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人権に関するデータベース

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石川県人権教育・啓発行動計画
情報の種類 地方公共団体関係資料
タイトル 石川県人権教育・啓発行動計画
時期 2005/03/01
主体名 石川県
【 内容 】

はじめに

 人権とは、すべての人々が持っている固有の権利であり、社会において幸福な生活
を営むために欠かすことのできない権利として憲法で保障されております。
 21世紀は「人権の世紀」とも言われており、人権の尊重が平和の礎であるということ
が世界の共通認識になりつつあります。そして、真の人権尊重社会を実現するために
は、あらゆる人権問題を県民全体の問題として捉え、私たち一人ひとりがお互いを思
いやる心を大切にして、差別や偏見のない心豊かな社会を作り上げることが最も大切
であります。
 本県では、平成12年3月に、人権尊重の気運を県民生活の中に定着させていくため、
平成16年を目標年次とする「人権教育のための国連10年石川県行動計画」を策定し、
様々な人権教育・啓発の推進に努めてまいりました。
 こうした取り組みにより、県民の皆様方の人権問題に対する関心が高まり、正しい
理解や認識も深まりつつありますが、一方では、誤った偏見や差別が今なお存在する
とともに、高度情報化社会の進展などによりプライバシーに関する新たな人権課題も
生じてきております。
 また、国では、人権教育・啓発のより一層の推進を図るため、平成12年12月に「人
権教育及び人権啓発の推進に関する法律」を公布・施行し、平成14年に「人権教育・
啓発に関する基本計画」を策定しております。
 本県においても、人権教育・人権啓発に関する施策を推進するため、国連10年石川
県行動計画を受け継ぐ新たな計画として、平成15年に実施した「人権問題に関する県
民意識調査」の結果等を踏まえ、この「石川県人権教育・啓発行動計画」を策定いた
しました。
 今後は、この計画を実効あるものとするため、国、市町をはじめ関係機関などと十
分連携を図りながら、本県の人権教育・啓発に関する施策を総合的に推進してまいり
たいと考えておりますので、県民の皆様方のご理解とご協力をお願いいたします。
最後に、この計画の策定にあたり、貴重なご意見、ご提案をいただきました関係者
の方々に心から感謝申し上げます。

平成17年3月 石川県知事谷本正憲


第1章 計画の基本理念

1 計画策定の趣旨
 石川県人権教育・啓発行動計画(以下「行動計画」という。) は、「人権教育のた
めの国連10年」に関する国内行動計画等で示された基本的考え方の趣旨を踏まえ、
平成12年(2000年) 12月に公布・施行された「人権教育及び人権啓発の推進に関す
る法律」第5条に規定する地方公共団体の責務として、本県の実情に即した人権教
育・啓発に関する施策を推進するために策定したもので、平成12年(2000年) に策
定した「人権教育のための国連10年石川県行動計画(以下「国連10年石川県行動計
画」という。)」を受け継ぐものであります。
 本県においては、これまで人権が真に尊重される社会を築き上げるため、人権擁
護施策を県政の重要課題として位置づけ、国、市町、関係機関などとの連携のもと、
県を挙げての推進体制を整備し、人権問題の正しい理解に向けた施策を積極的に推
進してきました。
 こうした取組みの結果、県民の人権尊重意識は着実に高まってきていますが、依
然として、学校、地域、家庭、職域など社会生活の様々な局面において、女性、子
ども、高齢者、障害者、同和問題、外国人などに関する偏見や差別など様々な人権
問題が存在しています。また、最近は社会の急激な変化に伴い、高度情報化等を背
景とした新たな人権問題が発生しており、人権意識の高揚は、豊かな県民生活を実
現するための極めて重要な課題となっています。
 このため、本行動計画により、様々な人権問題の解決と、人権が尊重される社会
の実現を目指し、県民一人ひとりの人権尊重の精神の確立とすべての人々の共生に
向けた人権教育・啓発に関する施策を総合的かつ効果的に推進します。

2 計画の性格
 この行動計画は、本県が今後実施する人権教育・啓発の推進に関する基本方針を
明らかにするとともに、施策の方向性を示すものであります。
(1)国が策定した「人権教育・啓発に関する基本計画」及び「国連10年石川県行動
計画」の趣旨を踏まえ、人権教育・啓発を総合的かつ効果的に推進するために策
定しました。
(2)「国連10年石川県行動計画」を受け継ぎ、本県における人権が尊重される社会
の実現をめざすための人権教育・啓発の在り方を示すものであります。
(3)平成15年(2003年) 12月に実施した「人権に関する県民意識調査」等により明
らかとなっている本県の実態に基づき、学校、地域、家庭、職域その他様々な場
を通して、県民がそれぞれのライフスタイルに応じて、人権尊重の理念に対する
理解を深め、これを実践できるよう、中長期的な展望の下に策定しました。
(4)人権が尊重される社会づくりの担い手は県民であるとの理念の下に、本県にお
ける人権教育・啓発の基本的な方針を示すものであり、行政機関、企業、民間団
体等がそれぞれの役割を踏まえた上で、連携・協働し、実効ある人権教育・啓発
を推進するものとする。

人権とは
人権擁護推進審議会答申において、「人々が生存と自由を確保し、それぞれの
幸福を追求する権利」と、また、「『人間の尊厳』に基づく人間固有の権利」と定
義されています。


第2章 計画策定の背景

1 国際的な潮流
 20世紀における急速な科学技術の進歩は、人類社会に豊かさと快適さをもたらし
た反面、二度にわたる世界大戦は、人々の生活を破壊し、世界各地で多くの犠牲者
を出す結果となりました。特に第二次世界大戦における人権侵害、人権抑圧には目
に余るものがありました。こうした反省から、人権の尊重が世界平和の基礎である
と認識され、昭和23年(1948年) 第3回国連総会において、基本的人権を確立する
ための「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」として「世界人権
宣言」が採択されました。
 それ以降、国連は世界人権宣言を実効あるものにするため、「国際人権規約」、
「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」、「女子に対するあらゆる形態
の差別の撤廃に関する条約」、「児童の権利に関する条約」などの人権関係諸条約を
採択するとともに、「国際人権年」など解決すべき重要なテーマごとに、種々の
「国際デー」、「国際年」などを定めて世界中にその普及と協調行動を提唱し、人権
が尊重される世界の実現に向けて取組んできました。
 こうした取組みにもかかわらず、東西対立の崩壊後も期待された世界平和は訪れ
ず、世界各地で地域紛争やこれに伴う人権侵害、難民発生など深刻な問題が多発し
ました。
 このような厳しい国際社会の状況下、国連では平成7年(1995年) から10年間を
「人権教育のための国連10年」と定め、世界各国の政府に人権教育に積極的に取組
むよう行動計画を示し、人権教育を通じて人権文化を世界に築くための取組みを展
開してきました。
 ところが、平成13年(2001年) にアメリカで起こった同時多発テロなど、重大な
人権侵害が世界各地で起き、多くの犠牲者を出しております。
「人権の尊重が平和の基礎である」ということが、世界共通の認識として再認識
される必要があります。このような中で、文化の違いを越えて、「人権の世紀」が
スタートしました。

2 国内の動向
 このような国際的な人権尊重の流れの中、我が国では、第二次世界大戦終了後の
昭和21年(1946年) 「国民主権」、「平和主義」とともに、「基本的人権」をその基本
原理とする日本国憲法を公布し、昭和31年(1956年) には国連に加盟し、国際社会
の仲間入りを果たしました。
 そして、国際社会の一員として今日までに「国際人権規約」を始めとした人権関
連の諸条約を締結するとともに、国連が提唱する多くの国際年に取組み、さらに、
これらの趣旨に基づいて関係の国内法を整備するなど、基本的人権の尊重と人権意
識の高揚を図るための各種施策を推進してきました。また、平成7年(1995年) に
は、国連決議を受けて、内閣総理大臣を本部長とする「人権教育のための国連10年
推進本部」を設置し、平成9年(1997年) 「人権教育のための国連10年に関する国
内行動計画」を策定しました。
 特に、我が国固有の問題である同和問題については、昭和40年(1965年) の同和
対策審議会答申が、「その早急な解決は国の責務であり、同時に国民的課題である」
と指摘したのを受け、昭和44年(1969年) 以降その解決に向け、同和対策事業特別
措置法などの法律が制定され、同和問題の早期解決に向けた特別対策が実施されて
きました。その結果、生活環境は大きく改善しましたが、心理的差別は依然として
存在しています。
 平成11年(1999年) 7月、人権擁護推進審議会は、「人権教育・啓発の基本的な
在り方について」の答申を法務大臣、文部大臣(現文部科学大臣) 及び総務庁長官
(現総務大臣) に対して行い、平成12年(2000年) には「人権教育及び人権啓発の
推進に関する法律」が施行されました。同法には、国及び地方公共団体は人権教育
及び人権啓発に関する施策を策定し、実施する責務を明記するとともに、これを総
合的かつ計画的に推進するため、平成14年(2002年) 3月同法に基づく国の基本計
画が示されました。


第3章 人権をめぐる県民の意識

1 平成15年度「人権問題に関する県民意識調査」の概要
○ 平成15年(2003年) 12月に「人権問題に関する県民意識調査票(以下「今回調
査」という。)」を県内在住の成年2,000人に送付し、返送された回答から、有効
回答の1,197票(回収率59.9%) を分析しました。
○ 前回の「人権と同和問題についての意識調査(以下「前回調査」という。)」は
平成5年(1993年) 12月に1,000人を対象に実施しています。
○ 今回調査では、質問数を55項目(前回調査37項目) とし、前回調査と同様の質
問項目のほか、女性、子ども、高齢者、障害者、在日外国人、感染症患者など各
課題毎に、「問題として思うこと」と「対策として必要なこと」、さらに「人権が
尊重される社会に向けての取組み」などについて調査しました。

2 調査結果の特徴
○ 人権問題に「関心がある」、「少し関心がある」と答えた人は77.8%を占めて
「関心がない」(21.2%) を大きく上回っています。
○ 自分自身が差別や人権侵害を受けたことが「ある」人は30.0%となっています。
○ 他人の人権を侵害した経験が「あると思う」は、11.3%、「あるかもしれない」
は54.7%、「ないと思う」は32.4%となっています。また自分自身が差別や人権
侵害を受けたことが「ある」人では「ない」人に比べて他人の人権を侵害した経
験も「あると思う」、「あるかもしれない」と答える割合が高くなっています。
○ 日本の人権問題について、“基本的人権が尊重されている”には「いちがいに
はいえない」が62.8%を占めていますが、“国民の人権意識は高くなっている”
については半数近く(47.6%) が「そう思う」と同意しています。
○ 重要課題毎(分野別) の特徴については、第6章のそれぞれの箇所に記載して
あります。
○ 人権が尊重される社会に向けての取組みとしては、「学校における人権教育の
充実」(58.3%)、「大人に対する人権啓発・研修の充実」(47.0%)が多く、教育・
研修が上位を占めました。以下、「行政機関が弱者を支援・救済」(39.8%)、「不
合理な格差解消のための施策の充実」(36.4%) と続いています。


