導しているの。学校の指導がまずいからこういう生徒が出てくるんでしょ」と朝から晩までクレームの電話。学校側は対応しきれなくなって、警察に相談したのです。そして、警察から、私どもに相談が寄せられました。この女の子の担任の先生といろいろやり取りをして、2ちゃんねるの書き込み自体は消せました。しかし、インターネットは情報の伝染が早いのです。あっという間にコピーされていろいろなところに拡散してしまうと、もう止めようがありません。いろんなところで面白がって、このプリクラ画像やブログの書き込みをみんなが広めてしまったため、女の子は学校から処分を受けました。けれども、彼女はこれからも、これを背負って生きてくのです。インターネットの情報というものは今後のこの子の未来に影を落とすのです。
 最近は、日本の企業も人を採用する時に面接だけでなく、ツイッターやフェイスブック、ブログの内容でも判断するところがあります。ツイッターやフェイスブック、ブログからは、面接時には分からない、その人の日常生活や考え、いわゆる本性がわかるという理由からです。面接で100点満点の子でも、SNSでの素行で採用から落とすことがあるのです。この女の子は、もし面接で満点でも、このブログの情報が表に出てきてしまったら、不採用になるでしょう。これが、一生背負うということです。

 2つ目の事例は、インターネットがきっかけで、学校の評判がガタ落ちになってしまったものです。
 ある高校の例です。この学校は、某県で初めて甲子園で決勝まで行った学校です。最初は県民も大喜びでした。インターネットでも「県の誇りだ」と盛り上がっていました。しかし、野球部の部員の中でたった1人だけ、自身のブログの中に居酒屋に行ったことや、恋人といる画像を載せている子がいました。この子もブログにパスワードを設けていましたが破られました。この子が今までに書いていた内容、画像がインターネット上に全部アップされ、日本高等学校野球連盟がこの事を問題視しました。「こんな学校を、準優勝と認めるべきではない」という声が多数上がったのです。結局、子ども達のことを考え準優勝は認められましたが、それで事態が解決したかというと、そうではありません。
 それ以降、その高校の評判は落ち、不良が集まる学校だろういう偏見や、悪い書き込みはいまだに続いています。決勝まで戦っていますから、本来だったら、全国から生徒が集まってくるはずでした。ところが、逆のことが起こり、「あの学校を受けても仕方がないよね」と思われるようになってしまったのです。野球部も強くなるどころか、負けるようになってしまいました。たった1人こういう生徒がいるだけで、そのようになってしまうのです。
 インターネットが普及した今では、悪い意味合いで学校名がインターネットに載ると、あっという間に学校の評判が落ちてしまいます。今の子ども達は、オープンキャンパスやパンフレットだけで学校を決めることはまずありません。ほとんどの子はネット上で志望校の評判を調べています。そこで自分の受けたい学校の悪い評判が出てくると、当然その学校を受ける気持ちが一気に失せてしまう。悪い評判は主にライン(LINE)を通して子ども達の間で広まります。それだけで、あっという間に定員割れを起こす時代なのです。

 3つ目の事例は、交通事故の被害者の少年の情報がインターネット上にアップされたものです。
 中学校3年生の男の子が、深夜12時まで恋人とデートをした帰りに、交通事故に遭い、亡くなりました。彼は、加害者ではなく、被害者です。そのため、名前や年齢、住所が新聞等に載りました。
 しかし、世の中には、新聞等に出た名前を、一人一人調べているような暇な人がいるのです。この少年のことも、当然のように調べられました。翌日、インターネット上にアップされたのは、死亡記事だけではありませんでした。亡くなった男の子の顔画像と、事故が起きた日のデート相手の顔画像、過去のブログの書き込みの内容まで、すべてネット上にアップされていました。
 私たちに相談をしてきたのは、亡くなった男の子のご両親です。子どもを亡くして、それだけでも精神的に立ち直れない状態なのに、自分の子どものことがインターネット上に書かれているなんて、親としては、耐えきれないですよね。なんとか対応をして、今ではこの子の名前を調べても、検索サイトにはヒットしてこない状態までは持っていきました。ただし、これですべて消えたわけではありません。実はSNSと言われている会員制のサイトは、全てが検索サイトにヒットしてくるわけではありません。さらに、2ちゃんねる等での書き込みは、検索してヒットしてくるのは氷山の一角に過ぎません。ヒットしないだけで、2ちゃんねるではまだ隠れているかもしれませんし、それがいつまた顔を出してくるかも分かりません。

