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地方公共団体関係資料

相模原市人権施策推進指針
情報の種類 地方公共団体関係資料
タイトル 相模原市人権施策推進指針
時期 2002/03/01
主体名 相模原市
【 内容 】

相模原市人権施策推進指針



第1章 人権施策推進指針策定にあたって
1 指針策定の経緯
(1)相模原市の人権施策

相模原市は、1954年(昭和29年)11月20日の市制施行後、著しい人口の流入がはじまり、1967年(昭和42年)から73年(昭和48年)には年間2万人を越える人口が増加するなど、全国でもまれにみる人口急増都市となりました。

近年の伸び率は穏やかになったものの人口増加は続いており、市制施行当時約8万人の人口は、2000年(平成12年)には60万人に達しています。

このように、市内の企業に勤務するため、あるいは東京都心や横浜方面に通勤するためのベッドタウンとして、全国のさまざまな地域、さらには世界80か国以上から多くの人々が集まり、生活する、比較的若い世代の多い都市として発展してきました。

相模原市では、このような多様な価値観や生活をもつ市民誰もが、「ともに生きる」地域社会づくりを進めるために、市民参加を進めながら、女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題の当事者、外国人市民などの人権尊重を視点に、さまざまな人権施策に取り組んできました。

こうした人権尊重社会の構築に向けての取り組みは、「人権の世紀」といわれる21世紀を迎え、人権尊重の視点をあらゆる政策分野に明確に反映させていくとともに、市民との協働の視点をさらに進めながら、総合的に展開していく必要があります。

(2)人権懇話会の経過

相模原市は、2000年(平成12年)7月に市民・関係団体の代表者や学識者で構成する「さがみはら人権懇話会」を設置し、新しい世紀における相模原市の人権施策の基本理念や施策の方向性について意見を求めました。

同懇話会では、市の人権施策の現状を踏まえながら、人権施策推進指針の策定に関する事項を検討し、2001年(平成13年)3月に、誰もが人間としてあたりまえの尊厳を持ち、「ともに生きる社会」の創造がなされるべきであるという理念のもと、「人権社会の構築と人権文化のまちづくり」と題する提言をまとめました。

提言では、本指針策定に向けた具体的施策に関する提案や、人権施策推進にあたっての市民、企業、NGO等(注1)とのパートナーシップの強化などが柱となっています。

このように、本指針策定のプロセスにおいては、市民参加と人権問題の当事者の視点を重視しながら、相模原市における人権施策の方向性を明確にしてきました。

(注1)NGO等
NGO(NonGovernmentalOrganization:非政府組織の略称)、NPO(NonProfitOrganization:非営利組織の略称)等の民間活動団体。以下「NGO」と表記する。

2 人権を取り巻く国内外の動向
(1)国際的な動向

1948年(昭和23年)12月10日に、「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」という人権に関する基本的考え方を第1条に掲げた「世界人権宣言」が国連総会において採択されました。

この後、世界人権宣言の理念の実現に向けて、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」、「児童の権利に関する条約」など、多くの人権関連条約が結ばれています。

さらに、国連ではこれまでの人権保障に関する取り組みの集大成として、各国における「人権という普遍的文化の構築」を目指して、1995年(平成7年)から2004年(平成16年)までを「人権教育のための国連10年」と定めました。

しかしながら、これらの諸条約の未締結国もみられるなど、人権に関する各国の考えや取り組みには違いがあります。東西冷戦が終結した現在でも、地域紛争による戦禍や飢餓、民族や女性に対する差別など、深刻な人権の侵害が数多くみられます。

政府とともに、自治体やNGOも含めて、国際社会における人権の確立に向けての責務を果たすことが求められています。

(2)国内の取り組み

日本は、国連が採択した人権諸条約のうち10の条約締結国となっており、1994年(平成6年)には「児童の権利に関する条約」を批准しました。

1996年(平成8年)には、「人権擁護施策推進法」が制定され、

1.人権教育及び啓発の推進
2.人権侵害被害者の救済に関する施策の推進
の2点について、新たな法整備等の検討が進められています。

1997年(平成9年)には、「人権教育のための国連10年」を受けて「人権教育のための国連10年国内行動計画」が策定され、2000年(平成12年)には、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が制定されました。

また、子どもに対する虐待やドメスティック・バイオレンス(注2)の根絶を目的として、同年には、「児童虐待の防止等に関する法律」、2001年(平成13年)には、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」が制定されるなど、さまざまな分野においても人権の保護に向けての対策が進められています。