第4章 人権教育・啓発の推進

 人権問題は県民すべてにかかわる問題であります。人権意識を高めていくためには、
学校・家庭・職場・地域などあらゆる場を通じて、人権に関する教育・啓発が実施さ
れることが重要であります。
 広く県民の間に人権尊重思想の普及高揚を図るため、様々な人権問題の課題を踏ま
えた上で、研修・情報提供・広報活動等の人権教育・啓発を進めていきます。

1 人権教育
 人権教育については、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」の第2条に
おいて、「人権尊重の精神の涵養を目的とする教育活動をいう。」と規定されていま
す。
 基本的人権の尊重の精神が正しく身に付くよう、地域の実情を踏まえつつ、学校
教育及び社会教育を通じて推進していくことが必要です。
(1) 生涯を通じた人権教育
 人権教育は、県民一人ひとりの生涯の中で様々な機会を通じて実施されること
により効果を上げるものであります。
 そのためには、学習環境、学習機会等の整備をしていく必要があります。県民
が生涯のあらゆる機会を通じて学習することができるような取組みを推進します。
(2) 実践できる人権感覚が身に付く人権教育
 人権教育は単に知識の伝授にとどまるのでは、その効果を十分に発揮したこと
にはなりません。
 そこで、人権教育の成果が県民の実際の行動として現れるような人権感覚が身
に付くよう、対象者の家庭、学校、地域社会などにおける日常生活の経験等を具
体的に取り上げるなど、創意工夫を凝らした人権教育を推進します。
(3) 人権の共存の心を育む人権教育
 人権擁護推進審議会答申は人権尊重の理念を「自分の人権のみならず、他人の
人権についても正しく理解し、その権利の行使に伴う責任を自覚して、人権を相
互に尊重し合うこと、すなわち、人権の共存の考え方ととらえる」としています。
 人権擁護施策を県政の重要課題として位置づけ、「心豊かな人づくり」に取組
んでいる本県としても、県民が異なった文化や習慣、また他人の考え方を十分理
解し、人権を相互に尊重し合う心を育み、ひいては「人権が共存する社会」が実
現するよう十分配慮した人権教育を推進します。

2 人権啓発
 人権啓発については、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」の第2条に
おいて、「国民の間に人権尊重の理念を普及させ、及びそれに対する国民の理解を
深めることを目的とする広報その他の啓発活動(人権教育を除く。) をいう。」と規
定されています。
 人権問題は自分自身の問題であり、人権が尊重される社会は県民一人ひとりの努
力によって築き上げられるものであります。そのためには、県民が自ら人権尊重社
会確立の担い手であることを認識し、人権教育に主体的に取組むことが重要であり
ます。
 このような観点から、多様な学習機会の提供、広報活動、情報の提供など県民が
人権教育に取組みやすい環境づくりを推進します。

(1) 県民に対する人権啓発
 人権尊重の意識の高揚を目指して、人権に関する正しい理解と認識を深めると
ともに日常の態度や行動につながる人権感覚が身につくよう、「人権の日(12月
10日)」、「人権週間(12月4日~10日)」、「人権啓発推進月間(8月)」を中心に、
街頭啓発・講演会・人権フェスティバル・ビデオ上映会、思いやり絵本読み聞か
せ事業の開催、啓発冊子「人・人・人への思いやり」・新成人へ贈る人権メッセー
ジ・ポスター・リーフレットの作成等を通して、同和問題をはじめとする女性や
子ども、高齢者、障害者、外国人、感染症患者など様々な人権問題の啓発活動を
進めてきました。
 今後とも、国や市町・関係団体等との連携を図りながら、人権が尊重される社
会の確立に向けて、各種、きめ細かな人権啓発を推進します。

(2) 企業における人権啓発
 企業は地域社会の構成員でもあり、働きやすい職場づくり・人権を尊重しあえ
る職場づくりに取組むことによって、社会から信頼され、企業の発展につながる
といった認識を企業・職場内に定着させることが必要です。企業が、こうした認
識に立って、人権尊重意識の高い職場づくりの形成と雇用・労働条件や労働安全
衛生などの就労環境の整備、個人情報の適正な管理など、企業の社会的責任を果
たす取組みが推進されるよう、事業者・事業者団体を対象とする研修会の開催、
啓発冊子の作成、配布のほか、企業内研修の際の講師派遣、啓発ビデオ等教材の
貸出しを行うなど、企業内における人権啓発活動を円滑に行うための施策を推進
します。

3 あらゆる場を通じた人権教育・啓発の推進
(1) 学校
 学校においては、児童生徒が有する人権を大切にするとともに、一人ひとりの
子どもの可能性を最大限に伸ばす教育が重要であります。学校の主役は子どもで
あり、そのため、子どもの人権に配慮した教育環境が守られなければなりません。
しかしながら、いじめや不登校など、子どもの人権が侵害される問題が増加して
います。社会の変化の中で子どもが被害者になるばかりでなく、人権侵害の加害
者になることもあり、人権の大切さを理解し、お互いを認め合い尊重し合うこと
が重要となっています。また、将来、国内外の多様な人々と関わる社会の中で主
体的に生きる子どもたちにとって、自らが豊かな人間性や人権感覚を身に付ける
ことがより一層大切となってきています。
 そのため、全教職員が人権教育の意義を正しく理解するとともに、教職員の人
権教育に果たす役割の重要性を自覚し、児童生徒がその発達段階に応じて豊かな
人権感覚や人権問題を解決していく実践力を身に付ける取組みができるよう、次
の施策を推進します。

ア 児童生徒の発達段階に即し、また、各教科、道徳、特別活動、総合的な学習
の時間のそれぞれの特質に応じ、各学校の教育活動全体を通じて人権尊重の精
神を培い、同和問題を始めとする人権問題への正しい理解と認識を深めさせま
す。そして、あらゆる差別や偏見をなくして、互いを認め合い尊重し合う望ま
しい人間関係を築こうとする態度を育てることに努めます。

イ 児童生徒の人権尊重意識を高め、豊かな人権感覚を育成するため、児童生徒
の発達段階を踏まえた全体計画・年間指導計画を作成し、人権尊重の教育を計
画的に推進します。また、小・中・高等学校の一貫した人権教育が推進できる
よう、校種間の連携に配慮し、適時性・系統性を踏まえた指導の充実に努めま
す。

ウ 教師と児童生徒、児童生徒相互間の共感と信頼に基づく温かく豊かな人間関
係を確立し、児童生徒一人ひとりが学校生活に充実感を持ち、個性と資質を伸
ばすとともに、十分な自己実現を遂げることができるよう、きめ細かで心の通
い合う指導に努めます。

エ 教職員のライフステージに対応した系統的な研修を実施し、指導力の向上に
努めます。また、人権教育に取組むための研修体制を確立するため、研修内容
や研修方法の工夫に努めるとともに、人権教育に必要な資料の充実に努めます。
オ家庭・地域社会に人権教育の重要性を啓発し、保護者・関係機関との連携を
図ります。

(2) 保育所・幼稚園
 人権感覚の芽生えは人間形成の基礎が培われる乳児期から始まると言われてお
り、乳幼児の発達の特性を踏まえ、身近な動植物に対する親しみ、生命の大切さ、
豊かな心の醸成などに努めることが大切であります。
 そのため、乳幼児が友達とのかかわりの中でのきしみ、もどかしさ、喜びなど、
集団生活の場としての保育所・幼稚園での体験を通じて、人間形成の基礎を培い、
他人を思いやる心、人権を大切にする心をはぐくむために次の施策を推進します。

ア 乳幼児が経験する自然体験や音楽・劇等の表現体験を重視し、ゆとりのある
心、伸びやかな心をはぐくむ取組みを推進します。また、発達段階に応じて、
幼児が主体的に体験活動に参加する機会を設け、人権を尊重する子ども相互の
関係づくりや集団活動を効果のあるものにするための保育活動を支援します。

イ 職員に対し、子どもの人権に関する研修を充実します。

ウ 家庭や地域社会と連携して、人権を大切にする心を育てる保育の推進に努め
ます。

(3) 地域社会
 社会教育においては、人権を現代的学習課題の一つとして取り上げた生涯学習
審議会の答申等を踏まえ、生涯学習の振興のための各種施策を通じて、人権に関
する学習の一層の充実を図っていく必要があり、その際には、人権問題を単に知
識として学ぶだけではなく、日常生活において態度や行動に現れるような人権感
覚の涵養が求められています。
 そのため、学校教育や家庭教育との連携のもと、生涯学習の視点に立って、学
習者の実態、地域の実情等に即した系統的かつ継続的な人権教育の推進に努める
とともに、社会教育関係団体との連携を進め、指導者の養成・確保や学習機会の
一層の充実、より効果的な学習プログラムの開発等に努めるため、次の施策を推
進します。

ア 市町が行う人権に関する学習活動を支援するため、人権教育担当者の研修の
充実を図るとともに、PTAや女性団体等の社会教育関係団体における指導者
層の研修を充実します。

イ 人権に関する各種資料・教材の充実を図るとともに、啓発資料集や学習活動
実践事例、講師等に関する情報を提供し、効果的な学習活動の推進に努めます。

ウ 公民館、図書館、博物館その他の社会教育施設が行う事業及び社会教育関係
団体などが実施している地域の活動を通じて、県民の人権問題に関する学習意
欲を喚起し、また、理解を深めるための学習機会の提供に努めます。

エ 人権教育の推進に当たっては、学習者の実態、地域の実情、学習形態の特質
などの各種の条件に応じた効果的な方法で行うとともに、学校教育や家庭教育
との連携を深め、生涯にわたる学習活動の促進に努めます。また、学習参加者
が、人権問題を自らのこととして考えることができるよう、内容及び方法の創
意工夫に努めます。

オ それぞれの地域における人権の学習は、学校、家庭、地域社会が相互に連携
し、地域住民が一体となった取組みとなるよう創意工夫に努めます。

(4) 家庭
 家庭教育は、乳幼児期から子どもに基本的な生活習慣や生活能力、豊かな情操、
他者への思いやり、善悪の判断などの基本的倫理観、社会的マナーなどの基礎を
はぐくむ上で、極めて重要な役割を担っています。差別的な意識も、家庭におけ
る言動を通じて子どもに再生産されてしまう場合が少なくないと指摘されており、
親等が人権問題を正しく理解した上で子どもに接することが大切であります。
 そのため、家庭教育では、親等が偏見を持たず、差別をしないことなどを日常
生活を通じて自らの姿を持って子どもに示していくことが重要であり、親等と子
どもが相互の理解を深めるとともに、社会教育や学校教育における人権教育の取
組みが家庭において理解されるよう、次の施策を推進します。

ア 家庭における人権尊重意識の高揚を図り、理解を深めるため、PTA活動等
を通じて親等に対し、情報や学習機会の提供などの家庭教育に対する支援を一
層充実します。

イ 子育てについての研修会の開催や県広報等を通じた啓発、学習機会の提供に
努めるとともに、子育て支援についての各種相談機関による相談機会の拡充、
相談員の資質の向上に努めます。

