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人権教育・啓発に関する基本計画
情報の種類 地方公共団体関係資料
タイトル 人権教育・啓発に関する基本計画
時期 2004/01/17
主体名 神戸市
【 内容 】

人権教育・啓発に関する基本計画
平成16(2004)年1 月17 日
神 戸 市
目 次
Ⅰ はじめに
1「人権教育・啓発に関する基本計画」策定の経緯・・・・・・・・・・・・・・・1
(1) 国における人権教育・啓発の推進に関する最近の動き
(2) 神戸市人権教育・啓発懇話会からの提言
2 基本的な考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
(1) 人権尊重の理念
(2) 人権尊重と市民福祉
(3) 人権尊重とユニバーサルデザイン
(4) 市民生活と人権尊重
(5) 「人権教育・啓発」とともに重点的に取り組むべき事項
(6) 提言の尊重
3 基本計画の策定趣旨及び位置付け等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
(1) 策定趣旨及び位置付け
(2) 他の計画との関係
(3) 策定趣旨の尊重
(4) 目標年次
(5) 協働の指標と中・長期目標値の設定
(6) 取り組みの目的・方向性と特徴的な取り組み
Ⅱ 人権教育・啓発について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
1 人権教育・啓発の基本的あり方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
(1) 日常生活の中で主体的な行動へと結びつく教育・啓発
(2) 発達段階を踏まえた効果的な教育・啓発
(3) 協働の理念に基づく教育・啓発
(4) 市民の自主性の尊重と教育・啓発における中立性の確保
2 人権教育・啓発の手法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
3 人権一般の普遍的な視点からの取り組み・・・・・・・・・・・・・・・・7
(1)人権教育・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
① 学校教育
② 社会教育
(2)人権啓発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
4 具体的な人権課題への取り組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
(1) 女性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
(2) 子ども・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
(3) 高齢者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
(4) 障害者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25
(5) 同和問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28
(6) 外国人・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
(7) HIV感染者,ハンセン病患者及び元患者等・・・・・・・・・・ 32
(8) その他の人権課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33
5 人権に関する職員の資質向上・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34
Ⅲ 人権救済の前提としての相談制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36
Ⅳ 地域での人権の尊重されたまちづくりへの取り組み・・・・・・・・・・・・・ 37
1 人権尊重についての共通のコンセンサスの確立
2 地域重視の人権啓発
3 地域における「フェイス・トゥ・フェイス型」啓発の推進
4 地域社会を担う人材の育成
Ⅴ 総合的かつ効果的な推進体制等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40
1 全庁的な推進体制の整備
2 基本計画の行政評価
3 関係機関との連携・協力
4 民間団体等との連携・協力
[参考資料]
・ 「人権教育・啓発に関する基本計画(素案)」に対する意見募集結果・・・・・ 43
・ 人権教育及び人権啓発の推進に関する法律・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44
・ 日本国憲法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45
・ 世界人権宣言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48
- 1 -
Ⅰ はじめに
1 「人権教育・啓発に関する基本計画」策定の経緯
(1) 国における人権教育・啓発の推進に関する最近の動き
平成12(2000)年12 月に「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が施行さ
れました。
この法律は,平成6(1994)年12 月に国連総会において採択された「人権教育の
ための国連10 年」を受け,平成9(1997)年7月に策定された「人権教育のための
国連10 年に関する国内行動計画」と,人権擁護推進審議会が調査審議を経て行っ
た答申等を踏まえて人権教育・啓発の一層の推進を図るために制定されたものです。
人権教育・啓発に関する理念,国・地方公共団体・国民の責務の明確化,基本計画
の策定や年次報告,等を主な内容としています。
この中で,地方公共団体の責務としては,「地方公共団体は,基本理念にのっと
り,国との連携を図りつつ,その地域の実情を踏まえ,人権教育及び人権啓発に関
する施策を策定し,及び実施する責務を有する。」とされています。
この法律を受け,国において,平成14(2002)年3月に「人権教育・啓発に関す
る基本計画」が策定され,人権教育・啓発の総合的・計画的な推進体制の整備が進
められています。
(2) 神戸市人権教育・啓発懇話会からの提言
神戸市においては,神戸市総合基本計画の都市像である「ともに築く人間尊重の
まち」の実現をめざし,市民のみなさまのご協力を得ながら,部門別計画等に基づ
く施策を展開し,さまざまな人権課題の解決に向けた人権教育・啓発を推進してき
ました。
上述のような人権をめぐる国等の動向を踏まえ,「人権の世紀」と言われている
21 世紀を迎えた中で,総合的かつ効果的な人権教育・啓発の推進が求められるよ
うになっています。
そのため,平成14(2002)年4 月,学識経験者で構成される「神戸市人権教育・
啓発懇話会」を設置し,神戸市における人権教育及び人権啓発の基本的あり方につ
いて諮問し,専門的な見地から検討を依頼しました。
その結果,「女性,子ども,高齢者,障害者,同和問題,外国人,HIV感染者,
ハンセン病患者及び元患者等さまざまな人権課題(以下,「さまざまな人権課題」と
いう。)」の解決に向け,教育・啓発の分野を中心に,人権という視点から総合的に
検討がなされ,平成15(2003)年3 月「神戸市における人権教育及び人権啓発の基
本的あり方について(以下,「提言」という。)」が答申されました。
提言では,人権教育・啓発の最終的な目標として,神戸市の施策全般に関わる「人
権の尊重されたまちづくり」が掲げられ,教育・啓発に加え,人権救済の前提とし
- 2 -
ての相談制度の充実や,震災で得た貴重な教訓-共に生きることの素晴らしさ-を
生かした,地域での人権の尊重されたまちづくりへの取り組みの重要性が指摘され
ました。
また,「人権教育・啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るためには,
人権教育・啓発に関する基本計画を策定し,中・長期的な目標を明確にすることが
必要である。」と基本計画策定の提言がなされ,この提言を受けて,今回「人権教育・
啓発に関する基本計画(以下,「基本計画」という。)」を策定します。
2 基本的な考え方
(1) 人権尊重の理念
現代社会における人権は,個人の人格の尊厳に基づき,人間であることに根ざし
て当然に認められる人間固有の権利,すなわち各人が人間的な生存と身体的及び精
神的な自由を確保し,それぞれの幸福を追求する権利として,すべての人に等しく
保障されることが求められています。この,すべての人の人権の尊重こそが,日本
国憲法及び人権関係の国際条約等の原則とされています。
また同時に,人権の尊重とは,権利の行使に伴う責任と義務を自覚し,自分も他
人も,ともに尊厳を持った人間として相互に尊重しあうことと理解することが求め
られています。
(2) 人権尊重と市民福祉
神戸市政においても,人権の尊重を文字どおり生かそうとすれば,女性,子ども,
高齢者,障害者等といった人々の人権の保障が重要な課題であり,その保障は福祉
施策と密接に関わります。
神戸市では,昭和52(1977)年に制定された「神戸市民の福祉をまもる条例」にお
いて,福祉の理念をより広く,市民生活の基礎的条件のすべてととらえた「市民福
祉」の実現に向けて取り組んでいますが,今日では,市民福祉の理念は,生存権の
保障から個人の尊重・幸福追求権へとその中心的な意味を変遷させてきており,市
民福祉の充実は,人権の尊重の前提であると同時に人権の尊重が究極の目的といっ
ても過言ではなくなっています。
今後は,既に神戸市の施策の中に反映されつつある「ノーマライゼーション」「自
己決定権」の理念や,さらには「ユニバーサルデザイン」といった人権尊重を根底
にもつ考え方を神戸市の施策全般に浸透させるとともに,地域組織,NPO,ボラ
ンティア団体などと連携・協力して市民福祉の向上を図り,地方自治の水準を高め
ていくことが重要です。
(3) 人権尊重とユニバーサルデザイン
「ユニバーサルデザイン(UD)」は,年齢・性別・国籍・身体の状況等,個々
- 3 -
の人間の特性や能力には関係なく,はじめから,だれもが利用しやすいようにまち
や建物,製品,環境,サービス等をつくろうとする考え方で,人権尊重を根底にし
ています。
平成14(2002)年,市民や事業者が参画する「長田区ユニバーサルデザイン研究会」
が発足し,神戸での取り組みがスタートしました。また,平成15(2003)年には,神
戸市全域で取り組みを進めていくための「こうべUD広場(こうべユニバーサルデ
ザイン推進会議)」が発足しています。
今後は,市民・事業者が集う「こうべUD広場」から,ユニバーサルデザインへ
のさまざまな取り組みを行うプロジェクトが生まれ,育っていき,ユニバーサルデ
ザインのまち神戸の実現をめざしていきます。
神戸がみんなにやさしいまち,みんながやさしいまちとなるよう,ユニバーサル
デザインのまち神戸をめざすことは,人権の尊重されたまちづくりを実現するため
の,具体的・効果的な手法の一つであり,ユニバーサルデザインの推進策として,
ハード整備だけでなく,意識づくりも含めたソフト事業の展開を積極的に進めてい
きます。
(4) 市民生活と人権尊重
市民相互間の社会生活においても,人権尊重の理念を現実化するためには,すべ
ての人々の態度や行動の基礎に人権が位置づけられ,他人の人権と相互に共存し得
ることが期待されています。
阪神・淡路大震災当時,市民は,自らも被災した中で,全国から駆けつけたボラ
ンティアとともに,避難所の運営や地域での声かけ等,お互いの人権を尊重しなが
らさまざまな取り組みを行い,今日の神戸では,人と人とのつながりが深まり,地
域における主体的な市民活動が育まれ,地域の力が発揮されたまちづくりが活発化
しています。
一方で,地域における人間関係の希薄化や相互扶助機能の低下が人権問題の発見
を妨げ,解決をより困難にする事例も見受けられます。
また,「平成12(2000)年神戸市民の人権問題に関する意識調査」から見ると,
市民の感覚としては,人権尊重の理念は十分に定着しているとはいいがたいと考え
られます。さらに,現実にも生命・身体の安全に関わる事象や,人種,民族,性別,
思想・信条,社会的身分,門地,障害等による不当な社会的差別その他の人権侵害
の問題が起きており,人権尊重の理念と現実との間にはギャップがあります。
(5) 「人権教育・啓発」とともに重点的に取り組むべき事項
こうした問題の解決は社会共同の責任であり,神戸市が人権教育・啓発に取り組
んでいくことに加え,市民相互間においても人権の尊重について共通のコンセンサ
スが確立されることが必要です。そのためには,一方的に人権を主張し合うのでは
- 4 -
なく,共に生きる同じ社会の一員として,人権尊重という視点からの,市民の権利
と義務について市民相互間で十分な議論がなされるような条件づくりが必要です。
また,さまざまな人権侵害に対応するため,救済制度の実効性を高めることが必要
です。
そこで,①人権教育・啓発とともに,②人権救済の前提としての相談制度の充実
や,③震災で得た貴重な教訓-共に生きることの素晴らしさ-を生かした地域での
人権の尊重されたまちづくりへの取り組み,を3 つの主要課題として,相乗効果を
発揮させながら重点的に推進していきます。
(6) 提言の尊重
基本計画は,パブリックコメントを経て答申された提言を基本方針として尊重し
ます。
3 基本計画の策定趣旨及び位置付け等
(1) 策定趣旨及び位置付け
基本計画は,人権教育・啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図ること
を目的とします。
また「神戸市総合基本計画」が掲げる都市像のひとつである,「ともに築く人間
尊重のまち」を具体化する,人権教育・啓発に関する中・長期的な考え方を明らか
にする部門別計画として策定します。
(2) 他の計画との関係
基本計画には,「神戸市総合基本計画」を段階的に具体化するために策定された
「新・都市環境基準 後期事業計画」や,各部門別計画等における人権教育・啓
発等人権尊重に関する基本的な考え方や方向性を横断的に取り入れ,連携と補完
を図ります。
具体的な人権課題への取り組みにあたっては,基本計画を踏まえながら,各人
権課題所管部局がそれぞれ実施するものとします。
なお,「“こうべ”の市民福祉総合計画2010」については,市民福祉の総合
的・体系的推進を図るための部門別計画として特に人権と関連が深いため,今後,
殊に補完と連携を重視していくものとします。
(3) 策定趣旨の尊重
神戸市のすべての政策・施策・事務事業,その他行政運営にあたっては,基本
計画の策定趣旨を尊重し,人権に配慮するよう努めることとします。
(4) 目標年次
基本計画の目標年次は,平成22(2010)年度とします。
(5) 協働の指標と中・長期目標値の設定
- 5 -
市民・事業者・神戸市が協働して取り組む際の目標を共有するとともに,取り
組みの成果を評価する際の参考とするため,協働の指標と中・長期目標値を設定
します。
協働の指標は,「しみん しあわせ 指標」をはじめ,神戸市の各種計画上の指
標や市民意識調査の調査項目等の中から,基本計画の進捗が反映されると思われ
るものを採用しています。
また,中・長期目標値は,基本計画の目標年次である平成22(2010)年度時点
での目標値を採用していますが,それ以前に調査や評価の時期が到来するものに
関しては,その時点での目標値を採用しています。
(6) 取り組みの目的・方向性と特徴的な取り組み
取り組みへの理解を深め,具体的な行動へつなげていくため,取り組みの目的
や方向性を一覧表にまとめるとともに,特徴的な取り組みを記載しています。
ここでの「取り組み」とは,神戸市だけではなく,市民や事業者との協働によ
る取り組みについても意図しています。
「特徴的な取り組み」は,神戸市の展開する施策や事務事業等の抜粋(実施予
定のものも含む。)です。
Ⅱ 人権教育・啓発について
1 人権教育・啓発の基本的あり方
神戸市における人権教育・啓発は,「人権の尊重されたまちづくり」を目指して,
日本国憲法や教育基本法等の国内法,人権関係の国際条約等に即して推進します。
その際には,「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が規定する基本理念(第
3条)等を踏まえ,基本的に次の点に留意しながら推進していきます。
(1) 日常生活の中で主体的な行動へと結びつく教育・啓発
偏見や差別を考える際,一部の極端な人々の問題と見る傾向があります。しか
し偏見や差別は,目に見えるものだけでなく,敬遠,不快,非難等インフォーマ
ルな面があり,私たち一人ひとりの人格に深く関わる心理的土壌の問題でもあり
ます。
だからこそ,誰でも他人を差別したり,他人から差別される可能性があるので
あって,すべての市民にとって無関係な事柄ではありません。
それだけに人権感覚を一人ひとりの問題として身につけるとともに,差別があ
ったとき,傍観者的な態度を改め,おかしいものはおかしいと訴え不合理なこと
を是正することができるような行動へと結びつくことが人権教育・啓発の重要な
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役割といえますが,それは日常不断の取り組みをとおして,時間をかけて粘り強
く進めていく必要があります。
(2) 発達段階を踏まえた効果的な教育・啓発
人権教育・啓発は,幼児から高齢者に至る幅広い年齢層を対象とするものであ
り,家庭,学校,地域,職場等あらゆる場,あらゆる機会をとおして実施される
ことにより効果をあげることができます。
そのため,対象者の発達段階を踏まえ,多様な内容と方法について創意工夫を
しながら実施していく必要があります。
(3) 協働の理念に基づく教育・啓発
人権教育・啓発は,社会全体で取り組んでいくことが重要です。市民・事業者・
神戸市が,それぞれの役割を自覚し,ともに手を携えてまちづくりを進める「協働」
の理念に基づいて,人権教育・啓発を推進していく必要があります。
それぞれの役割は,概ね次のように考えられます。
① 神戸市は,国や県との連携を図りつつ,地域の実情を踏まえ,人権教育・啓
発に関する施策を策定し,実施します。
② 市民には,一人ひとりが社会を構成する主体であることを認識し,自分自身
の問題として人権尊重の理念についての理解を深め主体的に行動していくこと
が求められています。
③ 事業者は,事業活動を通じて社会へ貢献するとともに,社会を構成する市民
としてその社会的責任を自覚し,公正な採用,公正で適切な配置・昇進等,事
業所内における人権の尊重を実現するとともに,従業員の人権に対する理解を
深めるよう求められています。
(4) 市民の自主性の尊重と教育・啓発における中立性の確保
① 人権教育・啓発は,市民一人ひとりの人権に関する権利・義務の意識や内面
的問題にかかわることから,その自主性を尊重し,押し付けにならないように
十分留意する必要があります。
② 人権教育・啓発がその効果を十分に発揮するためには,その内容はもとより,
実施の方法等においても,市民から,幅広く理解と共感を得られるものである
ことが必要であり,人権教育・啓発を担当する神戸市は,主体性や中立性の確
保を旨として行う必要があります。
2 人権教育・啓発の手法
人権尊重の理念についての理解が深まるよう,
(1)法の下の平等,個人の尊重といった人権一般の普遍的な視点からのアプローチ
(2)具体的な人権課題に即した個別的な視点からのアプローチ
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の両手法を織り交ぜて取り組みます。
3 人権一般の普遍的な視点からの取り組み
(1) 人権教育
人権教育は,一人ひとりの生命と尊厳を尊重するという人権尊重の理念について
基礎的な知識を体得し,感性を養い,それを実践に生かす態度や行動力の育成を目
的とするものです。
幼児期から成人に至るまでの学校教育と,成人を対象にした社会教育の両面での
充実と連携を図り,地域の実情を踏まえつつ,市民が生涯を通じて学べるよう,人
権教育を推進していく必要があります。
① 学校教育
[現状と課題]
学校における人権教育は,一人ひとりの子どもが人権尊重の理念を身につけて
いくための取り組みであり,日本国憲法,教育基本法,児童の権利に関する条約
等の精神にのっとり,人権教育を推進しています。
人権教育の推進にあたっては,幼稚園から高等学校に至る子どもの発達段階に
対応して,指導方法の工夫や教材の開発等に努め,授業,学級活動,学校行事を
通じすべての教育活動の中で取り組んでいく必要があります。
また,子どもたちにとって一番身近でかつ最大の学習環境である教職員の研修
と研究活動の充実に努め,人権尊重の理念の徹底を図る必要があります。
[今後の方向性]
(ア) 自己実現の力の育成
子どもが人権尊重の理念を理解する出発点は,自分自身を大切にする心
(自尊感情)を育むことにあります。それは,今の生活を大切にし,将来の
夢や希望を持つことにつながるものです。この夢や希望を実現するための基
礎的な力(知識,技能,思考力,感性)を育んでいきます。
(イ) 共生の態度の育成
一人ひとりの人権が尊重される社会を実現するため,共に生きることにつ
いての子どもたちの理解を深め,他者を思いやる心,共生のための行動力や
社会的貢献の精神を子どもたちが身につけるよう努めます。
また,さまざまな人権課題に対応した教材を開発し,その活用を進めます。
これらにより,人権についての理解と認識を深め,偏見や差別の解消を図り
ます。
(ウ) 人権感覚豊かな学習環境の創造
子どもたちが学校生活全般にわたって人権尊重の理念を実感できるよう,
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いじめや体罰の根絶,体験学習・参加型学習の推進,男女混合名簿の導入等,
人権感覚豊かな学習環境の創造を目指します。
学校園においては,人権教育についての研究・実践活動に積極的に取り組
みます。また,校園内での教員全員を対象とした人権教育研修を一層推進す
るとともに,これを活性化するための管理職,人権教育担当者向けの研修や,
教員の経験年次に対応した研修の充実を図ります。
(エ) 家庭や地域との連携
学校園における人権教育をより効果的なものとするため,授業公開やPT
A活動等を通して,家庭や地域に対する情報発信と連携の強化に努めます。
[協働の指標と中・長期目標値]
協働の指標 現状値 中・長期目標値
管理職,人権教育担当者向け研修,経験
年次に対応した研修の受講者数
1,369 人/年
(平成14 年度)