このように、人権尊重に向けての社会的な意識の高まりや国際社会の取り組みを受けて、法律やシステムの整備が急速に進められています。

(注2)ドメスティック・バイオレンス(domesticviolence)
配偶者、恋人などのパートナーから受ける暴力のこと。

3 指針の性格
(1)「相模原市21世紀総合計画」にもとづく「人権尊重のまちづくり」

相模原市は、1998年(平成10年)3月に「輝きと愛があふれる人間都市さがみはら」を都市像として、「相模原市基本構想」を策定し、「国際平和と人権が尊重される社会の実現」を施策大綱の一つとして掲げ、すべての市民が等しく人間として尊重されることをあらゆる施策の基本としました。

この基本構想にもとづき、1999年(平成11年)に「相模原市21世紀総合計画・新世紀さがみはらプラン」を策定し、「人権尊重のまちづくり」を基本方針の一つとして、人権感覚あふれる地域社会の形成をめざしています。

こうした中で、行政とNGOとの適切な役割分担等を視野に入れた市民とのパートナーシップの強化や、地方分権の推進などを踏まえながら、市民に一番身近な自治体として、人権施策をさらに進めていくことが必要と考えます。

(2)指針の位置づけ

相模原市人権施策推進指針の策定は、「相模原市21世紀総合計画」の計画事業として位置づけており、「人権尊重のまちづくり」を実現することを目的に、相模原市が今後実施すべき人権施策についての基本理念を明らかにし、主要な人権分野における具体的施策の方向性を示すものです。

この指針にもとづき、相模原市が現在策定している分野別計画との調整を図りながら、個別分野の枠組みを越えた人権施策の総合的・体系的な推進に取り組むとともに、市政の推進にあたっては、常に人権尊重の視点に十分留意するものとします。 同時に、人権施策は社会の変化に敏速に対応することが重要であることから、本指針の確かな進行管理を行うとともに、必要に応じて見直しを行うものとします。

今後、相模原市は、この指針にもとづき、人権施策への市民、企業、NGOなどの多様な主体の参画、庁内推進体制の充実などを図りながら、「人権社会の構築と人権文化のまちづくり」に向けた総合的な人権施策の推進に取り組みます。

第2章 基本理念
1 あらゆる施策への人権尊重の視点の反映
(1)人権尊重を基調とした市政

相模原市では、従来から人権に関するさまざまな施策を推進してきましたが、誰もが人間としてあたりまえの尊厳を持ち、「ともに生きる」地域社会づくりを進めるために、自治体としてより多くの役割を担っていく必要があると考えます。

こうした観点から、本推進指針にもとづき、あらゆる政策分野に人権尊重の視点を反映させていくとともに、人権施策を総合的かつ体系的に展開します。

同時に、人権尊重を基調とする市政の推進のためには、人権尊重の考え方を市職員一人ひとりが常に自覚して職務を行うことが必要であるとともに、職員の豊かな人権感覚が求められます。

すべての職員が多様な人権問題を正しく理解し、人権に関する豊かな感覚と的確な問題意識を持ちながら、それぞれの分野においてその解決に取り組みます。

2 「ともに生きる」地域社会の実現に向けての人権意識の啓発
(1)「ともに生きる」地域社会の実現

すべての市民が等しく人間として尊重される社会をつくるためには、一人ひとりがかけがえのない存在であるという考えが尊重され、他者との違いを認め合うことが基本となります。こうした考えをもとに、性別、年齢、国籍、疾病やハンディキャップの有無、文化、生活習慣の違いを理解し、尊重する「ともに生きる」地域社会の実現に努めることが必要です。

「ともに生きる」地域社会の実現は、誰もが住みやすいまちづくりのための最も基本的な要件であるとともに、さまざまな社会経済情勢等の変化に対応することができる豊かで活力のある地域社会の実現につながるものです。

このような人権の概念や価値が広く理解され、人権尊重の理念がしっかりと社会に根付くことをめざして人権意識の啓発に取り組みます。

(2)「人権教育のための国連10年」等を踏まえた人権意識の啓発

国連の「人権教育のための国連10年」採択を受け、国では1997年(平成9年)に「人権教育のための国連10年国内行動計画」を策定しました。「人権教育」を「人権という普遍的文化を構築するために行う研修、普及及び広報努力」と定義し、学校教育、社会教育などのあらゆる場を通じた人権教育の推進とともに、教員や福祉関係職員など人権にかかわりの深い特定の職業従事者に対する人権教育の推進が位置づけられています。また、主要な人権分野として、女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者などを掲げ、それぞれの人権尊重に対する取り組みを求めています。

2000年(平成12年)に制定された「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」においても、地方自治体の責務として、地域の実情に応じた人権教育・啓発に関する施策の実施が規定されています。