ウ 男女共同参画社会の実現に向けた家庭や地域社会の在り方についての啓発、
情報の提供に努めます。

(5) 企業・職場その他一般社会
 本県においては、県民の人権意識の高揚を図り、広く県民に人権問題に対する
正しい理解と認識を深めるため、講演会・人権啓発フェスティバルの開催、街頭
キャンペーンの実施、マスメディアの活用、ポスター・リーフレット等の配布な
どきめ細かな啓発活動を推進しています。また、県内には、国が市町に総勢196
人(平成17年(2005年) 1月現在) の人権擁護委員を配置し、県民の人権擁護活
動に当たっています。
 こうした取組みによって、県民の人権尊重意識は着実に深まってきていますが、
人権問題の解決に向けた取組みはこれで十分とは言えません。さらに人権に関す
る理解と認識を深め、人権尊重の社会づくりへ向けての気運の醸成を図るため、
啓発内容等について創意工夫に努める必要があります。また、県内には人権相談
窓口等が設置されていますが、必ずしも県民に周知徹底されていない側面があり
ます。
 また、企業については、今日その社会的責任が求められています。人権問題に
ついても例外ではなく、企業主は、男女共同参画社会の実現、少子高齢社会への
対応が求められている中、同和問題を始めとした人権問題に十分配慮する必要が
あります。
 県内の企業においては、公正採用選考人権啓発推進員を中心として、人権を尊
重した職場づくりと、職業選択の自由を確保するための公正な採用選考に向けた
取組みが進められています。
 そのため、企業・職場その他一般社会においても、人権尊重意識の一層の高揚
を図るため、これまでの取組みを踏まえつつ、次の施策を推進します。

ア 人権関連情報を県民に提供し、その普及啓発に努めます。また、効果的な啓
発活動を推進するため、指導者の養成に努めるとともに、研修会・講演会等の
開催、啓発の方法、啓発に関する教材、資料等について一層の創意工夫に努め
ます。

イ 人権に関する資料やイベント等の情報の収集を行い、県民に対する情報提供
に努めます。

ウ 県民の人権に関する悩みごと、困りごと等の相談に適切に対応していくため、
相談窓口、支援体制等の充実を図るとともに、その周知に努めます。

エ 地域に根ざした人権擁護活動の一層の推進を図るため、地方法務局、市町等
との連携のもと、人権擁護委員との情報交換を密にするとともに、人権擁護委
員制度の周知に努めます。

オ ボランティア活動は、実践できる人権感覚を身に付ける場として期待でき、
大いに人権教育に資するものであります。一人でも多くの県民が積極的に参加
できるよう、体験の機会や情報の提供を行うなど、活動の支援・促進に努めま
す。

カ 企業に対しては、その社会的責任の自覚を促し、男女共同参画社会の実現、
次世代育成支援の取組みなどの少子高齢社会への対応などに果たすべき役割を
始め、公正な採用選考についても、基本的人権に配慮した適切な対応が図られ
るよう一層の啓発に努めます。

キ 大学において、人権に関する教育が一層行われるよう働きかけます。


第5章 特定の職業従事者に対する人権教育の推進

1 教職員・社会教育関係職員
 人権を尊重した学校教育を推進するためには、教育活動に携わるすべての者が自
らの生き方にかかわる課題として豊かな人権感覚を身に付けることが不可欠であり
ます。
 本県においては、校長・教頭研修会を始め、初任者研修、若手・中堅教職員研修
など、教職員のライフステージに対応した系統的な研修の充実に努めています。ま
た、人権教育推進会議で各学校における人権教育の取組みについて協議し、人権教
育の充実を図るとともに、教職員の人権に対する認識を深めて幼児・児童・生徒の
豊かな感性をはぐくみ、人権を尊重した学校教育が展開できるよう努めています。
さらに、教育委員会の関係課及び市町の教育委員会においても、それぞれの課題を
テーマとした人権に関する研修を実施していますが、今なお学校においては、いじ
めや不登校など児童生徒の人権にかかわる問題が生じています。家庭や地域社会、
関係機関などとの連携を深め、これらの問題を解決するための取組みを実施するこ
とが引き続き重要な課題となっています。
 そのため、教職員については、自らが人権に対する十分な認識と子どもへの愛情
や教育への使命感を持ち、教育現場における人権問題を解決しようとする自覚を持っ
て実践できるよう、研修の工夫に努めます。また、社会教育主事や公民館主事など
社会教育関係職員についても、引き続き幅広く人権問題に対する理解と認識を深め、
人権にかかわる問題の解決に資することができるよう、専門性を備えた指導者とし
ての人権尊重意識を高めるための研修の充実に努めます。

2 医療・保健関係者
 医師、歯科医師、薬剤師、看護師、保健師その他の医療・保健関係者は、人の命
と健康を守ることを使命とし、治療、疾病の予防、リハビリテーション、保健指導
などの業務を担っています。これらの業務を遂行するに当たっては、患者等に対す
るインフォームド・コンセントを徹底し、また、プライバシーに配慮するなどの人
権尊重意識に基づいた行動が求められています。
 そこで、医療・保健関係者における人権教育の積極的な取組みの充実に努めると
ともに、医療・保健従事者を育成する学校や養成所のほか、医療・保健関係団体に
対しても研修の拡充などの人権教育の充実を働きかけます。

3 福祉関係者
 福祉事務所職員、在宅介護支援センター職員、社会福祉協議会職員、民生委員・
児童委員、身体障害者相談員、知的障害者相談員、社会福祉施設職員その他の社会
福祉関係者は、子どもや高齢者、障害者をはじめとした様々な人々の生活相談や身
体介護などの業務に携わっています。そのため、業務の遂行に当たっては、個人の
プライバシーや本人の意思に十分配慮するなど、人権尊重の視点に立った判断力と
行動力が求められています。
 そこで、社会福祉関係者に対し、福祉総合研修センターなどを活用して、子ども、
高齢者、障害者等の人権に関する研修をさらに充実させるなど、その人権尊重意識
の普及高揚に努めるとともに、社会福祉協議会、社会福祉法人等に対しても同様の
取組みの充実を働きかけます。また、福祉系の学校や養成施設に対しても人権教育
の充実を働きかけます。

4 消防職員
 消防職員は、県民の生命、身体の安全、財産の保護等を職務としており、その活
動を通じて密接に県民の日常生活とかかわっていることから、人権意識をもって任
務を遂行することが求められています。
 このため、各種消防業務において適切な対応が行われるよう、消防学校の教育課
程に組み入れている人権教育の内容を充実するとともに、各消防本部等が実施する
研修等についてもその充実を働きかけます。

5 警察職員
 警察職員は、県民の生命、身体及び財産を保護し、公共の安全と秩序を維持する
責務を有しており、人権にかかわる諸活動が多いことから人権に配慮した公正で適
切な職務を遂行することが求められています。
 このため、警察学校及び職場における各種教養などの機会を通じて、被害者・被
疑者、その他関係者の人権への配慮に重点を置いた、人権尊重意識を高めるための
教育・訓練の充実に努めます。また、きめ細かな被害者対策や青少年の健全育成に
関する活動を積極的に推進します。

6 公務員
 人権尊重の社会づくりを積極的に推進していくためには、職員一人ひとりが、人
権問題に対する正しい理解と認識を深めるとともに、豊かな人権感覚を持つことが
必要です。
 このため県では、職員一人ひとりが公務員としての自覚と使命感を持つとともに、
人権問題を自らの課題として受け止め、その解決に向けた主体的行動がとれるよう
人権意識の高揚に努めてきました。
 今後とも、人権尊重の視点に立ちそれぞれの職務内容と職責に応じた様々な人権
課題に配慮した研修を実施し、職員の人権意識の確立に努めます。

7 マスメディア関係者
 新聞、テレビ、ラジオ等のマスメディアは、人権問題に関する記事、番組を取り
上げるなど人権意識の高揚に大きな役割を果たすとともに、人権を尊重する社会の
形成に大きな影響力を有しています。
 今後とも、マスメディア関係者において、人権尊重のための自主的、積極的な取
組みが行われるよう働きかけます。


第6章 配慮すべき人権問題への対応

1 女性
(1) 現況と課題
 21世紀という新たな時代を迎え、私たちは、すべての人々が互いにその人権を
尊重し、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮できる社会づくりを
目指さなければなりません。こうしたことから、本県においては、男女共同参画
社会の実現に向け、国際社会や国内の動向と協調しつつ、積極的に取組みを進め
てきました。
 平成13年(2001年) 3月に、国の男女共同参画基本計画に基づき、男女共同参
画推進に関する基本的な取組みの方向と具体的施策を示す「いしかわ男女共同参
画プラン2001」を策定しました。また、同年10月には、男女共同参画社会を実現
するための基本理念を明らかにするとともに施策の基本となる事項を定めた「石
川県男女共同参画推進条例」を制定し、プランと合わせ実現に向けた推進体制を
整えました。
 そうした条例やプランに基づき、県民の意識改革に向けた啓発や女性の登用の
促進などの取組み、さらには、いしかわ女性基金での様々な取組み等を進めて
きた結果、行政や民間事業者の間でも徐々にではあるが、成果の芽が出つつあり
ます。
 しかしながら、今もなお社会の様々な分野で、「夫は仕事・妻は家庭」といっ
た性別による固定的な役割分担を背景とした差別的取扱い、女性の参画や能力の
発揮が十分とはいえない状況、セクシュアル・ハラスメントやDV (ドメスティッ
ク・バイオレンス) など様々な問題が存在しており、男女とも一層の意識改革を
図る取組みが必要であります。
 県が実施した「人権問題に関する県民意識調査」においても、女性の人権尊重
について特に問題があることとしては「家事などを男女が共同して担える社会の
仕組み」が最も多く、「固定的な役割分担意識」、「職場での男女の待遇の違い」
等いろいろな場面において、女性に対する様々な差別や人権侵害があると感じて
います。女性の人権尊重のために必要なこととして、「家庭と職場の両立が容易
になるような就労環境の整備」、「男女が共同して家庭生活や地域活動に携わるよ
うな社会づくり」が求められています。
 今後、社会のあらゆる分野で女性と男性が社会を構成する対等な相手として、
それぞれの個性と能力を十分に発揮し、共に責任を担いながら活躍できるよう、
男女共同参画への条件整備を推進する必要があります。

(2) 施策の方向
 男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、
その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の形成に向けて、
次の施策を推進します。

ア 男女共同参画社会づくりに向けた意識の改革
 本県では、県民の人権についての認識度は高まりつつあるものの、一方では
性別による固定的な役割分担意識などが残っており、引き続き男女共同参画の
必要性について県民の理解と意識啓発を進めていきます。

イ 方針の立案及び決定過程への女性の参画の拡大
女性が社会のあらゆる分野において、方針の立案及び決定過程に参画するこ
とは、女性自身の能力発揮や地位向上のみならず、豊かさを実感できる社会づ
くりに資するものと期待されます。
現在、方針の立案及び決定過程への女性の参画は徐々にではあるが進みつつ
あることから、この流れをさらに確実なものにしていくために、今後とも女性
の社会参画(チャレンジ) を支援するとともに、企業や団体、地域等のトップ
層に対する意識啓発を進めていきます。

ウ 職場・家族・地域における男女共同参画の実現
女性の社会参画が進んでいるものの、地域活動や家庭における家事・育児・
介護等の役割は女性に偏っており、職業生活との両立を難しくしている。
そのため、家庭責任は男女双方にあるという認識のもとに、男女が共に職業
生活と家庭・地域生活を両立することができるよう、職場環境や生活環境の整
備に努めます。

