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人権に関するデータベース

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茨城県人権施策推進基本計画
情報の種類 地方公共団体関係資料
タイトル 茨城県人権施策推進基本計画
時期 2004/02/01
主体名 茨城県
【 内容 】

茨城県人権施策推進基本計画


第1 基本計画策定にあたって
1 計画策定の背景
(1) 人権を取り巻く国内外の取組状況
ア 国際的な取組
 昭和20年(1945年)10月に成立した国際連合(国連)では,平和を実現するためには世界的な人権保障が必要であるという第二次世界大戦の反省から,昭和23年(1948年)12月10日,第3回総会で「全ての人間は,生まれながらにして自由であり,かつ,尊厳と権利とについて平等である。」と規定した「世界人権宣言」を採択し,人権の国際的基準を示した。
 その後,国連は「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」をはじめ「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約」,「市民的及び政治的権利に関する国際規約」,「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」及び「児童の権利に関する条約」などの人権に関する様々な条約を採択している。
 また,国連では加盟国が特定の事項について集中的に活動を行うことを促進させる目的で,種々の「国際デー」,「国際の10年」などを設定しており,昭和25年(1950年)には世界人権宣言が採択された12月10日を「人権デー」と定め,世界人権宣言の精神を具体化し発展させる取組を行っている。
 さらに,平成6年(1994年)の第49回総会において,平成7年(1995年)から平成16年(2004年)までの10年間を「人権教育のための国連10年」と決議し,人権という普遍的文化の構築を目指し,各国に国内行動計画の策定などによる積極的な取組の推進を求めている。

イ 国内の取組
 国内においても,人権の擁護に関する施策の推進について,国の責務を明らかにするとともに,必要な体制を整備し,もって人権の擁護に資することを目的として平成9年(1997年)3月に「人権擁護施策推進法」が施行され,同年7月には「『人権教育のための国連10年』に関する国内行動計画」が公表された。この国内行動計画は,憲法の定める基本的人権の尊重の原則及び国連行動計画などの趣旨に基づき人権という普遍的文化を築き上げることを目的に,あらゆる場を通じた訓練・研修,広報,情報提供の積極的な推進を目標としている。また,人権の重要課題として,女性,子ども,高齢者,障害者,同和問題,アイヌの人々,外国人,HIV感染者等,刑を終えて出所した人などに対する人権課題を設定し,それぞれの固有の問題点についてのアプローチとともに,法の下の平等,個人の尊重という普遍的な視点からのアプローチにも留意するとしている。
 平成12年(2000年)12月には,「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が施行され,国に対しては,人権教育及び人権啓発に関する基本的な計画の策定が義務付けられ,地方公共団体には,人権教育・啓発に関する施策を策定・実施することが責務とされた。
 さらに,この法律に基づき,平成14年(2002年)3月には,「人権教育・人権啓発に関する基本計画」を策定し,人権が共存する人権尊重社会の早期実現に向け,人権教育・啓発を総合的かつ計画的に推進することとしている。
 このほか,人権侵害の被害者救済のあり方などについて検討していた人権擁護推進審議会から提出された「人権救済制度のあり方」についての提言を実現するため,人権救済機関である人権委員会の設立に向けての取組を行っている。

(2) 本県の取組状況
 茨城県では,茨城県長期総合計画において「愛されるいばらきの創造―新しいゆたかさ かがやく未来―」を基本理念として明日のいばらきづくりを推進しているが,この計画において目指している「誰もが健やかに暮らせるやすらぎに満ちた社会」を実現するため,県民の人権意識の高揚に努めているほか,個別計画等により各種の施策を推進してきた。
 また,個別分野における人権課題に対しては,同和問題の早期解決に向けた取組をはじめとして,近年では,男女共同参画社会の早急な実現を目指すための「茨城県男女共同参画推進条例」の施行や条例の基本理念を具現化するための「茨城県男女共同参画基本計画」の策定,年々,増加・深刻化していく児童虐待に対する「茨城県児童虐待対策基本方針」の策定,また,「いばらき高齢者プラン21」や「障害者プラン」の策定による保健・福祉サービスの充実やハンセン病に対する偏見や差別をなくすための講演会の開催など,人権尊重の理念に基づいた施策を実施してきた。
 さらに,平成12年度には「人権施策推進の基本的考え方」を策定し,県職員一人ひとりが人権尊重の視点に立った行政を推進するための方向性を示したところである。
 しかし,私たちの身のまわりには,配偶者等に対する暴力(ドメスティック・バイオレンス)や子どもに対する虐待などの人権問題が依然として存在しており,国際化,情報化,高齢化等に伴い,人権問題も複雑・多様化しており,インターネットによる人権侵害などの新たな問題も発生している。
 平成12年度に茨城県が実施した人権・同和問題に関する県民の意識調査結果によると,「虐待いじめ問題」,「男女雇用機会均等法」,「障害者問題」,「基本的人権」などの人権問題を「よく知っている」,「少しは知っている」と回答した県民が60%を超えるなど人権意識も高まりつつあるが,「茨城県民の人権意識は十分高まっている」の回答率を見ると「どちらでもない」が29.7%で最も高く,ついで,「あまりそう思わない」が24%となっている。
 茨城県長期総合計画の基本施策である「誰もが健やかに暮らせるやすらぎに満ちた社会」の実現のためには,行政のあらゆる分野において総合的に人権に関する施策を推進することが求められている。


2 計画の基本理念
 この計画における基本理念は,「誰もが健やかに暮らせるやすらぎに満ちた社会」を実現することである。
 この基本理念のためには,県民一人ひとりの人権が尊重されるとともに,互いの人権を尊重し合うことが肝要である。人権とは,「人が人らしく生きていくために社会によって認められている権利」であり,誰もが生まれながらにして持っている,誰からも侵されることのない基本的権利である。日本国憲法の第11条では,侵すことのできない永久の権利として基本的人権が保障され,また,第13条では個人の尊重並びに幸福追求権が,第14条では平等の原則がうたわれている。
 一人ひとりの個性や生き方はみな違い,それぞれに多様性を持っている。それぞれが人間としての尊厳をもったかけがえのない存在であることを認識し,自分の人権のみならず他人の人権についても十分配慮し,その権利の行使に伴う責任を自覚しつつ共生することができるよう,その発達段階に応じて家庭や地域,その他様々な場を通じて人権意識が醸成されることが不可欠である。
 そのため,この計画に基づき人権施策を総合的に推進する。


3 計画の性格
 この計画は,国における「『人権教育のための国連10年』に関する国内行動計画」や「人権教育・人権啓発に関する基本計画」などの,人権が共存する人権尊重社会に向けた取組を踏まえ,茨城県が行政として施策を行う際の基礎となる人権尊重の考え方に基づき,今後の取組をより一層推進するための指針となるものであり,茨城県長期総合計画やそれに基づく各プロジェクト等を人権の視点から補完する性格を持っている。
 また,人権啓発・教育,分野別の人権課題についての現状・課題を明らかにすることにより,県民一人ひとりが人権問題が身近な問題であり,自分自身が権利の主体者であることを理解し,日常生活の中で特に意識しなくても,お互いの人権を尊重できるよう自己啓発を促す役割も併せ持ったものとしている。



第2 基本的施策の推進
1 人権啓発・人権教育の推進
(1) 人権啓発
ア 現状
 県においては,小・中・高校・特殊教育諸学校を対象とするポスターコンクールや,県民まつりにおける人権啓発コーナー出展等の行催事型の啓発活動をはじめとして,県内各地での街頭啓発,行政広報誌や行政施設,交通機関等を利用しての広報,ラジオ・新聞などマスメディアへの広告掲載等のほか,啓発資料の作成・配布,市町村・企業等への情報提供,研修会講師の派遣,さらに,市町村等への啓発活動委託事業等の人権啓発に係る施策を積極的に行っている。
 なお,啓発活動のより一層の推進を目的に,県,法務局及び人権擁護委員連合会で横断的に組織する「茨城県人権啓発活動ネットワーク協議会」が平成12年(2000年)に設置されており,市町村,法務局支局,人権擁護委員で構成する「地域人権啓発活動ネットワーク協議会」も水戸,土浦地域で組織されている。

イ 主な施策推進上の課題
(ア) 啓発活動がマンネリ化傾向にあり,さらなる人権啓発手法の創意工夫が必要である。
(イ) 行政主導による啓発活動が中心であるため,一方的な教示による知識の習得に偏りがちであり,県民一人一人が自分自身の問題として人権尊重の理念についての理解を深めるものとなっておらず,啓発内容を検討する必要がある。
(ウ) 啓発活動におけるマスメディアの効果的活用について,検討を加える必要がある。また,インターネット等の媒体についてもより有効な活用方策を検討する必要がある。
(エ) 県有の既存啓発資料等のさらなる有効活用を図るほか,(財)人権教育啓発推進センターとの連携が不可欠である。
(オ) 啓発実施主体間の連携について,人権啓発活動ネットワーク協議会のさらなる活用を図る必要がある。
(カ) 啓発の取組状況に市町村間で地域的な格差があり,その解消のため,適切な支援方策等を講じる必要がある。
(キ) 行政職員等の研修においても,時代の変化を的確に反映したカリキュラム等を取り入れるなど,より一層の内容の充実を図る必要がある。
(ク) 人権侵害行為に対しては,相談窓口,救済方法等についての啓発を図る必要がある。

ウ 今後の取組方針
(ア) 啓発活動の拠点施設となる人権啓発推進センター(仮称)を整備するとともに,啓発フェスティバルや講演会など,誰もが参加しやすく,かつ理解を得られるような啓発活動をより一層推進する。
(イ) 県民が人権尊重の理念について身近に感じ,その理解を深めることができるよう,身近に利用できる施設などに,人権に関する資料,図書等を充実するとともに,テレビ,ラジオ,新聞広告等のマスメディアやインターネット等を積極的に活用し,各種イベント,資料,図書等の紹介など情報提供の充実を図っていく。
 なお,その推進にあたっては,(財)人権教育啓発推進センターなどの専門機関に蓄積されたノウハウや資料などを十分活用していく。
(ウ) 複雑・多様化する人権問題に対応した啓発を推進するため,国,市町村,団体等様々な啓発実施主体との連携強化を図っていく。また,県,法務局及び人権擁護委員連合会で構成する「茨城県人権啓発活動ネットワーク協議会」及び市町村,法務局支局,人権擁護委員で構成する「地域人権啓発活動ネットワーク協議会」との連携により効果的な啓発を推進する。
(エ) 市町村間における啓発活動の地域的なアンバランスを解消することや,市町村における地域に密着した啓発活動を推進するため,啓発事業の委託や街頭啓発等の支援を充実していく。
(オ) 行政職員や企業等における研修においても,階層・職務別に行うなどのプログラムの工夫や国内外の情勢を踏まえた研修を行うなど,より一層の内容の充実を図るとともに,市町村や企業等に対し,独自の取組を促進するための啓発を推進する。
 また,地域住民の学習活動に対して講師を派遣するなど,自主的な啓発活動の支援体制を整備する。
(カ) 県民の人権意識の傾向について,適時適切な手法によりその把握に努めていくとともに,より一層効果的な啓発手法についての検討・研究を行っていく。
(キ) 人権侵害については,インターネット等による新たな人権侵害も発生しており,国に設置される人権救済機関等における救済活動が有効に実施されるよう積極的な働きかけを行う。