1,950 人/年
(平成22 年度)
[取り組みの目的・方向性と特徴的な取り組み]
取り組みの目的 取り組みの方向性 特徴的な取り組み
一人ひとりの子どもが人権尊
重の理念と実践する力を身につ
ける。
自己実現の力の育成
共生の態度の育成
(偏見・差別の解消)
・ すべての教育活動にわたっての人権教
育の推進
・ 発達段階に応じた人権教育の工夫
・ 教材の開発と活用(副読本「あゆみ」
の改定等)
・ 人権課題ごとの資料の整備
・ 基礎学力定着事業
・ 体験学習・参加型学習の推進
・ 男女共同参画社会の実現を目指した教
育の推進(男女混合名簿の導入等)
・ 外国人児童生徒にかかわる教育の充実
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人権感覚豊かな学習
環境の創造
・ 人権教育指定校園・推進校園
・ 区域別学校園人権教育推進協議会
・ 不登校・いじめへの対応
・ 教職員研修の充実
家庭や地域との連携
・ 授業公開等「開かれた学校づくり」の
中での情報交換・交流の促進
・ PTA活動,ふれあい懇話会を活用し
た人権学習・啓発の推進
・ ゲストティーチャー・市民講師の活用
・ トライやるウィークの実施
② 社会教育
[現状と課題]
社会教育においては,市民が人権について学べるように市民を対象とした人権講
演会等を開催し人権学習機会を設けてきました。
しかし,社会の成熟化とともに多様な価値観や個人を重んじる志向が強まる中に
あって,普遍的な原理である人権尊重の意識を高めるには,知識を得るための場を
提供するだけではなく,人権学習への市民の主体的な取り組みや多様な人々と交流
をすること等が必要となってきます。
[今後の方向性]
(ア) 人権学習の機会の充実
(ⅰ) 家庭教育
おとな自身が子どもを人権の主体として認識し,日常の家庭生活をとお
して,しつけ等の教育に当たれるよう,学校や幼稚園,保育所等関係機関
との連携を深めていく必要があります。また,他人を差別するような言動
はおとなであっても子どもであっても人間として許されないということや
いじめや差別に対しては毅然と対応することを学べるような人権学習機会
の充実を図っていきます。
(ⅱ) 社会教育施設
公民館等の社会教育施設において,利用者の人権学習機会の充実を図り,
地域における人権問題を積極的に取り上げるとともに,施設相互が連携し
さまざまな人権に関する学習機会の充実を図っていきます。
(ⅲ) 社会教育団体
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社会教育団体に対する人権学習機会の充実を図る中で,特にPTA は,地
域と家庭と学校とを結ぶ団体でもあることから,さまざまな研修機会をと
おして,人権学習を推進していきます。
(イ) 参画型学習の推進と人材育成
人権学習は,これまでの知識伝達型から学習参画型・体験型へと移行して
いく必要性があります。また,学習の企画立案段階からさまざまな人権課題
に対応した人たちが参画できる仕組みづくりに努めていきます。
また,ボランティアの養成にあたっては,鋭い人権感覚を身につけられる
よう考慮していきます。
(ウ) 交流の場の整備
人権を尊重する意識を自然に身につけていくためにも,さまざまな人権課
題に対処できるよう,多様な人々が出会い,話し合える機会や交流の場を整
備していきます。
[協働の指標と中・長期目標値]
協働の指標 現状値 中・長期目標値
さまざまな人権問題について理解を深
めるために開催されている講演会や学習
会等に参加したことのある市民の割合
23.3%
(平成12 年度)

30.0%
(平成22 年度)
[取り組みの目的・方向性と特徴的な取り組み]
取り組みの目的 取り組みの方向性 特徴的な取り組み
家庭教育における人
権学習の機会の充実
・ 家庭教育事業の実施
・ 人権啓発冊子等の作成
社会教育施設におけ
る人権学習の機会の充

・ 公民館の講座
・ 生涯学習支援センターの講座
・ 市民福祉大学の講座
・ 男女共同参画センターの講座
・ 神戸婦人大学の講座
さまざまな人権についての学
習機会を充実することにより,
普遍的な原理である人権尊重の
意識を高める。
・ 神戸市PTA家庭教育アカデミー
・ PTA人権研修会
社会教育団体におけ
る人権学習の機会の充

- 11 -
参画型・体験型学習の
推進
・ CAP(子どもが暴力から自分を守る
プログラム)講習会
人権学習を知識伝達型から学
習者参画型・体験型の形態にし
ていくとともに学習課題に対応
する人たちが企画立案に参加で
きる仕組みをつくる。
企画立案に参画でき
る仕組みづくり