 4つ目の事例は、少年犯罪の加害者の恋人がインターネット上にアップされたものです。
 2011年、ある公園で集団暴行に遭って亡くなった男の子がいます。犯人は全員未成年者。そのため、新聞・テレビでは少年A、少年Bという風に、名前は全部伏せられていました。しかし、テレビのニュースが流れた直後、インターネット上では殺人に加わった子たちの情報が全部アップされていました。本人のフルネームだけではありません。親の情報や彼女の情報までアップされていました。
 個人情報なんて、簡単に分かってしまうのです。例えば、フェイスブックを見れば、人間関係だけでなく、興味を持っていることや趣味、宗教まで全部分かってしまいます。そうなると、インターネットで情報がさらされるのは、当然、殺人犯だけではないのです。何らかの関わりがある人の情報まで全部さらされてしまう。加害者の恋人の女の子は、プロフィールサイトに個人的な情報をかなり書いていました。調べる人が調べたら、住所や電話番号も分かってしまうような書き方だったのです。女の子の個人情報はインターネットでさらされ特定されました。
 女の子の家は、大変なことになりました。嫌がらせですよ。電話が鳴ったら、「あんたの娘も殺しに加わっていたんじゃないの? 親の育て方がまずいから殺人犯の彼女になったんでしょ。親としてあんた、どういう責任取るの?」と。親は精神的に不安定になって、電話のコードを抜いてしまいました。また、聞こえるような声で嫌がらせをしてくる人もいます。ドアのところに「人殺しの彼女の家」なんて書かれてしまう。警察にすぐに通報し、「うちの子は殺人犯でも何でもないのに、警察がちゃんと守ってくれなければ困る」と。警察のほうはすぐに来てくれて、かなりのペースで家の周りを巡回してくれることになりましたが、現行犯で嫌がらせの犯人を逮捕したとしても、この書き込みがある以上、第二第三の嫌がらせをする人は必ず出てきます。おおもとのインターネット上の情報を消さなければ何の問題解決にもなりません。そこで、こちらで対応し、今はこの子の名前を調べても検索に出てこない状態までは持っていき、女の子も今は精神的にはだいぶ安定したようです。

 5つ目の事例は、親の無知によって、インターネットに悪口を書き込まれてしまったというものです。
 TVのニュースで、心臓病を患っている男の子がテレビに出ていました。この男の子は、手術をしなければ、これから先長く生きていけないということなのです。テレビに出たのは理由があります。手術には莫大(ばくだい)な費用が掛かる。その手術費用を捻出するためです。男の子は、心臓を治してみんなと一緒にお昼休みに走ったり、学校に歩いて通ってみたい。そして、サッカークラブに入ってサッカー選手になりたいと、一生懸命に話していました。
 ところが、この子がテレビに出た直後、インターネット上ではひどい書き込みが広がっていきました。何故、そのようなことが起きてしまったのでしょう。実は、このニュースの映像の中に叩かれる要素があったのです。
 その子がもっているゲーム機に違法ソフトが刺さっていたからです。小学校1年生の男の子が自分で違法ソフトを買って使うことはあり得ません。おそらく、親が知らずに近所の人から貰ったものでしょう。しかし、好意で貰ったとしても、違法ソフトの事を知らないで子どもに使わせていたのでは、子どもは救えないのです。これは、違法ソフトのことを知らなかった親の責任なのです。

 6つ目の事例は、人のプライベートな画像をツイッターで流してしまったものです。
 カラオケ店でバイトをする高校3年生の女の子です。カラオケ店というのは全部の部屋に監視カメラが付いています。この女の子は、まずいことをしている客を監視カメラで見つけると、そのことをツイッターつぶやいていたのです。そして、ついには監視カメラの画像まで載せてしまった。
 すぐにこの女の子は特定されました。それ以降、この子の個人情報がネット上でさらされるようになります。学校名、顔画像、お父さんの勤め先、いろいろさらされて、この女の子の悪口が止まりませんでした。女の子は精神的に参ってしまって、すぐにこのつぶやきを消しました。けれど、一度広まってしまったら、消しても駄目なのです。自分の書き込みを消したとしても、もう止まりません。つぶやきを消した後も女の子の悪口がどんどん広まります。
 女の子は自分から謝罪しました。私がやったことはいけないことだった、申し訳なかったと。そして、「謝罪するから、私の悪口も書かないで。私のプライバシーもネットでさらさないで」ということをお願いしたのですが、彼女への悪口は止まりませんでした。この子もこれを背負って生きていくことになります。