(2) 人権教育
ア 現状
 学校教育においては,推進体制の整備や推進計画の作成など,教育活動全体を通して人権尊重の精神を養うとともに,差別や偏見をもたない児童生徒の育成に努めている。特に,児童生徒の発達段階に即した指導方法の工夫改善や教職員の指導力向上を図る研修の充実に努めている。また,学校と家庭との連携を図り,様々な体験や学習をとおして児童生徒の豊かな人権感覚や人権意識の育成に努めている。
 しかし,人権問題の理解については知識理解を中心とした学習であったことから児童生徒に人権感覚が十分身についていないことや,教職員の人権教育に対する認識が十分でないことなどが指摘されている。
 社会教育においては,人権教育の全県的な推進を図るため,各市町村における取組を促進するとともに,実践力のある指導者の養成に努めている。しかし,取組についてはまだ地域差が見られる。また,多様な学習機会の提供や地域住民の交流促進を図るため,集会所や公民館等の社会教育施設においては,生涯学習の視点に立った学級・講座,各種交流活動を実施している。さらに,人権意識を高めるため,指導資料や啓発資料の作成及び視聴覚教材等の整備,活用に努めている。

イ 主な施策推進上の課題
(ア) 学校教育
a 児童生徒の人権感覚や人権意識を育成するための教育活動の充実を図ることが必要である。
b 教職員の人権に関する理解と認識を高めるとともに指導力の向上を図るため,研修内容を工夫する必要がある。
c 児童生徒の人権感覚や人権意識は,家庭や地域の影響が大きいことから,学校と家庭,地域との連携を一層深めていく必要がある。
d 人権教育を推進するため,啓発資料や指導資料の作成及び視聴覚教材の整備等に努め,効果的な活用を促進する必要がある。
(イ) 社会教育
a 人権教育の全県的な推進を図るため,各市町村と連携し,より積極的な推進に努める必要がある。
b 地域において人権に関する理解と認識をもった実践力のある指導者の養成を図る必要がある。
c 人権教育を推進するための啓発資料の作成や視聴覚教材の一層の整備を図る必要がある。
d 地域において人権に係る多様な学習機会を提供するとともに,幅広い地域住民の交流活動を促進する必要がある。

ウ 今後の取組方針
(ア) 学校教育
a 差別や偏見のない明るい社会を築いていこうとする幼児児童生徒を育成するため,発達段階に即し,教育活動全体をとおして豊かな人権感覚や人権意識を醸成する取組を積極的に推進する。
b 教職員自らの人権に関する理解と認識をさらに高め,指導力の向上を図るための研修を今後も創意工夫しながら積極的に実施していく。
c 人権教育を充実させ,その効果を高めるため,学校と家庭・地域との連携を深めながら保護者等に対する啓発活動をより一層推進していく。
d 人権教育の効果的な推進のために必要な啓発資料や視聴覚教材等の整備及び有効活用に努める。
(イ) 社会教育
a 人権教育の全県的な推進のため,市町村における取組を促進する。
b 地域における実践力のある指導者を養成するため,研修事業の充実に努める。
c 人権教育の効果的な推進のため,人権啓発推進センター(仮称)と連携を図り,啓発資料や視聴覚教材等の整備及び有効活用に努める。
d 地域における社会教育活動をより一層推進するため,公民館や集会所等の地域施設を横断的に活用したりして,幅広い層の住民の交流を促進する。


2 相談・支援体制等の整備
(1) 現状
 相談・支援体制については,県政に対する「県民相談」,ドメスティック・バイオレンス等の相談に対する「女性相談」,子どもの虐待等に対する「児童相談」,更に,性犯罪被害者の相談に応じる「勇気の電話」等様々な相談窓口を設置しているが,人権問題の複雑・多様性から,その相談内容も広範多岐に渡っている。
 国の「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」に基づき,地方公共団体に人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し実施する責務が付与されたことにより,県及び市町村職員に対しての積極的な啓発研修が求められている。
 また,平成13年12月の茨城県同和対策審議会意見具申においては,「新たな啓発拠点となるべき体制として,人権啓発推進センター(仮称)の設置について考えるべき時期にある」との意見が出されており,他県においても,広報・啓発機能のほか,教育・研修・人材育成,人権相談等の多様な機能を備えた人権センターの整備を積極的に推進している。


(2) 主な施策推進上の課題
 相談・支援体制については,迅速,的確に広範多岐にわたる人権問題に対応するため,各相談機関相互の連携が必要である。
 県及び市町村職員に対しての研修については,「行政の取組が不十分」との指摘もあることから,行政職員の研修を行政自らが実施できるような体制整備を図る必要がある。また,教職員については,教育研修センターを中心として研修体制が整備されており,今後は,指導力の向上を図るための研修内容の一層の充実が必要である。さらに,企業においても事業所等の規模等に応じて研修体制や運営体制を構築することが望まれている。


(3) 今後の取組方針
ア 相談・支援体制の充実
 あらゆる人権問題について県民が気軽に相談できる総合的な相談窓口を人権啓発推進センター(仮称)に設置するほか,各相談機関との連携による相談機能の充実について検討する。
 また,各相談機関に関する情報を県のホームページや各種広報媒体を活用して積極的な提供を行っていく。
 さらに,人権が侵害された被害者の救済に関しては,国の人権擁護推進審議会答申に基づく人権救済制度の制定状況を踏まえながら,人権救済制度により創設される人権救済機関との連携の方法や県としての救済・保護のあり方などについて留意する。

イ 研修体制の充実
 人権啓発推進センター(仮称)を中心として,職場における人権啓発のリーダーとなれる人材の育成や体系的なカリキュラムによる研修を実施するとともに,市町村,企業に対してもそれぞれの研修事業への助言・支援を行っていく。
 さらに,県民に対しても,人権問題を自分自身の問題として日常的に考え,それを実践できるよう,人権問題に関する講座等の開催を検討する。


人権啓発推進センター(仮称)の整備
 国・市町村・関係機関等と連携し,さまざまな創意工夫による効果的な啓発活動を推進するほか,体系的な研修の実施,また,迅速,的確な相談・支援事業の拠点となる施設として,人権啓発推進センター(仮称)を整備する。

ア 考えられる機能
a 広報・啓発
 県民に共感が得られる講演会等の開催,啓発冊子の作成・配布,テレビ・ラジオ・新聞等のマスメディアを活用した啓発活動及び人権問題に関するビデオ,図書等資料の収集・貸出し等。なお,図書・資料については,県立図書館との連携を図り効率的な運用を考慮する。
b 研修・人材育成
 県民の人権問題に関する学習を支援するため,生涯学習の視点に立った講座等を開催する。また,市町村や企業等において,指導者等の人材育成が図られるよう,人権問題に関する研修講座等を開催するほか,人権に関する学習資料や学習プログラム等の提供を行う。
 さらに,県,市町村,企業等や学校,学習団体等が行う研修会等に対して講師の派遣や紹介を行う。
c 相談
 人権問題について県民が気軽に相談できるような相談窓口の設置を行い,各種相談機関につながなければならない専門的な相談については,各種相談機関と連携を図り対応する。また,人権救済に関わる相談については,地方法務局と連携を図るとともに,国における人権救済機関設置の動向に留意する。
d 調査・研究
 効果的な啓発手法・資料の調査・研究等。


イ 配慮すべき施設・設備
 センターに相談に訪れる者に配慮した明るく安らげる空間づくりや多様な来所者を想定したバリアフリーに配慮した設備を検討するほか,以下に掲げる設備を整備する。
a 相談業務に対応するため,プライバシーに配慮した相談室
b 図書・資料等を閲覧するための閲覧コーナー
c 人権問題関連の情報収集の検索等に使用するパソコンやビデオ視聴のためのテレビ・ビデオ等のAV機器類及び視聴ブース
d 各相談機関との双方向の連絡を可能にする通信機器



第3 分野別施策の推進
1 女性

(1) 国,県の動向
 女性の人権をめぐる動きについては,世界各国に共通した課題であるとして,国連は,昭和50年(1975年)を「国際婦人年」と定め,続く10年間を「国連婦人の10年」として位置付けるなど,世界的規模での取組が進められてきた。わが国においても,「女子差別撤廃条約」の批准(昭和60年(1985年))をはじめ,「男女雇用機会均等法」,「男女共同参画社会基本法(平成11年)」の制定などが進められるとともに,女性に対する暴力の関係では,「ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成12年)」,「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(平成13年)」を制定するなどの法制面での整備が行われている。


 本県では,昭和55年(1980年)に第2次県民福祉基本計画において「婦人の福祉の向上」が位置付けられて以来,昭和61年(1986年)の新県民福祉基本計画においても「女性の地位向上と社会参加の促進」として位置付けられ,平成2年(1990年)には庁内の推進体制として,「茨城県女性対策推進本部」を設置し,平成3年(1991年)には「いばらきローズプラン21」を策定するとともに,いばらきローズプラン21推進委員会を設置するなど,女性行政施策の推進を図るための体制を整備した。さらに,平成8年度から17年度までを計画期間として,男(ひと)と女(ひと)のよりよいパートナーシップの確立を基本理念とする「いばらきハーモニープラン」を平成7年度に策定し,また,「男女共同参画社会基本法」の理念を受け,平成13年3月に「茨城県男女共同参画推進条例」を制定(同年4月施行)するとともに,同法に基づく法定計画として「茨城県男女共同参画基本計画(平成14年3月)」を策定し,男女共同参画社会の実現に向けた施策の積極的な推進に努めている。
 また,ドメスティック・バイオレンス対策として,「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」に基づき,婦人相談所に「配偶者暴力相談支援センター」を設置し,休日夜間の相談対応や心理的ケアなどを実施するとともに,関係機関との連携を強化し,配偶者等からの暴力被害者の迅速かつ的確な保護に努めることとしている。


(2) 現状と主な施策推進上の課題
ア 社会制度・慣行の見直し,意識の改革
 法律や制度は整備されてきているが,県男女共同参画社会県民意識調査(平成12年度女性青少年課。以下「県民意識調査」という)の結果では,「社会通念・慣習・しきたり」について「男性の方が非常に優遇されている」「どちらかといえば男性の方が優遇されている」と答えた人が,男女ともに約80パーセントという結果になっており,「男は仕事,女は家庭」という考え方に代表されるような,性別による固定的役割分担意識の解消が必要である。
 そのため,行政と県民,事業者が一体となった総合的な取組を図れるような相互の連携・協力の強化を図る必要がある。
 また,県は県民等からの様々な苦情等について,迅速に対応できるような体制の整備を図るとともに,多様な媒体を通じた意識啓発や法律・条例等の周知,情報提供,調査・研究を行い,男女平等意識の醸成を図り,男女それぞれの人権が尊重される社会の構築に向けた取組を推進する必要がある。

イ 多様な選択を可能にする教育・学習の充実
 女性の人権について理解を深めるとともに,男女が互いに認め合い協力し合う態度を育成するためには,男女共同参画の視点に立った教育・学習の充実が必要である。
 男女がそれぞれの個性と能力を十分に発揮し,社会のあらゆる分野に参画していくために,生涯学習の振興は重要であり,多様化,高度化した学習需要への対応が望まれている。
 学校教育関係者及び社会教育関係者に対する男女共同参画に関する理解の促進を図ることが求められている。

ウ 男女間におけるあらゆる暴力の根絶
 近年,配偶者等に対する暴力,特に,親しい間柄にある男性から女性に対する暴力(ドメスティック・バイオレンス)等については,大きな社会問題となっている。
 県民意識調査では,殴ったりけったりという身体的な暴力の被害を受けたことが何度もあると回答した人が,女性5.0%,男性1.1%という結果となっており,「男女間における暴力に関する調査」(平成12年2月総理府(現内閣府))においても,同様な傾向がみられる。
 このようなことから,「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」が制定(平成13年4月)され,実効性のある取組が求められている。
 さらに,ストーカー行為などの暴力の根絶を目指し,「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(ストーカー規制法)が制定(平成12年5月)されている。
 また,「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(男女雇用機会均等法)にセクシュアル・ハラスメント防止対策の徹底が明記され,事業主における取組が必要となっている。
 そのため,配偶者等に対する暴力,特に,親しい間柄にある男性から女性に対する暴力(ドメスティック・バイオレンス)等を防止するための理解と協力が得られるよう啓発普及を推進するとともに,誰もが気軽に相談できる環境や保護体制の充実を図る必要がある。
 売買春に対しては,その根絶に向けて,取り締まりの強化を図るとともに,被害者の保護や社会復帰支援などを図る必要がある。
 さらに,セクシュアル・ハラスメント防止のための啓発をより一層推進するとともに,職場などにおける相談,カウンセリング等への取組の充実を図る必要がある。