交流の場の整備
・ 識字・日本語交流会
人権尊重の意識を自然に身に
つけるため,多様な人たちとの
出会い,交流の機会や場の整備
を図る。
国際理解教育の推進 ・ 国際理解のための市民講座
(2) 人権啓発
人権啓発は,一人ひとりに人権尊重の理念を普及させ,それに対する理解を深め
ることを目的とする広報その他の啓発活動です。
[現状と課題]
これまでの人権啓発は,より多くの市民への啓発に重点をおいた,行事を中心と
した啓発に偏りがちでした。
講演会や映画会等のイベント,マスメディアの積極的な活用等によるこれらの啓
発は,人権に関する知識や情報を身につけてもらうという観点からは効果がありま
す。
人権啓発は,生命の尊さ,共に生きることの素晴らしさといった震災で得た貴重
な教訓を生かしつつ,ねばり強く実施していくことが重要です。また,市民一人ひ
とりが,人権に関する基本的な知識を獲得し,日常生活の中で人権尊重の主体的な
行動へと結びつけていくためには,さまざまな創意工夫が求められています。
[今後の方向性]
① 効果的な啓発手法の活用
啓発の場において得られた知識や情報を自分自身のこととしてとらえ,日常生
活の中で主体的な行動へ結びつけることができなければ,知識や情報は形骸化す
る恐れがあります。
そこで,これまでの啓発手法に加え,内容が固定化したり一般論に終始するこ
となく,市民がより身近に感じ理解を深めることができるよう,人権上大きな社
会問題となっている事例をタイミングよくとりあげたり,ワークショップや体験
学習のような市民が主体的・能動的に参加できるような手法を取り入れながら,
啓発を推進していくことが必要です。
さらに,さまざまな人々の存在を認識し,障害者や高齢者への理解を深められ
るよう,地域の特色を生かした,地域で主体的に取り組むユニバーサルデザイン
- 12 -
のまちづくりのような市民が親しみやすくかつ参加しやすい手法も活用します。
② 対象者の年齢層にあわせた啓発媒体の選択
これまでの経験と成果を生かし,各年齢層の興味・関心に合わせ,広報紙,イ
ンターネット,映画等,啓発媒体を幅広く選択し,啓発媒体の特性を生かしたよ
りきめの細かい啓発を推進していきます。
[協働の指標と中・長期目標値]
協働の指標 現状値 中・長期目標値
人権を「身近に感じる」市民の割合
38.6%
(平成12 年度)

50.0%
(平成22 年度)
さまざまな人権問題について理解を深
めるために開催されている講演会や学習
会等に参加したことのある市民の割合
(再掲)
23.3%
(平成12 年度)

30.0%
(平成22 年度)
[取り組みの目的・方向性と特徴的な取り組み]
取り組みの目的 取り組みの方向性 特徴的な取り組み
より多くの市民に知識や情報
を身につけてもらうための啓発
手法に加え,市民が主体的・能
動的に参加できる手法を取り入
れて啓発を推進していく。
より多くの市民へ啓
発を行うための行事を
中心とする手法による
啓発
・「こうべ男女共同参画推進月間」の設置
・ 人権啓発映画の製作
・「心かよわす市民運動」月間啓発事業の
実施
・「人権週間」啓発事業の実施
・「子ども月間」の設定
・「高齢者保健福祉月間」の設定
・ 多文化への理解を深めるための啓発
・ ハンセン病患者及びHIV感染者等に
関する啓発
・ 人権啓発推進協力委員制度の推進
人権上大きな社会問
題となっている事例を
とりあげたり,ワークシ
ョップや体験学習等市
民が主体的・能動的に参
加できる手法による啓
・ 「心かよわす市民運動」月間啓発事業
の実施
・「人権週間」啓発事業の実施
・ 社会福祉施設での福祉体験学習(ワー
クキャンプ)の拡充
・ しあわせの村ふれあい体験学習の拡充
- 13 -

さまざまな人々の存
在を認識し,理解を深め
られるような親しみや
すく参加しやすい手法
による啓発
・ こうべUDフェアの開催
これまでの経験と成果を生か
し,よりきめの細かい啓発を推
進していく。
年齢層の興味・関心に
合わせ,広報紙,インタ
ーネット,映画等啓発媒
体の選択肢の拡大や,特
性を生かした啓発の推

・ 各種広報媒体の活用
・ 人権啓発映画の作成
4 具体的な人権課題への取り組み
神戸市では,具体的な人権課題に即した個別的な視点からの取り組みについても,
「“こうべ”の市民福祉総合計画2010」や,個別具体的な実施計画を策定する等
して積極的に取り組みを進めています。
ここでは,このような今日までの取り組みを生かしながら,今後の人権教育・啓
発についての課題の所在と方向性を踏まえた,施策展開の基本的・総論的なあり方
を明らかにします。
なお,人権教育・啓発の推進とともに人権課題の解決に不可欠な取り組みについ
ても,提言を重視し,特に盛り込んでいます。
<参考:具体的な人権課題にかかわる主な計画等>
○ 女性
「神戸市男女共同参画の推進に関する条例」
「こうべ男女共同参画プラン21」
○ 子ども
「神戸市児童育成計画2010」
「第4 次神戸市青少年育成中期計画」
○ 高齢者
「神戸市高齢者保健福祉計画2010」
「神戸市介護保険事業計画」
○ 障害者
「神戸市障害者保健福祉計画2010」
- 14 -
○ 同和問題
「神戸市における平成14 年度以後の同和行政のあり方について(答申)」
○ 外国人
「神戸市在住外国人問題懇話会報告書」( 外国人市民会議で改定作業中)
「神戸市国際化推進大綱」
○ HIV感染者,ハンセン病患者及び元患者等
「神戸市保健医療計画2010」
(1) 女性
[現状と課題]
男女平等の理念は,日本国憲法に明記されている人権の基本です。
世界的には,国連が中心となり女性の地位の向上や男女平等をめざす取り組み
を展開しています。昭和42(1967)年「女子差別撤廃宣言」を採択,昭和50(1975)
年を「国際婦人年」と定め,それに続く10 か年を「国連婦人の10 年」とし,昭
和54(1979)年「女子差別撤廃条約」を採択する等,現在に至るまで女性の地位向
上と男女平等をめざして,取り組まれています。
日本でも,このような動きを受け,昭和50(1975)年,総理府に婦人問題担当室
(現内閣府男女共同参画局)を設置し,女性問題・男女共同参画に取り組んでき
ました。この間,さまざまな法の整備があり,昭和60(1985)年には「女性差別撤
廃条約」を批准し,男女雇用機会均等法やストーカー規制法,配偶者暴力防止法,
男女共同参画社会基本法の制定等,法制度が充実し,男女共同参画施策は推進さ
れてきました。
しかし,現在なお職場や地域において女性の政策・方針決定への参画が少ない
ことや,家事・育児・介護の多くの部分を女性が負担していること,逆に男性に
とっては家庭や地域活動に参加できないほど仕事中心の生活にならざるを得ない
等の問題を抱えています。
また,職場や学校等におけるセクシュアル・ハラスメント,夫や恋人等親しい間
柄の男女間で起こる暴力いわゆるドメスティック・バイオレンス,ストーカー行
為,性犯罪,売買春等の人権侵害や,性の商品化や暴力表現等,女性の人権に配
慮を欠いた取り扱いも依然として問題となっています。
これらの問題の背景として,「男性の方が女性よりも優れている」といった偏見
や,従来からの「男は仕事,女は家庭」といった男女の役割を固定的にとらえる
意識が社会に根強く残っていること等があげられます。
[今後の方向性]
女性も男性も等しく一人の人間として尊重され,さまざまな分野において平等
- 15 -
にその個性や能力を発揮できるよう,社会制度や慣習を見直す必要があります。
性別による固定的役割分担等にとらわれることなく,一人ひとりの個性や能力を
尊重する意識や男女平等意識を育むため,家庭,学校,地域,職場等あらゆる場
において教育・啓発に取り組んでいくとともに,今後,男性も家事・育児・介護
に参加できるよう,職場環境の整備等,仕事と家庭の両立について社会的条件を
整える必要があります。また,女性に対するさまざまな暴力を根絶するため,さ
らに取り組みを進める必要があります。
また,男女共同参画社会が実現することによって,女性だけでなく男性にとっ
てもより自分らしくいきいきとした生活をおくることが可能になるように,いっ
そう意識啓発を図ることも重要です。
以上の認識の下,平成15(2003)年4 月に施行された「神戸市男女共同参画の
推進に関する条例」に基づき,施策を実施していきます。
[協働の指標と中・長期目標値]
協働の指標 現状値 中・長期目標値
女性の政策・方針決定への参画の推進
(市審議会における女性委員の参画状況)
26.6%
(2,346 人中625 人)
(平成14 年度)

30.0%
(平成19 年度)
社会的条件の整備(保育所受入人数と就
学前児童に対する割合)
16,741 人 20.8%
(平成15 年度)

20,000 人 24.0%
(平成18 年度)
[取り組みの目的・方向性と特徴的な取り組み]
取り組みの目的 取り組みの方向性 特徴的な取り組み
・ 市審議会等への女性委員の積極的登用
・ 女性の人材情報の充実
政策・方針決定の場へ
の女性の参画の促進
・ 職域の拡大
男女共同参画の視点
に立つ社会制度・慣行
の見直し,意識の改革
・ 婦人大学の運営
女性も男性も等しく一人の人
間として尊重され個性や能力を
発揮できるよう社会制度や慣習
を見直す。
雇用の分野における
男女平等の推進
・ 男女雇用機会均等法等の普及のための
啓発の推進
・ 女性の人材を育成する場の充実
・ 東灘働く女性応援講座
・ 女性の職業観や職業意識を育成する講
- 16 -
座等の充実
多様な働き方を可能
にする就業条件の整備
・ 農漁業女性団体活動助成
・ 女性担い手農業者の支援
女性の就業機会の拡大 ・ 再就職支援のための講座等の充実
・ 女性起業家グループの支援
社会的支援を必要と
する女性(男性)のため
の支援の充実
・ 母子・父子等福祉対策の実施
・ 女性のための相談室
男女のこころとから
だの健康づくりへの支
援の充実
あらゆる世代・立場を
視野に入れた意識改革
への取り組み
・ 多様な広報媒体による広報・啓発の実