 7つ目の事例は、インターネットの書き込みが原因で、自らの命を絶ってしまったという、ものです。
 ある議員さんが、自身のブログで病院での出来事を書いたのです。体調が悪くて病院へ行ったら、名前ではなく番号で呼ばれた事に腹が立ったと。しかも病院はすごく混んでいたそうです。お金を払おうと思ったらなかなか番号が呼ばれない、急いでいたし腹を立てていたから、お金を払わず帰ってきたということをブログに書いたのです。
 すぐにこの議員さんは叩かれました。悪口はどんどんエスカレートしていきました。議員さんもすぐに、「私のやったことはいけないことでした。今後こういうことは絶対しない。申し訳なかった」と謝りました。
 しかし、悪口は止まりませんでした。それ以降も「謝罪して済まされることか」と議員さんの悪口が広がっていきました。その結果、この議員さんは自分で命を絶ったのです。ネットの書き込みというのは人の命を奪うぐらいの怖いものなのです。

◆思いの伝え方 (1)

 今、私はインターネット被害の事例についてお話ししました。では、インターネットで自分の悪口が書かれるという被害に遭った子どもには、どうやって接すれば良いのでしょう。悪口の書き込みというのは、人の命を奪うほど恐ろしいものです。このような被害に直面している人にとって、正論というものは心に響きません。
 よく「見るんじゃない」とか「そんなの放っておきなさい」などと言う大人がいます。けれど、皆さんは絶対そんなこと言ってはいけません。仮に、皆さんの悪口やデマが書かれていたとします。皆さんの中に、友人から「書かれているよ」と言われて、インターネットを見ないでいれる人はどれぐらいいるでしょうか。
 普通の感覚の人であれば、気になって仕方がないはずです。何が書かれているのだろうと。「死ね、死ね、死ね」なんていうことが書かれていると、「自分は生きていちゃいけない人間だ」と思い込んでしまうような子どももいます。この言葉は、その後も残ります。自分が見なければ済むという問題ではないのです。この子どもの事を調べた人は、こういう書き込みを見ているのです。耐えきれないはずですよ。
 そういう子どもの相談に対して「見るんじゃない。放っておきなさい」なんて無責任な言葉は、絶対に言ってはいけません。中にはこの言葉で落ち込んでしまって、親に「死にたい」と言ってくる子どももいます。「母さん、何で私のこと生んだの?」「死にたい」などと言われたら。どうすれば良いのでしょうか?
 例えば、ユウコさん(架空の人物)がインターネットで悪口を書かれて、「死にたい」と考えてしまったとします。それに対して、お母さんからこう言われたらどうでしょう。「ユウコ、あなた、ばかなこと言うんじゃないのよ。お母さんがユウコを産む時にどれだけ苦労したと思っているの。生きたくても生きられない人だっているの。あなた、生きられるだけでも幸せだと思いなさい」あるいは「動物だって、自分で命絶つような動物はいないでしょ。野良猫も野良犬も、毎日毎日どんなつらいことがあっても一生懸命生きているの。あなたも一生懸命生きたらどうなの」。これらは正論かもしれません。でも、正論を言われて逆に悲しい気持ちになっていくだけです。
 これが例えば「ユウコ、お母さん、ユウコが生まれたときは本当うれしくて、父さんと、名前を寝ないで考えたのよ。ユウコ、悪口書かれてつらい気持ち分かるよ。でもね、父さんも母さんもユウコがいてくれたから乗り越えてこられたこともあったの。ユウコのためだったらどんなつらいことでも頑張れたもの。父さん母さんね、どんなことがあってもユウコのこと守っていくから。ユウコ、本当に、生まれてくれてありがとう」。正論と、違いますよね。こんなことを言われてしまったら、もう死ねなくなると思います。
 正論というのは人の心を動かせません。皆さん大人は正論にこだわるのですけれど、子どもが求めているものは、正論とは違います。相手の心を動かさなければ意味がないのです。死にたいと言う子どもに対して、死んだらいけない理由なんて、子どもは求めていません。そこに気付かなければ、子どもを救うことはできません。

◆やり直しのむずかしさ

 今の時代、一度ネットにさらされてしまうと、やり直すのが本当に難しいのです。  罪を犯した人からの相談があります。「服役して完全に立ち直って、社会人としてもう一度やり直したいと思っても、やり直せないんです」と。インターネットで名前を調べれば、過去に犯したことが全部出てきてしまう、企業にも全部分かってしまう、そうなるともうアウトなのだそうです。「つらいです」と言っていました。この人もこれを背負って生きていかなければならないのです。