相模原市では、人権意識の高揚等を目的として、NGOと連携した「ハートフルフェスタ」などの啓発イベントの開催や、「ヒューマンライツ」をはじめとする啓発冊子の作成などを実施し、積極的に啓発活動に取り組んでいます。

今後も、これらの行動計画等を踏まえ、人権教育・啓発をあらゆる場を通じて推進するとともに、それぞれの人権分野等における課題を的確にとらえ、その解消に向けた啓発を推進します。

3 人権の保護・救済に係る施策の推進
(1)人権侵害に対する総合的な施策の推進

子ども、高齢者、障害者などの社会的に弱い立場に置かれやすい人々に対する虐待やさまざまな権利侵害、女性に対するドメスティック・バイオレンス、職場等におけるセクシュアル・ハラスメント(注3)などが深刻な人権問題としてクローズアップされています。

人権施策の推進にあたり、これらの人権問題を具体的に解決する手法を総合的に施策化していくことが求められています。

このため、相談機能や各種支援策の充実、関係機関およびNGOとのネットワークの強化など、差別や虐待等によって人権が侵害されている状況から被害者を効果的に救済する手法について検討を進めます。

同時に、人権侵害を防止する観点から、人権問題の背後にある人権を軽視する考え方や差別意識の撤廃に向けて、さまざまな人権分野の課題に応じた効果的な啓発活動の実施に取り組みます。

さらに、人権侵害を引き起こす社会的要因を踏まえ、その改善に向けた関連施策の展開など、総合的な人権施策を推進します。

(2)人権に関する相談機能の充実

人権に関する相談機関の多くは、個別分野の課題への対応にとどまり、複雑な問題を内包する人権問題に対する的確な対応が課題となっています。

相模原市では、保健相談と福祉相談の機能を統合した保健福祉総合相談窓口をはじめとして、女性、子ども、高齢者、障害者などを対象とした、さまざまな相談窓口を設置していますが、増加の傾向にある女性、子ども、高齢者に対する暴力や虐待などの生命に危険を生じる深刻な人権侵害には、相談窓口相互の連携と敏速な対応が求められています。

これらの問題は、相談内容が複雑であり、緊急性を要するケースもあることから、専門機関あるいは専門性を有するNGOとの連携が必要となることが少なくありません。

このため、相談窓口と関係機関とのネットワーク化、NGOとの連携による相談体制の充実、相談担当職員の資質向上を図るための研修の強化など、人権の救済に向けた相談窓口の体制づくりを推進します。

(注3)セクシュアル・ハラスメント(sexualharassment)
性的いやがらせのこと。職場でのセクシュアル・ハラスメントについては、「相手の意に反した性的な性質の言動を行い、それに対する対応によって仕事を遂行するうえで一定の不利益を与えたり、それを繰り返すことによって就業環境を著しく悪化させること」とされている。

4 市民・NGO・企業等との協働による人権施策の推進
(1)市民参画による人権施策の推進

人権施策の推進にあたっては、人権問題に対して地域社会全体で取り組んでいく必要があるとの観点から、市民参加の視点をさらに進め、市民とのパートナーシップを確立する必要があります。

相模原市では、これまでも「さがみはら男女共同参画プラン21」をはじめとして、「相模原市高齢者保健福祉計画」、「相模原市保健医療計画」など、これまでも人権施策関連プランの作成にあたり、公募による委員を含めた市民参加の場で検討を行ってきました。

今後は、子ども、女性、外国人市民など、それぞれの分野別の人権問題の当事者やマイノリティーグループの人権施策に関する意見表明の場を積極的に確保し、その声を反映していくためのシステムの確立について検討を進めます。

さらに、こうした個別分野における取り組みとともに、市民、NGO、企業・事業所などが参画し、人権意識の啓発や、人権の保護・救済などの総合的な人権施策の推進に関して検討・協議を行う「(仮称)さがみはら人権施策推進協議会」を設置するなど、市民が施策の送り手として機能できるよう環境整備に取り組みます。

(2)NGOとの協働と企業とともに取り組む「人権尊重のまちづくり」

相模原市では、「ソレイユさがみ」(相模原市立男女共同参画推進センター)における女性問題専門相談員のNGOからの登用など、協働の取り組みが始まりつつあります。

多様な形態で生ずる人権問題に対して、公的な機関・制度では対応しきれないケースも生じており、専門的かつ柔軟な対応が可能となるNGOの役割がますます大きくなっています。