・ 固定的な性別役割分担等見直しのため
の啓発の充実
・ 男女共同参画に関する情報の収集・整
備・提供
・ 企業・団体等への出前講座の実施
女性の人権尊重の啓発 ・ 講座の開催等啓発事業の実施
男女平等の視点に立
つ教育の推進
性別による固定的な役割にと
らわれずに一人ひとりの個性や
能力を尊重する意識や男女平等
意識を育むため,家庭,学校,
地域,職場等あらゆる場におけ
る教育・啓発に取り組む。
・ 男性が参加しやすい家事・育児・介護
講座の充実
・ 男女平等に関する教材の充実・活用(小
学生向け)
・ 男女共同参画に関わる指導資料
・ 男女混合名簿導入
多様な選択を可能に
する生涯学習の充実
・ 男女共同参画の視点に立つ生涯学習講
座の充実
・ 男性に対する啓発の推進(男の生き方
セミナー)
性の尊重についての
啓発と教育の充実
・ 学校教育における性教育の充実
女性も男性も仕事と家庭(家
事・育児・介護)を両立できる
家庭生活・地域社会へ
の男女共同参加・参画の
・ 新米パパママセミナー
・ 母親教室
- 17 -
促進 ・ 市民的広がりを持つ広報・啓発活動の
推進
子育てをしやすい環
境の整備
・ 放課後児童健全育成事業の充実
・ 保育所の受け入れ枠の拡大,延長保育
等,多様な保育サービスの提供
・ 子育てリフレッシュステイ事業の充実
身体機能としての母
性の保護と母子保健施
策の充実
・ 妊婦健康診査・健康相談
・ 子育て支援室
よう社会的条件を整えていく。
介護に関わる環境の
整備
・ 介護保険制度の運営
女性に対する暴力を根絶する
ため,さらに取り組みを進めて
いく。
女性に対するあらゆ
る暴力の根絶に向けて
の取り組みの推進
・ 女性に対する暴力を許さない社会環境
づくりへの啓発の推進
・ セクシュアル・ハラスメント防止のた
めの啓発の推進
・ 性についての女性の人権を尊重する啓
発の推進
・ 性の商品化を防ぐ啓発の推進
・ 有害環境浄化対策の推進
・ 出会い系サイト等から守る運動の推進
・ 女性のための総合的相談体制の整備
・ 女性に対する暴力に関する実態調査
・ セクハラ防止指針の策定(市外大)
・ 緊急一時保護の実施
(2) 子ども
[現状と課題]
子どもを取り巻く環境は,核家族化,少子化等,家族構成の変化とともに家庭
の持つ教育機能の低下が指摘されています。また,高度情報化,都市化が進展す
る中で,地域社会のつながりの希薄化,子どもの遊び場や遊ぶ時間の減少,子ど
も同士の交流機会の減少,学歴偏重の社会的風潮等,子どもの成長と発達にとっ
て厳しい環境へと変化してきています。
このような状況において,児童虐待,家庭内暴力,少年非行等の問題行動,い
じめや体罰等,学校における暴力,不登校のほか,薬物乱用の低年齢化,援助交
- 18 -
際や児童ポルノ等の性の商品化,さらには無抵抗な子どもを狙った無差別的な暴
力事件,連れ去り,誘拐事件の増加といった子どもの人権を侵害する深刻な問題
が発生しています。
子どもの人権をめぐる問題の背景には,家庭や社会環境の変化とともに,おと
なが子どもを一人の人格の主体として見ていないことがあげられます。さらに,
そこから派生した過保護,過干渉,放任,育児放棄等が子どもの主体性や社会性
の欠如を招いています。
このような中,平成15(2003)年7 月には,次代の社会を担う子どもが健やか
に生まれ,かつ育成される環境の整備を図るために,次世代育成支援対策につい
て定めた「次世代育成支援対策推進法」が制定されています。
[今後の方向性]
教育・啓発においては,子どもは,社会的に未熟であっても,一人の独立した
人格を持ち,権利を享受し行使する主体であるという「児童の権利に関する条約」
の精神に基づき,子どもの権利について理解を深めていくことが必要です。そし
て,おとなのみならず子どもに対しても,発達段階に応じて権利の主体であると
いうことを分かりやすく説明する等,工夫を凝らしていくことが必要です。
また,最近深刻化している児童虐待の問題については,虐待の早期発見・早期
対応を図っていくための教育・保健・医療・福祉関係機関の十分な連携,虐待を
受けた子どもに対するケア,おとなに対する教育・啓発を行っていくことが重要
です。
子どもが自分の考えをまとめ,自分の意見を言えるよう自主性を育てていくた
め,子ども自身による取り組みや意見表明の機会を家庭,地域,学校でつくりだ
していくことや,子どもの視点に立ったまちづくりを進めるために,子どもがま
ちづくりの準備段階から参画する等,発達と成熟に応じて社会の一員として認め
ていくことが必要です。
[協働の指標と中・長期目標値]
協働の指標 現状値 中・長期目標値
家庭での子育て支援
(児童館の整備)
120箇所
(平成15 年度)

130箇所
(平成22 年度)
子どもの地域行事・活動への参加率
小学校(高学年)80.1%
中学生 73.1%
高校生等 42.1%
(平成12 年度)

小学校(高学年)85.0%
中学生 75.0%
高校生等 45.0%
(平成17 年度)
- 19 -
[取り組みの目的・方向性と特徴的な取り組み]
取り組みの目的 取り組みの方向性 特徴的な取り組み
母子保健の充実
・ 相談窓口の充実
・ 子育て教室等の開催
家庭の教育機能の向上を支援
する。
子育ての仲間づくり ・ 地域での母子健康づくりグループ支援
事業の充実
・ 児童館すこやかクラブ・親子サークル
の充実
・ 保育所地域子育て支援センターの拡充
・ 保育所地域交流事業の拡充
・ みんなの幼稚園事業の推進
・ わくわく広場,よちよち広場の実施
・ 地域福祉センター子育てサークルづく
りの実施
・ 母と子の教室,3歳児の親と子の教室
の実施
総合児童センターの
充実
・ 体力増進や文化活動・遊びを通じての
健全育成事業
・ 児童館等の指導
・ 啓発活動
情報提供の充実 ・ 子育て情報BOXの充実
生涯学習の充実 ・ 生涯学習の基礎づくり
子育てしやすいすま
い・まちづくり
・ 住宅での子育て支援の推進
青少年育成協議会支
部活動の充実
・ 地域での青少年健全育成事業の推進
・ 家庭に対する啓発活動
「子どもが目標を持
てる教育」の推進
・ こうべっ子のびやかプラン推進事業
子どもがまちづくりの準備段
階から参加する等,発達と成熟
に応じて社会の一員として認め
る。
新しいまちづくりに
貢献する教育
・ 子どもの視点による「人にやさしいま
ちづくり」の提案事業
・ トライやる・ウィーク推進事業
・「神戸っ子 とびっきり タイム」~子
どもと先生の「総合的な学習の時間」へ
- 20 -
の取り組み支援~
・ 市民専門講師の配置,ゲストティーチ
ャーの導入
生涯学習の振興 ・ 子どもを育むための環境づくり事業
・ マナビィひろば事業
地域の教育力の充実
・青少年の居場所づくり
の推進
・青少年の社会参加の促

・地域活動の促進
・ 地域への愛着づくり事業
・ 中高生の活躍できる場づくり
遊び場・遊ぶ時間・子ども同
士の交流機会の減少へ対応す
る。
放課後児童健全育成
事業(学童保育)の充実
・ 需要のある小学校区への整備・既存学
童保育所の過密解消
・ 助成制度の充実
子ども会の育成
・ 助成の実施と指導者の養成強化
・ 行事情報の提供と積極的参加の促進
児童館や公園等の整

・ 児童館の整備・運営
・ 公園の整備
・ アスリートスポーツ広場の整備
・「ユースプラザKOBE・WEST」事業
学歴にとらわれない環境づく
りを進める。
地域の教育力の充実
・青少年の居場所づくり
の推進
・青少年の社会参加の促

・地域活動の促進
・ 中高生の活躍できる場づくり
・ 青少年を地域で讃える賞
児童虐待防止対策の
充実
・ 子育て支援室の運営
・ こども家庭センターの充実
・ 児童家庭支援センターの運営
・ 神戸市児童虐待防止連絡協議会の設置
児童虐待の早期発見・早期対
応を図っていくため教育・保
健・医療・福祉関係機関の十分
な連携や,虐待を受けた子ども
に対するケア,おとなに対する
教育・啓発を行う。
要支援児童への支援
の充実
・ 乳児院,児童養護施設の整備充実
・ 母子生活支援施設の整備充実
・ 里親制度の充実
・ 苦情解決への適切な対応体制の整備
少年非行,いじめ,学校にお地域の教育力の充実 ・ 青少年育成市民運動
- 21 -
ける暴力,不登校,体罰等への
対応,予防を図る。
・青少年の居場所づくり
の推進
・青少年の社会参加の促

・地域活動の促進
・ ふれあい懇談会(中学校)
児童生徒健全育成 ・ スクールカウンセラーの配置
・ 心のSOSキャッチ学校支援事業
いじめ・不登校対策 ・ 思いやり勇気あふれる学校・学級づく

・ 青少年補導センター(青少年相談・街
頭補導等)
・ 青少年補導センター・くすのき教室(不
登校児童生徒適応指導教室)
薬物乱用の低年齢化への対応
と予防を図る。
地域の教育力の充実 ・ 青少年育成市民運動
・ 地域活動の充実
薬物等乱用対策 ・ 啓発の推進と相談
・ 薬物乱用防止区民大会
援助交際・児童ポルノ等性の
商品化から子どもたちを守る。
女性に対するあらゆ
る暴力防止に向けての
啓発,相談(児童買春,
児童ポルノ含む)
・ 青少年を出会い系サイト等から守る運
動の推進
・ 有害環境浄化対策の推進
人権啓発の推進 ・ 子ども月間事業の実施
「児童の権利に関する条約」
の精神に基づき子どもの権利に
ついて大人の理解を深めてい
く。
親の意識改革の推進 ・ スマイル・ハートあいさつ運動の展開
子どもの主体性や社会性を育人権教育の推進 P5~参照
てていくため,子どもが権利の
主体であることの説明や,自分
で考え意見を言えるような機会
を家庭・地域・学校でつくりだ
していく。
地域の教育力の充実
・青少年の居場所づくり
の推進
・青少年の社会参加の促

・地域活動の促進
・ 地域への愛着づくり事業
・ 中高生の活躍できる場づくり
体験学習の充実
・ トライやる・ウィーク
・「福祉協力校」事業の推進
- 22 -
子どもの安全確保のための取
り組みを進めていく
地域の見守り活動の
充実
・ こども110番「青少年を守る店,守
る家」
・ 青少年を守る車
・ スマイル・ハートあいさつ運動の展開
(3) 高齢者
[現状と課題]
日本では,出生率の低下や平均寿命の延びに伴い,世界に類を見ないスピード
で高齢化が進んでおり,平成27(2015)年には4人に1人が,平成62(2050)年には
3人に1人が高齢者になると予想されています。高齢化の進展により,これまで
のように現役世代だけで高齢者を支えていくことが難しくなってきており,高齢
者が住み慣れた地域で,いつまでも自立して生きがいを持って暮らしていくため
には,高齢者世代同士も含めたすべての世代が支えあうという視点が重要になっ
てきます。
しかしながら,高齢であるということのみを理由に就労の機会が奪われたり,
介護の長期化により家族の心身の負担が重なることで,高齢者に対する虐待や介
護放棄が起こったり,財産侵害,老人福祉施設や病院の大部屋などにおけるプラ
イバシーの侵害や身体的拘束等,高齢者の人権侵害にかかわる深刻な問題が生じ
ています。こうした問題は,権利擁護サービスの創設,成年後見制度の改正後も
根絶していません。
[今後の方向性]
心身の機能の衰え等から介護が必要になった高齢者やその家族に対する支援と
ともに,高齢者が身体的・精神的・社会的に自立し,長年培ってきた知識や経験,
技能等を生かし,積極的に社会参加すること,自己実現を図ること,適切なケア
を受けることといった高齢者の人間としての尊厳が尊重されるよう支援を行うと
ともに,市民の意識を高めていく教育・啓発に取り組んでいくことが重要です。
また,加齢により介護を要する高齢者が増えているのも事実ですが,一方で,
働く意欲と能力を持ち地域社会の中で活躍している高齢者も数多く存在していま
す。高齢者の身体的・精神的な状態は,個人差が大きく年齢で一律に見ることは
適切ではありません。いわゆる「弱者」であるといった高齢者に対する画一的な
見方を払拭し,高齢者に対する理解を深めていくために,世代間交流の機会をつ
くりだしていくことも重要です。
- 23 -
[協働の指標と中・長期目標値]
協働の指標 現状値 中・長期目標値
高齢者の社会活動への参加率 38.1%
(平成12 年度)

60.0%
(平成18 年度)
地域見守り活動の強化
(小地域見守り連絡会の開催地区数)
166地区
(平成14 年度)

170地区
(平成18 年度)
介護保険の円滑な運営
(介護型施設※の定員とホームヘルプ
サービスの利用回数)
・ 介護型施設定員
9,211 人
・ ホームヘルプサービ
ス年間利用回数( 65
歳以上人口100 人当
たり)
935回
(平成13 年度)