エ メディアにおける人権の尊重
 情報化が進展する中で,新聞,書籍,テレビ,ラジオ,映画,インターネットなど多様なメディアからの様々な情報は,人々に大きな影響を与えている。
 また,様々なメディアにおける女性の人権の尊重への配慮に欠けた,あるいは性別による固定的な役割分担意識に基づいた情報や性に関する情報等の氾濫などは,特に青少年への有害な影響が懸念されている。
 そのため,女性の人権の尊重への配慮に欠けた,あるいは性別による固定的な役割分担意識に基づいた情報の発信を防ぐためのガイドラインを作成するなどの対策が必要である。

オ 国際的協調
 国際婦人年(昭和50年)以来,男女共同参画社会の形成に向けての取組は,国連の取組等国際的な動きに連動する形で行われてきたが,近年はますます,政治,経済,文化など社会のあらゆる分野で情報化,国際化が進展している。
 国際交流,国際理解のためには,国レベルの取組だけではなく,地域レベルでの男女が共に参画したNPO等の活発な活動が期待されている。
 本県は,外国人登録者数が4万9千人を超えるなど,筑波研究学園都市をはじめとして,県内各地域における国際化が急速に進展しており,在住及び来県外国人の女性の人権が尊重される暮らしやすい環境づくりが必要である。


(3) 今後の取組方針
ア 社会制度・慣行の見直し,意識の改革
(ア) 社会制度・慣行の見直しのための意識啓発や定期的な調査を実施する。
(イ) 法制度の周知と法律知識(法識字)の普及を図る。
(ウ) 県においては,関係各部局の連携強化に努め,男女共同参画施策を全庁的に推進する。
(エ) 男女共同参画を推進するための拠点機能を充実強化し,各関係団体等のネットワークの推進と団体の活動の支援を行う。
(オ) 苦情等の申出及び申出の処理体制の充実強化を図る。
(カ) 配偶者暴力相談支援センター・警察・福祉事務所などの,配偶者等からの被害者保護にかかわる関係機関の連携強化を図る。
(キ) 広報誌,テレビ,ラジオ,インターネット等の多様な媒体を通じて,男女共同参画の視点に立った広報・普及活動の推進を図る。

イ 多様な選択を可能にする教育・学習の充実
(ア) 学校における男女平等の意識を高める教育活動の充実を図る。
(イ) 学校の教育活動全体を通じた男女共同参画を推進する実践的活動の充実を図る。
(ウ) 男女共同参画を推進する教職員研修の充実を図る。
(エ) 男女共同参画を実現する家庭科教育の充実を図る。
(オ) 社会教育における男女平等教育プログラムの充実を図る。
(カ) 社会教育関係者に対する意識啓発や研修の推進を図る。
(キ) 男女平等観に立った家庭教育の推進を図る。
(ク) 町内会等地域活動における男女共同参画に関する理解の促進を図る。
(ケ) 夫婦共同による子育ての重要性について広報・啓発活動の充実を図る。

ウ 男女間におけるあらゆる暴力の根絶
(ア) 配偶者等に対する暴力の防止についての社会的認識の徹底を図るため,広報啓発を行う。
(イ) 行政だけではなく,民間団体や地域住民等幅広い関係者との連携を促進し,地域を挙げての取組の推進を図る。
(ウ) 企業において,「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上配慮すべき事項についての指針」に基づき,セクシュアル・ハラスメント防止対策が図られるよう啓発を行う。
(エ) 県において,相談員の配置や研修の実施など,セクシュアル・ハラスメント防止対策の推進を図る。
(オ) 被害者に対する相談・カウンセリング体制の充実を図るとともに,携わる職員研修の充実を図る。
(カ) 被害者の精神的負担を軽減し,その立ち直りを支援するための活動の推進を図る。
(キ) シェルターの設置等被害者に対する一時保護,救済,自立支援体制の整備や支援の充実を図る。
(ク) 配偶者暴力相談支援センター・警察・福祉事務所などの,配偶者等からの被害者保護にかかわる関係機関の連携強化を図る。

エ メディアにおける人権の尊重
(ア) 男女共同参画の視点に立ち,女性の人権に配慮した情報の発信に対する理解と配慮を促進する。
(イ) 県で発信する情報・刊行物に対するガイドラインを策定し,メディアにおける人権尊重の推進を図る。
(ウ) 「青少年のための環境整備条例」の遵守の徹底による有害環境の浄化を推進する。
(エ) 人権に配慮したメディア・リテラシー(情報を活用できる能力)向上のための広報啓発を行う。
(オ) 学校教育における情報モラル教育の推進を図る。
(カ) 生涯学習における情報を活用できる能力の向上に関する学習の推進を図る。

オ 国際的協調の視点からの男女共同参画の促進
(ア) 男女共同参画に関する取組や現状について国際理解を深めるために,情報収集と提供を行う。
(イ) 国際規範・基準等に対する理解を深めるための広報啓発を行う。
(ウ) 広く県民の参加を促し,国際交流,国際協力の推進を図る。
(エ) 若い世代の国際交流,国際協力を図るための施策を展開する。
(オ) 外国人女性に対する人権の尊重への配慮とともに,各種相談,支援等の充実を図る。
(カ) 県のホームページによる情報発信のほか,外国人向け情報提供の充実を図る。
(キ) ホームページの多言語化を段階的に図ることなど,情報提供の多元化により,外国人に開かれたまちづくりを推進する。
(ク) 外国語による公共表示等により,暮らしやすい環境づくりを推進する。


2 子ども

(1) 国,県の動向
 子どもの人権の尊重とその心身にわたる福祉の保障及び増進などに関しては,昭和22年(1947年)に「児童福祉法」,「教育基本法」,昭和26年(1951年)には「児童憲章」が制定され,その理念に沿って児童の健全育成が積極的に進められており,また,平成元年(1989年)に国際連合で採択された「児童の権利に関する条約」においては,子どもは特別な保護を受ける存在であるとともに,自ら権利を行使する主体者としても位置付けられている。さらに,「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成11年)」,「児童虐待の防止等に関する法律(平成12年)」,「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(平成15年)」の制定など,個別立法による対応も進められている。


 本県としては,児童憲章の理念を受ける「茨城県青少年のための環境整備条例」を昭和37年(1962年)に制定,昭和38年(1963年)には「教育基本計画」を策定し,児童・青少年の健全育成に努めてきた。
 また,増加・深刻化する児童虐待問題に対しては,「児童虐待対策基本方針」及び「児童虐待早期発見行動指針」に基づき,迅速かつ効果的な対応を図るため,関係機関等との連携や地域に密着したネットワークを強化するとともに,24時間対応の「いばらき虐待ホットライン」を活用し,早期発見に努めることとしており,さらに,相談・支援体制の拡充,虐待するおそれのある保護者等に対するカウンセリングの実施により,虐待の未然防止や再発防止を図ることとしている。


(2) 現状と主な施策推進上の課題
ア いじめ
 いじめの発生件数は,平成14年度においては,全国では22,205件,本県では816件となっている。平成13年度と比較して全国では2,832件の減少,本県においても,130件減少しており,ともに減少傾向にあるものの,依然として多く発生している状況である。また,その態様は,「冷やかし・からかい」や「言葉での脅し」などが多い状況にあるが,いじめは水面下で発生し,陰湿化が進行しやすいものである。その結果として凶悪な事件も発生している状況にある。
 これらのことから,いじめが重大な人権侵害であることを再認識し,学校におけるいじめの早期発見,早期対応の体制づくりを充実する必要がある。

イ 体罰
 学校や施設における子どもへの体罰は,重大な人権侵害であるが,学校において体罰ではないかとして調査した事案が毎年発生している。
 教職員は,体罰が法律により禁止されていることを常に自覚し,児童生徒の指導に当たる際,いかなる場合にも体罰を用いてはならないことを十分に認識する必要がある。

ウ 性的搾取
 児童買春や児童をポルノの題材にすることなどは,児童の人権を侵害するものであるが,大人社会の歪みが子どもの心身に悪影響を及ぼしている。
 児童買春や児童をポルノの題材にすることなどの犯罪は,被害届が出されることが少ない傾向にあるため,被害を受けた者への適正な保護(早期発見・リハビリ,カウンセリング等の支援・容易な被害申立手続きの確立)のもとに,事案が顕在化しやすくなるような対策を進める必要がある。
 また,問題を助長するポルノグラフィー(印刷・インターネット・視聴覚ビデオ)から児童を保護する措置を強化する必要がある。

エ 児童虐待
 児童虐待に関する相談件数が増加しており,児童虐待による死亡事例が発生するなど,虐待事例の深刻化が進んでいる。
 そのため,児童の人権を保護する見地から,保護者に児童虐待の違法性についての認識を持たせる必要がある。
 また,児童虐待を早期に発見するため,県民に児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の通告義務を周知させ,特に関係者(医師・教育者・保育士等)に意識の高揚を促し,通告体制を強化する必要がある。
 さらに,児童虐待への根本的な対策としては,保護者に対する十分なケアも必要となるため,そうしたシステムを早急に創設する必要がある。


(3) 今後の取組方針
ア 児童の権利に関する条約の普及啓発
(ア) 子どもは権利の主体であり,あらゆる場面で子どもの意向が配慮,尊重されるよう,児童の権利に関する条約の理念,内容の普及啓発に努める。
(イ) 教科,道徳,特別活動,総合的な学習の時間等,教育活動のあらゆる機会を通じ,児童・生徒が,自らの権利に関する意識を高めるとともに,権利と表裏の関係にある自己の義務,責任についても,より一層の自覚を深めることができるような指導を行う。
 また,関係団体等とも連携し,官民を問わず,子どもが自らの権利について考える機会となる行事等の開催充実に努める。

イ いじめや体罰,校内暴力など問題行動への対応
(ア) 人と人とのふれあいを体験し,思いやりのある豊かな心を育てるため,ボランティア活動や職場体験などの体験的学習の積極的な導入,障害者や高齢者との交流を推進することによって,自ら問題行動を抑止する人権尊重意識の醸成を図る。
(イ) 道徳教育など人間としての在り方生き方教育に関する教育の指導法の研究及び研究成果等の県下各学校への周知,ティーム・ティーチングの活用により,きめ細かな指導を推進する。
*ティーム・ティーチング:
 児童生徒にきめ細かな指導を行うため,複数の教員が協力して行う授業形態
(ウ) いじめの問題については,教職員に対する研修の一層の充実を図る。
 また,スクールカウンセラー等との連携により,事案の早期発見,加害者,被害者双方に対する問題を深刻化させない適切な指導に努めるとともに,心のケアに努める。
(エ) 児童生徒に対する体罰やセクシュアル・ハラスメントについては,教職員に対する,倫理観,責任感をはじめとして人権意識高揚のための研修を継続し,その根絶に努める。
(オ) 体罰を受けた児童生徒が安心して相談できる体制の整備を図り,被害者の適切なケアに努めるとともに,再発防止のための対策を推進する。
(カ) 行政,学校,保護者,関係機関等の更なる連携を図り,児童生徒の問題行動の防止に努める。
ウ 児童虐待問題への取組
(ア) 配偶者等に対する暴力(ドメスティック・バイオレンス)と並び大きな社会問題となっている児童虐待は,児童の人権を守るため,児童虐待の防止等に関する法律及び児童福祉法の適正な運用の推進,県民への周知徹底のための啓発活動を推進する。
(イ) 医療機関等の事案の初期認知者となる可能性の高い関係機関への周知を図るとともに,連携を強化し,早期発見に努め,迅速な一時保護等の対応を推進する。
(ウ) 電話相談窓口「いばらき虐待ホットライン」での対応を適切に進める外,保健・医療・福祉・教育・警察などの関係機関や市町村,民間団体等との連携により,児童の保護に関する相談や児童及び家庭への対応の充実強化を図る。
(エ) 児童相談所における保護者へのカウンセリングの実施や,児童養護施設,一時保護所に配置したセラピスト(心理療法職員,心理判定員)により,被虐待児童の心のケアと保護者等への指導を的確に行う。
 さらに,被虐待児童等の心のケアを行う「情緒障害児短期治療施設」等の施設整備を推進する。
 なお,保護者に対しケアを行うシステムの確立等,児童虐待問題の抜本的解決のために必要と考えられる事項について,検討する。