こうした観点から、NGOの自主性を尊重しながら、公的機関との役割分担、行政による支援の在り方などの検討を進め、NGOとのパートナーシップを確立していきます。

同時に、企業・事業所等も人権が尊重される社会の構築のための主要なパートナーと考えます。雇用の場における不平等やセクシュアル・ハラスメントなどの人権問題の解決にあたっては、企業自身の取り組みが非常に重要であり、その社会性の発揮が求められています。

今後、企業等が行う社員教育や研修活動等と連携を深めるなど、企業や民間団体が

「人権尊重のまちづくり」の担い手として取り組むことができる環境整備に取り組みます。

第3章 人権分野別施策の基本的方向
1 男女共同参画社会の実現と女性に関する人権施策の充実
1999年(平成11年)に男女共同参画社会の形成を総合的に推進するため、「男女共同参画社会基本法」が制定されました。また、2001年(平成13年)には、ドメスティック・バイオレンスの解消に向けて「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」が制定されるなど、女性の人権の尊重に向けてのさまざまな取り組みが展開されています。

しかし、「男は仕事、女は家庭(または、女は家庭も仕事も)」といった固定的な性別役割分業意識は、家庭や職場、地域など社会のあらゆる場で根強く残っています。相模原市では、1991年(平成3年)に「さがみはら女性計画」、2001年(平成13年)に「さがみはら男女共同参画プラン21」を策定するとともに、女性と男性の自立と共同参画を進めるための拠点として「ソレイユさがみ」を開設するなど、男女共同参画社会の実現に向けて積極的な取り組みを行ってきました。

今後も、男女共同参画社会の実現に向けての制度および環境の整備とともに、性別による権利侵害の撤廃、女性に対するあらゆる暴力の根絶など、人権尊重の視点から施策の推進を図ります。

重点施策

1.社会的・文化的に形成された性差(ジェンダー)(注4)による役割分業意識によって生ずる差別の解消に向けて、教育・啓発活動を推進します。
2.男女共同参画推進センター(「ソレイユさがみ」)機能の充実を図るとともに、男女共同参画社会の実現に向けてNGOとの協働を進めます。
3.相模原市における政策・方針決定過程への女性の参画を進めるため、審議会等への参加および管理職等への登用について、積極的な改善措置(ポジティブ・アクション)(注5)を推進します。
4.社会保障制度や税制では、世帯に着目して個人を把握する考え方をとるため、結果的に男女に中立的に機能していないものが少なくありません。このため、医療保険証の交付方法、配偶者に係る税制などの見直しを促進します。
5.男女が対等なパートナーとして働く職場環境づくりを促進するための啓発を推進するとともに、事業者の協力を求める方策を検討します。
6.ソレイユさがみ、福祉事務所、保健福祉総合相談窓口などの女性に関する相談機能を充実させるとともに、関連セクションから敏速かつ適切な支援が行われる体制を構築します。
7.ドメスティク・バイオレンスの被害を受けた女性のための緊急一時保護施設(シェルター)、保護施設退所後の自立支援施設(ステップハウス等)の設置やNGOとの協働の在り方について検討します。
8.女性の性と生殖に関する健康/権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)(注6)が保障されるための教育・相談事業の充実を図ります。
9.セクシュアル・ハラスメントや女性の尊厳を損なう性の商品化の解消など、女性の人権を尊重する社会の形成に向けた環境づくりに取り組みます。
10.学校教育においては、ジェンダーによる性差別やセクシュアル・ハラスメント等に関する学習を充実し、男女共同参画社会の実現に向けての教育活動を推進します。

(注4)ジェンダー(gender)
男らしさ、女らしさといった社会的文化的に形成された男女の違い。これに対して生物学的な性差はセックスという。
(注5)ポジティブ・アクション(positiveaction)
男女間における参画の機会の格差を改善するために、男女のいずれか一方に対し必要な機会を必要な範囲で提供すること。
(注6)リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(reproductive・health/rights)
リプロダクティブ・ヘルスは、ライフサイクルを通じて個人、特に女性の健康の自己決定権を保障する考え方。リプロダクティブ・ライツは、それをすべての人々の基本的人権として位置づける概念のこと。

2 子どもの権利の尊重に向けての取り組みの充実
1994年(平成6年)に日本が批准した「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」では、差別の禁止、子どもの最善の利益の確保、発達への権利、意見表明権や表現の自由、プライバシー保護等の市民的権利がうたわれています。

子どもは大人と同じ人格を持ち、権利が保障される存在であり、子どもを権利の主体として尊重するという共通認識の確立が必要です。

相模原市は、2001年(平成13年)に、子育て支援を総合的に展開するため「新さがみはら子どもプラン」を策定し、安心して子どもを産み、ゆとりを持って健やかに育てていく環境づくりの整備を推進しています。