11,761 人
1,372回
(平成18 年度)
※ 特別養護老人ホーム,老人保健施設,介護療養型医療施設,痴呆性高齢者グループホーム,ケアハ
ウス(生活支援ハウス含む)
[取り組みの目的・方向性と特徴的な取り組み]
取り組みの目的 取り組みの方向性 特徴的な取り組み
地域福祉活動の場の確
保と啓発・人材の育成
・ 地域見守り活動
地域福祉推進体制の整備
・ あんしんすこやかセンターを中心と
した地域ケアネットワーク
住み慣れた地域でいつまで
も自立して生きがいを持って
暮らしていけるよう,すべて
の世代が支えあうという視点
を重視する。 地域見守り活動の充
実・強化
・ 民生委員・児童委員,友愛訪問グル
ープ,LSA等による見守り
ボランティア活動の促進 ・ 高齢者相互支援事業
・ シルバーフレンド訪問支援事業
くらしの安全対策
・ 高齢者相互支援事業
・ ケアライン119
介護予防・生活支援対策
の推進
・ こうべ安心サポートセンター
・「あんしんすこやかプラン」の推進
- 24 -
介護保険制度の円滑な
実施
・利用者本位の実現
・自立した在宅生活の継続
・民間活力の推進
・地域ケアシステムの確立
・ 生活情報センター等の相談・苦情の
受付
・ ケアマネジメント機能の強化
・ サービスの供給体制の整備
・ 地域ケアネットワーク(保健・医療・
福祉連絡会議)の一層の充実・発展
・ あんしんすこやかセンター(在宅介
護支援センター)の支援の継続
介護が必要になった高齢者
や家族に対する支援を行う。
在宅介護サービスの基
盤整備
・ デイサービス・デイケアの推進
・ ショートステイのきめ細かな整備
・ ホームヘルプサービスのサービス量
の確保
・ 在宅介護者への支援
多様な介護機能型施設
や介護型住宅の整備等
・ グループホーム等中間施設を含んだ
入所施設全体としてのサービス確保
痴呆性高齢者対策の総合
的推進
・「神戸こころの健康センター」・区・老
人性痴呆疾患センター(西市民病院)
等における相談・情報提供体制の充実
・ 関係機関のネットワークの整備
・ ケアマネジャー向け相談窓口の設置
くらしの安全対策 ・ 権利擁護体制の充実・強化
人権啓発の推進 ・「高齢者保健福祉月間」の設定
生涯学習の振興
・ シルバーカレッジの運営
・ 生涯学習支援センターの運営
就労機会の拡充
・ (財)神戸市シルバー人材センター
の育成・充実
社会参加の促進
・ すこやか手帳(健康手帳)の交付
・ 敬老優待乗車証
長年培ってきた知識や経験,
技能等を生かし積極的に社会
参加すること,自己実現を図
ること,適切なケアを受けら
れ尊厳が尊重されるよう支援
するとともに,市民の意識を
高めていく教育・啓発に取り
組んでいく。
ボランティア活動の促進
・ シルバーカレッジ社会還元センタ
ー:グループ”わ”によるボランティ
ア活動の支援
高齢者に対する画一的な見
方を払拭し理解を深めていく
地域福祉活動の場の確
保と啓発・人材の育成
・ ふれあいのまちづくり事業
- 25 -
地域福祉推進体制の整備
・ 老人クラブによる世代間交流活動等
地域社会との交流事業の支援
社会参加の促進
・ 老人クラブによるボランティア活動
の支援
ための世代間交流の場を創出
していく。
ボランティア活動の促進
・ シルバーカレッジ社会還元センタ
ー:グループ”わ”によるボランティ
ア活動の支援
(4) 障害者
[現状と課題]
障害者の人権保障は,障害の有無,障害の種類と程度に関わらず,すべての人
の人権に共通する課題です。
近年,障害者が生活していくうえでのさまざまな障壁となるものを取り除いて
いく「バリアフリー」や,障害者を特別視するのではなく,社会の中で普通の生
活がおくれるような条件を整えた,共生の社会こそノーマルであるとする「ノー
マライゼーション」の理念の浸透に伴い,障害者に対する理解は深まってきてい
ます。
そして,障害者施策においても,その原点を個人の尊厳に置き,障害者へのさ
まざまな福祉サービスは,措置から利用(自己選択)へ移行しています。
しかしながら,歩道の段差,建築物のエレベーターの不備等の物理的障壁,障
害を理由とした入居・入店拒否,就職差別といった,偏見や差別意識等の心理的
障壁,資格制限等による制度的障壁,点字図書の不足や字幕付テレビ放送が十分
に普及していない等の文化・情報面の障壁のように,障害者の自立や社会参加の
妨げとなる障壁が依然として存在しています。
一方,最近では,就労を中心とした障害者の社会参加についての理解・関心も
高まってきており,障害を理由とした資格制限の見直し,特例子会社制度の適用
要件の緩和,法定雇用率の除外率制度の見直し等,法律上の制度も前進してきて
います。
[今後の方向性]
このように,障害や障害者への理解を深めるためには,健常者からの理解や支
援も不可欠ですが,同時に障害者自らが障害をマイナスとのみ捉えるのではなく,
障害を持つゆえに体験するさまざまな事象を,自分自身や,社会のためポジティ
ブに生かしていくことも必要であり,いずれも今後の教育・啓発の課題です。
また,教育・啓発とともに,お互いの立場を思いやり相互に協力し合う心や態
- 26 -
度を養うために,スポーツ,文化,地域活動,ボランティア活動等あらゆる場を
通じて,障害のある人とない人との交流を進めていくことも必要です。
とりわけ,コミュニケーションは重要な要素であり,本当の意味でのふれあい
の機会を幼児期から創っていくことが大切です。また,周囲との良好な人間関係
を強化することにも留意すべきです。
[協働の指標と中・長期目標値]
協働の指標 現状値 中・長期目標値
外出支援事業の実施
(ガイドヘルパー派遣回数)
12,892 回/年
(平成13年度)

27,000 回/年
(平成22 年度)
働く場・訓練の場等の拡充
(福祉的就労の支援)
2,332 人
(平成13 年度)

3,959 人
(平成22 年度)
[取り組みの目的・方向性と特徴的な取り組み]
取り組みの目的 取り組みの方向性 特徴的な取り組み
人にやさしい安全な交通
施設の整備
・ 市営地下鉄施設のバリアフリー化
・ ノンステップバス・ワンステップバ
スの導入
道路等公共施設の整備 ・ だれもが安心して歩ける道路整備
・ だれもが快適に歩ける道路整備
・ 小中学校へのエレベーターの設置
歩道の段差,エレベーター
不備等物理的障壁を解消し
ていく。
ユニバーサルデザインの
考え方に基づく都市環境整

・ 都市施設整備の指導
・ 都市施設整備推進資金融資の活用
・ 良質な住宅ストックの形成
・ 高齢者及び障害者居室等改修資金貸
付事業
・ 福祉収集(ひまわり収集)の実施
外出支援事業の実施 ・ 重度障害者外出支援事業の充実
・ 知的障害者ガイドヘルプ事業の実施
・ 盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業
・ コミュニケーション確保事業の充実
・ 精神障害者ホームヘルプ事業の実施
入居・入店拒否,就職差別
等心理的障壁を解消してい
人権啓発の推進
・「障害者の日」市民啓発
・ 特定賃貸住宅建設融資利子補給制度
- 27 -
利用者への啓発
・ ボランティア講座における啓発
く。
一般就労の支援
・ 障害者就労支援IT技術習得セミナ
ーの実施
・「障害者の雇用の促進等に関する法律」
に基づく雇用促進・就労支援
・ 重度障害者多数雇用事業所,特例子
会社の誘致促進
・ 障害者就労推進センター,障害者雇
用・就業支援ネットワーク
・ 職場適応援助者(ジョブコーチ)の
導入
福祉的就労の支援 ・ 通所授産施設
・ 福祉工場
・ 社会事業授産施設
・ 小規模通所授産施設
・ 小規模作業所
・ 自立訓練事業
・ 福祉就労促進事業
・ 社会適応訓練事業・職親委託制度
授産活動の振興 ・ 神戸ふれあい工房
・ チャレンジド・クリエイティブ・プ
ロジェクト
・ 授産製品等の販売促進
資格制限等制度的障壁を解
消していく。
国への要望活動

身近な場所での情報提供
・ 身体・知的・精神の各障害者のため
の地域生活支援センターの整備
点字図書の不足や字幕付テ
レビ放送が十分でない等文
化情報面の障壁を解消して
いく。
個々の障害に応じた情報
提供
・ 点字版「広報こうべ」の発行・配布

・ ITを活用した情報提供
・ コミュニケーション確保事業の充実
・ 盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業
さまざまな相談に応じら・ 障害者110番ねっとわーく事業
- 28 -
れる体制の整備 ・ 福祉サービス利用援助事業(地域福
祉権利擁護事業)
・ 法人後見事業の実施
相談窓口・情報提供の充実・ 障害者デイサービス
・ 身体・知的・精神の各障害者のため
の地域生活支援センターの整備
障害者自らが障害を持つこ
とをポジティブに自分自身
や社会に生かしていけるよ
うな活動を支援する。 ・ 在宅障害者福祉センターの充実
スポーツ活動の振興 ・ スポーツ教室等の開催
・ 障害者スポーツ大会の開催
・ 市民福祉スポーツセンターの運営
スポーツ,文化,地域活動,
ボランティア活動等あらゆ
る場を通じて,障害のある人
とない人の交流を促進する。
文化・レクリエーション
活動の振興
・ 在宅障害者福祉センター・心身障害
者福祉センターでの文化教室
・ 区民センター・文化センターでの文
化活動等
・ 社会貢献の機会につながるホームヘ
ルパー養成講座等の開催
市民啓発,福祉教育の推進
・「ふれあいのまちKOBE・愛の輪運動」
の拡充
・ 社会福祉施設での福祉体験学習(ワ
ークキャンプ)の拡充
・ 市民福祉大学で障害者が講師として
参加
ボランティア活動の支援
・ ボランティア情報センター,各区ボ
ランティアセンターでの情報提供,市
民福祉大学・区社協・しあわせの村等
における人材育成
(5) 同和問題
[現状と課題]
同和問題は,日本社会の歴史的発展の過程において形成された身分階層構
造に基づく差別であり,日本国憲法の基本的人権に関わる「我が国固有の人権問
題」です。
- 29 -
昭和40( 1965)年8 月の「同和対策審議会答申」は,同和問題の解決は,
国の責務であると同時に国民的課題であると指摘しています。その精神を尊
重し,同和問題の解決を図るため,国や地方公共団体が一体となって,昭和
44( 1969)年以来三度の特別立法に基づいて諸施策を講じてきた結果,生活
環境の改善をはじめとする物的な基盤整備はほぼ完了し,ハード面における
一般地域との較差は大きく改善されました。
また,同和問題に対する正しい理解も着実に定着してきています。しかし,
残された課題として, 結婚や就職に際しての差別の問題, また, 差別落書,
インターネットによる差別文書の掲示等,さまざまな面でみられる差別意識
があげられます。さらに,同和問題に対する市民の理解を妨げる「えせ同和
行為」等の問題もあります。
[今後の方向性]
差別意識の解消に向け,これまで積み上げられてきた成果を踏まえ,すべ
ての人の基本的人権を尊重していくための人権教育・啓発の課題として,積
極的に取り組んでいくことが必要です。その中で,同和問題の現状の理解を
深めるための教育・啓発に取り組むとともに,地域社会の中で,共通の課題
についてともに考え,ともに解決していく中で交流や相互理解が進んでいく
ような自由な意見交換のできる環境づくりを進めていくことが大切です。
さらに,同和問題に対する誤った意識を植えつけ,その結果,同和問題の
解決を阻害する大きな要因となっている「えせ同和行為」等の排除も必要で
す。
[協働の指標と中・長期目標値]
協働の指標 現状値 中・長期目標値
同和問題に対する正しい理解度の向上 56.1%
(平成12 年度)

60.0%
(平成22 年度)
[取り組みの目的・方向性と特徴的な取り組み]
取り組みの目的 取り組みの方向性 特徴的な取り組み
差別意識の解消に向け,
すべての人の基本的人権
を尊重していくための人
権教育・啓発に取り組む。
人権一般の普遍的な視点か
らの取り組みとして「人権教
育・啓発」の推進
・「心かよわす市民運動」月間啓発行事の
実施
・「人権週間」啓発行事の実施
・ その他人権一般の普遍的な視点からの
取り組み(P5~)参照
- 30 -
地域社会の中で,共通
の課題についてともに考
え,ともに解決していく中
で,交流や相互理解が進ん
でいくような環境づくり
を進めていく。
「地域における人権の尊重
されたまちづくり」として実