エ 有害環境の浄化・良好な環境の整備
(ア) 茨城県青少年のための環境整備条例に基づき,図書等自動販売機をはじめ,関係店舗等に対する条例遵守のための立入調査や指導を行うとともに,関係機関,市町村や青少年健全育成関係者との連携を強化し,有害図書等の自動販売機への収納禁止並びに関係店舗等における区分陳列の徹底を図り,良好な環境の整備を推進する。
(イ) テレホンクラブ・出会い系サイトなど匿名性の高い出会いの場を提供する営業を利用した犯罪から少年を守るための対策を効果的に推進する外,少年の福祉を害する犯罪を未然に防止するための広報啓発活動及び積極的かつ効果的に取締りを推進する。
(ウ) 県内全市町村に設置されている青少年相談員及び県内28市町村に設置されている青少年センター等を通じて青少年に係る相談に応じ,青少年の健全育成を進める。
 また,少年指導委員等のボランティアと共同し,少年の保護・指導に努め,非行を誘発させない環境条件の整備を進めるとともに,少年サポートセンターを中心とする少年相談への適切な対応により,地域の実態に即した非行防止・健全育成活動を推進する。
(エ) 学校,警察署等の連携を密にするとともに,「子どもを守る110番の家」の協力を得て被害の未然防止に努める。
(オ)子どもたち自身が犯罪等の被害から身を守る力を身につけるための指導の充実に努める。


3 高齢者

(1) 国,県の動向
 人口の高齢化は世界的な規模で急速に進んでおり,わが国では,2015年には4人に1人が65歳以上という本格的な高齢社会が到来すると予測されている。
 高齢化対策に関して国際的には,昭和57年(1982年)に「高齢化に関する国際行動計画」が,平成3年(1991年)には「高齢者のための国連原則」がそれぞれ採択され,また,翌年(平成4年)には,平成11年(1999年)を「国際高齢者年」とする決議が採択されている。わが国においては,「長寿社会対策大綱」(昭和61年閣議決定),さらには,「高齢社会対策基本法」(平成7年)に基づく,「高齢社会対策大綱」(平成13年12月閣議決定)によって,国際的な動向も踏まえながら各種の対策が講じられている。

 本県としては,昭和62年(1987年)5月に「茨城県高齢化対策推進本部」を設置し全庁的な取組体制を整備するとともに,昭和63年(1988年)には,高齢化社会において県が取り組むべき施策の方向や具体的な手法を明らかにした「茨城わくわくプラン」を策定し,高齢化対策関連施策を総合的に推進してきた。
 また,平成6年(1994年)3月には「茨城県老人保健福祉計画」を策定し,平成12年(2000年)3月には,平成12年4月の介護保険制度施行にあわせ,茨城県高齢者保健福祉計画及び茨城県介護保険事業支援計画の総称である「いばらき高齢者プラン21」を策定した。また,このプランについては,介護保険財政の安定化とニーズに対応した高齢者保健福祉施策の充実強化を図るため見直し,平成15年3月に「第2期いばらき高齢者プラン21」を策定している。
 このプランに基づき,高齢者が要介護状態になっても自立し,安心して生活できる環境を整備するとともに,高齢者が豊かな人生経験や知識を生かして積極的に社会参加し,地域住民や若い世代とふれあいながら,健康でいきいきと生きがいを持って暮らすことのできる社会づくりを積極的に推進している。


(2) 現状と主な施策推進上の課題
ア 高齢者の学習・社会参加
 人々の価値観や家族観,行動様式,生き方などが大きく変化する中で,高齢者は,自分の健康増進・趣味,ボランティア等の社会活動に参加している。高齢者がそれぞれの生活課題等に応じて必要な学習を行い,自らの個性と能力を伸ばし,生きがいのある充実した生活を送れるようにすることが重要な課題となっている。
 そのため,
  ・社会参加活動に対する啓発や情報の提供
  ・高齢者が更に参加しやすい場の提供や機会の充実
  ・高齢者が,自主的・主体的に地域づくりに参画できるような環境の整備
を進める必要がある。

イ 高齢者の雇用
 高齢者は,60歳以上の求職者100人に対して求人が約12人という状況であり,完全失業率も60~64歳は8.1%(平成13年度)と厳しい状況にある。
 60歳定年制が多い中で,原則として65歳に支給開始となる年金制度であることから,高齢化の進展に伴い,今後ますます,勤労意欲の強い高齢者が増える状況にある。
 そのため,高齢者が,その意欲と能力を発揮することが出来る多様な就労の機会を確保することが必要である。
 また,60歳以上定年の完全定着を図るとともに,65歳までの継続雇用を促進する必要がある。

ウ 高齢者の権利擁護
 高齢者の中には,加齢に伴う判断能力の低下や身体機能の減退により,身の回りのことや金銭管理が困難となり,虐待,金銭の搾取等権利を侵害される事例があるが,民生委員やホームヘルパーでは適切な対応がとれない状況にある。
 これらの問題に対処し,判断能力が十分でない者を保護・支援するため,本人や家族からの申し立て(所要の申し立て費用等が必要)に基づいて,「後見人」,「保佐人」,「補助人」を選任する成年後見制度が平成12年4月から開始された。
 成年後見制度は,財産管理及び身上監護に関する契約等の法律行為全般を行う仕組みであるが,判断能力が不十分な者に対しては,日常生活上必要な福祉サービスの利用援助や金銭管理を行う等のサービスを提供する必要がある。
 また,高齢者への虐待については,早期に発見し対応できる体制を整備するとともに,虐待を防止する取組を推進する必要がある。
エ 保健・医療,福祉サービス供給体制の整備
 急速な高齢化により,寝たきり,痴呆,一人暮らしといった,生活上何らかの支援を必要とする高齢者が増加している。
 介護を必要とする高齢者が安心してサービスを受けられるよう,介護サービス基盤の整備に努めるとともに,高齢者が住み慣れた家庭や地域の中で,継続して自立した生活が送れるよう,介護予防や生活支援などの保健・福祉サービスを総合的・効果的に提供できる体制を整備する必要がある。
 また,介護保険施設等における身体拘束廃止に向けた取組の支援や意識啓発活動,痴呆介護実務者研修等を通じて,より質の高い介護サービスの提供を確保する必要がある。
オ 高齢者にやさしいまちづくり
 高齢者の一人暮らしや高齢者夫婦世帯が増加している中で,安全・快適に暮らすことが出来る良質な住宅や高齢者が使いやすい公共施設等の整備が必要になっており,高齢者が安心快適に暮らすことの出来る,生活基盤を確保する必要がある。
 また,高齢者は,社会・経済的条件から,住宅賃借等の場合に差別されることもあり,高齢者向け賃貸住宅需要に対応して,高齢者が差別されることなく安全かつ円滑に入居することの出来る住宅を確保する必要がある。
 さらに,高齢者人口の増加に伴い,高齢者が関係する交通事故の発生件数は年々増加傾向にあり,この10年間で約2倍となっている外,高齢者が被害者となる事件も増加,10年間で約3倍となっている。高齢者の事件・事故の被害を未然に防止するためには,きめ細かな交通安全教育,交通安全施設の整備,運転者対策,防犯教育等を推進する必要がある。


(3) 今後の取組方針
ア 意識啓発活動の推進
(ア) 高齢者に対する尊敬や感謝の心を育てるため,施設などとの交流を深め,児童生徒が高齢者とのふれあいを体験する機会やボランティア活動への参加を推進する。
(イ) 長寿をたたえる事業などを通じて,高齢者を敬愛する意識を醸成し,高齢者の人権や福祉についての県民の理解を深める。

イ 生きがい対策の推進
(ア) 老人クラブ等との連携を深めるとともに,スポーツ活動,教養講座,意識啓発等を行う「高齢者はつらつ百人委員会」等の活動を支援し,社会参加活動,生きがいづくり事業を促進する。
(イ) 高齢者と児童等との世代間交流による生活文化等の伝承活動等を促進する。
(ウ) 各地域において活動する老人クラブ等への助成を行い,地域交流の促進を図る。
(エ) 高齢者の社会参加に関する情報の収集・提供を行うとともに,学習,社会参加活動に係る相談体制の充実を図る。

ウ 就労対策の推進
(ア) 長年にわたり培った知識,技能,経験を発揮することができる雇用の場を確保するため,希望すれば65歳まで働くことができる環境整備に努める。
(イ) 定年退職後等において,生きがいの充実や社会参加を希望する高齢者に対して,臨時的,短期的な就業の場を提供するため,シルバー人材センターやミニシルバー人材センターの充実強化を図る。

エ 高齢者の権利擁護への対応
 茨城県社会福祉協議会に設置した「地域福祉権利擁護センター」における権利擁護事業の積極的な推進を図り,判断能力が不十分な者が地域で自立した生活が送れるよう必要な援助を行う。
 また,高齢者に対する虐待への対応については,県が設置する高齢者総合相談センター,国民健康保険団体連合会が設置する相談窓口等への早期相談の啓発や,在宅介護支援センターにおける高齢者実態把握調査の徹底などにより早期発見に努めるとともに,国の動向を踏まえ,市町村との連携を図りながら,虐待防止対策について検討する。

オ 保健・医療,福祉サービス供給体制の整備
(ア) いばらき高齢者プラン21(高齢者保健福祉計画と介護保険事業支援計画の総称)に基づき,在宅サービスの一層の充実を図るとともに,特別養護老人ホーム等介護保険施設の整備を図る。あわせて,高齢者が要介護状態にならないよう,市町村が実施する介護予防教室や運動指導などの介護予防事業,外出支援や軽度生活援助サービスなどの生活支援事業を推進することにより,地域における高齢者の保健,福祉サービスの供給体制の整備を推進する。
(イ) 介護サービス従事者に対する研修の実施など人材養成・研修体制の整備に努めるとともに,施設における安全管理の充実・強化と自己評価,第三者評価を推進するなど,介護サービスの質の向上を図る。特に,痴呆性高齢者の介護については,痴呆介護実務者研修の充実強化を図るとともに,痴呆の正しい理解のための意識啓発を推進する。
(ウ) 介護保険施設等における身体拘束廃止のため,相談体制を整備するとともに,意識啓発活動を推進する。