 それを止めてあげられるのは、大人なのですよ。インターネットでトラブルに巻き込まれてしまう子どもに共通していることは、大人の無関心です。周りの大人が誰も注意してくれないから、こういうことをやってしまうのです。
 ミクシィに友達と一緒に下半身の画像を載せてしまった男子学生がいました。ミクシィにパスワードを設けているから安心と思い込んでしまうのですね。しかし、パスワードを設けて安心という時代ではありません。パスワードを破られても、中を見られても、大丈夫なような書き込みや画像しか載せてはいけないのです。この学生もパスワードを解読されて、個人情報が全部載せられていました。彼は、バイト先でも大学でも嫌がらせを受けました。この情報があると、これから先本当に厳しい人生を歩むことになります。就職だけではありません。結婚もそうです。仮に子どもが生まれたとしても、子どもが何気なくパパのことを調べて、こんな画像が見つかってしまったら、子どもはこれからどういう気持ちでパパと接するのでしょう。最近でも、悪ふざけの画像を載せているような子どもは本当に多いです。
 子どもたちに言わせれば悪ふざけであっても、今の時代、悪ふざけでは済まされないのです。様々な事がネット上にまとめられています。まとめサイトに書かれてしまったら、もうアウトです。ずっと一生残っていくと思ってください。

 ある飲食店でも、お客さんがふざけて全裸で入っていったことがありました。その後、すぐにこの悪ふざけ画像を載せた人は全員特定されました。問題が起きた店は閉店です。しかも、ただ閉店するだけでは済まされないのです。悪ふざけの主犯格の子は全員逮捕されています。そのうえ、お店に5,000~6,000万円の賠償金を払わなければいけない。そして、賠償金を払って服役したら、それで済むかというと、そうではないのです。この子達のことを調べると、この事がずっと出てくるのです。ものすごく重たい代償を背負ってしまうことになるのです。単なる悪ふざけではもう済まされない。自分の一生を駄目にしてしまうのです。

 また別のお店でも、鼻の穴にマヨネーズとソースを突っ込んでいるような画像を載せた子がいました。すぐに店が特定されました。この画像を載せた女の子も、この子達の通っている専門学校も特定されました。当然、処分を受けました。さらにお店でもすぐに謝罪文を載せ、すべての系列店のマヨネーズ、ソースが回収されました。皆さん方もそういうイメージがつくと、行くのが嫌になりますよね。大きなイメージダウンです。そこの店だけを閉店にすれば済むという問題ではないのです。莫大な賠償金を払わなければいけなくなります。しかも、一生懸命通っていた専門学校も処分を受けたのです。この画像1枚で、自分の人生を狂わせてしまうのです。これが、今の時代なのです。
 ツイッターやフェイスブック、ブログ等のインターネットサイトに載せるということは、全世界の人たちに発信しているということなのです。一見、友達との間だけのコミュニティーサイトのように見えても、決して友達間だけのものではありません。ですから、責任感を持たなければいけません。「これを読んで誤解を招くような書き込みはしてないかな」「不快に思うような人はいないかな」と。当然どちらかの立場になって書き込んだ内容を、反対の立場の人も見ています。特に画像に関しては、例えば自分1人の画像ではなくて、その周りに誰かが写っているのであれば、必ず相手の了承も取らなければならない。当たり前のことです。この画像を載せることによって、不快に思うような人はいないかなと。特に悪ふざけの画像というのは、誰かを不快にしていると、思わなければいけません。
 載せている子たちは単なる面白半分でも、面白半分では済まされないことがある。これをきちんと教えていくのが大人の役割です。それをしなければ、この子たち、一生これで引きずってしまうことになるのです。