・「マスプロ型」啓発と,地域に密着した
「フェイス・トゥ・フェイス型」啓発の
実施
・ 地域組織,NPO,ボランティア等と
のつながりが深く,まちづくり支援機能
を持つ区役所との連携推進
・ その他,地域における人権の尊重され
たまちづくり(P37~)参照
えせ同和行為対応について
の啓発の推進
・ 事業所・企業等への啓発
同和問題の解決を阻害
するえせ同和行為を排除
していく。 えせ同和行為を受けた人か
らの相談の充実
・ 相談業務の実施
・ 関係機関との連携
(6) 外国人
[現状と課題]
経済・社会・文化等さまざまな分野でのグローバル化,ボーダーレス化が
進んでいます。神戸市においても約 110 カ国, 約4 万5 千人の外国人市民
が居住しており,多様な民族文化に彩られた彼らの存在は,神戸市の国際性
を示す一つの象徴ともいえます。
日本では,歴史的経緯等により在住する韓国・朝鮮人,中国人が在日外国
人の過半を占めるにいたっており,神戸市においても,外国人市民の約8 割
が, 韓国・朝鮮籍, 中国籍となっています。また近年, インドシナ難民や,
南米出身の外国人労働者の受入等により,いわゆる「新渡日( ニューカマー)」
の外国人が増加しています。
これらの外国人市民は,市民生活を送るうえで,国籍等の違いにより,参
政権, 年金, 保険等の制度上の問題があります。
なかでも,在日韓国・朝鮮人の市民については,ワールドカップの共同開
催等スポーツや文化の交流等をとおして相互理解が深まりつつありますが,
歴史的経緯に対する理解不足から就職・結婚・入居に際して差別を受けたり,
通称名使用の問題,児童・生徒への嫌がらせ等,差別意識は依然として残っ
ています。
一方,「新渡日」の外国人市民については, 言葉や文化, 生活習慣の違い
等により,就職差別,入店拒否,医療問題,子どもの教育問題等さまざまな
課題に直面しています。
- 31 -
[今後の方向性]
これらの問題を解決していくためには,外国人市民も,地域社会を共に構成す
る大切なメンバーであり,国籍,民族の違いを問わず,すべての人がお互いの違
いを認め合う「多文化共生社会」を実現するという視点から,外国人市民の人権
を尊重し,外国人市民が地域社会に参画できるまちづくりを進めなければなりま
せん。
また,こうした外国人市民施策を実施するために,人権尊重・国際理解につい
て生涯学習を推進し,世界に開かれた市民意識を育むための教育・啓発を行って
いくことが重要です。
[協働の指標と中・長期目標値]
協働の指標 現状値 中・長期目標値
外国人生活相談・専門相談(外国人市民
相談窓口の年間相談件数・利用件数)
8,863 件/年
(平成13 年度)

14,600 件/年
(平成17 年度)
[取り組みの目的・方向性と特徴的な取り組み]
取り組みの目的 取り組みの方向性 特徴的な取り組み
国籍,民族の違いを問わず,外
国人市民が地域社会に参画でき
るまちづくりをすることにより
「多文化共生社会」実現につな
げていく。
外国人が暮らしやすく活動
しやすいまちづくり
・ 外国人市民会議
・ コミュニケーション・交流施設の
運営
・ 在住外国人の生活問題への取り
組み
・ 日本語教室
・ 生活・市政情報の提供
・ 留学生支援
・ ビジネスライフサポート
・ 職員採用試験の国籍要件撤廃
・ 在日外国人等福祉給付金
ホスピタリティの向上 ・ 観光案内版の多言語化
・ 関西コンシェルジュサイト運営
助成
- 32 -
人権尊重・国際理解について生
涯学習を推進し,世界に開かれ
た市民意識を育む教育・啓発を
行っていく。
国際感覚豊かな市民性の高

・ 国際理解のための市民講座の開

・ 国際交流・協力ボランティア活
動の推進
・ 旧神戸移住センターの保存活用
・ 特定賃貸住宅建設融資利子補給
制度利用者への啓発
・ こうべ地球っ子プログラム
・ 英語指導助手の全校配置
・ 多文化共生サポーターの派遣
・ 外国人児童生徒受入校支援ボラ
ンティア派遣
・ JSL(第二言語としての日本
語)教室の開催
・ 外国人を題材とした副読本の活

国際理解教育の推進
・ 在日外国人教育推進校連絡会
(7) HIV感染者,ハンセン病患者及び元患者等
[現状と課題]
エイズ,ハンセン病等の感染症に対する正しい知識と理解が十分に普及し
ていないことから,これらの感染者や患者及び元患者が,周囲の人々の誤っ
た知識や偏見等により,職場からの迫害,医療現場における差別,プライバ
シーの侵害を受ける等問題となっています。
エイズは,感染予防の行動を取らない場合,誰でも感染しうる病気であり,
一方,正しい知識に基づいて通常の日常生活を送るかぎり感染を恐れる必要
はありません。
ハンセン病については,「らい予防法」の廃止まで続いた隔離政策によっ
て,患者の人権を侵害し,偏見や差別を生み,患者やその家族に大きな苦し
みを与えてきました。ハンセン病は,らい菌に感染しただけでは発病する可
能性は,極めて低く,発病した場合でも,治療法が確立しており,完治する
病気です。したがって,患者を隔離する必要は全くありません。しかし,い
まだに多くの人が病気が完治した後も生活への不安や偏見,差別への恐怖か
ら療養所での生活を続けています。
- 33 -
[今後の方向性]
エイズについての正しい知識の普及を図るための教育・啓発を推進し,感
染者への偏見や差別を解消していくとともに,感染者の増加を予防していく
ことが重要です。
また,ハンセン病患者や元患者に対する偏見や差別を解消し,療養所入所
者の社会復帰を促進していくため,ハンセン病に対する正しい理解を深める
ための教育・啓発に一層取り組んでいくことが必要です。
さらに,広くこれらの感染症患者の自己決定権に関わる問題として,十分
な説明と同意に基づいた検査,診療,相談,調査等の保健・医療のサービス
の提供すなわちインフォームドコンセントも大切です。
[協働の指標と中・長期目標値]
協働の指標 現状値 中・長期目標値
エイズ健康教育参加者 7,000人/年
(平成14 年度)

10,000 人/年
(平成22 年度)
[取り組みの目的・方向性と特徴的な取り組み]
取り組みの目的 取り組みの方向性 特徴的な取り組み
人権啓発の推進
・ エイズに関する健康教育
・ HIV啓発冊子(高校生向け)
・ コンベンション推進事業
・ エイズ3都共同事業
・ エイズ相談事業助成金
感染者の増加の予防
・ HIV抗体検査(血液検査)の実施
・「感染症の予防及び感染症の患者に対す
る医療に関する法律」に関する法律に基
づく防疫対策
正しい知識の普及を図ること
により偏見や差別を解消してい
くとともに,感染者の増加を予
防していく。
・ 感染症患者の感染症指定医療機関にお
ける治療
(8) その他の人権課題
[現状と課題]
これまでにふれてきた人権課題のほかに,例えば,ホームレスの人々に対する
- 34 -
自立支援,犯罪被害者やその家族に対する配慮や保護,刑を終えて出所した人々
に対する偏見や差別,難病患者や性同一性障害の人々に関して正しい知識の理解
不足からくる偏見や差別等さまざまな人権課題があります。
また,インターネットを悪用した人権侵害,プライバシーの侵害,同性愛者へ
の差別等,新たな人権課題の発生,さらには,現在,議論されている生命倫理の
問題も,これが今後人権に与える影響を注視すべきです。
[今後の方向性]
これらの課題に対応していくためにも,新たな視点に立った人権教育・啓発の
必要性が生じています。人権が,性別,年齢,障害の有無,国籍等あらゆる相違
を超えて普遍性をもつものであるということを常に念頭におきながら,個々の状
況に応じて具体的に対処していきます。
[取り組みの目的・方向性と特徴的な取り組み]
取り組みの目的 取り組みの方向性 特徴的な取り組み
人権一般の普遍的な視点から
の取り組みとして「人権教育・
啓発」の推進
・ 市民啓発事業の実施
・ 人権啓発映画の制作
・ 「心かよわす市民運動」月間啓
発事業の実施
・ 「人権週間」啓発事業の実施
・ 各種広報媒体の活用
ホームレスの援護
・ 巡回生活相談の実施
・ 更生センター・更生援護相談所
等の運営
人権が,性別,年齢,障害の
有無,国籍等あらゆる相違を超
えて普遍性をもつものである
ということを念頭においてさ
まざまな人権課題に対応して
いく。
難病への対策 ・ 難病医療対策
・ 難病福祉対策
5 人権に関する職員の資質向上
[現状と課題]
市民・事業者に働きかけ,人権教育・啓発の取り組みについて理解を得るため,
まず,職員一人ひとりが,人権についての正しい理解を深め,それぞれの職務にお
いて人権尊重の視点に立ち,職務を遂行していけるよう研修等を行い,資質向上を
図ってきました。
- 35 -
また,職員が日々の業務の中で,常に人権を意識した行動をとることは,職員の
高い倫理観の醸成,応対マナーの向上等,市民サービス向上のための基礎でもあり
ます。
[今後の方向性]
「人権意識の高揚」を指定項目として,引き続き重点的に職員研修を実施していき
ます。
さらに,市民の生活相談や身体介護等の福祉サービスを担う福祉関係者や市民の
生命と健康を守ることを使命とする医療・保健関係者等,人権に関わりの深い特定
の職務に従事する職員には,人権に関する豊富な知識と鋭い人権感覚が要求される
ことから,人権の尊重に関する研修を充実していくことが必要です。
研修の実施にあたっては,法的な権利義務等を認識し,人権問題に鋭敏に気づき,
対応できる人権感覚を体得するための実践的な研修のしかたを検討,実施していき
ます。
[協働の指標と中・長期目標値]
協働の指標 現状値 中・長期目標値
人権研修年間受講者 7,164 人/年
(平成13 年度)

18,000 人/年
(平成22 年度)
[取り組みの目的・方向性と特徴的な取り組み]
取り組みの目的 取り組みの方向性 特徴的な取り組み
職員一人ひとりが人権につ
いての正しい理解と認識を深
めるとともに,それぞれの職
務において,人権尊重の視点
に立ち,職務を遂行できるよ
う研修を行う。
法的な権利義務をはじめと
する理論的な人権学習
・ 人権研修の実施
・ 研修資料の整備
人権問題事案に対する鋭敏
な「気づき」を体得するため
の実践的な研修の実施
・ 人権問題事案情報の共有化
・ 行政対象暴力への対応方法の徹底
職務の中で常に人権を意識
した行動をとることを,倫理
観の醸成,応対マナーの向上
等,市民サービス向上のため
の基礎とする。
市民サービス向上のための
職場研修指定項目の設定
・「人権意識の高揚」を職員研修指定
項目の一つとして設定
福祉・医療・保健関係者等
人権に関わりの深い特定の職
福祉・医療・保健従事者等へ
の人権研修の推進
・ 福祉・医療・保健従事者を対象と
した人権研修の実施
- 36 -
務に従事する職員には,人権
の尊重に関する研修を充実す
る。
・ 民間の関係機関等への研修充実の
働きかけ
Ⅲ 人権救済の前提としての相談制度
[現状と課題]
現在,「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」や「児童虐待の
防止等に関する法律」の制定等,深刻化する人権侵害に対応していくための法整備
や諸施策の推進が図られ,人権救済制度の充実が図られつつあります。
一方で,「平成12(2000)年神戸市民の人権問題に関する意識調査」の結果を見
ると,人権を侵害された場合の対応について,市民の相談機関の利用率は未だ低い
状況です。こうした背景には,市民への周知不足や人権問題に対応する行政組織の
多様化,細分化等が考えられます。
[今後の方向性]
これらを踏まえ,現在,整備されているあるいは,整備されつつある人権救済制
度の実効性を高めていくためには,市民に身近な神戸市が,市民への情報提供等,
活動内容の周知を行うほか,相談機関相互のネットワークの構築等により機能を高
め,救済に結びつけるとともに,必要な場合は権限ある救済機関への橋渡しを行っ
ていくことも必要です。
また,相談を媒介として人権の視点からきめ細かく市民一人ひとりの声を聴くこ
とは,神戸市の広聴制度である「市長への手紙」等とともに,神戸市の政策課題を
把握する貴重な機会です。
以上を踏まえ,国の人権擁護施策の方向性との整合性を取りながら,相談の推進
体制を整備して行きます。
[協働の指標と中・長期目標値]
協働の指標 現状値 中・長期目標値
自分の人権が侵害された場合の相談機
関へ相談した割合
6.1%
(平成12 年度)