カ 高齢者にやさしいまちづくりの推進
(ア) 「ひとにやさしいまちづくり」の普及・啓発を推進する。
(イ) 「ひとにやさしいまちづくり条例」に基づき,病院や百貨店など多くの人が利用する施設,道路や公園などの公共施設について,高齢者の身体的機能の衰えがハンディキャップとならないような施設整備を推進する。
(ウ) 高齢者をはじめとするすべての人が,安心していきいきと暮らせるよう,保健・福祉・医療等が一体となり,ユニバーサルデザインに配慮した人にやさしいまちづくりのモデルとして『やさしさのまち「桜の郷」』の整備を推進する。
(エ) 公営住宅においては,高齢者に配慮した住宅のバリアフリー化を推進する外,高齢単身・夫婦世帯等を対象として,福祉施策と連携して生活援助員の派遣を行うシルバーハウジング・プロジェクトの取組の拡大を図る。
(オ) 民間賃貸住宅においては,高齢者向け優良賃貸住宅の供給促進を図るとともに,高齢者円滑入居賃貸住宅の登録・閲覧制度により,高齢者の方が安心・円滑に入居できる賃貸住宅の情報提供を行う。
(カ) 高齢者の交通事故防止対策として,高齢者の利用度の高い福祉施設等の周辺地域に,バリアフリー対応型信号機を整備するなど,高齢者にやさしい道路環境の整備を推進する。
 また,現在推進している,参加・体験・実践型や出前式の交通安全教育の外,民間ボランティア「シルバー・サポーター」の高齢者世帯への訪問による交通安全指導,防犯指導及び各種安全情報の提供等,高齢者のライフスタイルに合わせた各種安全活動を関係機関・団体と連携しながら推進する。

*ユニバーサルデザイン:
 まちづくりや商品開発において,高齢者や障害者をはじめ誰もが分け隔てなく快適に利用できるよう,形や機能を設計段階から取り入れていくこと。バリアフリーの考え方をさらに進めたもの。


4 障害者

(1) 国,県の動向
 障害者の基本的人権と障害者問題について,昭和46年(1971年)の「知的障害者の権利宣言」,昭和50年(1975年)の「障害者の権利宣言」が国際連合で採択され,ノーマライゼーションの理念に基づく指針が示されたのをはじめとして,昭和56年(1981年)が「国際障害者年」とされ,また,「国連・障害者の十年(1983年~1992年)」,さらには,「アジア太平洋障害者の十年(1993年~2012年)」により,障害者問題に取り組むこととされている。
 このような国際的な動向を受け,わが国においては,昭和57年(1982年)に「障害者対策に関する長期計画」,平成5年(1993年)には新長期計画,平成7年(1995年)には「障害者プラン」,平成14年(2002年)12月には,平成15年度から24年度までの10年間を計画期間とする「障害者基本計画」が策定され,長期的視点に立った障害者施策の推進が図られている。また,精神障害者の人権に配慮した適切な医療の確保と,精神障害者の自立と社会復帰の促進を図るという観点から「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」の改正も行われた。
 さらに,「高齢者,身体障害者が利用できる特定建物の建築の促進に関する法律」も平成15年4月に改正施行され,建物のバリアフリー化も一層促進されることになった。
 また,平成13年(2001年)1月には,「21世紀の特殊教育の在り方について」,平成15年3月には,「今後の特別支援教育の在り方について」が報告され,障害の程度に応じ,特別の場で指導を行う「特殊教育」から,障害のある児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じて,適切な教育的支援を行う「特別支援教育」への転換を図ることが示された。


 本県としては,「いばらき障害者いきいきプラン」に基づき,障害者自らが必要とする保健福祉サービスを適切に利用できるよう,一人ひとりの人権に配慮した利用者本位の保健福祉サービスの充実と施設の整備を推進するとともに,障害者が,地域において自立でき,生きがいのある生活を営めるよう,児童生徒への決め細やかな支援など学校教育の充実や学習機会の提供などの生涯学習の推進,福祉的就労の場の確保やスポーツ・レクリェーション活動,文化活動の振興,在宅福祉サービスの充実,計画的な福祉施設の整備など,地域におけるケア体制を整備し,ともに生きる豊かな福祉社会を実現するため,様々な施策展開に努めている。


(2) 現状と主な施策推進上の課題
ア 施設,病院,企業等での人権侵害への対応
 知的障害者や精神障害者は,施設,病院,企業などにおいて,人権侵害が起きた場合に,自ら対処することに困難性がある。
 また,保護者にとっても,退所・退院等を気にかけて,施設・行政等になかなか実状を訴え出ることができにくい状況にある。
 そのため,施設,病院,企業などにおける知的障害者や精神障害者への人権侵害に対し,知的障害者や精神障害者が,行政などに身近に相談できる体制をつくる必要がある。

イ 障害及び障害者に対する理解の促進
 地域や企業などにおいて,障害や障害者に対する理解不足と,偏見や先入観などから,障害者を受け入れない(受け入れにくい)物理的・意識的障壁が残っている。
 障害者の社会参加が進む中,地域の中で活動する障害者に対する理解が徐々に進んできているが,今後さらに,障害のある人に対する理解を深めるため,交流の場となる各種イベントを開催するなど,県民に対する広報・啓発活動を積極的に展開する必要がある。
 また,地域における障害者の自立と社会参加をさらに進めるため,物理的,意識的な障壁を取り除く必要がある。

ウ 自己決定の権利の確保
 知的障害者等自己決定能力が十分ではない人たちが,身体や財産などの基本的権利に関わる決定に関われないなど,必ずしも自己決定の権利が十分に確保されていない。
 そのため,知的障害者等自己決定能力の十分でない人たちが,地域で安心して生活ができるための身体,財産など基本的権利に関することがらのほか,生活上のあらゆる相談が受けられる体制づくりや,社会的支援の仕組みの整備が必要である。

エ 障害者の就労の場の確保
 障害者雇用率制度に基づく雇用率が,企業において達成されていない状況や障害の程度に応じた福祉的就労の場が十分整備されていない。
 そのため,企業における障害者雇用を促進し,障害者雇用率の充足を図るとともに,障害の程度に応じた福祉的就労の場を確保する必要がある。

オ 社会生活環境の整備
 身体障害者等が,障害のない人と同じように安全に安心して生活し,社会参加できるための環境整備が遅れている。
 身体障害者等が,安全に安心して生活し,社会参加できるよう,住宅,建築物,公共交通機関,歩行空間など生活空間のバリアフリー化を促進するとともに,情報格差の是正を図り,障害者が自立して生活できる環境を整備する必要がある。

カ 福祉サービス基盤の整備
 ノーマライゼーションの理念のもと,障害のある人の地域生活を支援するためには,ホームヘルプサービス,デイサービス等各種の福祉サービス基盤を整備する必要がある。


(3) 今後の取組方針
ア 施設,病院,企業等での人権侵害への対応
(ア) 「障害者110番事業」により,本人や保護者からの訴えに対し,速やかに実情を確認するとともに,行政と連携し,人権侵害があったと認められた場合には改善指導を行い,障害者及びその家族の地域生活の安定を図る。
(イ) 茨城県社会福祉協議会に設置した「運営適正化委員会」により,福祉サービスに関する利用者からの苦情の適切な解決や事業者に対する苦情解決体制の整備などの巡回指導を行い,サービスの質の向上を図る。
(ウ) 医療機関において,医療面での苦情・相談等に適切に対処する体制づくりを促進するため,必要な情報の提供や指導などの支援を行い,医療従事者との信頼に基づく適切な医療の確保を図る。
イ 障害及び障害者に対する理解の促進
(ア) 障害者週間推進事業(障害者社会自立シンポジウム等)や障害者福祉施設等で製作した製品の即売会(ナイスハートバザール)などを通じ,障害者に対する県民の理解を深め,障害者の自立と社会参加を促進する。
(イ) 障害者計画(障害者プラン)を策定している市町村が,平成14年度においては,75.9%であるため,県下全市町村での計画策定を推進し,障害者の地域における自立と社会参加を促進するとともに,社会資源の充実を図る。
(ウ) 国の「障害者に係る欠格条項の見直しについて(平成11年8月)」を踏まえ,本県においても内容の検討を進める。
(エ) 学校教育においては,特殊教育諸学校と小・中・高等学校及び地域の人々などとの交流教育やボランティア活動を多様な場で展開するなど,児童生徒の自立と社会参加をめざした教育の推進を図るとともに,障害や障害者への理解を深めるための取組を推進する。
(オ) 特殊学級及び通級指導教室の障害児の教育的ニーズや通常の学級における学習障害(LD),注意欠陥/多動性障害(ADHD),高機能自閉症などの児童生徒一人ひとりに対する支援や指導などの教育的ニーズに対応するための特別支援教育の充実に努める。
(カ) 特殊教育諸学校や特殊学級等の集いである「心と心のふれあいフェスティバル事業(学習発表会,作品展)」をとおして,学習意欲の高揚や社会参加能力の育成と県民に対する障害児教育の理解・啓発を推進する。
(キ) 小・中学校及び特殊教育諸学校において,障害児教育の内容や就学等に対する相談支援体制の整備に努める。
(ク) 教職員に対し,障害や障害者への理解を深めるための研究や研修を推進する。

ウ 自己決定の権利の確保
(ア) 茨城県社会福祉協議会に設置した「地域福祉権利擁護センター」における権利擁護事業の積極的な推進を図るとともに,成年後見制度の活用を促進し,痴呆性高齢者,知的障害者,精神障害者等の自己決定能力が低下している人が,地域で自立した生活が送れるよう必要な援助を行う。
(イ) NPO団体の活用等により,障害者が地域で生活できるようなサポートを行う人的育成を推進するとともに,適切な相談対応等,ボランティア従事者への支援策の充実を図る。

エ 障害者の就労の場の確保
(ア) 特殊教育諸学校高等部における現場実習(就業体験学習)先の情報収集及び職場開拓や,「障害者雇用対策事業」として,障害者就職面接会の開催,職場適応訓練事業の実施等により雇用機会の拡大を図る。
(イ) 「障害者雇用支援センター運営費補助事業」として,障害者の職業生活における自立を図るための職業準備訓練等を行う施設の設置・運営に対する助成を行う。
(ウ) 小規模作業所,授産施設,福祉工場等の整備・充実に努め,障害のある人の能力や適性を生かした福祉的就労の場の確保を図る。
オ 社会生活環境の整備
(ア) 「ひとにやさしいまちづくり」の普及・啓発を推進する。
(イ) 「ひとにやさしいまちづくり条例」に基づき,病院や百貨店など多くの人が利用する施設,道路や公園などの公共施設について,障害者が安心快適に暮らすことのできるよう,身体の障害がハンディキャップとならないような施設整備を推進する。
(ウ) 障害のある人が住宅で安心して生活できるよう,住宅リフォーム制度の普及を図り,居住環境の整備を促進する。
カ 福祉サービス基盤の整備
 障害のある人の自立と社会参加を促進するため,「いばらき障害者いきいきプラン」に基づき,デイサービスやグループホームなど34の施策について整備目標を掲げて基盤整備を促進する。

キ 国際的協調
 国連・障害者の十年及びアジア太平洋障害者の十年の成果を踏まえ,障害者施策に関する取組や現状について国際理解を深めるために,情報の収集と提供を行う。


5 同和問題

(1) 国,県の動向
 同和問題はわが国固有の重大な人権問題であり,その早期解決が,国及び地方公共団体の責務であることが昭和40年(1965年)の同和対策審議会答申で指摘されて以来,「同和対策事業特別措置法」,「地域改善対策特別措置法」,「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(以下「地対財特法」)」の3本の特別法に基づき,33年間に及ぶ特別対策が講じられてきた。
 国においては,平成14年3月の地対財特法失効に伴い,地域改善対策特定事業については全て終了し,今後の施策ニーズには,他の地域と同様に,地域の状況や事業の必要性に応じ所要の施策が講じられることとなるが,同和問題を解決するための人権教育・啓発については,地域改善対策協議会の意見具申の趣旨に留意し,これまでの同和問題に関する教育・啓発活動の中で積み上げられてきた成果等を踏まえ,各般の取組を積極的に推進することとされている。