◆インターネットを介して起きた性犯罪

 今、日本全国から、年間で1万5,000件~1万6,000件相談が寄せられます。画像絡みの相談だけではありません。ライン上でのいじめの相談であるとか、ネットいじめの相談、子どもが犯罪に巻き込まれたという相談です。大人がきちんと分かっていなければ、子どもを犯罪から救うことはできません。
 特に未成年を狙った性犯罪者は、ネット上で性別をいつわっていることが多い。そして、だいたい同級生に成りすましていますね。40歳、50歳だけれど、ネット上では12歳、13歳なのです。ターゲットの子と同級生のフリをして、画像は全く別人の画像を使っています。この子かわいいなとか、この子かっこいいなと思った画像を使って、架空のその子に成りきってしまうのです。今の子どもたちは本当に信じやすいです。画像を見て、プロフィールを見てタイプだなと思ったら、何回かやり取りする。それだけで「この人、性格的にも趣味も合いそうだ」ってどんどん妄想が膨らんでいって、自分でその人の理想像を作り上げてしまう。すると、もう警戒心がなくなってしまい、だいたい会いに行ってしまいます。
 ある学校の先生は自分の教え子を亡くしています。その教え子の女の子は、夏休みに、プロフィールサイトで知り合った人に会いに行きました。しかし、会ってみると全くの別人だったのです。相手は「うちの娘からちょっと頼まれて、パパ迎えに行ってと言われたから。うちの子、さっきそこで貧血で倒れてしまって、今そこの喫茶店で休ませているのだけれど、もう回復したと思うから、娘のところまで送っていくね。ここから1キロぐらいのところだから」と女の子を車に乗せてしまうのです。簡単ですよ。子ども達はそれに乗ってしまう。ちょっとは疑わしいと思っても、会いたいという気持ちのほうが先行して車に乗ってしまうのですね。
 実は相手は暴力団関係者でした。その女の子は薬物を打たれ、意識がもうろうとしているところをレイプされました。そのあと意識が戻らないばかりか、ショックで心臓が止まってしまったのです。男は救急車も何も呼ばず、女の子が死んだと思ったら、森に連れていって遺体を埋めたのです。親の捜索願や監視カメラをたどって犯人は特定されました。しかし、そういう子どもたちがたくさんいるのです。
 犯罪件数に上がっているものだけが犯罪だと思わないでください。見つかってないものは犯罪件数に上がっていないだけなのです。
 特にレイプの場合、子どもたちは、動画や写真を撮られていると脅されます。ですから、警察にも親にも言いません。このようなケースは犯罪件数に上がってこないのです。きちんとその怖さを教えてあげる大人が周りにいないから、こういうことになっていくのです。

◆フィルタリング

 そのような子どもたちを被害から守っていくものが「フィルタリング」と言われるものです。フィルタリングには「ホワイトリスト」と「ブラックリスト」というのがあります。ホワイトリストというのは小学生向けといわれて、公式のサイトしか見られません。有害なサイトのみをブロックするのがブラックリスト。中学生以上向けといわれています。子ども達はフィルタリングを嫌がります。それに対して、私たち大人がどのように接すれば良いか、5つの点からお話しします。

 1点目は、LINEです。今の子ども達は、スマートフォン(スマホ)の所有率が高いです。小学生の頃からスマホを持っている子が結構います。サッカークラブや野球クラブに入っているような子どもは、事務連絡はLINEでやっているケースが多いのです。ですから、サークルに入る条件として通信ができる手段を持ってくださいと言われるのです。小学生のころからスマホを持たせているケースも珍しくありません。ところが、フィルタリングを外している子どもが多い。
 子どもはよくこういうことを言ってきます。「フィルタリングなんてかかっていたら、LINEできないでしょ。LINEができなかったらまずいんだよ。事務連絡するときにLINE使うんだから。だからフィルタリング外してよ」と。こういう子どもは本当に多いです。しかし、ブラックリストのフィルタリングをかけてもLINEはできるようになっています。

 2点目。音楽サイトです。「音楽とかダウンロードできなくなるもん。やっぱり、着うたは最新の使いたいんだよね。だから、フィルタリング外してよ」。これも、うそです。着うた、着メロ、音楽は聞けますし、音楽はダウンロードできます。
 中には、「お母さんのうそつき。今まで利用していた音楽サイト、フィルタリングかけたら利用できなくなったよ」という子もいます。その場合は、何で利用できなくなったかをきちんと説明してあげればいいのです。犯罪の音楽サイトだから利用できなくなったのです。音楽は著作権法で守られています。著作権違反の有害な音楽サイト、これがフィルタリングでブロックされるのです。審査を通った音楽のサイトは、フィルタリングをかけても今までどおり利用できます。

 3点目はクーポンです。「クーポンとか手に入らなくなっちゃうでしょ。だってさ、野球の帰りにみんなでハンバーガー買うとき、みんなクーポンで買っているんだよ。僕のスマホはフィルタリングがかかっているから、クーポン取れないでしょ。何で僕だけクーポン使えないのさ。やっぱりフィルタリング外して」。これもうそです。
 クーポンは手に入ります。フィルタリングに引っ掛かって取れないのは、未成年が利用してはいけないクーポンのみです。ファストフード店などのクーポンはフィルタリングをかけても使えるのです。

 4点目はゲームです。「ゲームできなくなっちゃうでしょ」とか、「プロフィールサイトで知り合った友達とやり取りできなくなる」と子どもたちはいいますが、大手の審査を通ったものは、すべて利用できます。ただし、出てくる広告は制限されます。スマホやケータイに出てくるバナー広告は、テレビで流せないような広告ばかりです。テレビや新聞の広告はかなり審査が厳しく、どんな広告でもお金を出せば載せられるというものではありません。それに対し、何でも載せられるのがネットです。出会い系サイトの広告は多いですね。実体がないような悪徳金融会社の広告まで大きく出ています。
 この間もファミリーレストランで、お母さんが井戸端会議で忙しいのか、子どもに、「ケータイで遊んでなさい」と渡していました。子どもはゲームで遊んでいましたが、出てくる広告は子どもに見せるようなものではありませんでした。それを見ながら小学校1年生くらいの子どもがゲームをやっていて、親は何にも考えないのだろうかと不思議に思いました。フィルタリングをかければ、未成年者にとって有害な広告はすべてブロックされて出てこなくなります。