20.0%
(平成22 年度)
さまざまな人権課題をつなぐ相談ネッ
トワークの構築
未構築
(平成12 年度)

構築
(平成22 年度)
- 37 -
[取り組みの目的・方向性と特徴的な取り組み]
取り組みの目的 取り組みの方向性 特徴的な取り組み
市民に活動内容を周知するた
めに情報の提供を行う。
相談機関の総合的な紹

・ 広報紙等広報印刷物への掲載
・ 神戸市ホームページへの掲載
・ 相談窓口案内冊子等の作成・配布
相談機関相互が連携を深める
ことにより,相談機能を高める。
さまざまな人権課題を
つなぐ相談ネットワー
クの構築
・ 情報の共有・交換
・ プライバシーに配慮した相談事例の共
有と研修・啓発への活用
・ 市民に身近な行政機関として,国の人
権救済の対象となる相談事例の国への
引継ぎ
・ 第3者機関についての総合的な調査・
研究
権限ある救済機関等との連携
を強化する。
国・県等との連携の強

・ 国の人権擁護機関との情報交換等の実

相談事例を市民の声としてと
らえ,政策課題として活かして
いく。
相談事例の施策への
反映
・ 各局の施策への反映
Ⅳ 地域での人権の尊重されたまちづくりへの取り組み
[現状と課題]
震災後の神戸では,復興の過程において,人と人とのつながりが深まり,地域に
おける主体的な市民活動が育まれ,地域の力が発揮されたまちづくりが活発化して
います。
一方で,地域における人間関係の希薄化や相互扶助機能の低下が人権問題の発見
を妨げ,解決をより困難にする事例も見受けられます。
こうした地域社会の状況に対処するためには,今一度市民自らが相互に支えあう
ような社会共同の責任を自覚したまちづくりが必要になっています。
現実に,生命・身体の安全に関わる事象や,人種,民族,性別,思想・信条,社
会的身分,門地,障害等による不当な社会的差別その他の人権侵害の問題が起きて
おり,こうした問題の解決が課題として存在しています。
市民相互の人権問題への対応という点でいえば,生活の中に人権を根づかせる取
- 38 -
り組みが重要となっています。地域を構成するすべての人々が,身近にある,さま
ざまな人権課題を自分自身のこととして,解決に参画し,協働して取り組んでいく
ことが重要です。
阪神・淡路大震災を経験した都市として,同じ地域に生活する他者を気に掛けな
がら共に生きることの素晴らしさは,継承し,発信していきたい大切な教訓です。
震災後に始まった地域での見守り活動等の取り組みも,震災の教訓を生かしたも
のであるといえます。また,少子高齢化の進展の中で,子ども,高齢者等の人権課
題の解決には,高齢者の知恵や力を子育て世代や子どもたちに伝えていく世代間交
流も重要になるといえます。このような動きが次第に拡がれば,一人ひとりが尊厳
を持った人間であるということを互いに認め合うことができ,人権尊重の理念も根
づくし,偏見や差別も淘汰されることになります。そして,このような取り組みを
通じてこそ,地域への愛着も,地域を活気ある変化に富んだ豊かなものに変えてい
く力も生まれてきます。
地域におけるこうした取り組みこそ,協働の理念に基づく人権の尊重されたまち
づくりに通じるものであるといえます。
[今後の方向性]
1 人権尊重についての共通のコンセンサスの確立
人権の尊重を現実のものとするためには,人権尊重という視点から,市民の権利
と義務について十分な議論がなされ,権利には必ず義務が伴い,権利・義務関係の
調整について共通のコンセンサスが確立されるような環境づくりが必要です。
2 地域重視の人権啓発
人権が尊重された社会であればあるほど意見の多様性が認められ,意見の相違に
よる衝突が生じる可能性が高くなります。
地域での共存共栄のためには,排他的に人権を主張しても何の解決にもならず,
話し合いと相互理解が不可欠であり,他者と人権を分かち合うことが重要である点
に気づくことのできる地域重視の人権啓発が必要です。
3 地域における「フェイス・トゥ・フェイス型」啓発の推進
幅広い層に人権についての基本的な知識を普及させる講演会やイベントのような
「マスプロ型」啓発とともに,「フェイス・トゥ・フェイス型」の啓発として,日常
的なまちづくりや地域活動を通じた働きかけにより,一人ひとりがさまざまな人々
の存在を認識し,一人ひとりが尊厳を持った人間であることを互いに気づくことの
できるような,地域に密着したキメの細かい取り組みを行います。
取り組みにあたっては,地域組織,NPO,ボランティア等とのつながりが深く,
まちづくり支援機能を持つ区役所と連携しながら協働して推進することが効果的で
す。
- 39 -
4 地域社会を担う人材の育成
日常的な活動の中で地域社会を担う人材が育つとともに,住民組織やNPO 等の多
様な活動を行う組織を育成し,活性化・自立化していく必要があります。このよう
な市民のまちづくりへの取り組みに対し,積極的に支援を行います。
[協働の指標と中・長期目標値]
協働の指標 現状値 中・長期目標値
ユニバーサルデザインへの理解度 17.9%
(平成14 年度)

60.0%
(平成22 年度)
ふれあいのまちづくり協議会結成数 179 協議会
(平成14 年度)

188 協議会
(平成22 年度)
[取り組みの目的・方向性と特徴的な取り組み]
取り組みの目的 取り組みの方向性 特徴的な取り組み
権利と義務, 自らの
利益と不利益のバラン
ス等, 人権尊重という
視点からの議論と共通
のコンセンサスの確立
・ 人権教育・啓発の推進
人権尊重の理念を生活に根づ
かせるため,地域を構成するさ
まざまな市民相互の交流を育
み,市民自らが相互に支えあう
ような社会共同の責任を自覚し
たまちづくりの取り組みを支援
していく。
まちづくりの過程に
おいて, お互いの人権
を尊重し, 調整を図り
つつ, みんなが暮らし
やすいまちづくりをめ
ざす「ユニバーサルデ
ザインのまちづくり」
の推進等による地域重
視の人権啓発
・ こうべUD広場の開催
・「ユニバーサルデザイン市民運動」の支

・ こうべUDフェアの開催
・ 小中学生によるまちのUDたんけん
地域における「フェ
イス・トゥ・フェイス
型」啓発の推進
・「マスプロ型」啓発と,地域に密着した
「フェイス・トゥ・フェイス型」啓発の
実施
- 40 -
地域社会を担う人材
の育成等、行政による
地域のまちづくりの支

・ こうべUDフェアの開催
・ 地域組織,NPO,ボランティア等と
のつながりが深く,まちづくり支援機能
を持つ区役所との連携推進
・ 区の個性をのばすまちづくり事業
・ コンパクトタウンづくり
・ ふれあいのまちづくり助成
・ 神戸市防災福祉コミュニティ育成事業
・ 市民・地域提案型活動助成
・ 地域への愛着づくり事業
・ 神戸市エコタウンまちづくり
・ まちの美緑花ボランティア
・ 神戸市街づくり助成
・ まちづくり活動助成
・ 地域コミュニティパワーアップ事業
・ マナビィひろば事業
・ 「スマイル・ハートあいさつ運動」の
展開
Ⅴ 総合的かつ効果的な推進体制等
1 全庁的な推進体制の整備
関係部局がそれぞれの役割分担の明確化と緊密な連携を図るため,市長をトップ
とし全助役・全局室区長を本部員とする「人権教育・啓発推進本部(以下「推進本
部」)」を設置します。
2 基本計画の行政評価
基本計画に関する行政評価は,推進本部において実施します。
その際には,協働の指標における目標値の達成度とともに,市民意識調査や他の
調査等も通じて市民の意見を踏まえて,取り組みの目的と方向性を中心にしながら,
その内容と効果について,神戸市の行政評価のしくみの中で実施する必要がありま
す。
また,人権を取り巻く社会環境の変化に適切に対応するため,必要に応じて基本
計画の見直しを行います。
- 41 -
3 関係機関との連携・協力
神戸地方法務局及び神戸人権擁護委員協議会等の国の関係機関,兵庫県及び(財)
兵庫県人権啓発協会等の兵庫県の関係機関等とのネットワークを強化し,情報の共
有化,啓発事業の共同実施等により,一層の効率的な啓発の推進に努めます。
特に,企業啓発等のように,法制度上市単独では十分な効果が期待できないもの
については,積極的に連携を図っていきます。
4 民間団体等との連携・協力
阪神・淡路大震災の際のボランティアの活躍を契機に,地域組織,NPO,ボラ
ンティア団体等民間の非営利活動への関心が高まっています。人権問題がますます
複雑・多様化する傾向にある中で,行政だけでは必ずしも十分といえない分野につ
いて,民間の非営利団体が一定の役割を果たしています。
今後は,民間団体等と神戸市との相互の独立性に留意しながら,①人権上の観点
から特に対応の充実強化が求められているもので,②民間団体等の知識や経験を活
用することによって,十分な効果が期待されるものについては,「市民・地域活動の
支援に関する条例(仮称)」等を踏まえつつ,連携と協力を図り,人権教育・啓発に
対する社会全体での取り組みを推進していきます。
- 42 -
[ 参 考 資 料 ]
「人権教育・啓発に関する基本計画(素案)」に対する意見募集結果
1 募集期間 平成15(2003)年11 月4日(火)~28 日(金)
2 意見書総数 39通(団体・個人)
3 項目別件数
項 目 件 数
素案全般 4
Ⅰ はじめに
1 「人権教育・啓発に関する基本計画」策定の経緯
(2)神戸市人権教育・啓発懇話会からの提言

2 基本的な考え方
(1)人権尊重の理念

(2)人権尊重と市民福祉 1
(3)人権尊重とユニバーサルデザイン 3
(4)市民生活と人権尊重 1
(5)「人権教育・啓発」とともに重点的に取り組むべき事項 1
(6)提言の尊重 1
3 基本計画の策定趣旨及び位置付け等
(1)策定趣旨及び位置付け

(5)協働の指標と中長期目標値の設定 1
Ⅱ 人権教育・啓発について
1 人権教育・啓発の基本的あり方

(2)発達段階を踏まえた効果的な教育・啓発 1
(3)協働の理念に基づく教育・啓発 2
(4)市民の自主性の尊重と教育・啓発における中立性の確保 1
2 人権教育・啓発の手法 1
3 人権一般の普遍的な視点からの取り組み
(1)人権教育

①学校教育 3
②社会教育 2
4 具体的な人権課題への取り組み 2
(1)女性 1
(2)子ども 2
(5)同和問題 1
(6)外国人 4
(8)その他の人権課題 3
5 人権に関する職員の資質向上 1
Ⅲ 人権救済の前提としての相談制度 2
Ⅳ 地域での人権の尊重されたまちづくりへの取り組み 1
Ⅴ 総合的かつ効果的な推進体制等
4 民間団体等との連携・協力