 本県としては,茨城県民福祉基本計画及び茨城県長期総合計画において,同和問題の早期解決を県政の緊急かつ重要な課題として位置付け,国の同和対策審議会答申,地域改善対策協議会意見具申(昭和61年,平成3年,同8年),及び同和対策事業特別措置法以来の3次にわたる特別法を基本に,県同和対策審議会答申(昭和58年)及び意見具申(平成4年,同9年)に沿って,生活環境の改善,産業の振興,職業の安定,教育の充実,社会福祉の増進等,広範多岐にわたる同和対策事業を総合的,計画的に実施するととともに,同和問題に関する県民の理解と認識を深めるための教育・啓発活動についても積極的に実施してきた。
 同和対策推進のための組織体制としては,昭和52年(1977年)に「同和対策室」,同55年(1980年)に「同和教育室」を,また,昭和52年には,県行政の内部組織として,「同和対策推進協議会」を設置し,県行政一体となった同和対策を推進してきた。
 これらの結果,地区道路や上・下水道の整備等生活環境,農業生産基盤等ハード面の事業については相当程度の成果を上げてきたが,啓発,教育,就労・産業等に関しては,着実に改善されつつあるものの,一部に課題が見受けられる状況にあるため,今後は,平成13年12月の県同和対策審議会意見具申を踏まえて同和問題の早期解決に向けた取組を進めていくこととしている。


(2) 現状と主な施策推進上の課題
ア 啓発について
 差別意識の解消のため,啓発冊子やリーフレットの作成・配布,啓発ポスターの作成・掲示,及び講演会の開催や新聞・ラジオ等マスメディアの活用,該当キャンペーンの実施等,啓発活動を積極的に実施している。
 同和問題に対する県民の正しい理解と認識は確実に高まっているものの,平成12年度に県で行った県民意識調査や生活実態調査の結果においても,依然として人権侵害の事例が見受けられる外,つきあいや結婚,就職において,同和地区を理由に忌避や反対を示す回答が見られるなど,未だ十分とは言い難い状況にある。また,啓発手法のマンネリ化や講演会等への参加者が固定化される傾向もみられ,知識中心の啓発内容になりがちとの指摘もあることから,さらなる啓発手法,内容の創意工夫を図る必要がある。
 一方,市町村における啓発活動の取組については地域的なアンバランスが生じており,また,広域的で効果的な啓発活動を進めるうえで,県,市町村,人権擁護機関との連携が十分とは言い難い状況もある。

イ 教育について
(ア)学校教育
 学校教育においては,推進体制の整備及び推進計画の作成が全県的に進み教育活動全体をとおして豊かな心情を養い,差別や偏見をなくす人権尊重の教育を基盤とした同和教育を実践している。
 あわせて,教職員の同和問題に対する理解と認識を深めるための研修を計画的・継続的に実施し,指導者としての資質の向上に努めてきた。
 さらに,学校と家庭との連携を図り,保護者及び児童生徒の人権感覚や人権意識の育成に努めてきた。
 また,高等学校への進学奨励事業等の実施により,進学意欲や学力の向上を図るなど較差解消に努めてきた。
 同和教育の推進にあたっては,他人の心の痛みを共感的に受け止めることができ,実践力のある児童生徒の育成を図るため,指導内容や方法等について,より一層創意工夫を凝らすとともに,教職員の指導力の向上を図る必要がある。
(イ)社会教育
 社会教育においては,各種の学習機会の提供や啓発活動をとおして,県民の同和問題に対する理解を深めるとともに,偏見や差別意識の解消を図ってきた。
 さらに,同和問題に関して深い認識と理解をもつ指導者の養成に努めてきた。
 同和教育の推進状況については,全県的に推進体制が整備されるなど,一定の成果が見られるものの,取組にはまだ地域差が存在していることから,積極的な推進の必要がある。
 特に,指導者研修については,地域に根ざした指導者の養成とともに,研修内容の充実が必要である。

ウ 就労・産業について
(ア) 就労について
 職業の安定を図るため,必要な知識,技能を習得向上させるための訓練や手当等の支給を行うとともに職業相談等を実施し,関係住民の適正な職業選択及び就職後における職場への適応の促進を図ってきた。
 また,公正な採用選考の確立と就職差別の防止を図るため,企業に対する啓発を実施してきた。
 不安定就労の改善を図るために,雇用の確保・創出の支援,雇用相談,求人等情報の提供などを引き続き行っていく必要がある。
 また,同和問題の正しい認識と公正な採用選考のため,企業,公共的な団体に対しての啓発・研修を継続して行う必要がある。
(イ) 産業について
 中小企業に関しては,経営の安定と基盤強化を図るため,経営指導員による巡回指導・相談など経営改善普及事業を推進している。
 中小企業の事業経営の状況については,小規模で個人経営の事業者が大部分を占め,経営基盤が脆弱なため,経済変動の影響を受けやすい状況にある。このため,引き続き,商工会等の経営指導員による相談・指導によって,経営の安定を図っていく必要がある。
 農業に関しては,小規模零細農家を主体とした経営が展開されており,農業の経営の安定と生活水準の向上を図るため,土地基盤の整備や近代化施設の整備等を進め,また,相談活動等を集中的に実施し,その結果,農業の近代化や生産性の向上及び就業の改善等が図られてきた。
 今後は,経営規模の拡大などを志向する意欲のある農家と農外所得を主とする農家が混在している現状を踏まえ,これらの農家の意向を十分に把握しながら,農業の振興にかかる適切な支援を行っていくことが求められている。

エ えせ同和行為への対応
 法務省が,平成9年1年間を調査対象期間として,全国から無作為に抽出した6,000事業所を対象に実施した,えせ同和行為実態把握のためのアンケート調査の結果では,機関誌や図書等物品購入の強要による要求が多くなっている。
 えせ同和行為は,差別意識の解消に向けた教育や啓発の効果を覆し,同和問題の早期解決に真剣に取り組んでいる民間運動団体に対するイメージを著しく損ね,同和問題に対する誤った意識を植えつける大きな原因となっている。
 えせ同和行為に対しては,同和問題を正しく理解することが何よりも重要であり,今後とも関係機関との連携を強化し,企業,団体,県民等への有効な啓発活動を推進していく必要がある。


(3) 今後の取組方針
ア 啓発について
(ア) 効果的かつ総合的に人権・同和問題の啓発を行うため,県・市町村・関係機関の役割分担を明確にしつつ,相互の連携強化に努める。
(イ) 一度に多くの県民に人権尊重の重要性を伝えることのできるテレビ,ラジオ,新聞広告等のマスメディアやインターネット等を積極的に活用した啓発を推進する。
(ウ) 隣保館・公民館等において,各地域の自治組織等との連携を図り,地域住民が非合理的な差別や偏見を解消することの意義や人権尊重についての理解を深められるよう地域に密着した啓発を推進する。
(エ) 人権・同和問題の啓発の拠点となるべき体制として,啓発・研修機能を備えた人権啓発推進センター(仮称)を整備する。
(オ) フェスティバルなど誰もが参加しやすい啓発活動を推進する。
 また,行政職員・企業関係者等に対する体系的な研修を推進する。
(カ) 地域的課題と結びついた啓発活動が重要であり,そのための市町村への支援の充実を図っていく。
(キ) 人権侵害に関しては,国において設置される人権救済機関等との連携をより一層深めていく。

イ 教育について
(ア) 学校教育
a 教育活動全体をとおして豊かな心情や思いやりの心を育み,差別や偏見をなくす人権尊重の教育を基盤とした同和教育を推進する。
b 教職員に,同和問題に対する理解と認識を深める各種研修を実施する。
c 同和教育の推進にあたっては,幼児児童生徒の発達段階に十分配慮し,地域の実情に応じて実施していく。
d 指導資料や視聴覚教材等を効果的に活用するなど,学習指導の工夫・改善に努める。
(イ) 社会教育
a 同和教育の全県的な推進を図るため,市町村との一層の連携に努める。
b 地域に根ざした指導者の養成を図るため,指導者研修事業の充実を図る。
c 同和問題に対する県民の理解と認識を深めるため,啓発資料の作成や視聴覚教材の整備・活用に努める。
d 幅広い層の住民の交流を図るための社会教育活動を促進する。

ウ 就労・産業について
(ア) 就労について
 雇用相談,労働相談機能の充実による雇用関係情報の提供,労働条件等各種の労働相談を行うとともに,求職者のニーズに応じた求人等情報の提供を行っていく。また,公正な採用選考のための企業に対する研修などによる不安定就労の改善,就職の機会均等の確保を図る。さらに,就職の促進及び職業の安定を図るため,各種職業訓練の充実を図る。
(イ) 産業について
 中小企業については,小規模経営者の経営力の安定,基盤強化を図るための指導・助言などにより,事業の振興発展を図る。
 また,農業については,地域全体の合意形成の下,農用地の流動化等を推進し,農業で生計を立てようとする意欲のある農業者の経営の安定と地域農業の振興を図るための諸施策を推進する。

エ えせ同和行為について
 えせ同和行為への注意を喚起するため,県広報紙等の活用により県民への周知を図る外,えせ同和行為への対応の手引書(対応マニュアル)等の作成,配布や相談体制の充実を図る。
 さらに,国で設置しているえせ同和行為対策関係機関連絡会の活用等により,関係機関・団体等と緊密な連携を図り,その排除に向けた取組を推進する。


6 外国人

(1) 国,県の動向
 国際的な人的・物的交流の増大と情報通信の発達は,地域間の交流を活発化させ,国際的な相互の依存関係を深めている。
 こうした中で,平成8年(1996年)には,「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する条約」がわが国において発効し,人種差別や外国人差別等あらゆる差別の解消のためのさらなる取組が求められている。


 本県は東京や成田空港に近いことや筑波研究学園都市の整備が進んだことなどから,4万9千人余の外国人が県内に居住するなど国際化が急速に進んでいる。
 このような状況において,国際化の進展に的確に対応した県づくりを進めるため,県では「茨城県国際化推進基本計画」を策定し,各種施策の総合的な展開を図っており,この基本計画の柱である ①外国人にも開かれた地域社会づくり②外国との交流の促進③国際社会への貢献④国際化を進める基盤の整備 の4つの方針に沿って,県民や関係機関等の理解と協力を得ながら,各種国際化推進施策の積極的な展開に努めることとしている。


(2) 現状と主な施策推進上の課題
ア 生活情報の提供等
 県内の外国人登録者数は本県人口の約1.6%を占めており,県では,(財)茨城県国際交流協会を通じて,外国語で作成した生活ガイドブックやメディカルハンドブック,情報誌などを使用した外国語による情報提供を行い,また,在留資格,婚姻,労働など生活全般にわたる相談も受け付けているが,外国人が安心して快適な生活を送るためには,外国語による正確で新しい情報の提供が必要である。特に,国際結婚等において,交渉能力の不足等から問題発生時に不利を被る場合があり,適切な支援が必要である。また,外国人が活動しやすいよう,分かりやすい地名や施設の表示を進めていく必要がある。
 一方,外国人と日本人,あるいは外国人同士など,文化を異にする様々な人々が互いに理解を深めるためには,実際に人と人との交流を通じて相手や相手の文化・考え方に直接ふれることが重要であり,これらの取組を充実させる必要がある。
 さらに,外国人が日本語や日本文化を学ぶことは,地域社会の一員として生活し,日本を理解していくうえで重要であり,日本語教室の開催や日本文化を理解するための取組を充実していく必要がある。