 5点目は、情報の信ぴょう性です。子どもから、「勉強できなくなるからフィルタリング外してよ。ネットで調べれば時間短縮にもなるし、勉強が捗るんだよ。フィルタリングをかけたら、何も調べ物ができなくなるよ」と言われ、引き下がってしまう親がいます。
 今の子は勉強で分からないことがあったとき、あまり自分で調べようとはしませんね。ネットに頼るのです。一夜漬けでやった勉強は、きれいさっぱり頭から消えている。自分で一生懸命努力したもの以外は、人間、最終的には身に付いていきません。
 ネットの世界は残念ながらデマのほうが広がりやすいです。犯罪者だろうが小学生だろうが、ネットには書き込みができる。審査は全くないわけです。フィルタリングをかけて出てくる情報というのはある程度の信ぴょう性はあります。フィルタリングでブロックされるのは、信ぴょう性がないものだからブロックされているということです。

◆思いの伝えかた (2)

 フィルタリングというのは、ケータイやスマホを使えなくするものではありません。命を守っていくものです。
 しかし、子どもが高校生ぐらいになると、だいたい親に反発してきます。親はフィルタリングをかけたいけれども、子どもはフィルタリングを外してほしいと。もし、子どもから「高校生にもなってもフィルタリングなんて恥ずかしい。クラスの中で誰もフィルタリングなんかかけてないよ。母さん、今度の日曜日フィルタリング外しに行こうよ」って言われたらどうしますか。
 ほとんどの親はカチンと来て、「お母さん忙しいから、外しに行かないわよ。何でわざわざフィルタリングかけているのに、外さないと駄目なの? これ、お母さんのお金で契約してあげているんだから、外さないわよ」。そう返そうものなら、「むかつく」「うるさいな」という険悪なやり取りになってしまいます。親の主張は正論ですが、子どもの心には響きません。
 伝え方を変えてみましょう。「ユウコ、お母さんさ、ユウコの気持ちはすごく分かる。お母さんたぶんね、ユウコと同じ高校生だったら、同じようにフィルタリング外してって言っていたと思う。でもね、お母さん、もしもユウコに何かあったらどうしていいか分からないもの。お母さんね、ユウコから嫌われてもいいという覚悟はある。お母さんね、ユウコからいくら嫌われてもユウコを守りたいもの。だから、フィルタリングは外さない」。これなら、いらいらしないですよね。
 人の心を動かすっていうのは、正論では駄目なのです。心の中に入っていかなければならないのです。お母さんお父さんの気持ち、先生の気持ちが心に響いた子どもというのは、犯罪に巻き込まれません。親の本当の気持ちがきちんと子どもに伝わって、その子がひねくれるなんてことはあり得ないです。
 フィルタリングを外した親は、「子どものこと信じていますからね、だからフィルタリングを外したんです。うちの子はまずいことやるような子じゃないから。親が信じてあげないと駄目ですよね」と、もっともらしいこと言っています。「私は子どもを信じています。うちの子は大丈夫です」この言葉は、無責任な親から出るものなのです。子どもの命が奪われても「信じている」なんて言っていられるのでしょうか。
 子どもを犯罪から守っていくため、子どもの命を守っていくためにフィルタリングがあるのです。車のシートベルトと同じです。邪魔でもしなければならないのは、命を守るためです。