エ 女性の人権が推進・擁護される社会の形成
ドメスティック・バイオレンス(DV) やセクシュアル・ハラスメントなど
は、女性の人権を著しく侵害する行為であり、男女共同参画社会の実現を阻む
要因となっている。このため、DVなどの根絶に向けた取組みや被害女性への
支援を進めていきます。また、男性とは異なる健康上の問題に直面する女性の
生涯を通じた、健康に関する教育や支援に努めます。

オ 国際社会を視野に入れた男女共同参画の推進
世界の中での日本は、国会議員や企業の管理職など、方針の立案及び決定過
程への女性の参画度合いは、他の先進諸国に比べて遅れています。
このため、国際社会を視野に入れ、世界の多様な文化について理解を深める
とともに、男女共同参画の先進諸国の実情を踏まえた取組みを進めていきます。

2 子ども
(1) 現況と課題
 我が国は、急速な経済発展の中で、都市化とその一方の過疎化、核家族化、更
には少子化などが地域や家庭を大きく変容させるとともに、大量のものと情報が
はん濫する社会をつくり出しました。こうした環境の変化は、子どもの身体面、
精神面に大きな影響を与えています。
 家庭においては、養育機能や教育力が低下し、過保護・過干渉や放任、児童虐
待など、子どもの発達を阻害する様々な問題が生じています。
 地域社会においては、異年齢の子どもが集団となって遊ぶ機会が減少する一方
で、室内での一人遊びが増え、人間関係の希薄化や社会性の欠如が指摘されてい
ます。
 学校においては、教師や友人との円滑な人間関係づくりが十分にできず、心の居
場所を見いだせない子どもも見られ、いじめや不登校などの問題が起こっています。
また、少年非行の凶悪化や性の商品化など子どもを巡る問題が深刻化していま
す。
 本県においては、平成17年(2005年) に「いしかわエンゼルプラン2005」を策
定し、様々な方向から子育てに対する支援策に取組んでおり、また、教育の分野
では、社会全体で心豊かでたくましく生きる子どもを育成するため、市町、民間
団体等との連携により、学校・家庭・地域社会が一体となった「心の教育」の取
組みを推進しています。
 県が実施した「人権問題に関する県民意識調査」においても、子どもの人権尊
重に関する問題は「いじめ」が最も多く、「家庭での虐待」、「成績や学歴だけで
判断」等いろいろな場面において、子どもに対する様々な差別や人権侵害がある
と感じています。子どもの人権を守るために必要なこととしては「地域の教育力
を回復」、「親の家庭でのしつけや教育力の向上」、「子どもの個性や自主性を尊重
する社会づくり」が求められています。
 今後、更に、子どもを巡る問題の解決に向けた支援体制の充実や子どもの内面
に響き、発達や成長を促す教育内容の工夫、地域社会や関係機関との連携による
人権の尊重に向けた取組みを推進する必要があります。

(2) 施策の方向
 子どもを巡る諸課題を解決するためには、福祉・保健・教育・警察などの関係
機関が家庭や地域と連携し、子どもの人権が尊重され、保護されるような環境を
つくっていくことが必要であり、平成17年(2005年) 3月に策定した「いしかわ
エンゼルプラン2005」等の計画に基づき、次の施策を推進します。

ア 「児童の権利に関する条約」の理念は、子どもの健全な育成を保障する社会
づくりのために重要であり、内容の周知などの普及啓発に努めます。

イ 学校においては、一人ひとりが持っている人格を認め、人権を尊重し、子ど
もが安心して楽しく学ぶことのできる学校づくりに努めます。また、家庭にお
いても、子どもの主体者としての権利が認められるよう、啓発に努めます。

ウ いじめの問題は、子どもの人権にかかわる重大な問題であります。問題解決
のため、教員に対する研修を充実するとともに、児童生徒や保護者などが相談
できる体制を充実し、関係機関との連携に努めます。

エ 児童虐待は、人格形成期にある子どもに大きな影響を与えるものです。この
問題の解決のためには、早期発見、早期援助等の迅速な対応が必要であるため、
関係機関の一層の連携と支援体制の充実に努めます。

オ 児童買春、児童ポルノといった児童の商業的性的搾取の防止等に積極的に取
組みます。

カ 次代を担う子どもが健やかに育成されるとともに、子育てに喜びや楽しみを
持ち、安心して子どもを生み育てられる環境づくりに努めます。

キ 「人権を大切にする心を育てる」ため、保育所保育指針等を参考として児童
の心身の発達、家庭や地域の実情に応じた適切な保育・教育を行います。

ク 心豊かに国際社会でたくましく生きる青少年の健全育成は極めて重要であり、
自然体験や社会体験、世代間交流などの様々な活動を通じて、青少年が社会の
一員としての自覚と責任を体得し、家庭や地域社会における役割を果たしてい
くための支援に努めます。

ケ 犯罪等の被害に遭った子どもの人権を守る観点から、カウンセリング等によ
る支援を行うとともに、少年の福祉を害する犯罪の取締りを推進し、被害少年
の救出・保護を図ります。

3 高齢者
(1) 現況と課題
 我が国は、生活水準の向上、保健医療技術の進歩により平均寿命が著しく伸長
し、今や人生80年代を迎えて世界でも有数の長寿国となっています。国の推計に
よれば、65歳以上人口の割合(高齢化率) は平成27年(2015年) には高齢化が
26.0パーセント、平成62年(2050年) には35.7パーセントに達し、国民の約3人
に1人が65歳以上の高齢者という本格的な高齢社会の到来が見込まれています。
 これが本県においては、平成16年(2004年) 4月現在、65歳以上人口の割合が
20パーセントを超えるなど本格的な高齢社会を先取りする形となっています。
 また高齢者は、若年世代に比べて当然のことながら病気になる確率が高く、特
に75歳以上の後期高齢者層では寝たきりや認知症の出現率も高いことから、後期
高齢者人口の増加は要介護高齢者の増加をもたらし、今後さらに増え続けるもの
と予想されています。
 さらに、戦後の社会変動により家族制度の変革や核家族が近代家族であるとい
う意識などの変化によって、家族介護機能の低下や独居老人世帯、高齢者夫婦世
帯が大幅に増加し、高齢者の社会的孤立や生活不安を招くなど、高齢者を取り巻
く社会環境も大きく変化してきています。
 こうした状況の中、国では社会福祉制度の在り方を抜本的に見直すこととし、
これまでのような限られた者の保護・救済にとどまらず、国民全体を対象に、そ
の生活の安定を支える役割を果たす新たな社会福祉制度の枠組みを検討していま
す。
 特に、平成12年度から導入された介護保険制度は、国民の老後の最大の不安要
因となっている高齢者の介護を社会全体で支えるものであり、21世紀の高齢社会
における社会保障制度の在り方を考える上で、一つの礎石となっているものであ
ります。
 高齢者は年齢的にみても60歳代と80歳代とではほぼ一世代の年齢差があること
から健康水準や体力の差のみならず、ものの価値観や人生観も異なるほか、収入、
資産、家族環境などの個人差も大きく、単に高齢者を「弱者」として一律にとら
える画一的な見方には問題があり、介護保険制度の円滑な運用と併せて、高齢者
層の多様性に対応できる社会環境の整備が重要であります。
 県が実施した「人権問題に関する県民意識調査」においても、高齢者の人権尊
重に関する問題としては「働ける能力を発揮する機会が少ない」が最も多く、
「高齢者を邪魔者扱いする」、「経済的に自立が困難」等いろいろな場面において、
高齢者に対する様々な差別や人権侵害があると感じています。高齢者の人権を守
るために必要なこととしては「高齢者の就業機会を増やす」、「年金や福祉の充実」、
「高齢者への尊敬や感謝の気持ちを育てる」が求められております。
 高齢者の身体的・精神的自立を社会全体で支えるシステムの構築が、高齢社会
への急務の課題であります。
 
(2) 施策の方向
 高齢者の人権が尊重され、日々生きがいをもって充実した生活を送ることがで
き、長生きしてよかったと実感できる、豊かで活力のある長寿社会づくりの実現
に向けて、次の施策を推進します。

ア 高齢者が社会の重要な一員として、住み慣れた地域や家庭で安心して生活で
きるよう、「石川県バリアフリー社会の推進に関する条例」に基づき、物理的・
心理的な障壁の除去に向け、県民への普及啓発の充実を図るとともに、バリア
フリー社会の基盤づくりに向けた各種施策の展開を図ります。

イ 来るべき高齢社会を担う子どもたちの高齢者の福祉についての関心と理解を
深めるため、学校教育において福祉教育を推進するよう努めます。

ウ 高齢者と他の世代との相互理解や連帯感を深めるため、世代間交流の機会の
充実に努めます。

エ できる限り住み慣れた地域や家庭で、その能力に応じて自立した生活を送る
ことができるよう介護保険における介護サービス基盤の充実を図るとともに、
制度の適正な運営に努めます。

オ 介護保険の要介護認定を受けていない高齢者も安心して暮らせるよう、高齢
者の生活支援や家族の介護支援、介護予防、生きがい活動の支援を図ります。

カ 高齢者が長年にわたり培ってきた知識・経験などが活用されるよう、就労機
会の確保や元気な高齢者が支援を要する高齢者を支える高齢者福祉ボランティ
アへの参加、シルバー人材センターの充実などの社会参加を通じた生涯現役の
取組みへの支援を図ります。

キ 高齢者に対する虐待や人権侵害の発生を防止するため、広報誌などにより人
権尊重の意識の高揚を図るための啓発を行うとともに、市町における介護や日
常生活に関する相談窓口の整備を図り、併せて判断能力が十分でない高齢者の
権利擁護事業の充実と成年後見制度との連携を図ります。

4 障害者
(1) 現況と課題
 障害のある人を巡っては、交通、建物等による物理的なバリア(障壁)、点字や
手話サービスの欠如等による情報のバリア、誤解、偏見などの心のバリアなどの
問題があります。
 本県においては、平成8年(1996年) 「石川県障害者計画-ともに生きる石川
障害者プラン」を策定し、県民が障害のある人と共に生き、自立と社会参加の促
進を目指した施策の充実に取組んでまいりました。
 しかし、その後の障害のある人を取り巻く社会情勢の変化や障害のある人のニー
ズの多様化などを踏まえ、平成14年(2002年) 3月に「いしかわ障害者プラン
2002」として新たな行動計画を策定しました。このプランに基づき、県としての
障害者福祉施策を総合的、計画的に推進しております。
 県が実施した「人権問題に関する県民意識調査」においても、障害のある人の
人権尊重に関する問題としては「特別視する心の壁」が最も多く、「人々の認識
の欠如」、「就労の機会が少ない」等いろいろな場面において、障害のある人に対
する様々な差別や人権侵害があると感じています。障害のある人の人権を守るた
めに必要なこととしては「建物の設備・公共交通機関の改善」、「就労機会の確保」、
「差別をなくす教育・学習の充実」が求められております。
 また、障害のある人もない人も、高齢者も、すべての人が個人として尊重され、
あらゆる分野の活動に平等に参加することのできるバリアフリー社会の実現のた
め、平成9年(1997年) 3月「石川県バリアフリー社会の推進に関する条例」を
制定し、教育、福祉、建築、経済、交通など幅広い観点からハード・ソフト両面
にわたり各種の施策を総合的に推進してまいりました。さらに平成15年(2003年)
10月、いわゆるハートビル法の改正を踏まえ、条例の改正を行い、より一層のバ
リアフリー化に向けた環境整備の推進に取組んでいるところです。