一方、児童への虐待の防止など、子どもの権利を守っていくための社会システムの整備が急務となっています。急速な少子化の進行など新たな社会環境の中で、子どもの権利の尊重に向けての取り組みを進め、子どもの人権を大切にする社会の実現をめざします。

重点施策

1.「子どもの権利条約」に関する教育・啓発活動を推進するとともに、この条約の理念を基調とした、子どもの立場に立った子育て支援策を展開します。
2.子どもの意見表明権の保障として、子どもの声を教育やまちづくりに反映させるシステムの構築を検討します。
3.子どもの地域活動の場であるこどもセンター等の整備を推進するとともに、家庭、地域、学校の連携を促進し、子どもが健やかに育つ環境づくりを進めます。
4.多様化する保育ニーズへの対応、男女共同参画社会の実現などを視野にいれながら、子育てを地域全体で支援する環境整備を推進します。
5.児童虐待の防止等を図る「児童虐待防止ネットワーク」の充実など、子どもの権利を保障し救済していくための取り組みを進めます。
6.個別に支援が必要なすべての子どもたちに、それぞれの個性に応じた多様な教育の機会の提供に努めます。
7.外国人児童生徒に対する母語および日本語の習熟に関する支援の充実など、多文化共生に関する子どもの権利尊重に向けての取り組みを進めます。
8.学校教育においては、子どもの権利を大切にする教育活動の推進を図ります。
3 高齢者の人権尊重と権利擁護および社会参加の促進
相模原市の全人口のうち65歳以上の高齢者の割合は、2000年(平成12年)の10.6%から2010年(平成22年)の17.2%へと、急速に進むと予測されており、いきいきと充実した生活を送ることができる高齢社会の形成が求められています。

こうした中で、高齢者を豊かに生きる権利主体として尊重し、社会参画の機会をさらに拡充していくことが必要です。

相模原市は、2000年(平成12年)に「相模原市高齢者保健福祉計画」を策定し、介護保険制度の円滑な運営や高齢者保健福祉サービスの充実などの取り組みを強化するとともに、高齢者の生きがいづくりに関する施策を展開してきました。

今後も、高齢者の権利擁護を視野に入れながら、高齢者保健福祉施策を推進するとともに、高齢者の社会参画を進めるための環境整備に取り組みます。

重点施策

1.高齢者の自己決定権の保障という視点から、高齢者に対する差別や偏見の解消を図るための教育・啓発の充実を図ります。
2.保健福祉サービス利用に際しての苦情解決システムの確立を図るとともに、認知症高齢者等の財産を保全・管理する「相模原あんしんセンター」機能の充実を図ります。
3.高齢者の持つ経験、知識、技術を社会へ還元する場や就業形態について研究を進めます。
4.ケアが必要な高齢者への十分なサービスの提供体制を確保するとともに、これらにかかわるスタッフに対する人権研修を推進します。
5.高齢者保健福祉サービスに関する情報を一元的に提供するシステムについて検討を進めます。
6.高齢者の虐待防止等のためのネットワーク構築など、高齢者の人権を保障し救済していくための取り組みを進めます。
7.高齢者向け住宅の供給促進など、高齢者が安心して居住できるための施策を総合的に推進します。
8.地域における高齢者への見守り、安否確認などのボランティア活動に対する支援を充実します。
9.外国人市民の高齢者については、文化・習慣の違いに配慮した保健福祉サービスや相談事業の充実を図ります。
10.学校教育においては、子どもと高齢者との世代間交流を進めながら、高齢者に対する理解を深める教育活動を推進します。

4 障害者に関する人権施策の充実と社会参加の促進
障害のある人もない人も「ともに生きる社会」を実現するためには、街づくりのみならず、制度や意識のバリアフリー化(注7)をさらに進めていくとともに、障害者の意欲や能力に応じた社会参加を促進する必要があります。

相模原市では、1998年(平成10年)に、「ノーマライゼーション(注8)の推進」「リハビリテーションの充実」「主体性・自立性の尊重」「生活の質の向上」を基本理念とする「ノーマライゼーション推進さがみはらプラン(相模原市障害者福祉計画)」を策定しました。