イ 就労環境等の整備
 外国人労働者の生活基盤の確立のためには,職場等における諸問題について,外国語で相談できる体制の確保が重要である。平成13年度に(財)茨城県国際交流協会に寄せられた相談内容の中で,労災や賃金,解雇,労働条件などの労働関係の相談は,全相談件数の約8%を占めている。
 そのため,国の関係機関(労働基準監督署,ハローワーク)と連携を図りながら,外国人労働者の就労上のトラブルなどに適切に対応し,助言・指導ができる相談体制の整備を進める必要がある。

ウ 教育・啓発活動
 県内の外国人児童生徒数は,10年前と比べて急激に増加しており,日本語指導を必要とする児童生徒の数も増加している。
 そのため,広い視野をもち,異文化を理解するとともに,これを尊重する態度や異なる文化をもった人々と共に生きていく資質を高め,その能力の育成を図っており,学校教育における社会科等の指導の中で,外国人の人々の人権を尊重する教育を行うとともに,各学校における国際理解教育の推進を図っている。
 こうした中で,外国人に対する差別意識の解消に向けた理解・啓発の活動については,各学校の授業・行事等の学校教育活動だけでなく,公民館活動の各種事業等生涯学習の分野においても,各地域に居住する外国人の方々の積極的な参加を得ながら,共に活動する実践が求められている。
 一方,日本語指導を必要とする帰国・外国人児童生徒の学校生活への適応指導の改善充実を図っており,帰国・外国人児童生徒指導用資料の作成や,(財)茨城県国際交流協会を中心とする日本語講師の養成,民間交流団体などの日本語講座や日本文化の学習のための講座開催の支援,日本語指導協力者の派遣,日本語指導ボランティアの募集並びに市町村教育委員会への情報提供などを行っているところである。しかしながら,帰国・外国人児童生徒に対して,学校における受入れ体制の整備をさらに進めるとともに,学校生活における適応指導の一層の充実が求められている。
 また,多様な母語に対応しながら,日本語についての専門的な知識や技能を有する教員や指導員の育成をさらに進め,それぞれの児童生徒に応じた教材,教具を開発する必要があるほか,保護者に対して,児童生徒に教育を受けさせることへの理解・啓発が必要である。
 さらに,在日韓国・朝鮮人についても,その歴史的な経緯も鑑み,差別や偏見から来る人権問題が生じることのないよう,多様な文化,価値観等を尊重し,国籍を越えてすべての人々の人権が保障されるよう,啓発活動を積極的に推進する必要がある。


(3) 今後の取組方針
ア 生活情報の提供等
(ア) 生活情報,防災情報などの行政情報をガイドブック,情報誌,ラジオ,インターネットなどを使用し,多くの言語で提供する。
(イ) (財)茨城県国際交流協会で実施している外国人相談については,対応言語の拡大や弁護士出張相談回数の増加などにより,在留資格,婚姻,労働関係など生活全般にわたる相談体制のより一層の充実に努める。
(ウ) 道路,行政機関の庁舎など公共施設の案内板や表示板にローマ字や外国語の併記を進める。
(エ) つくばの国際交流サロンの一層の活用を図り,様々な国の人々が交流できる機会の提供に努める。
(オ) (財)茨城県国際交流協会による日本語講師の養成等を進めるほか,民間交流団体などが開く日本語講座等の開催を支援する。

イ 就労環境等の整備
(ア) 国の関係機関との連携により,外国人労働者の就労環境の整備改善に関する相談体制を整備する。
(イ) 医療保険未加入の外国人に対する医療について,救急医療機関における未回収医療費の助成等の支援を行う。

ウ 教育・啓発活動
(ア) 国際理解教育及び帰国・外国人児童生徒教育研究協議会を開催するなど,指導者の育成や指導方法の改善を図り,自国文化や異文化の理解,異なる文化や考え方を尊重する態度を育む国際理解教育の充実に努める。
(イ) 帰国・外国人児童生徒指導資料を作成するなど,帰国・外国人生徒に対する日本語指導のための教材の開発に努める。
(ウ) 日本語指導が必要な児童生徒の多い市町村に日本語指導協力者を派遣するほか,日本語指導ボランティアの協力を受けるなどにより,学校教育における日本語指導・適応指導の充実に努める。
(エ) 帰国・外国人児童生徒が多く在籍する小中学校に対し,日本語指導のための教員の配置に努める。
(オ) 国際協力に関する知識の普及活動を通じ,世界レベルでの人権に対する意識の啓発に努める。
(カ) 在日韓国・朝鮮人等の差別問題について,その理解のための啓発活動を推進する。


7 ハンセン病,HIV感染症等疾病に係る人権問題

[ハンセン病療養所入所者等]


(1) 国,県の動向
 ハンセン病は,らい菌による感染症であるが,感染力はきわめて弱く,仮に発病した場合であっても,現在では治療法が確立されている。しかしながら,平成8年(1996年)に「らい予防法」が廃止されるまで,療養所へ隔離する政策がとられるなど,患者や家族は偏見や差別を受けてきており,また,強制隔離政策終結後にあっても,療養所入所者の多くは,それまでの長期間にわたる隔離などにより,家族や親族などとの関係を絶たれ,また,入所者自身の高齢化等により,完治後も療養所に残らざるを得ないなど,社会復帰が困難な状況にある。
 このような状況の中で,平成13年6月には,ハンセン病の患者・元患者の名誉回復及び福祉増進を図ることを目的とした「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律」が施行されており,今後は,ハンセン病患者・元患者の社会復帰,偏見や差別の解消,福祉対策の充実等が求められている。


 本県としては,「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律」の趣旨に基づき,県民がハンセン病問題について正しく理解し,偏見や差別をなくすため,県民を対象とした講演会の開催やハンセン病情報コーナー,パンフレットによる情報提供を実施するとともに,藤楓協会の活動の支援,里帰り事業や慰問活動を実施し,療養所入所者及び関係者への支援対策を推進することとしている。


(2) 現状と主な施策推進上の課題
ア 正しい知識の普及・啓発
 昭和29年(1954年)に設立された茨城県藤楓協会が中心になって,機関紙「藤楓いばらき」の発行や講演会の開催,パンフレットの作成などを行い,広く一般県民を対象にした啓発活動を行っている。
 今後の普及・啓発事業においては,ハンセン病が決して遺伝病ではなく,既に治療方法は確立され,不治の病ではないことの認識を高めることに重点を置いて実施していく必要がある。
 また,学校教育においても,児童生徒のハンセン病を含む差別対象疾病全般にわたる正しい理解とともに病者に対する思いやりの心を育てる教育を強力に進める必要がある。

イ 療養所入所者の支援
 療養所慰問や里帰り事業等により,入所者の方々へきめ細かな支援を実施しており,引き続き,入所者の意向・要望を基本として,適切な施策の立案・推進を図る必要がある。


(3) 今後の取組方針
ア 正しい知識の普及・啓発
(ア) ハンセン病に対する差別・偏見を解消するため,県と茨城県藤楓協会が設置した「ハンセン病情報コーナー」における資料の展示・貸出等により,ハンセン病に関する正しい知識の普及・啓発に努める。
(イ) 「ハンセン病を正しく知る週間」を中心として,講演会の開催や療養所入所者の体験等も掲載したパンフレット等の作成,配布による普及啓発活動を推進する。
(ウ) 学校教育においては,保健学習,道徳教育,総合的な学習の時間,特別活動などの教育活動の中で,児童生徒の基本的人権の尊重,思いやりの心の育成などの観点から,ハンセン病に対する理解・啓発を推進する。

イ 療養所入所者の支援
(ア) ハンセン病療養所訪問・里帰り事業等の実施により,療養所入所者の方々に郷土との接点を保っていただきながらの交流と支援を図るため,療養所慰問,入所者里帰り事業を推進する。
(イ) 本県出身入所者の退所,社会復帰のための支援を行う。


[HIV感染者等]


(1) 国,県の動向
 HIV感染症は,進行性の免疫機能障害を特徴とする疾患であり,HIVによって引き起こされる免疫不全症候群のことを特にエイズ(後天性免疫不全症候群)と呼んでいる。HIV感染症は,その感染経路が特定している上,感染力もそれほど強いものではなく,正しい知識に基づいて通常の日常生活を送る限り,いたずらに感染を恐れる必要はない。また,近年の新しい治療薬の開発によってエイズの発症を遅らせたり,症状を緩和させることが可能となっている。しかしながら,エイズ患者やHIV感染者に対しては,疾患に対する正しい知識や理解の不足から,依然として偏見や差別が存在している。
 平成11年(1999年)には,感染症患者の人権を重視した「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」が施行され,今後は,患者等に対する偏見や差別を解消し,人権尊重を念頭に置いた対策を推進していく必要がある。


 本県としては,エイズに対する誤解や偏見をなくし感染を未然に防ぐため,県民が正しい知識を持てるよう普及・啓発に努めるとともに,患者等が安心して適切な医療を受けられるよう,エイズ拠点病院を中心とした診療体制の整備を推進することとしている。


(2) 現状と主な施策推進上の課題
ア 正しい知識の普及・啓発
 広報媒体の活用やパンフレット等の作成,また,保健所による地域住民を対象とした健康教育の実施や街頭キャンペーンなどによりエイズに関する正しい知識の普及を図っている。さらに,研修会等の回数の拡大や一般県民参加者を増やすための工夫及び関係機関への積極的な働きかけ・連携とともに,手法について検討をする必要がある。
 また,感染経路の理解などの知識はかなり普及されてきているが,未だに特定の人の病気という認識が強い傾向にある。感染経路等についての知識を深めてもらい,誰でも感染の可能性があり,身近な病気であることに広報の重点を置くなど,検査による早期発見により,発症を遅らせる治療方法の進歩が著しいという認識を高める必要がある。
 さらに,エイズ,その他の病気あるいは差別の対象となり得る未知の病気に対応した正しい知識の普及を総合的に推進する必要がある。

イ 相談・検査体制の充実
 県内全保健所において無料匿名検査・相談事業を実施しており,つくば保健所に外国人エイズ相談窓口を,水戸保健所,土浦保健所にはエイズ相談専用電話を設置している外,夜間相談電話(茨城県総合健診協会)を設置している。また,保健所職員等を国等が実施する研修に派遣し,職員の資質向上に努めている。
 こうした中で,行政窓口,病院,関係施設などにおける対応において,HIV感染者等の側に立った,きめ細かな徹底したプライバシー対策が必要である。
 また,職場・学校・地域等患者の生活の場における患者の人権が十分に尊重される必要があり,身近な地域において,患者が心のよりどころとできる民間ボランティア組織などの充実が望まれている。

ウ 診療体制の整備
 エイズ診療担当医師連絡会議の開催により連携・協力体制の確保に努めるとともに,医療従事者を知識・技術向上のための研修会等へ派遣しているところであるが,専門的医療と地域医療との連携により,患者が身近な地域の医療機関で安心して医療を受けられる体制の充実を図る必要がある。
 また,外国人HIV感染者等に対する「言葉の壁」の問題及び経済的負担の軽減を中心とした有効なサポート方法の充実を検討する必要がある。
 さらに,医療機関従事者の研修機会の拡大や積極的な情報交換が必要である。

エ 学校における教育・啓発
 教員に対し,学校保健指導者研修会を開催し,エイズに関する指導法の研修を行うとともに,「エイズに関する指導の手引き」等を配布している。
 また,児童生徒に対しては,エイズを正しく理解するためのパンフレットやポスターを配布することによりエイズ教育を推進している。
 今後においても,教員に対して引き続き研修を行う必要があり,また学校教育においては,児童生徒の発達段階に応じてエイズに関して正しく理解させるとともに,エイズを含む疾病全般に対しても偏見や差別をなくすための教育を一層進める必要がある。