(2) 施策の方向
 県の障害者プランは、障害のある人もない人も共に社会、経済、文化等の幅広
い分野にわたって活動することが本来のあり方であるというノーマライゼーショ
ンの理念と障害のある人がライフステージのすべての段階において、その人がもっ
ている身体的、精神的、社会的能力を発揮し、その自立と社会参加の促進を目指
すリハビリテーションを基本理念としています。
 「いしかわ障害者プラン2002」では、障害福祉施策を4つの施策体系の大項目
としました。1点目は自立と社会参加を促進するために、2点目は安心して地域
で生活するために、3点目は思いやりと助け合いの心を育むために、そして4点
目は安全でやさしいまちづくりのためにで、この4つの視点で施策を推進してい
くこととしています。
 この中で、障害のある人の人権尊重に関しては、次の施策を推進していきます。

ア 県民に対し、障害のある人に対する理解を深め、共に生きる心をもって障害
のある人に接するよう啓発・広報に努めます。

イ 障害のある人を特別視する心の壁(意識) を取り除くため、幼少期からの障
害のある人を正しく理解する教育の充実や、障害のある子どもとない子どもの
相互のふれあいを促進します。

ウ 障害のある人が社会活動をしやすくするため、福祉機器の充実や建築物、道
路、交通機関などのバリアフリー化を推進します。

エ 障害のある人が健康で生きがいのある生活を創造するため、スポーツ・レク
リエーション、文化活動への参加を積極的に推進します。

オ 障害のある人が福祉サービスを利用しやすくするため、身近なところで相談
が受けられる体制や、苦情の解決、人権擁護の体制を充実します。

カ 障害のある人の自立を進めるため、就労の支援や雇用の推進を図ります。

5 同和問題
(1) 現況と課題
 同和問題は、日本固有の人権問題であり、憲法が保障する基本的人権の侵害に
かかわる深刻かつ重大な社会問題であります。
 人権擁護推進審議会答申は、同和問題に関し、「同和問題に関する国民の差別
意識は、昭和40年(1965年) の同和対策審議会答申以降の同和教育及び啓発活動
の推進等により着実に解消に向けて進んでいるが、結婚問題を中心に地域により
程度の差はあるものの依然として根深く存在している。就職に際しての差別の問
題や同和関係者に対する差別発言、差別落書などの問題もある」としています。
最近では、同和問題解決の大きな阻害要因となっている、いわゆる「えせ同和行
為」と思われる事例も後を断たない状況であります。
 本県においても、昭和56年(1981年) に同和対策室を設置して以来、同和問題
を人権擁護施策の重要な柱としてとらえ、施策の充実を図るとともに、人権週間
(毎年12月4日~10日) を始めあらゆる機会を通じて、人権同和問題に関する県
民の正しい理解と認識を深めるため、学校での人権教育のほか研修会・講演会・
映画会の開催、マスメディアを活用した啓発、啓発資料の配布などの各種事業を
国、市町、関係団体連携のもと積極的に実施しています。
 特に、8月を人権同和問題啓発推進月間として、同和問題を中心とした研修会
の開催、映画会の開催、人権啓発フェスティバルの開催、啓発資料の配布などの
啓発活動を重点的に行っています。
 この結果、県民の同和問題に対する理解は着実に深まってきています。しかし
ながら、差別事象の発生が見られるなど、県民一人ひとりに同和問題に対する正
しい理解が、いまだ十分に定着したとは言えない状況であります。同和問題は時
間的経過による社会進化に伴い、いつとはなく解消するというものではありませ
ん。
 県が実施した「人権問題に関する県民意識調査」においても、同和問題の認知
状況は約3分の2の人が「知っている」と答え、また、認知した方法については、
「啓発・教育」が最も多く、次いで「身内」、「仲間」の順となっており、年代別
では、若い年代ほど「啓発・教育」が多い反面、年代が高くなるほど「身内、仲
間」が多くなっていることから、同和問題についての正しい理解と認識が必ずし
も十分に定着しているとは言えない側面もあります。
 本県では、県内にも差別が存在するという基本的な認識のもとに同和行政を進
めており、これまでの経緯や啓発活動の成果を踏まえ、県民の理解を一層深める
ため、更に人権教育・啓発の充実に努めます。

(2) 施策の方向
 同和問題に関する差別意識の解消を図るに当たっては、県民一人ひとりが同和
問題を自らの問題としてとらえることが重要であります。同和問題を人権問題の
重要な柱としてとらえ、今後とも、その正しい理解に向けて、次の施策を推進し
ます。

ア 差別意識の解消のために同和教育、情報提供、啓発活動の果たす役割は極め
て大きく、更にこれらの取組みの充実を図ります。

イ 同和教育の指導体制を充実するため、研修機会の拡充を図るとともに、研修
内容を充実し、指導者等の養成を図ります。

ウ 学校の人権教育や職場の人権同和教育に加え、公民館等において高齢者等を
対象としたミニ講演会の開催など、一層の意識改革を図ります。

エ 人権同和問題啓発推進月間を中心とした行事の充実を図ります。

オ 同和問題を存続させる要因ともなっている根拠のない、不合理な社会慣行を
見直すための啓発を強化します。

カ 地域住民が自ら意思表示できる環境づくりに努めます。

キ えせ同和行為に対しては、同和問題を正しく理解することが何よりも重要で
あり、その排除に向けて関係機関との連携を密にし、一層の啓発に努めます。

6 外国人
(1) 現況と課題
 本県においては、「世界に開かれた文化のくにづくり」を進めていますが、国
際交流や国際協力を通じて、お互いの文化や社会習慣、価値観などの同質性や異
質性を正しく認識し、それらを認め合いながら相互の理解を深め、また、相互に
学び合うことにより、より豊かな地域づくりを進めています。
 しかしながら、言語、文化、社会習慣等の違いについて、必ずしも相互理解が
十分でないため、これに起因する誤解や偏見などが指摘されています。
 県が実施した「人権問題に関する県民意識調査」においても、在日外国人の人
権尊重について特に問題があると思うことは「外国人についての認識や理解が不
十分」が最も多く、「地域社会で受け入れられにくい」、「就職・仕事面で不利」、
「保障制度が適用されない」等いろいろな場面において、在日外国人に対する様々
な差別や人権侵害があると感じています。在日外国人の人権を守るために必要な
こととしては「文化や生活習慣などへの理解を深める」、「就労の場の確保」、「社
会保障の強化」が求められております。
 国際化時代を迎え、今後更に外国人居住者が増加することが予想される中、外
国人問題に対する一層の意識改革を図る取組みが必要であります。

○ 本県の外国人登録者数9,420人(平成16年(2004年) 末)
(国籍別内訳)
中国3,113人
韓国・朝鮮2,301人
ブラジル1,454人
フィリピン697人
インドネシア297人
米国229人
その他1,329人

(2) 施策の方向
 県民一人ひとりが異なる文化や考え方を十分理解し、外国人を、共に暮らす県
民として受け入れ、共生していく社会を実現するため、次の施策を推進します。

ア 多言語、多文化社会に対応した地域づくりのため作成している外国語による
生活ガイドブックや県ホームページ等の内容の充実に努めるとともに、外国人
に対する差別意識を解消するための啓発活動に努めます。

イ 外国人の生活・法律問題等の解決のための相談体制の充実に努めます。

ウ 道路や公共施設などにおける案内表記への外国語併記など、外国人の生活に
配慮したまちづくりを進めます。

エ 国際社会を正しく理解するため、小・中学校などにおける国際理解教育等の
充実に努めます。

オ 公的機関や企業などにおける外国語・外国文化の研修の開催に対する支援に
努め、国際感覚豊かな人材の育成を図ります。

カ 多文化理解のための草の根活動を支援するため、国際交流員(CIR) 等の
利活用を図ります。

キ 財団法人石川県国際交流協会などが実施する多文化を理解するための活動に
対し、講師の派遣、教材・情報の提供等の支援を行うほか、国際交流ボランティ
アへの研修に努めるなど、サポート体制の充実を図ります。

ク 市町レベルでの国際交流活動の推進や地域住民レベルでの国際理解の促進を
図るため、市町国際化協会や民間交流団体の活動を支援します。

7 感染症患者等(HIV、ハンセン病等)
(1) 現況と課題
 我が国においては、今なお、様々な病気についての正しい知識と理解が十分に
普及しているとは言えません。患者や家族の中には、治療費の負担だけでなく、
特に、エイズやハンセン病を始めとした感染症に対する人々の誤った認識や理解
不足による偏見や差別が今なお見受けられ、肉体的、精神的な負担が大きくなっ
ています。
 HIV感染症は、わが国では昭和60年(1985年)、安全を怠った非加熱性血液
製剤によるHIV感染被害である薬害事象によりエイズ患者が表面化しました。
HIV (ヒト免疫不全ウイルス) は非常に感染しにくいウイルスですが、当時、
簡単に感染し、発病すれば必ず死亡するという誤った知識が広がり、患者や感染
者等への差別が発生しました。入浴や食器の共用など通常の社会生活で感染する
ことはありません。何らかの原因により、万一感染しても、医学の進歩によりエ
イズの発症を遅らせたり、延命を図る治療方法が確立されています。しかしなが
ら、今でも人目が気になるということでエイズ相談や検査を受けられないことや、
職場に病名がもれ、差別を受けたり、職場を追われてしまうということを恐れて、
感染していることや患者であることを隠さなければという状況があります。
 ハンセン病は、今日では治療法が確立している感染症でありますが、わが国で
は特殊な病気として扱われ、「らい予防法」が明治40年(1908年) に制定されて
以来、施設入所を強制する隔離政策がとられ、患者は行動や住居、職業選択、学
問、結婚の自由など人間としての権利を奪われてきました。さらに、強い偏見や
差別は患者だけでなく家族にまで及びました。この強制隔離政策は、その後治療
薬ができた後も、「らい予防法」が廃止された平成8年(1996年) まで続けられ
ました。
 しかし、これまでの政策や病気に対する誤った知識により、未だに偏見が存在
しています。また、療養所入所者の多くが、長い間の隔離により家族や親族との
関係を絶たれていたり、高齢化や病気が完治した後も障害が残っていることによ
り、療養所に残らざるを得ず、社会復帰が非常に困難な状況にあります。
 このように、さまざまな病気をめぐる状況は、その時代の医療水準や社会環境
により変化するものですが、これらの患者の方々の置かれている状況を踏まえ、
患者の人権に配慮した対応が求められています。
 県が実施した「人権問題に関する県民意識調査」においても、感染症患者等の
人権尊重に関する問題としては「理解や認識が不十分」が最も多く、「世間から
の好奇や偏見の目」等いろいろな場面において、感染症患者に対する様々な差別
や人権侵害があると感じています。
 このような感染症に対する誤解をなくすためには、患者等の人権にも配慮した
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の立法趣旨を踏ま
え、広く県民に正しい情報を提供するなど今後とも啓発に努める必要があります。