今後も、ノーマライゼーション社会の実現に向けての制度や環境の整備とともに、障害者の権利擁護や精神保健福祉施策の充実など、人権尊重の視点から施策の推進を図ります。

重点施策

1.障害者の自己決定権の尊重、自己決定に対するライフステージごとの選択肢の用意、保健福祉サービスに対する苦情解決システムの確立など、障害者の人権尊重を基調とし総合的な施策展開を図ります。
2.グループホームの増設など、地域福祉サービスの充実を図るとともに、障害者を地域社会で支える地域支援体制の在り方について検討します。
3.障害者の権利擁護を進め、財産を保全・管理する「相模原あんしんセンター」機能の充実を図ります。
4.障害者の虐待防止等のためのネットワーク構築など、障害者の人権を保障し救済していくための取り組みを進めます。
5.障害者のエンパワーメントのための支援の強化を図ります。また、障害児の養育に対する支援の強化を図ります。
6.街づくりのバリアフリー化とともに、制度や文化、情報および意識のバリアフリー化に向けた多面的な施策を推進します。また、ユニバーサルデザイン(注9)の普及を促進します。
7.社会参加の促進という視点を持ちながら、障害者の雇用の促進、地域活動に対する支援などに総合的に取り組みます。
8.精神障害者の地域における共生を図るため、精神障害者地域生活支援センターの整備を推進するなど、保健福祉サービスの充実を図ります。
9.学校教育においては、障害のある子どもの教育環境の充実を図るとともに、障害者に対する理解を深める教育活動を推進します。

(注7)バリアフリー(barrier-free)
障害のある人が社会生活をしていく上で障壁(バリア)となるものを除去するという意味。建築物の段差等の物理的障壁の除去とともに、より広く障害者の社会参加を困難にしている社会的、制度的、心理的なすべての障壁の除去という意味でも用いられる。
(注8)ノーマライゼーション(normalization)
障害者を特別視するのではなく、社会の中で普通の生活が送れるような条件を整えるべきであり、ともに生きる社会こそノーマルな社会であるという考え方のこと。
(注9)ユニバーサルデザイン(universaldesign)
身体障害者や高齢者だけではなく、一般の人にも使いやすい形。バリアフリーをさらに発展させた考え方で、誰もが共有できるものを目指している。

5 同和問題の解決に向けての取り組みの充実
日本国憲法によって保障された基本的人権の侵害にかかわる問題である同和問題は、1965年(昭和40年)の同和対策審議会の答申において、同和問題の早期解決は国の責務であり、同時に国民的課題であるとされ、今日までこの問題の解決に向けて行政と当事者の連携のもとに、さまざまな努力が積み重ねられてきました。

相模原市では、1982年(昭和57年)に同和問題担当を設置し、市民に対する意識啓発を推進するなど、人権擁護に取り組むNGOとともに、同和問題の解決に努めてきました。

1996年(平成8年)の「地域改善対策協議会意見具申」においては、同和問題は解決に向かって進んではいるものの、依然として重要な課題であるとしており、同和問題を取り巻く環境の変化を踏まえながら、残された課題の解決に向けての取り組みの充実を図ります。

重点施策

1.人権・同和問題に関する市民意識の把握など、転換期を迎えている同和問題の現状把握に努めながら、残された課題の解決に向けて取り組みます。
2.同和問題に関する教育・啓発を、すべての人の人権を尊重していくための人権教育・人権啓発事業の体系の中に位置づけながら、その充実を図ります。
3.いわゆる「えせ同和行為」(注10)排除に向けての取り組みに努めます。
4.学校教育においては、同和教育の成果を踏まえ、総合的な人権教育を推進します。

(注10)えせ同和行為
同和問題はこわい問題であるという誤った意識に乗じ、同和問題を口実にして企業や官庁などに不当な要求を行うこと。

6 外国人市民に関する人権施策の充実と市政参加の促進
相模原市における外国人登録者数は、2001年(平成13年)現在、約8,000人で、市民の75人に1人が外国人市民となっています。第2次大戦前から定住している在日コリアン(注11)の人々とともに、近年にはアジアや中南米の国々から渡日した多くの外国人市民が隣人として生活しています。

このように地域における国際化が進展する中で、文化や習慣の違いに起因する外国人に対する差別や、犯罪との関連などではステレオタイプ的な偏見が存在しています。同時に、外国人を取り巻く制度の違いから、市政に対する参画機会も限られたものとなっています。

相模原市では、1994年(平成6年)に「さがみはら国際プラン」を策定するとともに、外国人市民に対する情報面での支援や国際理解を進めるための拠点として、「さがみはら国際交流ラウンジ」を設置するなど、外国人市民にも暮らしやすいまちづくりを進めてきました。