オ その他
 予防指針
 平成11年4月1日に施行された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下「感染症新法」という。)第11条第1項の規定に基づく,後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針が平成11年10月4日に告示されている。


(3) 今後の取組方針
ア 正しい知識の普及啓発
(ア) 世界エイズデーを中心にエイズに関する正しい知識の普及を図り,エイズまん延防止及び患者・感染者に対する差別・偏見の解消等を図る。
(イ) 保健所において,教育機関等との連携の下,高校生を対象に「エイズを考える高校生の集い」を開催する外,地域住民を対象とする健康教育,講演会等を開催し,地域の実情に応じたきめ細かな普及啓発活動を推進する。

イ 相談・検査体制の充実
(ア) 安心して受けられる相談体制の整備
 各保健所における匿名相談の他,夜間専用電話の設置や外国語による外国人エイズ相談事業を実施するなど相談体制の充実を図る。
(イ) 感染不安者が受けやすい検査体制の確保
 保健所で実施している匿名による無料HIV抗体検査の周知を図り,プライバシーに配慮した体制のなかで進めていく。
(ウ) 「エイズ検査・相談」業務の質の向上を目指し,保健所保健師等に対する研修の推進に努める。

ウ 診療体制の整備
(ア) 感染者等が身近な地域の医療機関で安心して医療を受けられるようエイズ治療拠点病院を中心とした診療体制を整備する。
(イ) 医療従事者の診療技術等の向上への支援を行う。

エ 学校における教育・啓発
(ア) 性教育を充実するとともに,児童生徒のエイズを予防しようとする態度を育てるため,その発達段階に応じてエイズに関する正しい理解が得られるよう努める。
(イ) エイズに関する正しい知識や理解を得させ,HIV感染者等に対する差別や偏見を払拭し,人間尊重の精神を育てるよう努める。
(ウ) 教職員を対象とした指導者研修会を実施し,指導力の向上を図るとともに学校と家庭・地域・関係機関との連携による取組を推進する。


[その他疾病等に係る人権問題]


(1) 疾病等に対する正しい知識の付与
 ハンセン病,HIV感染症ばかりではなく,精神疾患,アルコール依存症,痴呆症,肝炎などの疾病等については,時として,罹患者やその家族が差別的な扱いを受けかねない状況にある。また,C型肝炎の感染者や罹患者が団体信用保険の加入拒否,MRSA患者の特別養護老人ホームへの入所拒否等の事例も見られる。
 そのため,これら疾病等に関し,偏見や差別をなくすための正しい知識の普及に努めるとともに,医師会等と連携し,差別の防除のための取組を進める必要がある。


(2) インフォームド・コンセントの推進
 医療行為の過程で医療従事者が患者の立場を尊重して,患者に対する情報提供を十分に行い,患者の選択や同意のもとに検査や治療を行うことの重要性が認識されてきている。
 現在,国においては,診療情報の提供等についての検討が進められており,こうした国の動きを注視しながら,医療関係団体と連携して医療情報の提供等の自主的な取組を促進し,患者が安心して治療が受けられるよう,医療従事者と患者との信頼関係に基づく適切な医療の確保に努める必要がある。
 また,医療事故の未然防止等,適切な医療体制の確保を進める必要があり,患者等からの相談事案に対処するため,平成15年6月から,医療安全相談センターを開設している。

*インフォームド・コンセント:
 診療の目的や内容を納得できるように患者に説明し,了承を得て治療すること。


8 犯罪被害者等

(1) 国,県の動向
 昭和49年(1974年)8月に,無関係の通行人を含めて死者8名,重軽傷者380名に及ぶ「三菱重工ビル爆破事件」が発生し,爆弾テロや通り魔殺人などの不慮の被害に遭った犯罪被害者に国家救済が叫ばれた。それから,殺人や傷害など,人の生命又は身体を害する故意の犯罪行為により,不慮の死を遂げた人の遺族又は身体に重い障害が残った人に対し,国が犯罪被害者等給付金を支給する「犯罪被害者等給付金支給法」が昭和55年(1980年)に制定され,殺人事件の遺族や重障害を負った被害者等に対する「犯罪被害給付金制度」が,昭和56年(1981年)から運用され,経済的支援が開始された。
 平成7年(1995年)3月には「地下鉄サリン事件」が発生し,被害者及び遺族(以下「被害者等」という。)が受ける精神的被害の深刻さが国民に広く認識された。平成8年(1996年)2月には,警察庁によって,警察が推進すべき被害者対策の基本方針として,被害者等への情報の提供,精神的な被害回復への支援,捜査過程における被害者等の精神的負担などの2次的被害の防止・軽減,被害者等の安全確保などの「被害者対策要綱」が制定され,警察における本格的な被害者対策への取組が始まった。
 平成11年(1999年)6月には,捜査活動における被害者に対する配慮,被害者への積極的な情報提供,被害者保護などの規定が盛り込まれた「犯罪捜査規範」の一部改正がなされた。
 平成12年(2000年)5月には,公判手続の傍聴,公判記録の閲覧及び謄写などの犯罪被害者やその家族に対する権利の保護に関して「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続きに付随する措置に関する法律」が制定され,さらに,証人尋問の際の証人への付添い・遮へい,ビデオリンク方式による証人尋問,強姦罪等の告訴期間の撤廃など刑事訴訟法などの法的措置による司法手続きの改善がなされ,また,平成13年(2001年)4月に,障害給付金の支給範囲が4級から14級に拡充,重症病給付金の支給,被害者等に対する援助の措置,犯罪被害者等の支援を実施している民間団体を犯罪被害者等早期援助団体として指定するなどの「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」の改正が行われたところである。

 本県においては,性犯罪被害者のプライバシー保護と被害者のニーズに柔軟に対応し,性犯罪相談,事件情報等について,広く県民の協力を得るため,平成8年(1996年)10月から性犯罪被害相談「勇気の電話」を警察本部に設置し,運用を行っている。
 また,平成9年(1997年)2月には,警察本部警務部警務課に犯罪被害者対策室を設置し,犯罪被害者対策の総合調整,他機関・団体との連携,被害者等に対するカウンセリング,犯罪被害者等給付金の裁定事務等を行い,警察における総合的な犯罪被害者等対策を推進している。なお,平成14年12月9日には,茨城県公安委員会は犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律第23条に基づき,社団法人いばらき被害者支援センターを「犯罪被害者等早期援助団体」に指定し,犯罪被害者対策室と連携の下に支援活動を行っているところである。


(2) 現状と主な施策推進上の課題
ア 被害者等に対する2次的被害の防止
 被害者等は,
  ・殺人事件,傷害事件,性犯罪などによる生命や身体の被害
  ・窃盗事件,詐欺事件などによる経済的被害
といった,直接的被害(1次的被害)を受けているが,犯罪による直接的な被害ばかりでなく,
  ・精神的ショックや身体の不調
  ・心ない周囲の人々のうわさ話や,過剰なマスコミの取材・報道等による不快感,ストレス
  ・警察の捜査活動や裁判等の過程における精神的,時間的負担
  ・同じ被害にまた遭うのではないか,警察に通報したために加害者から報復を受けるのではないかという不安や恐怖
など,被害後新たに生じる問題(2次的被害)に苦しめられている。
 そのため,周囲の人々が,被害者等の置かれている立場や心理状態等を理解した上で,被害者等に接する必要がある。

イ 被害者等のニーズへの対応
 被害者等は,犯罪被害によりトラウマ(心の傷)を体験し,被害者等自身による自助回復が図れず,または,家族,友人,精神保健・福祉・司法等の公共機関,被害者支援団体等の支援を受けても自助回復が図れない場合は,以後,PTSDの症状(不安感,恐怖感,無力感といったもののほか,錯覚,再体験(フラッシュバック),拒食(過食)症,不眠症等)に陥る場合もあり,その症状は多くの他人から理解されず,一人で悩んでいる。
 被害者等のPTSDを未然に防止するには,被害者等の立場に立ち,「被害者等が何を望んでおり,被害者等に何が必要か」を把握し,適切に対応する必要がある。

ウ 関係機関・団体相互の連携
 被害者等の多岐にわたるニーズに応え,社会全体として被害者等を支援できるよう,関係する機関・民間団体等が相互に緊密な連携を図る必要がある。

エ 犯罪被害給付制度の周知
 故意の犯罪行為により不慮の死を遂げた被害者の遺族や,障害や重い傷病を負った被害者に対して,精神的,経済的打撃の緩和を図るため,社会の連帯共助の精神に基づき国が給付金を支給する犯罪被害給付制度の周知を図る必要がある。


(3) 今後の取組方針
ア 被害者等に対する2次的被害の防止
 被害者等のニーズに応じ,必要な情報の提供,助言,援助を行うことにより,2次的被害の防止に努める。

イ 被害者等のニーズへの対応
(ア) 性犯罪被害に関する相談電話「勇気の電話」の活用等により,適切な相談及び被害者支援の推進に努める。
(イ) ハイテク犯罪等新たな分野の犯罪被害に対しては,インターネット上に設置した相談窓口等により,適切な被害者支援を推進する。

ウ 関係機関・団体相互の連携
 犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律(昭和55年法律第36号)に基づく犯罪被害者等早期援助団体等の民間団体や関係機関との連携により,犯罪被害の早期軽減のための相談体制の充実,危機介入サービスや生活関連サービスの提供など支援体制の確保に努めるとともに,当該団体等に対し必要な支援を行う。

エ 犯罪被害給付制度の周知
 犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律に基づく,犯罪被害給付制度の内容や「犯罪被害者等早期援助団体」の制度等の周知を図るための広報を行う。


9 罪や非行を犯した人

 罪や非行は,その行為自体,決して許されるものではなく,毅然とした対応が求められることは当然のことであるが,罪や非行を犯した人が罪をつぐない,あるいは,更生への意思を持って社会の一員として立ち直ろうとしているのに,地域社会においては,誤った認識や偏見が存在していることから,更生への妨げや,人権が損なわれるおそれがある。
 このような状況の中で,改めて地域社会の理解と協力が必要であり,罪や非行を犯した人に対する偏見や差別意識を解消するための啓発活動を推進する必要がある。


10 インターネットにおける人権問題

 インターネットなど情報通信メディアによる差別的な情報の掲示やホームページへの人権侵害となる書き込みが行われるなどの事象が発生している。インターネット上では,個人の情報発信が容易である上,発信(情報の作成)者に匿名性のあること等から,今後も,倫理観の欠如した無責任な情報発信や違法行為の行われるおそれがある。そのため,県民一人ひとりが,各人権課題に係る正しい認識と,個人のプライバシーや名誉,並びに,情報の収集・発信における個人の責任や情報モラルに関する正しい理解を深めるよう,普及・啓発に努める必要がある。
 また,人権侵害にあたるような情報の書き込み等について,県としても,日頃から確認に努めるとともに,事象を確認した際には,速やかに関係機関に伝達し,適切な対応がとられるよう求めていく必要がある。



第4 推進体制
(1) 県庁内に設置した「人権施策推進会議」及び,外部有識者等による「人権施策推進懇話会」により,人権に関する施策の総合的な推進及び調整を行う。
(2) 人権に係る啓発及び,県職員,市町村職員,企業等に対する研修は,人権啓発の拠点施設として整備する人権啓発推進センター(仮称)において,総合的に実施する。
(3) 市町村の人権行政への取組に対する助言・支援を行う。
(4) 企業,関係団体,NPO等との協力体制の整備についても検討を行う。
(5) テレビ,ラジオ,新聞広告等のマスメディアは,より多くの県民に対し同時に人権尊重の重要性を伝えることができることから,一層の連携を図っていく。
(6) 人権問題は時代のすう勢により複雑・多様化することから,基本計画は必要に応じて見直し・検討を行う。