(2) 施策の方向
 エイズ、ハンセン病等については、発生の予防と患者等の人権の尊重の両立を
基本とし、個人の意思や人権に配慮し、感染症患者、治癒した人などに対する偏
見や差別をなくし、人としての尊厳と自由を認め合い、安心して生活できる社会
の実現に向けて、次の施策を推進します。

ア 感染症に対する正しい知識の普及と偏見や差別をなくすための啓発活動を充
実します。

イ 学校教育において、感染症に対する正しい知識や認識を深める教育を推進す
るとともに、教職員の研修を充実します。また、医療関係者に対して、感染症
患者、治癒した人などのプライバシーを保護するための研修を充実します。

ウ エイズ、ハンセン病等の感染症患者、治癒した人などが自立した社会生活を
送れるよう、関係機関と連携して事業主の理解を求め、職場の確保などに努め
ます。また、人権に配慮した治療体制の整備と適切な相談体制の充実に努めま
す。

8 公正な採用選考への取組み
(1) 現状と課題
 就職は一人の人間にとって生活基盤の安定のためだけではなく、自己表現を図
り、豊かで人間らしい社会生活を営むうえで極めて重要な意義を有しています。
 この一人ひとりの人生に大きな影響を与える就職にあたって、本人の適性と能
力以外の要素を考慮して採否を決定することは、憲法の理念に反することはもち
ろん、企業のモラルとしても許されることではありません。
 しかしながら、今なお一部の事業所において、個人のプライバシーを侵害する
恐れがある身元調査や面接試験における不適切な質問など、応募者本人の適性と
能力に基づかない不合理な採用選考が見受けられ、基本的人権を侵害するような
事象が起きています。
 このため、今後さらに、企業が社会的責任を自覚し、同和問題などの人権問題
の重要性を十分理解したうえで、差別のない公正な採用選考が行われるよう、な
お一層啓発に努める必要があります。

(2) 施策の方向
 県民の職業選択の自由、就職の機会均等を確保し、雇用の促進を図るため、企
業の公正な採用選考システムの確立が図られるよう、次の施策を推進します。
 公共職業安定所が実施する企業のトップクラス並びに公正採用選考人権啓発推
進員に対する研修会等において、同和問題など人権問題の正しい理解と認識を深
める啓発パンフレットの配布を行うなど、関係機関との連携を密にし、公正な採
用選考のための人権啓発に努めます。

9 インターネットによる人権侵害と個人情報の保護
 情報産業の発達に伴って、他人に知られたくない個人の私生活上の秘密が、自分
の知らない間に集められ、利用される心配が広がってきたことから、私生活を他人
にのぞかれず、秘密にしておきたいという「プライバシーの権利」が主張されるよ
うになりました。今日、個人情報の保護は、プライバシー保護の観点から、国民一
人ひとりに保障されるべき基本的人権の問題であるとの認識が重要です。
 近年、情報化社会の急速な進展の中で、企業や行政機関などが保有する顧客情報
や住民情報などの個人情報が、大量に流出する事件が相次いで発生しています。ま
た、インターネットの急速な普及を背景に、ホームページや電子掲示板の匿名性・
拡散性を利用して、他人を誹謗中傷する表現や差別を助長する表現等によって、個
人や団体にとって有害な情報を掲載するなどの人権侵害も増加しています。
 このことから、国において、平成14年(2002年) にいわゆる「プロバイダー責任
制限法」を制定し、その防止への取組みを行っています。また、平成15年(2003年)
には「個人情報保護法」等を制定し、行政機関や企業に対して個人情報の適正な取
り扱いを義務づけています。
 本県においても、県が保有する個人情報の適正な取扱いを確保するための基本的
事項や、県が保有する個人情報の開示・訂正・利用停止を求める権利、いわゆる個
人情報のコントロール権を定めた「石川県個人情報保護条例」を平成15年(2003年)
3月に制定し、平成15年7月から施行しています。これらの適正な運用や遵守によ
り、個人の権利利益の保護を図っています。
 一方、国や地方公共団体の動きについて正確な情報がなければ主権者としての判
断ができないことから確認された権利が「知る権利」です。
 本県では、県が保有する情報を広く県民に公開するとともに、県が行う諸活動を
県民に「説明する責務」を果たすため、平成13年(2001年) 3月に「石川県情報公
開条例」を全部改正し、この条例に基づき県民の「知る権利」を尊重することとし
ています。
 また、この情報公開にあたっては、個人の正当な権利利益を侵害することのない
よう、個人に関する情報について最大限の保護を行っています。

10 犯罪被害者等
 犯罪被害者については、基本的な「個人の尊厳」や「プライバシー」などが尊重
されなければならないことは当然であり、犯罪被害者は「可哀想だから」保護され
るのではなく、基本的人権の尊重という観点から当然支援される立場にあります。
犯罪による被害は、生命、身体、財産上の直接的な被害だけでなく、事件に遭った
ことによる精神的ショック、失職等による経済的困窮、無責任なうわさ話等による
ストレス・不快感など、被害後に生じる「二次的被害」に苦しめられる場合もあり
ます。犯罪被害者やその家族の人権を侵害されるケースはさまざまですが、被害者
の人権の尊重を基本とした、被害者が求める各種支援を推進する必要があります。
 犯罪被害者に対する支援のためには、まず、被害の救済は被害者の人権に基づく
ものであり、誰もが被害者になる可能性があるとの認識に立って、被害者を社会全
体で支え合うことができる社会づくりを推進する必要があります。
 このため、犯罪被害者の現状や支援の必要性について、県民の認識を深めるとと
もに、犯罪被害者が可能な限り被害を回復し、苦しみから立ち直り、元の生活に戻
ることができるよう被害者相談・支援活動を効果的に推進します。さらに再被害防
止措置や重大な犯罪の未然防止措置にも取組みます。

11 その他の人権
 前述の重点的に取組むべき人権課題のほかにも様々な人権問題が存在します。

① 刑を終えて出所した人など
 刑を終えて出所した人は、社会の根強い偏見などのため、住宅の確保や就職な
ど基本的な生活基盤を築くことさえ難しく、本人に真摯な更生意欲があったとし
ても、その社会復帰は厳しい状況にあります。刑を終えて出所した本人だけでな
く、その家族も社会からの偏見や差別を受けることがあります。刑を終えて出所
した人が真摯に更生し、地域社会の一員として生活を営むためには、本人の更生
意欲はもちろん、地域社会など周囲の人々の理解と協力が欠かせません。そのた
め、刑を終えて出所した人に対する偏見や差別意識を解消するための啓発活動を
進めます。

② ホームレス(野宿生活者)
 失業や家庭問題等さまざまな要因により、自立の意思がありながら、特定の住
居を持たずに野宿生活を余儀なくされている人たちがいます。ホームレスの中に
は衛生状況が悪い、十分な食事をとることができないなど、憲法で保障された健
康で文化的な生活をおくることができない人もいます。そのため、福祉事務所等
の関係機関と連携し、生活指導に取組むとともに、ホームレスに対する偏見や差
別意識の解消にも努めます。

③ 性同一性障害者
 性同一性障害者は、からだの性とこころの性が一致しないために自分自身に対
し強い違和感を持つと同時に、社会の無理解や偏見あるいは日常生活のさまざま
な場面で奇異な目で見られることで、強い精神的な負担を受けています。就職を
はじめ日常生活の中で、自認する性での社会参加が難しい状況にあるだけでなく、
偏見により嫌がらせや侮蔑的な言動をされるなどの問題があります。性別再判定
手術を受けた人については、家庭裁判所の審判によって性別の変更が認められる
ことになりました。
 性同一性障害者や障害に対する正しい認識が深まるよう啓発活動の推進に努め、
偏見のない社会づくりを進めていきます。

 その他にも、アイヌの人々に対する民族としての歴史、文化、伝統に関する知識
や理解の不足等から生じる偏見・差別の問題などがあります。
また、伝統的な風習や慣習の中には、合理的な理由がないにもかかわらず、日常
生活に深く浸透しているものもあり、思込みや先入観が無意識のうちに偏見・差別
を植え付けてしまうことがあります。
 これらの人権問題についても、県民一人ひとりが個々の問題に関して正しく理解
し、物事を合理的に判断することにより、その原因となっている偏見や差別などが
解消され、人権が尊重されるよう人権教育・啓発を一層推進します。
 また、今後新たに生じる人権問題についても、それぞれの課題の状況に応じた取
組みを行っていきます。


第7章 計画の推進

1 推進体制等
 本県では、人権行政を県政の重要な柱と位置づけ、同和対策室が核となって総合
的に施策の推進を図ることとします。
人権施策の推進にあたっては、関係部局がこの行動計画を踏まえ、諸施策を積極
的に推進します。なお全庁的な推進組織として「石川県人権施策推進会議」を設置
し、関係部局の緊密な連携を図ることにより、総合的かつ効果的な推進に努めます。
(1)国、市町、関係機関などと十分連携しながら総合的に推進します。
(2)この計画について、様々な場を通じて積極的に周知します。
(3)この計画の推進状況のフォローアップを行い、その結果を今後の施策の推進に
反映します。
(4)市町を始め県内の公的団体、マスメディア、企業、地域等で活動する民間の諸
団体においてもそれぞれの分野において、この計画の趣旨に沿った自主的・積極
的な取組みを展開することを期待します。
 また、この計画の推進に当たっては、これらの団体等の取組みや意見等に配慮
します。

2 県民の参加及び国等との連携
 人権教育を県民に広く推進するためには、国、市町、民間団体等とそれぞれの役
割を踏まえた連携を図ることが重要であります。石川県人権啓発活動ネットワーク
協議会等を通じて、人権関連情報、指導者・教材等の情報の共有化を進めるととも
に、それぞれの役割に応じた人権教育の機会を提供します。

(1) 県民の参加
 人権尊重社会の担い手は県民一人ひとりであります。人権尊重社会を確立する
ためには、県民が人権問題は自らの問題であるとの認識のもと、各種人権関係行
事に参加することが期待されます。そこで、県民への情報提供やこの計画の公表
を通じて県民が幅広く情報を共有し、意見を交換するなど、県民が各種人権関係
行事に積極的に参加できる取組みを推進します。

(2) 国との連携
 国においては、人権教育・人権啓発に関する基本計画に掲げられた諸施策が着
実に推進されています。本県としても、国の人権関連施策の動向に留意しつつ、
本県の実情に即した人権教育を効果的に推進するため、法務局など国の関係機関
との連携を一層密にしていきます。また、人権擁護制度の周知普及、人権擁護委
員活動への支援など国が実施する各種人権関連施策に一層協力します。

(3) 市町との連携
 市町は、地域に密着した地方公共団体として、住民との接点が多く、様々なか
かわりを有しているので、地域の実情を踏まえたきめ細かな人権教育を推進する
ことができます。
 このように、市町の役割には非常に大きいものがあります。「石川県人権同和
行政推進連絡協議会」などの機関を通じ、市町との連携を密にし、積極的に情報
を提供するなどして人権教育への取組みを促進します。