◆LINE

 今までは、インターネット絡みの話をしました。続いては、ケータイ、スマホに関する問題を話していきます。1つ目は、今、子ども達の間でメールに代わる連絡手段になりつつある、LINE。
 最近、LINEをやりながらご飯を食べている子が多いです。食卓に2時間ぐらい座っていても、半分ぐらいしか食べていなかったりする。「片付けられないから早く食べて」「うるさいな、今LINEやっているんだから、静かにしてよ。母さん、ちょっとあっち行ってよ」。これでは、完全に家庭の環境もおかしくなってしまいます。勉強の時もずっとLINEをやっている子もいます。LINEをやりながらだから、勉強内容が頭に入ってこない。お互いに成績を落とし合っているのです。
 子どもたちの相談で多いのは「LINEってどこでやめればいいんですか?」です。友達とのLINEのやめ方がわからない。これは、子ども達からの真面目な相談なのです。
 LINEは、メール以上にはまってしまいます。1対1でのLINEよりも、グループでやっている事が多いです。最高100人まで同時にメッセージ交換ができるのです。また、LINEは書き込んだらすぐに相手に表示されます。そのうえ、読んだら、読みましたよという「既読」という表示が出るため子どもは慌てるのですね。既読が付いたら、子どもはすぐに返信して当たり前だとお互いに思っているのです。もし、既読が表示されているのに相手の書き込みがないということは、無視しているということになる。ですから「既読無視か…」なんて学校でも無視されてしまうのです。しかもLINEの文章の多くは単文ですから、自分が書き込んだと思ったら、もう相手の書き込みがある。すぐまた書き込まなければならない。ご飯なんて食べている暇がないのですね。
 ふだん向かい合って話している言葉というのは、顔の表情や声のトーン等いろんなものからその意味を受け止めています。けれど、文字だけでは人によって意味の捉え方に違いがうまれます。冗談が冗談と通じなかった事が原因で、いじめに遭っている人もいます。
 最近、学校の保健室で、毎日同じ子がベッドを占領していて、本当に具合悪い子が保健室に入れないということが起きています。毎日来る理由は、朝方までLINEをやって、具合が悪くなるからです。昼間、保健室で寝ていて、家に帰ると眠たくないから朝方までLINEをやる。まるで、保健室に寝に行っているようなものですよね。この子たちも、LINEをやめることができないのです。
 これも親のせいです。親として言うべきことをきちんと伝えないといけません。「ユウコはさ、ノアちゃんやトモちゃんのことを本当の友達だと思っている? お母さんね、本当の友達だったら、お互いに成績落とし合ったり、寝不足になったりするようなことってしないと思うのよ。ユウコがやっていることは、お母さんにはお互いに足を引っ張り合っているだけにしか見えない。本当の友達だったら、きちんと話したら分かると思うよ。ユウコも、『自分の時間ないなぁ』なんて思ったことあるでしょ? たぶん友達も同じようなこと思っていると思うよ。お母さんも毎日一生懸命ユウコの為にご飯をつくるから。だからね、ご飯や勉強の時はLINEやめようよ。LINEをやる時間を何時から何時までって決めない? ユウコだったら、友達に言えるでしょ」。きちんとこういうこと言ってあげる親かどうかですよ。
 子どもに話を聞くと、お互いに「息苦しさ感じている」と言いますね。しかもずっとLINEをやっている子は、翌日学校へ行っても、会話があまり盛り上がらないのだそうです。テレビ番組や音楽番組を見ながら、LINEでやり取りしてしまっているから、翌日、学校で会話が盛り上がらないと言うのです。
 授業中にもLINEをやっている子が多いみたいですね。先生のほうから見ると、机の上に出して操作をしていたとしても、メモを取っているようにしか見えないのです。授業中もLINEをやっている子はだいたい依存しています。

◆個人情報の守り方

 スマホは電話ではありません。小型のパソコンです。そして、パソコンというのは個人情報の宝庫です。財布をなくしても平気な子はいるのですが、スマホをなくして平気でいられる子はまずいません。スマホの中に自分の情報が全部入っている子どもたちが多いからです。
 スマホは、いろいろなアプリがあります。高校生ぐらいの所有率でいうと、アンドロイド携帯の所有率が高いです。アンドロイド携帯のアプリをすべて調査した団体があります。これは初期のころの調査で、今は少し数字が変わっているのですが、400を対象にしたアプリの調査で、41%が不正アプリだったのです。
 不正アプリというのは、情報を盗むアプリです。アプリをダウンロードしていると思ったら、それはダウンロードしているのではなくて、情報を盗まれていたということです。ご自身のプロフィール、クレジットカード番号、通話履歴、そういうものを盗むアプリが41%もあったのです。
 2年前ほど前に、ウイルスを仕込まれて犯罪者に仕立て上げられたような事件がありました。殺人予告を送っていない人が逮捕されてしまった。大学も退学になった。職場を首になったということでした。変なウイルスを取り入れてしまうと、今度は自分がそういう目に遭う危険性があります。知らない間に爆破予告の犯人に仕立て上げられる可能性もあるということです。
 ですから、きちんとウイルス対策のソフトを入れる必要があります。ウイルスはフィルタリングだけでは防御できません。どの会社でも、パソコンのウイルス対策だけはしっかりやっています。情報を盗まれたら大変なことになるからです。スマホを子どもに持たせるということは、個人情報の宝庫を子どもたちが持つということです。当然その中に親の情報も入っているでしょう。きちんとしたウイルス対策のソフトを入れなければ、その情報を盗まれるかもしれないのです。
 中には無料ウイルス対策ソフトを使っているという人がいますが、実はそのアプリ自体が不正アプリで、ダウンロードのボタンを押したら、情報を盗まれていただけなどということがあります。盗まれている本人は、何が盗まれているのか分からないのです。
 ウイルスから身を守るためには、無料のアプリではなく、携帯電話事業者が推奨しているものだけは入れなければなりません。そして、一度入れたからと安心してはいけません。いろいろなウイルスが新たに作られますから、1年ごとにソフトを新しいものに更新していかなければならない。さらに無線の電波が通っているところでは、二重フィルタリングをしなければいけません。先程フィルタリングの話をしましたが、携帯会社でかけてくれるフィルタリングというのは、あくまでも携帯電話回線にかけるフィルタリングなので、無線の電波が通っているところでは、そのフィルタリングは無効です。ですから、無線の電波にもフィルタリングをかけなければならないのです。厄介でも、個人情報を守るためには、それくらいの覚悟が必要なのです。