合 計 47(件)
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人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(平成12 年法律第147 号)
(目的)
第1条 この法律は、人権の尊重の緊要性に関する認識の高まり、社会的身分、門地、人種、信条又は
性別による不当な差別の発生等の人権侵害の現状その他人権の擁護に関する内外の情勢にかんがみ、
人権教育及び人権啓発に関する施策の推進について、国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにす
るとともに、必要な措置を定め、もって人権の擁護に資することを目的とする。
(定義)
第2条 この法律において、人権教育とは、人権尊重の精神の涵養を目的とする教育活動をいい、人権
啓発とは、国民の間に人権尊重の理念を普及させ、及びそれに対する国民の理解を深めることを目的
とする広報その他の啓発活動(人権教育を除く。)をいう。
(基本理念)
第3条 国及び地方公共団体が行う人権教育及び人権啓発は、学校、地域、家庭、職域その他の様々な
場を通じて、国民が、その発達段階に応じ、人権尊重の理念に対する理解を深め、これを体得するこ
とができるよう、多様な機会の提供、効果的な手法の採用、国民の自主性の尊重及び実施機関の中立
性の確保を旨として行われなければならない。
(国の責務)
第4条 国は、前条に定める人権教育及び人権啓発の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっと
り、人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第5条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との連携を図りつつ、その地域の実情を踏まえ、人
権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(国民の責務)
第6条 国民は、人権尊重の精神の涵養に努めるとともに、人権が尊重される社会の実現に寄与するよ
う努めなければならない。
(基本計画の策定)
第7条 国は、人権教育及び人権啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、人権教育及
び人権啓発に関する基本的な計画を策定しなければならない。
(年次報告)
第8条 政府は、毎年、国会に、政府が講じた人権教育及び人権啓発に関する施策についての報告を提
出しなければならない。
(財政上の措置)
第9条 国は、人権教育及び人権啓発に関する施策を実施する地方公共団体に対し、当該施策に係る事
業の委託その他の方法により、財政上の措置を講ずることができる。
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日本国憲法(昭和22年5月3日施行)
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、
諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつ
て再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、
この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来
し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原
理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び
詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、
平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、
平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、
名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和の
うちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治
道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に
立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
(略)
第3章 国民の権利及び義務
第10 条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
第11 条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権
は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び
将来の国民に与へられる。
第12 条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなけ
ればならない。又、国民は、これを濫用してはならない
のであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
第13 条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利につい
ては、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第14 条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政
治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、
又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
第15 条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
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2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的
にも私的にも責任を問はれない。
第16 条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事
項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けな
い。
第17 条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又
は公共団体に、その賠償を求めることができる。
第18 条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に
反する苦役に服させられない。
第19 条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第20 条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、
又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
第21 条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第22 条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
第23 条 学問の自由は、これを保障する。
第24 条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相
互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に
関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
第25 条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めな
ければならない。
第26 条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利
を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を
負ふ。義務教育は、これを無償とする。
第27 条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。
第28 条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
第29 条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
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第30 条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。
第31 条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の
刑罰を科せられない。
第32 条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
第33 条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由
となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
第34 条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、
抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由
は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
第35 条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利
は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物
を明示する令状がなければ、侵されない。
2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
第36 条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
第37 条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有す
る。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のため
に強制的手続により証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自
らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
第38 条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これ
を証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科
せられない。
第39 条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任
を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。
第40 条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、
国にその補償を求めることができる。
(略)
第10 章 最高法規
第97 条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果で
あつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない
永久の権利として信託されたものである。
(略)
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世界人権宣言(仮訳文)
(1948 年12 月10 日第3回国際連合総会採択)
前 文
人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界
における自由、正義及び平和の基礎であるので、
人権の無視及び軽侮が、人類の良心を踏みにじった野蛮行為をもたらし、言論及び信仰の自由が受け
られ、恐怖及び欠乏のない世界の到来が、一般の人々の最高の願望として宣言されたので、
人間が専制と圧迫とに対する最後の手段として反逆に訴えることがないようにするためには、法の支
配によって人権保護することが肝要であるので、
諸国間の友好関係の発展を促進することが、肝要であるので、
国際連合の諸国民は、国際連合憲章において、基本的人権、人間の尊厳及び価値並びに男女の同権に
ついての信念を再確認し、かつ、一層大きな自由のうちで社会的進歩と生活水準の向上とを促進するこ
とを決意したので、
加盟国は、国際連合と協力して、人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び尊守の促進を達成すること
を誓約したので、
これらの権利及び自由に対する共通の理解は、この誓約を完全にするためにもっとも重要であるので、
よって、ここに、国際連合総会は、
社会の各個人及び各機関が、この世界人権宣言を常に念頭に置きながら、加盟国自身の人民の間にも、
また、加盟国の管轄下にある地域の人民の間にも、これらの権利と自由との尊重を指導及び教育によっ
て促進すること並びにそれらの普遍的かつ効果的な承認と尊守とを国内的及び国際的な漸進的措置に
よって確保することに努力するように、すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準として、
この世界人権宣言を公布する。
第1条
すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、
理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。
第2条
1 すべて人は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身、
財産、門地その他の地位又はこれに類するいかなる事由による差別をも受けることなく、この宣言に
掲げるすべての権利と自由とを享有することができる。
2 さらに、個人の属する国又は地域が独立国であると、信託統治地域であると、非自治地域であると、
又は他のなんらかの主権制限の下にあるとを問わず、その国又は地域の政治上、管轄上又は国際上の
地位に基づくいかなる差別もしてはならない。
第3条
すべて人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する。
第4条
何人も、奴隷にされ、又は苦役に服することはない。奴隷制度及び奴隷売買は、いかなる形において
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も禁止する。
第5条
何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは屈辱的な取扱若しくは刑罰を受けることはない。
第6条
すべて人は、いかなる場所においても、法の下において、人として認められる権利を有する。
第7条
すべての人は、法の下において平等であり、また、いかなる差別もなしに法の平等な保護を受ける権
利を有する。すべての人は、この宣言に違反するいかなる差別に対しても、また、そのような差別をそ
そのかすいかなる行為に対しても、平等な保護を受ける権利を有する。
第8条
すべて人は、憲法又は法律によって与えられた基本的権利を侵害する行為に対し、権限を有する国内
裁判所による効果的な救済を受ける権利を有する。
第9条
何人も、ほしいままに逮捕、拘禁、又は追放されることはない。
第10 条
すべて人は、自己の権利及び義務並びに自己に対する刑事責任が決定されるに当っては、独立の公平
な裁判所による公正な公開の審理を受けることについて完全に平等の権利を有する。
第11 条
1 犯罪の訴追を受けた者は、すべて、自己の弁護に必要なすべての保障を与えられた公開の裁判に
おいて法律に従って有罪の立証があるまでは、無罪と推定される権利を有する。
2 何人も、実行の時に国内法又は国際法により犯罪を構成しなかった作為又は不作為のために有罪
とされることはない。また、犯罪が行われた時に適用される刑罰より重い刑罰を課せられない。
第12 条
何人も、自己の私事、家族、家庭若しくは通信に対して、ほしいままに干渉され、又は名誉及び信用
に対して攻撃を受けることはない。人はすべて、このような干渉又は攻撃に対して法の保護を受ける権
利を有する。
第13 条
1 すべて人は、各国の境界内において自由に移転及び居住する権利を有する。
2 すべて人は、自国その他いずれの国をも立ち去り、及び自国に帰る権利を有する。
第14 条
1 すべて人は、迫害を免れるため、他国に避難することを求め、かつ、避難する権利を有する。
2 この権利は、もっぱら非政治犯罪又は国際連合の目的及び原則に反する行為を原因とする訴追の場
合には、援用することはできない。
第15 条
1 すべて人は、国籍をもつ権利を有する。
2 何人も、ほしいままにその国籍を奪われ、又はその国籍を変更する権利を否認されることはない。
第16 条
1 成年の男女は、人権、国籍又は宗教によるいかなる制限をも受けることなく、婚姻し、かつ家庭
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をつくる権利を有する。成年の男女は、婚姻中及びその解消に際し、婚姻に関し平等の権利を有する。
2 婚姻は、両当事者の自由かつ完全な合意によってのみ成立する。
3 家庭は、社会の自然かつ基礎的な集団単位であって、社会及び国の保護を受ける権利を有する。
第17 条
1 すべて人は、単独で又は他の者と共同して財産を所有する権利を有する。
2 何人も、ほしいままに自己の財産を奪われることはない。
第18 条
すべて人は、思想、良心及び宗教の自由に対する権利を有する。この権利は、宗教又は信念を変更す
る自由並びに単独で又は他の者と共同して、公的に又は私的に、布教、行事、礼拝及び儀式によって宗
教又は信念を表明する自由を含む。
第19 条
すべて人は、意見及び表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉を受けることなく自己の
意見をもつ自由並びにあらゆる手段により、また、国境を越えると否とにかかわりなく、情報及び思想
を求め、受け、及び伝える自由を含む。
第20 条
1 すべての人は、平和的集会及び結社の自由に対する権利を有する。
2 何人も、結社に属することを強制されない。
第21 条
1 すべて人は、直接に又は自由に選出された代表者を通じて、自国の政治に参与する権利を有する。
2 すべて人は、自国においてひとしく公務につく権利を有する。
3 人民の意思は、統治の権力を基礎とならなければならない。この意思は、定期のかつ真正な選挙に
よって表明されなければならない。この選挙は、平等の普通選挙によるものでなければならず、また、
秘密投票又はこれと同等の自由が保障される投票手続によって行われなければならない。
第22 条
すべて人は、社会の一員として、社会保障を受ける権利を有し、かつ、国家的努力及び国際的協力に
より、また、各国の組織及び資源に応じて、自己の尊厳と自己の人格の自由な発展とに欠くことのでき
ない経済的、社会的及び文化的権利を実現する権利を有する。
第23 条
1 すべて人は、勤労し、職業を自由に選択し、公正かつ有利な勤労条件を確保し、及び失業に対する
保護を受ける権利を有する。
2 すべて人は、いかなる差別をも受けることなく、同等の勤労に対し、同等の報酬を受ける権利を有
する。
3 勤労する者は、すべて、自己及び家族に対して人間の尊厳にふさわしい生活を保障する公正かつ有
利な報酬を受け、かつ、必要な場合には、他の社会的保護手段によって補充を受けることができる。
4 すべて人は、自己の利益を保護するために労働組合を組織し、及びこれに参加する権利を有する。
第24 条
すべて人は、労働時間の合理的な制限及び定期的な有給休暇を含む休息及び余暇をもつ権利を有する。
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第25 条
1 すべて人は、衣食住、医療及び必要な社会的施設等により、自己及び家族の健康及び福祉に十分な
生活水準を保持する権利並びに失業、疾病、心身障害、配偶者の死亡、老齢その他不可抗力による生
活不能の場合は、保障を受ける権利を有する。
2 母と子とは、特別の保護及び援助を受ける権利を有する。すべての児童は、嫡出であると否とを問
わず、同じ社会的保護を受ける。
第26 条
1 すべて人は、教育を受ける権利を有する。教育は、少なくとも初等の及び基礎的の段階においては、
無償でなければならない。初等教育は、義務的でなければならない。技術教育及び職業教育は、一般
に利用できるものでなければならず、また、高等教育は、能力に応じ、すべての者にひとしく開放さ
れていなければならない。
2 教育は、人格の完全な発展並びに人権及び基本的自由の尊重の強化を目的としなければならない。
教育は、すべての国又は人種的若しくは宗教的集団の相互間の理解、寛容及び友好関係を増進し、か
つ、平和の維持のため、国際連合の活動を促進するものでなければならない。
3 親は、子に与える教育の種類を選択する優先的権利を有する。
第27 条
1 すべて人は、自由に社会の文化生活に参加し、芸術を鑑賞し、及び科学の進歩とその恩恵とにあず
かる権利を有する。
2 すべて人は、その創作した科学的、文学的又は美術的作品から生ずる精神的及び物質的利益を保護
される権利を有する。
第28 条
すべて人は、この宣言に掲げる権利及び自由が完全に実現される社会的及び国際的秩序に対する権利
を有する。
第29 条
1 すべて人は、その人格の自由かつ完全な発展がその中にあってのみ可能である社会に対して義務を
負う。
2 すべて人は、自己の権利及び自由を行使するに当っては、他人の権利及び自由の正当な承認及び尊
重を保障すること並びに民主的社会における道徳、公の秩序及び一般の福祉の正当な要求を満たすこ
とをもっぱら目的として法律によって定められた制限にのみ服する。
3 これらの権利及び自由は、いかなる場合にも、国際連合の目的及び原則に反して行使してはならな
い。
第30 条
この宣言のいかなる規定も、いずれかの国、集団又は個人に対して、この宣言に掲げる権利及び自由
の破壊を目的とする活動に従事し、又はそのような目的を有する行為を行う権利を認めるものと解釈し
てはならない。