(4) 民間団体等との連携
 人権教育の推進は、行政のみで対応できるものではなく、人権尊重の気運を盛
り上げていくためには社会全体での取組みが必要であり、民間団体等における積
極的な取組みが期待されています。
 民間団体等との連携を図るとともに、その人権教育の取組みの充実を促します。
また、人権教育を支援するため、必要に応じて講師の派遣、教材・情報の提供、
助言などを行います。

3 指導者の養成と人材の活用
(1) 指導者の養成
 県民の人権尊重意識を更に高めるためには、県民が日常生活の身近な学習の場
などあらゆる機会を通じて人権教育に広く参加できる環境が不可欠であり、その
ためには、人権教育を推進する上でその中核的な役割を担う指導者を広く養成す
ることが急務であります。
 研修会等を開催し、地域、学校、企業などで指導するオピニオンリーダーの養
成や効果的な人権の研修・啓発を企画できる能力を備えたプランナー等の養成に
努めます。
 また、県民の身近なところで、活躍する指導者に対する継続的な情報提供を行
い、その活動を支援したり、民生委員・児童委員など地域住民と行政の接点にあ
る関係者に研修会等への参加を働きかけます。
 国、財団法人人権教育啓発推進センターが実施する指導者養成のための研修は、
大いに活用します。

(2) 人材の活用
 県民に広く人権教育を推進するため、人権に関し幅広い識見を有する人材を多
方面から積極的に発掘し、活用を図っていきます。
 保育所・幼稚園、学校の教育においても、幼児・児童・生徒が発達段階に応じ
て人権感覚を高め、豊かな心を培うため、ボランティア活動や体験活動、高齢者
や障害者等との交流などに外部から豊かな経験を有する人材の参加を求めます。
 社会教育においては、充実した研修会、教室、講座等が開催できるよう、講師
に関する情報を提供します。

4 教材・学習プログラムの開発等
(1) 教材
 人権教育を効果的に推進するためには、身近な人権問題に気づかせるよう学習
者の実態や地域に根ざした教材を整備する必要があります。そこで、これに配慮
しつつ、学習者の習熟度、意識、ニーズ等に対応した、また、参加体験型学習に
対応した新たな教材の開発に努めます。
 特に、保育所・幼稚園、学校の教育においては、幼児・児童・生徒が生命の大
切さに気づき、豊かな心情を身に付けるなど、人権尊重意識が感性としてはぐく
まれることが重要であり、発達段階に応じた教材の開発、改善等に努めます。
 また、社会教育や職場内教育、研修等においては、学習者の生涯にわたる学習
機会に対応した教材の開発に努めます。

(2) 学習プログラム
 人権教育とは、単に知識を得るだけではなく、自ら理解を深めて、日常生活の
中で実践できるものでなければなりません。そのためには、子どもの頃から動物、
植物などの自然と接する中で生命の大切さや優しさを身に付ける必要があります。
 そこで、学習者が主体的に参加でき、参加者自らの身近な体験を通して学び合
うことができる環境にも配慮した参加体験型学習等の手法を取り入れた学習プロ
グラムの開発に努めます。

5 普及啓発
普及啓発については、これまでも様々な方法で実施してきましたが、県民一人ひ
とりが人権尊重の理念を真に自分のものとして身に付けるためには、今後とも地道
にねばり強く啓発を続けていく必要があります。

(1) 啓発の内容
啓発に当たっては、人権尊重の理念を訴えることも重要でありますが、県民の
理解と共感を得るために、これと併せて身近な人権問題に即し、県民に親しみや
すく分かりやすいテーマや表現を用いるなど、創意工夫に努めます。
子どもに対する啓発は、その発達段階に応じた手法を選択します。

(2) マスメディアの活用
 人権教育を効果的に推進する上で、世論形成に大きな影響力を持っているマス
メディアが果たす役割には極めて大きなものがあります。
 マスメディアに対しては、県民が必要としている情報を適時に提供するととも
に、様々な形で人権問題や人権教育が取り上げられるよう、積極的に働きかけま
す。
 新聞、テレビ、ラジオ等を活用するほか、近年、急速に普及しているインター
ネットなどの新たなマスメディアも積極的に活用します。

(3) 印刷媒体の活用
 広報誌、啓発冊子、パンフレット、ちらし、ポスターなどの印刷媒体は、それ
ぞれの特性に応じ、また、県民の意識、ニーズ等に十分配慮したものとします。
 表現方法は、イラスト、漫画等も用い、感性に訴えるものとなるよう、一層内
容の充実に努めます。

(4) イベント方式の活用
 多くの県民の主体的な参加を促すため、イベントなど参加体験型の手法を取り
入れます。県民が身近な問題として、差別や人権について自由に語り、学ぶこと
のできる明るく、親しみの持てる内容となるよう創意工夫に努めます。

6 計画の見直し
 この計画は、国の動向、社会情勢の変化などによる新たな課題に対応するため、
必要に応じて適宜見直しを行います。


用語解説

あ行

・いしかわエンゼルプラン2005
 次代を担ういしかわの子どもたちが健やかに生まれ育つ環境づくりを目指し、平
成17年(2005年) に策定した計画。子育てや子どもの育ちを地域社会全体で支えて
いくことを基本としており、次世代育成支援対策推進法に基づく県の「行動計画」
でもあります。計画の目標年次は平成21年度(2009年度)。

・石川県障害者計画
 障害者基本法に基づき、障害者の自立と社会参加の一層の促進を目指し、平成8
年(1996年) に策定した県の障害者施策に関する総合的な計画。

・いしかわ障害者プラン2002
 障害のある人を取り巻く社会経済情勢の変化や障害のある人の新たなニーズを踏
まえ、平成14年(2002年) に石川県障害者計画を改定した行動計画。

・石川県人権啓発活動ネットワーク協議会
 県内における人権啓発活動にかかわる機関等が連携・協力関係を確立し、人権啓
発活動を総合的かつ効果的に推進することを目的に平成10年(1998年) に設置した
組織。データベースを共同利用するとともに、啓発計画の共同策定・情報交換を行
い、ホームページの開設などを行います。
 金沢地方法務局、県、金沢市及び県人権擁護委員連合会で構成。

・石川県人権啓発推進会議
 同和対策審議会答申の精神を尊重し、同和問題の正しい理解と認識を深めるため、
県内の公益的団体等を構成員に昭和61年(1986年)、「石川県同和問題啓発推進会議」
として設立しましたが、平成4年(1992年)、人権全般について、その尊重意識の
普及高揚を図るため、各種民間団体、行政機関等が連携を保ち、総合的かつ効果的
な啓発を推進することを目的に拡充再編した組織。
 公民館、青年団、女性団体等の各種団体、県、市長会、町長会、市町教育委員会
連合会、県人権擁護委員連合会など幅広いメンバーで構成。

・石川県人権同和行政推進連絡協議会
 人権同和問題の早期解決を期し、県と市町が連携を密にし、人権同和行政の実効
ある推進を図ることを目的に平成9年(1997年) に設置した組織。県と市町の人権
同和行政担当課長・室長で構成。

・石川県バリアフリー社会の推進に関する条例
 平成9年(1997年) を「バリアフリー元年」と位置づけ、障害のある人もない人
も、高齢者も若者も、すべての県民が共に健康で生きがいを持って生活し、あらゆ
る分野の社会活動に平等に参加することのできるバリアフリー社会(障壁のない社
会) づくりを推進することを目的に、同年に制定した条例。

・いしかわ男女共同参画プラン2001
 「いしかわ男女共同参画プラン2001」は、男女共同参画社会基本法に基づき策定
したものであり、平成13 (2001) 年度から平成22 (2010) 年度までの本県における
男女共同参画推進に関する基本的な取組みの方向と具体的施策を示す計画として、
平成13年3月に策定されました。

・インフォームド・コンセント
 患者が医師から病状、治療目的、危険度、費用などについて十分な説明を受け、
納得した上で治療を受けること。

・HIV感染者
 HIV (エイズウイルス) に感染していますが、エイズを発症していない状態の
人。「HIVキャリア」と同じ意味。
 ※エイズとは、HIV感染者が発症した状態をいいます。

・えせ同和行為
 同和問題はこわい問題であるという人々の誤った意識に乗じ、同和問題を口実に
して企業などに不当な利益や義務のないことを求める行為。
 えせ同和行為は、同和問題に関する差別意識の解消に向けた人権教育の効果を一
挙にくつがえし、同和問題に関する誤った認識を国民に植え付けるなど、同和問題
の解決にとって大きな阻害要因となっており、これを排除することが緊急な課題と
なっています。

か行

・介護保険制度
 平成12年度(2000年度) から導入された社会保険制度。高齢化の進展により深刻
化している介護の問題について、社会全体で支えるという考え方のもと、40歳以上
の国民から保険料を徴収し、65歳以上の高齢者が介護を必要とする状態になった場
合(40歳以上65歳未満の人については、特定疾患により介護が必要であると認定さ
れた場合)、必要な介護サービスが受けられるというもの。

・権利擁護制度
 判断能力が十分でない高齢者や障害者が安心して自立した生活が送られるよう、
福祉サービスの利用手続の援助や日常的な金銭管理を行う制度。各都道府県社会福
祉協議会で実施。

・公正採用選考人権啓発推進員
 国民の就職の機会均等を確保するという社会的な要請にこたえて、事業所内にお
いて、公正な採用選考システムの確立を図ることなどに中心的な役割を果たす人。
常時使用する従業員の数が100人以上である事業所など一定の要件に該当する事業
所に配置。

・国際年
 国際社会が1年間を通じて一つの共通した問題に取組むこととした年。国際婦人
年、国際児童年、国際障害者年、国際高齢者年などがあります。国際年の制定は通
常、国連総会の場で決定され、各国政府は官民合同の国内委員会を設立し、行動計
画を作成するよう要請されます。

・心の教育
 中央教育審議会が平成9年(1997年)、文部大臣から「幼児期からの心の教育の
在り方について」の諮問を受け、翌年に行った答申。同答申は、心の教育の充実に
は、国民各層の幅広い理解と協力が不可欠であり、国や地方公共団体、教育関係者
はもとより、一人一人の国民、企業やメディアなどの関係者の取組が求められる、
としています。
 本県においては、子ども一人一人が、人として調和のとれた成長を成し遂げられ
るよう、生命を尊重する心、他人への思いやりや社会性、倫理観や正義感、美しい
ものや自然に感動する心など、心豊かな人間性を培う「心の教育」を推進し、社会
全体で子どもを育てる環境を整備するため、平成10年度(1998年度) に「豊かな心
を育む教育推進県民会議」を設置し、県、市町、民間団体等との連携のもと、学校・
家庭・地域社会が一体となった取組を進めています。
 ※「豊かな心を育む教育推進県民会議」は、健全な青少年の人間形成を目指し、
家庭、学校、地域社会が一体となり、県民挙げて、子どもたちの豊かな心を育
む教育を推進するために設置した組織。行政、教育界、経済界などの幅広いメ
ンバーで構成。平成11年11月「すべての大人が子育てを」、「体験が石川っ子を
育てる」の2つを柱とする「心の教育」石川の提言を策定。