◆大人としてやるべきこと

 ある高校でこんなことがありました。高校1年生になって、初めてケータイを買ってもらった子が、うれしくなってケータイからいろんな書き込みをして遊んでいたのです。書き込みは、どんどんエスカレートしていきました。それが学校にみつかりました。学校はすぐ職員会議を持ち、警察にも書き込んだ犯人を特定してほしいと依頼したのです。そして書き込んだ犯人が特定されました。その男の子でした。中学校のころは生徒会の役員もやって、成績優秀。真面目で一生懸命で友達も多い。親にとっては自慢の息子だったのですね。
 学校側は職員会議を設けて、その子を呼び出しました。生徒指導部長、学年主任、その子の担任、3人でその子に、「お前がやったことは犯罪なんだ。お前は取り返しのつかないことをやってしまったんだ。どう責任取るんだ。明日からお前は学校来なくていいから、しっかり家で反省しろ」とかなり厳しい説教をしました。その子は、血の気が引いて青ざめて、家に帰ったのです。お父さんが家に帰ると、家の電気が全部消えていました。その子は自分の命を絶ってしまったのです。
 お父さんが、遺書をみせてくれました。男の子はノートを破って殴り書きしていたのです。「お父さん、ごめんね」の一言で命を絶ってしまった。
 そんなことで命を絶つような子どもに育ててはいけないのです。命の大切さというのは、普段の何気ないコミュニケーションから子どもたちは学んでいきます。「命が大切だ、大切だ」なんて言わなくても、何気ないコミュニケーションの中で、子どもというのは「どんなことがあっても命は絶っちゃいけない」ということを学んでいくのです。それがケータイやスマホに縛られて、スマホ片手にご飯を食べ、食べ終わったら自分の部屋にこもる。これでは、子どもの異変に気づけるわけがありません。親が、子どもの異変に気づかないような親になってしまっていることが問題です。
 自分の子どもの心の変化に気付かないような親になってはいけません。見ていたら分かるのです。きちんと顔を見合わせてのコミュニケーションを毎日していたら分かるのです。いくら隠そうと思っても、人間って表情には出ますよ。それに気付かなかったこと自体おかしいのです。ほころびはどんどん大きくなっていきます。けれど、親としてやるべきことをきちんとやっていけば、子どもの命を守っていくことができるのです。

◆親として知らなければならないこと

 スマホはパソコンです。では、そのスマホを子どもに買い与えている親はスマホを使いこなせているかというと、そうでもありません。「私は使えません。分かりませんから」という親が多い。これでは無責任です。
 例えば、子どもが包丁を使いたいと言ったら、使い方から教えていかなければならないですよね。「お母さんもあまりうまくないけど、包丁は危険だからね。これ、手も切るし、人に刺さったら危ないから、お母さんと一緒にちょっと勉強しようか」と。包丁を渡して「はい。自由に使いなさい。何に使ってもいいよ」などという親はいないはずです。操作方法もわからずにスマホを買い与えるということは、それと同じことをやっているということです。
 スマホを「分かりません」の一言で済ませるような大人にならないでください。本気で自分の子どものこと救おうと思うのであれば、分かるように努力しなければいけないのです。時代は変わっていくのです。それについていけるようにしなければ、自分の子どもは守れません。

 

 みなさんに、インターネット、スマホが抱える問題について、伝わりましたでしょうか。これを皆さんが持ち帰って、どう広めていくかは皆さんの責任です。「研修を受けました」と、それだけで満足しないでください。職場の人や周りの人達に、この問題をきちんと広めてください。
それでは、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。