今後も、相模原市に生活するすべての外国人市民の視点に立ちながら、多文化共生の地域づくりをめざします。

重点施策

1.外国人市民に関する庁内調整組織の設置など、外国人市民の生活実態や直面している問題に配慮しながら、保健、医療、福祉、教育、住宅など市政に関するあらゆる分野において、「ともに生きる」視点を持ちながら外国人市民施策の充実を図ります。
2.「(仮称)外国人懇話会」の設置、審議会等への参加促進、世論調査等の調査対象に外国人市民を加えるなど、外国人市民の市政への参画機会の拡充を図ります。
3.外国人市民に関する相談機能を充実させるとともに、関連セクションやNGOから適切な支援が行われる体制を構築します。
4.多文化共生の地域づくりを進めるため、国籍や文化の違いによる差別や偏見の解消に向けての啓発を推進します。
5.多言語やルビ打ちによる広報や行政情報提供の充実など、多言語による生活情報のまちづくりを推進します。
6.学校教育においては、外国人市民の子どもの教育を総合的に推進するため、「(仮称)外国人市民にかかわる教育の指針」策定について検討します。

(注11)在日コリアン(Korean)
在日韓国・朝鮮人

7 安心して医療を受けるための人権施策の充実
誰もが安心して良質な医療を受けることができ、心身ともに健康に生活していくことは、最も基本的な権利といえます。

この理念を実現するためには、インフォームド・コンセント(注12)や患者の自己決定権など、患者の人権に十分配慮した地域医療の在り方を検討していく必要があります。

一方で、HIV(注13)やO157、ハンセン病等の感染症では、その病気についての正しい知識、情報がないことに起因する患者やその家族に対する差別など、人権問題が生じています。

相模原市では、2000年(平成12年)に相模原市保健所を開設するなど、市民の健康増進に関するサービスを一元的に進める体制を整えました。

今後、患者と医療従事者との間のオープンなコミュニケーションの実現や患者の人権を地域社会全体で支えていく環境づくりを進めるなど、安心して医療を受けるための人権施策を推進します。

重点施策

1.市民、医療従事者、関係団体などで構成する「(仮称)患者の権利の在り方に関する検討委員会」の設置など、地域医療に広く市民の意見を反映させていく仕組み等を検討します。
2.疾患およびその治療法、病院・診療所に関する情報、各種医療費助成制度など、市民が必要とする医療情報の一元的な提供を図ります。
3.医療機関のバリアフリー化や診療現場における医療通訳・手話通訳制度化の促進など、だれもが医療機関にアクセスしやすい環境や制度の整備を図ります。
4.医療機関との連携のもと、薬品等の備蓄、近隣自治体の医療機関との協力体制の構築、人工透析患者等の緊急対応など、災害時医療の確保と提供を促進します。
5.在宅療養サービスに関する医療情報提供の促進などを通じ、安心して在宅医療が受けられる環境の整備に取り組みます。
6.入院をしていたり、医療機器を利用しながら生活している子どもについて、教育を受けるためのサポート体制の充実を図ります。
7.メンタルヘルスの保持および増進のため、相談事業の充実やメンタルヘルスの重要性についての教育・啓発の充実を図るなど、市民が地域精神保健・医療にアクセスしやすい環境づくりを推進します。
8.精神科医療における人権尊重を基調とした適切な医療サービスの提供を促進するとともに、精神障害者地域生活支援センターの整備など、患者の居宅生活支援策の充実を図ります。
9.感染症患者や難病患者のプライバシーに配慮した相談体制の構築と差別や偏見の解消に向けての教育・啓発の充実を図ります。
10.嗜癖問題(アルコール依存・薬物依存)をもつ患者について、セルフヘルプグループに対する支援や関連NGOとの連携を通じ、患者の社会復帰を促進します。
11.学校教育においては、エイズやO157等の感染症やメンタルヘルスに関する正しい知識の普及を進めるとともに、これらの疾病に対する偏見や差別の解消に努めます。
(注12)インフォームド・コンセント(informedconsent)
医師が患者に対して、受ける治療内容の方法、意味、効果、危険性および予後などを十分かつわかりやすく説明し、そのうえで同意を得ること。

(注13)HIV(humanimmunodeficiencyvirus)
ヒト免疫不全ウイルスの略。HIVへの感染によっておこる病気をエイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)という。

8 社会的な援護を必要とする市民に対する人権施策の推進
介護保険制度の導入、社会福祉基礎構造改革など、社会保障制度の大きな見直しが進められている一方で、野宿生活者(ホームレス)の人たちなど、これらの制度や施策の網の目の外にある層が存在します。