・固定的な役割分担意識
 「男は仕事」「女は家事・育児」というように、また男性は「政治の担い手」、
「会社においては基幹部分の担い手」、女性は「私的領域での担い手」「会社におい
ては周辺部分の担い手」というように性別によって役割を分担するという意識。我
が国においては、こうした男女に対する固定的な役割意識が根強く残っており、こ
の性別役割分担の克服が男女共同参画社会の実現のための課題とされています。

さ行

・在宅介護支援センター
 各種の保健福祉サービスやその利用方法、在宅での介護に関する情報提供や相談
を受け付ける機関。市町村や社会福祉法人などが運営しています。
 県内には97か所(平成16年(2004年) 4月)。

・生涯学習審議会答申
 生涯学習審議会が平成3年(1991年)、文部大臣から「今後の社会の動向に対応
した生涯学習の振興方策について」の諮問を受け、翌年に行った答申。同答申は、
時代の要請に即応した現代的課題の一つとして人権に関する学習機会の充実を挙げ
ており、学習機会の提供については、行政の果たすべき役割が大きい、としています。

・障害者週間
 障害者自らの自立と社会参加の意欲、更に国民の障害者問題に対する理解と認識
をより一層高めるための運動を展開する期間のことで、国際障害者デーであると同
時に障害者基本法の公布日である12月3日から「障害者の日」である同月9日まで
の1週間。
 国連は、平成4年(1992年) に12月3日を「国際障害者デー」とし、障害のある
人の社会参加を促進する観点から各国にその周知を要請しました。

・障害者の日
 昭和56年(1981年) の国際障害者年を記念して、国民の障害者問題についての理
解と認識を深め、福祉の増進を図ることを目的に、毎年12月9日(国連で「障害者
の権利宣言」を採択した日) を障害者の日とし、総理府による記念の集いが開催され
るほか、全国各地で障害者問題に関する啓発広報の各種行事・事業が行われています。

・シルバー人材センター
 定年退職者等の希望に応じた臨時的、短期的な就業の機会を確保し、提供する業
務を行う機関。会員は原則60歳以上の健康な高年齢者。

・身体障害者相談員
 身体に障害のある人の福祉の増進を図るため、その相談に応じ、また、その更生
のために必要な援助を行う人。

・財団法人人権教育啓発推進センター
 地域改善啓発活動を行うことを目的に総務庁所管の公益法人「財団法人地域改善
啓発センター」として昭和62年(1987年) に設立されましたが、その後、平成8年
(1996年) 7月26日の閣議決定(「同和問題の早期解決に向けた今後の方策について」)
を受けて、翌年、人権全般の教育・啓発活動を行うことを目的とし、法務省、文部
省及び総務庁の三省庁共管として再編された公益法人。

・人権教育推進会議
 国際的な人権尊重への関心が高まる中、児童生徒の人権感覚を磨き、人権意識の
高揚を図っていくことが強く求められていたことから、学校教育に携わる教員を対
象に、人権教育指導体制の充実強化を図ることを目的として平成7年(1995年) に
設置した研究協議機関。
 県内の公立小・中学校、高等学校、盲・ろう・養護学校の人権教育担当教員で構成。

・人権同和問題啓発推進月間
 広く県民に人権尊重意識の普及高揚を図るため、同和問題を始めとする人権問題
についての実態を訴え、人権の意義や重要性について、啓発活動を集中的に推進す
ることとした月間。今日までの同和対策の基礎となった昭和40年(1965年) の同和
対策審議会答申があった月である8月を月間としています。

・人権擁護委員
 人権擁護委員法に基づき、国民に保障されている基本的人権を擁護し、自由人
権思想の普及高揚を図るため、全国の市町村(特別区を含みます。) に置かれてい
る人。県内の市町には187人(平成17年(2005年) 3月) が配置されています。
 なお、法務省人権擁護局、法務局・地方法務局及びその支局並びに法務大臣が委
嘱する人権擁護委員を総称して法務省の人権擁護機関と呼びます。人権擁護機関か
ら人権擁護委員を除いたものを総称する場合は、法務省の人権擁護部門と呼びます。

・成年後見制度
 精神上の障害によって判断能力が十分でない方々(認知症高齢者・知的障害者・
精神障害者など) が、社会生活において様々な契約や遺産分割などの法律行為をす
る場合に、その法律行為によってどのような効果が発生するのか、自分の行った行
為の結果の判断ができなかったり、不十分だったりする場合があります。
 成年後見制度は、このような方々について、本人がお持ちになっている預貯金や
不動産などの財産管理、あるいは介護、施設への入退所などの生活に配慮する身上
監護を、本人に代わって法的に代理や同意、取消をする権限を与えられた成年後見
人等が行うことによって、本人を保護し、権利が守られるよう支援する制度です。

・セクシュアル・ハラスメント
 厚生労働省によるセクシュアル・ハラスメントの概念では「相手の意に反した性
的な性質の言動を行い、その対応によって仕事をする上で、一定の不利益を与えた
り、又は、それを繰り返すことによって就業環境を著しく悪化させること」と説明
されています。身体への不必要な接触、性的関係の強要、性的なうわさの流布、衆
目にふれる場所へのわいせつな写真の掲示など様々な態様のものが含まれています。
平成9年(1997年) に改正された男女雇用機会均等法では、職場でのセクシュアル・
ハラスメント防止を事業主の配慮義務と定めています。
 また、男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会報告書「女性に対
する暴力についての取組むべき課題とその対策」(平成16年3月) では、セクシュ
アル・ハラスメントについて、「継続的な人間関係において、優位な力関係を背景
に、相手の意思に反して行われる性的な言動であり、それは、単に雇用関係にある
者の間のみならず、施設における職員とその利用者との間や団体における構成員間
など、様々な生活の場で起こり得るものである。」と定義しています。

た行

・第4回世界会議
 平成7年(1995年) 9月4日から同月15日まで、国連の主催により北京市で開催
された会議で190か国の政府代表が参加。「平等、開発、平和」をテーマに冷戦の終
結、民主化の動き、貧困の増大といった国際情勢の変化を踏まえ「婦女の地位向上
のためのナイロビ将来戦略」の実施状況の見直しと評価を行い、21世紀に向けての
指針となる北京宣言及び行動綱領を採択しました。

・男女共同参画社会
 男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野に
おける活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会
的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会。

・男女共同参画社会基本法
 男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを目的に平成11年
(1999年) に制定され、施行された法律。男女共同参画社会の形成に関し、基本理
念を定め、さらに国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにするとともに、男女
共同参画社会の形成の促進に関する施策の基本となる事項を定めています。

・男女雇用機会均等法
 雇用分野における男女の均等な機会及び確保を目的とした法律。昭和61年(1986
年) の改正後11年を経ても依然として男女の採用時、採用後の処遇における差別が
残っていたため、更に平成9年(1997年) に一部が改正され、平成11年(1999年)
に施行されました。

・地域改善対策協議会の意見具申
 「同和問題の解決に向けた今後の方策の基本的在り方について」の検討をした地
域改善対策協議会が平成8年(1996年) に行った意見具申。同意見具申は、「教育
及び啓発の手法には、法の下の平等、個人の尊重といった普遍的な視点からアプロー
チしてそれぞれの差別問題の解決につなげていく手法と、それぞれの差別問題の解
決という個別的な視点からアプローチしてあらゆる差別の解消につなげていく手法
があるが、この両者は対立するものではなく、その両者があいまって人権意識の高
揚が図られ、様々な差別問題も解消されていくものと考えられる」と指摘していま
す。
 また、「今後、差別意識の解消を図るに当たっては、これまでの同和教育や啓発
活動の中で積み上げられてきた成果とこれまでの手法への評価を踏まえ、すべての
人の基本的人権を尊重していくための人権教育・人権啓発として発展的に再構築す
べきと考えられる。その中で、同和問題を人権問題の重要な柱としてとらえ、この
問題に固有の経緯等を十分に認識しつつ、国際的な潮流とその取組を踏まえて積極
的に推進すべきである」としています。

・知的障害者相談員
 知的障害者の福祉の増進を図るため、本人又はその保護者の相談に応じ、また、
本人の更生のために必要な援助を行う人。

・同和対策審議会答申
 同和対策審議会が昭和36年(1961年)、「同和地区に関する社会的及び経済的諸問
題を解決するための基本方策」についての諮問を受け、約4年をかけて審議を行い、
昭和40年(1965年) に行った答申。同答申は、戦後の同和行政の大きな指針となっ
たものであり、その中で、同和問題の早急な解決は国の責務であり、同時に国民的
課題であると述べています。

・ドメスティック・バイオレンス
 「夫婦(恋人) 間暴力」ともいい、パートナーからの暴力をいいます。広義には
女性や子ども、高齢者や障害者など家庭内の弱者への暴力をさします。夫婦間のこ
とは私的な問題とされる風潮や、夫婦間の経済的な力関係により、これまで表面化
しにくかったが、今日では解決すべき深刻な女性問題となっています。この問題解
決に向けての社会的関心の高まりや、シェルター(緊急避難所・一時保護施設) な
どの社会的制度・施設の充実などが望まれています。

な行

・ノーマライゼーション
障害者や高齢者など社会的に不利を負う人々を当然に包含するのが通常の社会で
あり、そのあるがままの姿で他の人々と同等の権利を享受できるようにするという
考え方・方法。障害者や高齢者などを特別扱いしないで、健常者と同じように生活
できるようにすること。

は行

・ハートビル法
 (高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律)
1994年に、不特定多数の人が利用する建物にバリアフリー化を進めるため、生ま
れた法律。

・配偶者からの暴力
 「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律」
(平成16年6月2日公布、平成16年12月2日施行) では、配偶者からの暴力を「配
偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危
害を及ぼすものをいう。) 又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下
「身体に対する暴力等」という。) をいい、配偶者からの身体に対する暴力等を受け
た後に、その者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配
偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとする。」と定
義しています。

・バリアフリー
 どのような障害を持つ人も安心して暮らせる障壁(物理的、情報、意識などを含
む。) のない状態のこと。

・バリアフリー社会
 高齢者、障害者等を含むすべての県民があらゆる分野の活動に平等に参加する上
で、これを困難にする様々な障壁が取り除かれ、安全かつ快適に生活できるよう配
慮された社会。

・ハンセン病
 らい菌によって引き起こされる感染力の弱い感染症。まれに感染しても、今日で
は治療法が確立しており、早期発見・早期治療により比較的容易に完治することが
できます。らい予防法は平成8年(1996年) に廃止されています。

・プロバイダー責任制限法
(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)
 インターネットでプライバシーや権利の侵害があったときに、プロバイダー等が
負う損害賠償責任の範囲や、情報発信者の情報の開示を請求する権利を定めた法律。
この法律では、権利侵害の被害が発生した場合であっても、その事実を知らなけれ
ば、プロバイダー等は被害者に対して賠償責任を負わなくてもよいとしている。権
利侵害情報が掲載されていて、被害者側からは情報の発信者が分からない場合、プ
ロバイダー等に削除依頼をすることができる。(平成14年5月27日施行)

ら行

・リハビリテーション
身体障害者や精神障害者、事故や病気による後遺症をもつ人などに、最大限の機
能回復と社会生活への復帰を目指して行われる総合的な治療と訓練のこと。