同様に、何らかの理由により住民登録等をしていないものの、相模原市に生活し就労している人たちも、公的なサービスから漏れてしまうケースが考えられます。

さらに、災害被害者、犯罪被害者とその家族、刑を終えて出所した人、性同一性障害などの性的マイノリティ(注14)とされる人々など、さまざまな問題に直面しているこれらの市民に関しても人権尊重の視点を施策に反映していくことが必要です。

今後、これらの人権課題を視野に入れながら、現行制度の注意深い点検や柔軟な運用を図るとともに、あらゆる差別や偏見の解消に向けて、総合的な人権施策の展開を図ります。

重点施策

1.援護を必要とするすべての市民に対して、人権尊重の視点を持ちながら、現行の制度・施策の注意深い点検や柔軟な運用を図ります。
2.野宿生活者(ホームレス)の人権に配慮していくとともに、NGOとの連携を図りながら自立支援を進めます。
3.災害時における地域支援体制の構築など、高齢者、障害者、外国人市民などの災害弱者への支援を図ります。
4.犯罪の被害者および容疑者とその家族の人権に配慮します。
5.刑期を終えて出所した人とその家族の人権に配慮します。
6.性的マイノリティとされる人々の人権に配慮します。
7.学校教育においては、さまざまな社会的マイノリティとされる人々に対する理解と認識を深める教育活動を推進します。

(注14)性的マイノリティ
性同一性障害(生物学的には正常でありながら、人格的には自分が別の性に属していると確信している状態)、インターセックス(先天的に身体上の性別が不明瞭であること)などの人々。また、社会においては異性愛を自明とし、同性愛者をマイノリティ(少数派)とする見方が一般的である。

9 高度情報通信社会の進展に応じた人権施策の推進
職場や家庭における情報通信ネットワークの急速な進展は、個人間の通信や情報交換を飛躍的に容易にし、地域や組織を越えた新たな人間関係の形成や就労形態の多様化など、個人の生活にも大きな変革をもたらしています。

しかし、これらの情報通信技術の進展は、あらゆる人々の就労をはじめとする社会参画の容易性を高めるなど、プラスに働く一方で、個人間における情報活用能力の違いによる新たな社会的格差の発生、インターネットによる犯罪や人権侵害、蓄積された個人情報の不適切な取り扱いなど、新たな課題が生ずるおそれもあります。

こうした中で、情報化や科学技術の進展など社会環境の変化に応じた人権尊重の視点を持った取り組みを進め、豊かで活力のある「人権尊重のまちづくり」の実現をめざします。

重点施策

1.女性、高齢者、障害者などの情報活用能力向上のための支援策を充実し、社会参画機会の拡大を促進します。
2.新たな人権教育・啓発のメディアとして、インターネット等の活用を図ります。
3.相模原市が保有する個人情報の適切な管理に努めるとともに、人権尊重の観点から市民・事業者を含む個人情報保護に関する取り組みについて研究を進めます。
4.インターネットにおける人権侵害など、新たに生じてくる人権問題も視野に入れながら、総合的な人権施策の推進を図ります。
5.学校教育においては、個人情報保護に関する正しい知識の普及に努めます。


第4章 推進体制
1 「人権施策推進会議」の設置による庁内推進体制の強化
相模原市においては、女性・子ども・高齢者など、各人権の分野、領域別に、それぞれが抱える人権に関する課題の解消に向けて施策を展開してきました。

しかしながら、人権問題は多様化、複合化しており、人権施策の推進にあたっては、個別分野における施策展開の充実とともに、それぞれの担当部門が基本的な考え方を共有し、重層的な施策を展開していくことが必要です。

また、施策間の連携とともに、人権意識を高揚するための教育・啓発についても、計画的・体系的に実施していく必要があります。

こうした課題を踏まえ、「相模原市人権施策推進指針」の全庁的な推進組織として、「(仮称)相模原市人権施策推進会議」を設置し、総合的な人権施策の推進に取り組みます。

2 市民・NGO・企業等の多様な主体の参画による「人権施策推進協議会」の設置
「相模原市人権施策推進指針」の策定に際しては、「さがみはら人権懇話会」を通じて、市民やNGO、人権問題の当事者の参加のもと、検討を行ってきました。

今後、この推進指針にもとづく人権施策の推進に際しても、行政だけの課題とするのではなく、多様な主体とのパートナーシップの強化とともに、その意見・視点の反映が重要と考えます。

こうした観点から、相模原市では、市民、NGO、企業などの参加を得て、推進指針にもとづく人権意識の啓発や人権の保護・救済などの人権施策の実施に際し、検討・協議を行う「(仮称)さがみはら人権施策推進協議会」を設置し、「人権の世紀」にふさわしい「人権尊重のまちづくり」の実現をめざします。